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「デフレへの保険」を考慮した金融政策の枠組み

2008年2月
翁 邦雄*1
木村 武*2
原 尚子*3

要約

 資産価格バブル崩壊などを引き金とするデフレリスクの高まりへの政策対応についてのFEDの考え方は、早期に、かつ、大胆に金利を引き下げるべき、というものである。その拠り所として、FEDの首脳に再三引用されてきたのは、Ahearne et al. (2002)によるシミュレーション分析である。同論文は、FRB/Globalモデルを用い、日本のバブル崩壊期の金融政策について、カウンターファクチュアル・シミュレーションを行ったものである。この論文が公表されて以降、FED首脳の多くが、そのシミュレーション結果を踏まえ、バブルが崩壊した場合、「デフレへの保険」という観点から、早期に大胆な金融緩和を行うことが必要であり、日本の場合も、そうすればデフレに陥らなかったと主張している。 Ahearne et al.(2002)の分析は、「デフレへの保険」についての有用な問題提起である。しかし、シミュレーション上は、政策金利の恒久的引き下げという現実にはとり得ない政策対応を前提にしている点に問題がある。「恒久的」を文字通りに解釈しないにしても、長期間にわたる無条件な緩和政策へのコミットは、中央銀行に対する信任、金融面での不均衡蓄積などによる経済振幅の拡大といった問題点を孕んでいる。そこで、本稿では、日本銀行調査統計局の大型マクロモデル(JEM)を用いて、不確実性に直面した中央銀行が「デフレへの保険」として実際に採用可能な代替的な政策枠組みを検討した。シミュレーションによれば、恒久的あるいは時限的な政策金利の早期引き下げよりも、将来、デフレリスクが顕現化すれば金利を大きく引き下げるという政策対応を予め明確にしておくことが、リスク管理上、重要であることが示唆された。

キーワード:
資産価格、バブルの崩壊、デフレへの保険、金融政策、JEM (Japanese Economic Model)

本稿は、内閣府・経済社会総合研究所「バブルの発生・崩壊からデフレ克服までの日本経済とマクロ経済政策に関する研究会」・金融政策、物価分科会の研究の一環として行っている研究から派生した研究論文である。論文作成に当たっては、飯島浩太、一上響、上田晃三、小田信之、藤木裕、門間一夫の各氏のほか、上記研究会の出席者各位から有益なコメントを頂いた。本稿に示されている意見は日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りは、全て筆者たち個人に属する。

  1. *1中央大学 E-mail: okina@tamacc.chuo-u.ac.jp
  2. *2日本銀行金融市場局 E-mail: takeshi.kimura@boj.or.jp
  3. *3日本銀行調査統計局 E-mail: naoko.hara@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
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