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企業向けサービス価格指数(2015年基準)の概要

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2022年6月
日本銀行調査統計局

作成部署、作成周期、公表時期等

  • 作成部署調査統計局物価統計課
  • 作成周期月次(ただし、参考指数「卸売サービス価格指数」は、四半期)
  • 公表時期原則として、月次指数は翌月の第18営業日(四半期指数は四半期最終月の翌々月<例えば4-6月速報であれば、8月>の第18営業日)に公表。
  • 公表方法インターネット・ホームページ
  • データ始期1985年1月

1.調査対象

企業向けサービス価格指数は、企業間で取引されるサービスを対象としている。

調査価格数:4,758(参考指数を含むベース、2019年3月時点)

企業向けサービス価格指数は、グローバル・スタンダードである「サービスの生産者物価指数」に概ね相当する。ただし、個人向けに提供されるサービスは対象に含めていない。

2.統計内容

(1) 概要、目的・機能

企業向けサービス価格指数は、企業間で取引されるサービスの価格変動を測定するものである。指数は、品質を固定した商品(サービス)の価格を継続的に調査し、基準時(2015年)の価格を100とすることにより作成している。

主な目的は、企業間で取引されるサービスに関する価格の集約を通じて、サービスの需給動向を把握し、景気動向ひいては金融政策を判断するための材料(景気動向を測る経済指標)を提供することにある。

また、名目金額から価格要因を除去して実質値を算出する際のデフレーターとしての機能のほか、企業間での商取引における値決めの参考指標としての機能も有している。

(2) 対象範囲

企業向けサービス価格指数は、企業間で取引されるサービスを対象とし、原則、サービスの提供者(生産者)段階における価格(生産者価格)を調査している。個人向けサービスは対象外としているが、主として個人向けであっても企業が同様に需要するサービス(郵便、電話など)は、調査対象としている。

一方、継続的な価格調査が困難で、かつ採用品目の中に、属性の類似するサービスや価格動向を近似しうるサービスがないものについては、対象外としている。2015年基準における主な対象外のサービスには、FISIM(間接的に計測される金融仲介サービス)、企業内研究開発、小売などがある。

(3) 指数体系、分類編成、ウエイト

企業向けサービス価格指数の指数体系は、基本分類指数と参考指数から構成される。

(イ)基本分類指数

国内のサービス提供者(生産者)と国内企業との間で取引されるサービス(国内取引サービス)を対象とする指数。2015年基準は、総平均、7大類別、24類別、60小類別、146品目から構成。指数は、消費税を含むベースで作成しており、契約通貨が外貨建ての調査価格は円換算して集計している。また、参考系列として、「総平均(除く国際運輸)」のほか、外貨建て価格を円換算せずに集計した「契約通貨ベース」を作成している。

ウエイトは、国内取引に該当する企業間取引額から算出している。基礎データとして、経済産業省『延長産業連関表』(2015年)におけるサービス部門の企業間取引額(中間需要部門+国内総固定資本形成+家計外消費支出)から、輸入取引該当額を控除した取引額を利用している。一部では、他の公的統計(総務省・経済産業省『経済センサス‐活動調査』等)や、業界統計等も利用している。

(ロ)参考指数

卸売サービス価格指数

商品の仕入販売活動を通じて卸売業者により提供されるサービス(卸売サービス)を対象とする指数。指数は、消費税を含むベースで作成している。卸売業全体の動向を示す「卸売」の指数に加え、その内訳として5項目の指数を作成している。また、卸売を含めた企業向けサービス全体の価格動向について把握するため、「卸売を含む総平均」の指数も作成している。ウエイトは、国内取引に該当する卸売マージン額から算定している。

なお、公表頻度は四半期としている。

基本分類構成項目

基本分類指数を構成する品目の内訳を指数化したもの。小類別「リース」(ただし、料率型調査を採用していない品目「自動車リース」を除く)における料率の動向を集計した「リース料率」指数を作成しているほか、品目「清掃」「設備管理」「警備(除機械警備)」について、「民間向け」と「官公庁向け」の内訳を示す指数を作成している。

輸出・輸入サービス価格指数

企業間で取引されるサービスのうち、輸出取引、輸入取引を対象とする指数。輸出のうち「知的財産ライセンス」については、内訳として、「知的財産ライセンス(輸送用機器)」と「知的財産ライセンス(除輸送用機器)」の2項目を作成している。

