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イールドカーブ・コントロールに関する特定期間選好仮説にもとづく考察

English

2022年8月1日
上野陽一*1
小枝淳子*2

要旨

本稿では、Vayanos and Vila(2021)による標準的な特定期間選好仮説にもとづく金利の期間構造モデルを、イールドカーブ・コントロール(YCC)が分析可能となるよう拡張する。具体的には、中央銀行が特定年限の国債を選好し、その年限の国債需要の価格弾力性が目標年限の利回りに依存することをモデルに組み込む。本モデルでは、中央銀行が実施するYCCの厳格度合いは、その価格弾力性によって捉えられる。本モデルをわが国にカリブレートした分析にもとづくと、十分に厳格なYCCは、国債買入れが限定的でも、利回り水準を目標範囲内に維持できるほか、短期金利の変化が国債利回りに与える影響を軽減させる。YCCが実施されていない場合には、名目金利の実効下限制約の影響が弱まるのに伴い、国債需給の国債利回りへの影響はその制約による影響が小さい場合の通常の水準に回帰していく。

JEL 分類番号
E43, E52, E58, G12

キーワード
金融政策、イールドカーブ・コントロール、特定期間選好仮説

本稿の作成にあたり、植田和男氏および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。ただし、本稿のありうべき誤りは全て筆者ら個人に属する。なお、本稿に示される内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行及び企画局の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行企画局(現・総務人事局)
  2. *2早稲田大学 E-mail : jkoeda@waseda.jp

日本銀行から

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