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三層構造のもとでの金融調節運営―準備需要曲線モデル*1を使った解説―

2022年3月30日
日本銀行金融市場局
荒尾拓人*2

要旨

わが国の短期金融市場では、日本銀行当座預金の三層構造を前提としたマイナス金利での取引が浸透している。本稿では、三層構造のもとでの短期金利形成のメカニズムや金融調節の考え方を、シンプルな準備需要曲線モデルを用いて解説する。

当座預金を三層に分割し、それぞれに異なる金利を適用する三層構造においては、短期金融市場での取引前の当座預金残高が三層のうち、いずれの層まで積み上がっているかの違いから、各金融機関は裁定目的の短期資金取引を行うインセンティブを有している。日本銀行は、この裁定取引が完全に行われたと仮定した場合の「完全裁定後の政策金利残高」が一定程度となるようにコントロールすることで、長短金利操作と整合的なマイナス金利を実現している。

準備需要曲線の形状は、先行きの当座預金残高の振れにかかる不確実性を背景に、各層の境界まわりで右下がりとなっていると考えられる。この準備需要曲線の形状や位置は、当座預金変動の不確実性の大きさや新型コロナ対応特別オペ等、各種貸出制度の利用状況等に応じて変化する。また、市場の摩擦によって裁定取引が完全に行われない場合も、短期金利が変化する。日本銀行は、こうした要素を踏まえた上で、基準比率設定やオペレーション等を通じて、準備需要曲線や準備供給曲線を変動させることにより、短期金利に影響を及ぼしているものと解釈できる。

  • 本稿の作成に当たり、大石凌平氏、小枝淳子氏、武田憲久氏、玉生揚一郎氏、中嶋基晴氏、長野哲平氏、中村俊文氏、和田真一氏および日本銀行金融市場局員を始めとする日本銀行スタッフから有益な助言やコメントを頂いた。ただし、残された誤りは全て筆者に帰する。なお、本稿の内容と意見は筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
  1. *1実際の短期金融市場における需給の対象となるのは、日本銀行当座預金であるが、モデルを使って説明する際は、学術論文等で一般に使用されることが多い「準備需要曲線」「準備供給曲線」の名称を使うこととする。
  2. *2日本銀行金融市場局 E-mail : takuto.arao@boj.or.jp

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融市場局までご相談ください。
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照会先

金融市場局市場調節課市場調節グループ

Tel : 03-3277-1234