消費税を除く企業向けサービス価格指数

基本分類指数について、消費税を除いたベースで作成した指数。

消費税を除く卸売サービス価格指数

卸売サービス価格指数について、消費税を除いたベースで作成した指数。

(4) 指数の基準時およびウエイト算定年次

指数の基準時およびウエイト算定年次は2015年。

(5) 採用品目

採用品目の選定手順は次のとおりである。まず、基準年における企業間取引額が、原則として5,000億円以上のサービスを「小類別」として採用する。次に、各小類別を構成する個別のサービスのうち、企業間取引額の推計が可能であり、かつ、品質一定の下で継続的な価格調査が可能なものを、採用品目として選定している。

(6) 調査価格

調査対象・方法

価格調査は、原則として、サービスの提供者を対象に実施しているが、一部では、サービスの需要者から調査している。また、一部の品目では、指数精度の向上や報告者負担の軽減を図る観点から、他機関統計や他機関によるデータベースから得られるデータ(外部データ)を採用している。

調査先への価格調査は、所定の調査票により、郵送・オンラインで実施している。調査は、速報に間に合うよう実施しているが、速報に間に合わない場合には、その翌月以降に価格データを反映している。

調査事項

品質を一定としたサービスの価格を継続的に調査するため、調査先からは、サービスの価格に加え、サービスの内容のほか、取引先(販売先)や取引条件など価格に影響を及ぼしうる属性条件も併せて聴取している。調査先から聴取する価格と属性条件をまとめて「調査価格」と呼んでいる。

調査価格の選定

同一品目内においても、個別のサービスの価格動向は、サービスの種類や販売先などの属性条件によって異なりうる。指数精度を確保するため、調査価格の選定は、この点を考慮して実施している。すなわち、価格動向に違いをもたらす属性条件を特定した上で、それぞれの属性条件について、品目内の調査価格の構成比率が、市場における実際のサービスの構成比率を反映したものになるように努めている。

調査価格の構成は、基準改定時に加え、基準改定以外の時期においても、適宜見直している。

価格の成立時点、契約通貨

調査価格の属性条件のうち、価格の成立時点については、生産者段階におけるサービスの提供時点に可能な限り統一している。その比率は、ウエイトベースで95%を超えている(2019年3月時点)。

契約通貨は、円建て契約の調査価格については円建て価格を、外貨建て契約の調査価格については外貨建て価格を調査している。円ベース指数の作成のために外貨建て価格を円換算する際は、銀行の対顧客電信直物相場(月中平均、仲値)を用いている。

調査価格の種類

品質を固定したサービスの価格を調査するため、原則として、価格に影響を及ぼす属性条件を固定した実際の取引価格を継続的に調査している(銘柄指定調査)。ただし、価格設定が多様化しているサービスや、サービス内容の個別性が強いサービス(オーダーメード・サービス)など、銘柄指定調査の実施が難しい場合は、取引実態に応じて、他の価格調査方法を採用している。

調査価格の種類
調査価格の種類 内容
銘柄指定調査
  • 品質を構成する属性条件を必要な範囲で特定した実際の取引価格を調査。
平均価格調査
  • 品質一定の条件を損なわない範囲で、類似のサービスや、異なる取引条件の取引をグルーピングした平均価格を調査。
モデル価格調査 <仮想的な取引を想定したモデル価格>
  • 仮想的な取引を想定し、その条件下(サービス内容、サービス提供先、取引条件等)でサービスが提供された場合の価格を調査。
<平均改定率を利用したモデル価格>
  • 全取引の料金改定率を集計した「平均改定率」を調査。
料率型調査
  • 名目取引金額等に対するサービス料率を調査し、それに対応する適当な価格指数を乗じることで価格指数を作成。
労働時間当たり
単価調査
(人月単価)
  • サービスの品質が労働投入量(作業人月)に比例するとみなしうるサービスについて、労働時間(作業人月)当たりの単価を調査。
マージン調査
  • 販売価格と仕入価格の差から、間接的にマージン価格を調査。
建値調査
  • サービスの内容を特定し、実際の取引において目安とされる標準価格(建値、仕切価格、料金表価格等)を調査。

欠測価格の取扱い

調査対象月(調査対象期)において取引がない場合や、指数計算時点までに調査先から回答が得られない場合は、当該月(当該期)は「欠測価格」となる。「欠測価格」は、原則として前月(前期)の価格で補完する。このほか、調査価格の特性に応じて、同一品目内の他の調査価格の前月比(前期比)や欠測価格となった調査価格の前月(前期)の前年比を用いて補完する場合がある。このほか、事後的に価格が確定するサービスにおいて「見込み価格」を利用できる場合は、同価格を用いて「欠測価格」を補完する。

「欠測価格」について、事後的に正式な価格を入手できた場合は、補完した価格を置き換えている。

(7) 調査価格の変更および品質調整方法

調査価格の変更

価格調査においては、消費行動の変化や技術革新に伴う新しいサービスの登場等により、これまで調査していたサービスの提供中止や取引減少等に直面することがある。こうした場合には、調査先や調査対象サービス、取引先・取引条件等を変更する「調査価格の変更」を行う。

