調査・研究

ホーム > 調査・研究 > ワーキングペーパー・日銀レビュー・日銀リサーチラボ > 日本銀行ワーキングペーパーシリーズ 2013年 > (論文)VaR・ESの計測手法に関する数値的分析

切断安定分布による資産収益率のファットテイル性のモデル化とVaR・ESの計測手法におけるモデル・リスクの数値的分析

2013年3月27日
磯貝孝*1

要旨

本稿では、資産収益率のテイルリスクをリスク指標によって把握する際の一般的な計測手法に関するモデル・リスク(損失発生の可能性を誤って評価してしまうリスク)について分析した。分析では、まず、日経平均株価の日次収益率のファットテイル性を確認し、その母分布を切断安定分布としてモデル化した。次に、推計した母分布からのランダム・サンプリングによりサイズの異なる複数のデータセットを得た。これらのデータセットについて、正規分布近似、一般化パレート分布近似、ヒストリカル法、カーネルスムージングの各手法によりVaR、ES(期待ショートフォール)を計算し、母分布から計算したVaR、ES(ベンチマーク)からの乖離やばらつきについて信頼水準別に比較・分析した。また、VaRでは捉らえきれないテイルリスクをESがどの程度捉えているかを示す尺度として、同一信頼水準におけるES/VaR比率にも注目した。

分析の結果、ファットテイルなデータに対する正規分布近似によるリスク量計測は精度が低く、特にESでリスク量の過小推計の問題が目立った。一方、その他の手法では、概ねベンチマークに近い結果が得られた。ただし、小サンプル、高信頼水準では安定的なリスク量計算が難しくなるケースがみられた。ES/VaR比率は、ヒストリカル法、カーネルスムージングについて概ねベンチマークの動き(信頼水準が上がるほど1に近づく)が再現された。

バーゼル自己資本比率規制の見直しにおけるESの新規採用の検討を契機に、リスク指標の比較分析の重要性が増している。本稿の分析を通じて、確率分布の想定、信頼水準、データサイズ、計算の容易さなどの観点に立ったリスク量の計測手法に関する多角的な比較分析の重要性が改めて確認された。

  1. *1日本銀行金融機構局 E-mail : takashi.isogai@boj.or.jp

日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局(post.prd8@boj.or.jp)までご相談下さい。転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。