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金融危機下における銀行貸出と生産性:

企業別成長会計を使った「追い貸し」の検証

2007年10月
福田慎一*1
粕谷宗久*2
赤司健太郎*3

要旨

 本稿では、深刻な金融危機に直面した1990年代後半から2000年初頭にかけての日本経済において、銀行貸出が大企業や中堅企業の生産性に対していかなる影響を与えたかを、上場・非上場企業の財務データやその取引先銀行の情報を使って考察した。個票データを用いて、長期貸出の伸びとTFP(全要素生産性)の伸びとの関係を推計した場合、メイン・バンクの健全性が悪化した企業で、有意な負の相関が観察された。しかし、その一方で、これらの企業でも貸出は資本ストックの伸びに有意な正の影響を与えていた。この結果は、健全性が悪化したメイン・バンクが過度に貸出を増加させた場合に、資源のミス・アロケーションを通じて生産性が低迷した可能性を示唆するものである。ただし、メイン・バンクの健全性が悪化した企業でも、貸出が減少した企業ではTFPの回復が見られた。金融危機に見舞われた1990年代後半日本経済では、経営再建の見込みの乏しい先に貸出を継続する「追い貸し」が生産性低迷の一因であり、健全性が悪化した銀行による非効率な企業への貸出のリストラクチャリングが日本経済の回復には必要であったといえる。

本稿の作成にあたっては、日本銀行調査統計局のスタッフの方々から有益なコメントをいただいた。なお、本稿で述べられた意見、見解は、筆者個人のものであり、日本銀行あるいは調査統計局のものではない。

  1. *1東京大学
    E-mail: sfukuda@e.u-tokyo.ac.jp
  2. *2日本銀行調査統計局
    E-mail: munehisa.kasuya@boj.or.jp
  3. *3東京大学

日本銀行から

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