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債券の市場流動性の把握と金融機関のリスク管理への応用

2011年3月
王京穂 *1

要旨

米国のサブプライム問題以降のグローバルな金融市場の混乱時には、市場流動性の低下や枯渇が証券価格を急落させ、投資家が想定外の損失を被る事態が発生した。一方で、金融市場動向の分析や金融機関のリスク管理についての理論的研究では、金融資産が高い流動性を維持していることが前提とされることが多く、その流動性の低下が価格等に与える影響は必ずしも十分には考慮されてきていない。とりわけ、日本の債券市場は、店頭市場であるうえ、個別銘柄の取引量が多くないため、取引価格、取引高、ビッド・アスク・スプレッド等のデータの入手が難しいなど、流動性の低下が価格等に与える影響の研究には難しい側面がある。

そこで、本稿では、日本証券業協会の公社債店頭売買参考統計値の最高値と最低値の差を流動性指標として利用し、日本の社債市場における流動性の計測、流動性と信用リスクを対価とするプライシング、およびリスク管理への応用を試みた。ヒストリカル・データを用いた実証分析の結果、流動性は社債価格に対して常に影響を与えていることが確認できた。また、モデルは比較的安定しており、分析結果も当時の金融経済事象と概ね整合的であり、社債スプレッドの流動性リスク対価と信用リスク対価への分解は、概念的なものにとどまらず、定量的にも可能であることが示された。また、当該流動性指標は、金融機関において、流動性が大きく変化した場合の社債価格への影響を考察するストレステストへ応用できる可能性があることも示された。

本稿は、日本銀行金融機構局からの委託研究論文である。本稿の作成においては、宮川大介氏(日本政策投資銀行)および日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。記して感謝の意を表したい。本稿の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、あり得べき誤りは筆者個人に属する。

  1. *1明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授 E-mail:ouk@kisc.meiji.ac.jp

日本銀行から

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