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【総合職】長田 充弘
【総合職】長田 充弘
米国連邦準備制度理事会(FRB) 金融安定局 シニアエコノミックプロジェクトマネージャー (現 企画局 政策企画課 企画役)
2005年4月 発券局入行
2005年7月 下関支店
2006年9月 調査統計局
2010年7月 米国カリフォルニア大学デービス校大学院留学
2012年8月 国際局
2015年6月 調査統計局
2018年7月 金融機構局
2021年2月 米国連邦準備制度理事会(FRB)出向
経済学×データの力で物価・金融システムの安定に貢献する
私は現在、米国連邦準備制度理事会(FRB)に出向し、金融システムに関するリサーチに携わっています。FRBも日本銀行と同じ中央銀行ですので、組織に違いはあっても、金融政策や金融システム安定(プルーデンス政策)に資するリサーチへの取り組み方には本質的な違いがないことを実感しています。
FRBでは、政策に直結する問題意識に対応する分析を「ポリシーワーク」と呼び、アカデミア(経済学界)に貢献することを通じて専門性を高める学術研究と明確に区別しています。学術研究にも業務上高い価値を置いている点は、経済学博士号を有するエコノミストが400人以上在籍しているFRBならではと言えますが、ポリシーワークはどの中央銀行にも共通して根幹となる業務です。ポリシーワークでは、政策決定に必要な情報・データを揃え、経済学の知見に基づき結論を導くことが求められます。それを、厳しい時間制約の中でいかに仲間と協力し合いながら遂行するか、いかに対外的にわかりやすい説明に落とし込むかが問われます。過去日本銀行で培った知識や働き方を活かすことができ、エキサイティングな日々を送っています。
様々な手段を駆使して経済の実態に迫る
私は、調査統計局在籍時には日本経済の、国際局在籍時には海外経済(主に米国、中国)の分析に従事していました。経済情勢の現状評価を行い、それを踏まえた先行き3年程度の経済見通しを作成し、それらを金融政策決定会合に報告する仕事です。これらは政策決定のための重要なインプットとして利用されることから、やりがいがあると同時に、細かい記述まで正確性が求められ、常に緊張感をもって臨んていました。
経済予測の正確性を高めるためには、最新の経済データを丹念に分析することが重要です。例えば、貿易統計で、先月の輸出が大きく減少していたことが判明した場合、これが中国の春節休暇の時期であれば翌月には元の水準にもどることが予想できます。一方、しばらく前から世界経済が変調をきたし最終需要の減少が見込まれていれば、その後の輸出のリバウンド度合いが小さなものにとどまる可能性があります。このように、データの変動が一時的なのか持続的なのか、また景気循環的なのか経済構造の変化によるものなのか、計量経済学のツールを駆使しつつ分析します。もちろん、世の中の仕組みはそう単純ではありませんので、ときには経済理論を用いて演繹的に結論を導いたり、ときには企業ヒアリングを通じて洞察を得たり、仲間との侃侃諤諤の議論を通じて、様々な視点から経済実態を解明していきます。
調査統計局では、物価統計を作る仕事にも従事しました。物価統計では、財・サービス1単位当たりの価格を継続的に調べますが、例えば、「1単位のサービスとは何か」を定義すること自体が難しい作業であり、それを継続調査可能な形まで落とし込むことには、経済分析とは違った醍醐味があります。最近はビッグデータを代替的に用いて分析や統計作成を行うケースも増えていますが、そうした場合でも、意味のある情報を抽出しつづけるには高度な専門性と不断の努力が必要です。質の高い統計・データの作成は、経済分析とは別の角度から経済実態に迫る仕事とも言えます。
あらゆる経済事象が関係する中央銀行責務のもとで
日本銀行は、日本銀行法に基づき物価・金融システムの安定を目的として政策を行っていますが、実際に直面する課題は社会の要請にも応じて移り変わります。例えば、金融機構局や現在の出向先部署で作成に携わった「金融システムのリスクや脆弱性を定期的に評価する報告書」は、その根幹にある「マクロプルーデンス」という考え方が2000年代後半の世界金融危機後に定着するなど、比較的歴史の浅いものです。また、過去の部署では、世の中の問題意識の高まりを受けて、日本の所得格差の状況を整理したり、東京オリンピック開催の経済効果について考察したこともあります。最近取り組んでいる気候変動問題についても、社会的な関心が高まっていますが、様々な経路を通じて経済・物価・金融システムに影響をもたらしうる点で、中央銀行の責務と関係します。
このように中央銀行は様々な分析課題に直面していますが、いずれの場合も、質の高いデータを集め、経済学・統計学等の知見をもとにタイムリーな分析を行うという基本は変わりません。私が入行を決意したのは、「大学で学んだ経済学を実際に活かせる数少ない仕事ではないか」との思いからでしたが、想像していた以上に関係業務に携わることができ、一緒に働く上司や仲間から多くのことを学びました。今後は、これまで培った知見をどのように政策に活かしていくかという観点も重視しつつ、研鑽を続けていきたいと考えています。
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