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優先権侵害が追い貸しと貸し渋りに及ぼす影響についての実証研究

2008年2月
山崎福寿*1
瀬下博之*2
太田智之*3
杉原茂*4

要旨

 本稿では、銀行の「貸し渋り」や「追い貸し」と呼ばれる現象が優先権侵害によるものか、それとは逆の状況であるデットオーバーハングによるものかを検証したものである。もしそれが優先権侵害によるものであれば、キャッシュフローの増加は優先債権の残高を減少させ、優先債権者から劣後債権者に生じる所得移転を減らす結果、非効率な追い貸しが発生する余地を減らすことになる。したがって、資金不足下にある非効率な企業への貸し出しとキャッシュフローの間には負の相関があるはずである。他方、デットオーバーハングによって貸し渋りが生じているのであれば、キャッシュフローが増えるとき、デットオーバーハングの状態は緩和される。このことから資金不足下にある効率的な企業では、貸し出しとキャッシュフローは正の相関を持つはずである。

 実証結果からは、80年代、90年代を通じて優先権侵害による追い貸しが生じたとする仮説と整合的な結果が得られた。他方、デットオーバーハングによる貸し渋りは、いずれの年代でも観察されなかった。むしろ、優先権侵害を含むエージェンシーコストの増大が、貸し渋りを招いたとする仮説と矛盾しない結果が得られた。

Keyword
優先権侵害、デットオーバーハング、銀行行動、追い貸し、貸し渋り

本稿の作成にあたっては、柳川範之(東京大学)、福田慎一(東京大学)および胥鵬(法政大学)の各先生方はじめコンファレンスの参加者から有益なコメントを頂いた。この場を借りて謝意を表したい。

  1. *1上智大学
  2. *2専修大学
  3. *3みずほ総合研究所
  4. *4大阪大学

日本銀行から

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