調査価格の変更時には、次項に掲げる品質調整方法を用いて、新旧サービスの「品質変化による価格変動分」を除いた「純粋な価格変動分」のみを物価指数に反映させるよう努めている。

  • 新旧サービスの価格差は、品質変化による価格変動分と純粋な価格変動分の和であることを示す数式

ただし、「品質変化による価格変動分」の把握が困難な場合は、やむを得ず、指数が横ばいとなるように接続している。

品質調整方法

調査価格の変更時に適用する主な品質調整方法としては、直接比較法、単価比較法、コスト評価法、オーバーラップ法、ヘドニック法の5種類がある。

品質調整方法
名称 内容
直接比較法 新旧サービスの品質差を無視しうるものと判断し、新旧サービスの表面価格差をすべて「純粋な価格変動分」として処理する方法。
単価比較法 新旧サービスは、数量以外には品質に違いがないと判断できる場合において、同一数量で比較した新旧サービスの価格差を「純粋な価格変動分」として処理する方法。
コスト評価法 調査先からヒアリングした新旧サービスの品質変化に要したコスト相当分を「品質変化による価格変動分」とみなし、新旧サービスの価格差の残りの部分を「純粋な価格変動分」として処理する方法。
オーバーラップ法 新旧サービスが同一条件の下で、一定期間、並行して提供されており、その間、新旧サービスの価格比が安定している場合、新旧サービスの価格差を「品質変化による価格変動分」とみなして処理する方法。
ヘドニック法 新旧サービス間の価格差の一部が、これらのサービスの有する共通の諸特性によって測られる品質差に起因していると考えられる場合、新旧サービスの諸特性の変化から「品質変化による価格変動分」を回帰方程式により定量的に推定し、残りの部分を「純粋な価格変動分」として処理する方法。

(8) 指数算式・計算方法

各種サービスの価格を指数化し、その価格指数を基準時(2015年)に固定した金額ウエイトにより加重算術平均する「固定基準ラスパイレス指数算式」を用いている。

  • 固定基準ラスパイレス指数を算出するための数式

品目指数の算出方法

調査価格ごとに、当月の報告価格(「比較時価格」)をそれぞれの「基準時価格」(基準年<2015年>平均=100.0に相当する価格)で除して個別の調査価格指数を算出する。この調査価格指数に各々の調査価格ウエイトを乗じ(調査価格の加重指数)、当該品目に属する全調査価格の加重指数の合計(品目加重指数)を当該品目のウエイトで除することにより、品目指数を算出している。

上位分類指数の算出方法

総平均、大類別、類別、小類別といった上位分類についても、品目指数と同様の計算方法により、当該分類に属する全調査価格の加重指数の合計を当該分類のウエイトで除することにより、指数を算出している。

(9) 指数の公表

公表スケジュール

原則として、月次指数は翌月第18営業日、四半期指数(参考指数「卸売サービス価格指数」)は四半期の最終月の翌々月の第18営業日に速報を公表している(ただし、月間の営業日数が少ない場合などには公表日を若干繰り上げる)。公表時間は、午前8時50分としている。

指数を非公表とする品目

品目指数の公表にあたっては、(1)品目全体の取引が縮小し、継続的な価格調査が困難と判断される場合や、(2)個社情報の秘匿が十分行えない状況となり、かつ、調査先の了解が得られない場合等において、指数を非公表としている。

指数を非公表とする品目については、(1)のケースでは、他の品目指数により計算した上位分類指数で、非公表とする品目の指数を補完する。(2)のケースでは、当該品目指数を総平均指数など上位分類指数の計算過程には組み込みつつも、原則として同じ小類別に属している他の1品目の指数と併せて非公表とする(注)

  • (注)1品目ではなく、2品目を非公表とするのは、非公表品目が属している上位分類の小類別の指数と、同小類別に属している他のすべての品目の指数から、非公表品目の指数が逆算できないようにするため。

指数の訂正

月次指数は速報公表の3か月後、四半期指数は速報公表の翌期までに利用可能となった情報を順次反映した訂正を、各月(各期)の公表時に行っている。定期遡及訂正は、年1回(月次指数:9月<8月速報公表時>、四半期指数:11月<7-9月速報公表時>)、対象期間を原則前年1月以降として実施している。

なお、計数の訂正により総平均指数に大きな影響が及ぶなど、速やかな訂正が必要と判断される場合には、定期遡及訂正とは別に、遡及訂正を実施する。

(10) 接続指数

接続指数は、基本分類指数と、参考指数「消費税を除く企業向けサービス価格指数」のうち、「総平均」「総平均(除く国際運輸)」について、作成している。