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【総合職】池田 周一郎

【総合職】池田 周一郎

調査統計局 経済調査課 景気動向グループ 企画役補佐

2014年4月  発券局入行 2015年1月  高松支店 2016年4月  金融機構局 2019年8月  米国カリフォルニア大学大学院留学 2021年7月  調査統計局

非線形的なインフレをどう捉えるか

今の景気はどうですか? 先行きはどうなりますか?

この問いに答えるのが、景気動向グループです。金融政策運営には、景気の現状把握に加え、先行きの予測が欠かせません。「物価の安定」のための重要な責務に、我々は、マクロ経済分析という武器で臨んでいます。

当グループでは、個人消費・設備投資など、経済のコンポーネント毎にエコノミストが割り当てられています。米国での留学を終え、物価担当として着任した私を待っていたのは、海外発のコストプッシュの波が押し寄せるもと、「物価はどこまで上がるのか」を解き明かすために奔走する日々でした。経済に強いショックが当たる状況では、マクロ経済変数同士の過去平均的な関係に依拠する従来のアプローチは役に立ちません。こうした中で鍵となったのは、企業レベルのマイクロ・データです。日銀短観のマイクロ・データ分析から、数十年ぶりに価格改定に動く企業の存在や、競合他社の値上げに応じて自社も値上げを行う動きなどが明らかになりました。急激なインフレの背後にある企業の価格設定スタンスの非線形的な変化を捉えたことは、その後の物価予測に大変役立ちました。

マクロ経済のビッグ・ピクチャーを描く

現在は、バランス担当というポジションに移り、経済・物価の分析や予測を取りまとめる仕事をしています。コンポーネント担当による判断や予測を単に積み上げるだけでは、経済全体の整合性は担保されません。バランス担当は、横断的なトピックや要素間の相互作用について分析・議論を進め、マクロ経済の全体像を形成する役割を担っています。

これまで取り組んだトピックの1つに、人手不足問題があります。感染症の影響が和らぎ、経済再開が始まると、企業から人手不足の声が多く聞かれるようになりました。人手不足は、雇用・賃金動向はもちろん、労働力をロボットやソフトウェアで代替するという行動に繋がれば、設備投資にも影響を与える可能性があります。そこで、各コンポーネント担当とともに分析を行ったところ、「慢性的な人手不足は省人化投資を誘発する」ことを示唆する結果が得られ、皆で大きな達成感を共有しました。想定通りに人手不足感の強い業種が設備投資を積極化させている現状を見ると、計量分析に裏付けされた予測の強力さを再確認します。

偽札から国際金融まで――セントラル・バンキングの幅広さ

景気動向グループでのマクロ経済分析は、経済理論・分析手法など、高度な専門性を要求されるものです。大学院でバーチャル・リアリティを研究し、経済学に明るくなかった私がこうした仕事に取り組めているのは、これまでの業務経験のおかげです。

発券局で偽札に関する事務、高松支店で産業調査に従事した後、3年目から、金融機構局で銀行間の競争激化に関する計量分析やマクロ経済モデルの開発を担当しました。この部署で先輩エコノミストの方々から教わったスキルがなければ、今の業務も歯が立たなかったでしょう。また、銀行の海外ビジネスの動向をモニターする業務も経験しました。銀行との対話を通じて実態に迫るという、計量分析にはない面白さを味わいながら、国際金融に関する知識を身につけると同時に、海外当局との会議などを通じて、セントラル・バンカーとしての自覚を強くしました。

こうした幅広い業務はいずれも、「物価の安定」「金融システムの安定」に直結した、中央銀行ならではの醍醐味に溢れたものです。マクロ経済・金融を業務の対象とするダイナミックさに惹かれて、畑違いながら日本銀行の門を叩いたときの私の決断は間違っていなかったと今でも思います。

今後も、多様な業務を擁する日本銀行で様々なフィールドに挑戦していき、セントラル・バンキングに貢献していきたいと考えています。

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