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賃料データを用いたオフィスビルの減耗率の計測

2010年1月
才田友美 *1
肥後雅博 *2

要旨

資本ストックの計測においては、資本ストックの相当部分を占める建築物ストックの減耗率について、精度の高い推計値を得ることは非常に重要である。しかし、建築物ストック、とりわけ非住宅建築物ストックについては、中古物件の売買事例が少なく、実勢を反映した中古物件価格が得られにくい。このため、減耗率の計測は困難であり、日本での計測事例は皆無である。本稿では、非住宅建築物のなかで主要な地位を占めるオフィスビルの減耗率を、オフィス賃料データ(新規募集賃料データおよびREIT保有ビルの実支払賃料データ)を用いて計測した。計測に際しては、オフィス賃料に影響を与える4つの要因——(1)建築時期によるオフィスビルの設備・立地条件の違い、(2)オフィスビルの除却、(3)オフィス賃料に含まれる土地や付属設備など建物本体とは減耗率の異なる資産の存在、(4)更新投資の影響——を考慮した。

計測結果によると、オフィスビル・建物本体の減耗率は、年4.6%〜5.6%、平均で年5.0%となった。この値はHulten and Wykoff[1981]が推計した米国・オフィスビルの減耗率(年2.47%)——「米国資本ストック統計」および「JIPデータベース」での採用値——の約2倍の大きさである。日本では、地盤が軟弱なことや耐震基準が厳しいことから、オフィスビルの寿命が米国よりも短く、減耗率が大きいと考えられる。

Keywords
オフィスビル、オフィス賃料、減耗率、資本ストック、経年劣化

本稿の作成にあたっては、一上響氏、江守志帆氏、川本卓司氏、北村冨行氏、関根敏隆氏、門間一夫氏ら日本銀行スタッフから有益なコメントを頂いた。分析に用いたデータセットの収集・作成には、森下(孝壽)綾子氏(元日本銀行調査統計局)、荒井千恵氏(日本銀行調査統計局)、山岡理恵氏(同)の多大な協力を得た。また、早稲田大学理工学部の小松幸夫教授からオフィスビルの除却に関する計測データの提供を受けた。記して感謝の意を表したい。むろん、ありうべき誤りは筆者たち個人に属する。なお、本稿の内容・意見は筆者個人に属するものであり、日本銀行および調査統計局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行金融機構局 E-mail : yumi.saita@boj.or.jp
  2. *2日本銀行調査統計局 E-mail : masahiro.higo@boj.or.jp

日本銀行から

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