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分散型台帳技術を活用した決済の改善の取り組み―各国のホールセール型CBDCの実証実験を中心に―

2022年11月9日
決済機構局 杉江次郎、鳩貝淳一郎

要旨

近年、各国の中央銀行によって、分散型台帳技術(DLT)を用いた基盤を構築し、ホールセール型CBDCを流通させる実証実験が行われている。この背景には、既存決済システムの高度化の機運の高まりや、民間主体による新しい決済サービスの試みがある。実証実験を細かくみると、資金決済から証券決済、クロスボーダー決済へという、実験の対象領域の広がりが確認できる。これらの実験では、ホールセール型CBDCの導入により長い決済チェーンの短縮やコストの低下等の改善が進む可能性がある一方、複数法域をまたぐ流通基盤を構築する場合のルールの調整や、導入した場合のマクロ経済への影響の精査等が必要である旨が指摘されている。他方、DLT基盤の構築やホールセール型CBDCの導入とは異なるアプローチとして、既存の決済システムの更改や活用により課題解決に取り組む動きもみられる。今後も、これらの動きを注視し、内外の関係者と密接に連携していくことが重要である。

日本銀行から

日銀レビュー・シリーズは、最近の金融経済の話題を、金融経済に関心を有する幅広い読者層を対象として、平易かつ簡潔に解説するために、日本銀行が編集・発行しているものです。ただし、レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。
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