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【総合職】落 香織

【総合職】落 香織

調査統計局 経済調査課 景気動向グループ

2016年4月  調査統計局入行 2017年1月  金沢支店 2018年4月  金融機構局 2020年8月  米国ハーバード大学大学院留学 2022年6月  企画局 2024年6月  調査統計局

想像以上に広い中央銀行の世界

学部生のころは、理系で入学し、学びを深める中で経済学に興味を持ったことから、理系と文系の融合のような領域である農業経済学を専攻として選びました。就職活動時には、より広範な視点から社会の仕組みを捉え、その発展に貢献したいと思い、日本銀行を志望しました。入行前の日本銀行に対する印象は、日本唯一の中央銀行であり、日本の物価の安定・金融システムの安定を目的とする、国内で閉じた組織、というものでした。しかし、入行してからその認識が必ずしも正しくなかったことに気付かされます。どんな会社でも機関でも同業他社の動向をフォローするのは大切ですが、日本銀行の同業他社は、国内の機関ではなく、海外の中央銀行です。必然的に、日ごろの仕事でも彼らと関わる機会が多くなりますし、海外の動向をレビューし、自らの仕事に活かすことも必要になります。広範な視点から社会を捉えたいという動機で入行しましたが、その世界は想定以上の広さでした。

経済・物価をどうみるか

私は現在、調査統計局経済調査課の景気動向グループでリサーチ業務に携わっています。業務のイメージがつかないかもしれませんので、現在、私が調査統計局で担当している物価分析を例にご紹介します。中央銀行の目的の一つに物価の安定があります。その達成のために金融政策を実施していますが、政策効果が経済・物価に波及するまでには相応のラグがありますので、常に先行きの経済を見据えながら今の政策を決める必要があります。こうしたもとで、調査担当に求められるのは、定量的・定性的なデータを分析し、経済の先行きの見通しを考えることです。

分析作業は、実績のデータを丹念に観察することから始まります。物価を品目別に細かくみたときに、たとえば特定の財やサービスで大きな変動があった場合には、ヒアリング情報や業界団体によるレポートなどのミクロな情報を参照し、なぜ価格が変動したか、他品目への波及はみられるか、といった観点から情報を集めていきます。こうしたミクロな情報は、統計が公表されるまでの足もとの動向の把握や、統計間で齟齬があった時の解釈にも役立ちますので、分析作業に不可欠な作業です。一方、特定の品目に限らず、多くの財やサービスで価格が上昇している場合には、資源価格や景気循環などのマクロ的な要素が物価の変動に影響を与えています。この場合、それらの押し上げ圧力を直接的には観察することができませんので、計量モデルなどを用いた分析を行うことになります。学術書や先行研究を参照しつつ、今の局面や仮説の検証に最も適切なモデルを選び、波及メカニズムの点検や推計を行います。収集した情報や推計結果を手掛かりに、経済の構造を捉え、そこから示唆される先行きの見通しを作成することで、日本銀行内外の議論に資する情報を提供しています。

金融経済を探求するチームの一員として

モデルを通して経済を理解しようとすることは、地図を通して世界を把握することによく例えられます。同じデータでも、分析者の知識や経験次第で、見える景色が変わります。日本銀行の調査部署では、日々、分析担当者が自分なりの地図を持ち寄って意見を交わし、経済の全容を把握しようと努めています。特に現在の日本経済のように、物価や賃金の趨勢が変化しつつある局面では、理論的な見地からも活発な議論が交わされており、日々刺激となっています。

リサーチ業務に従事するなかでやりがいを感じる瞬間の一つに、身に着けてきたことが有機的につながって、データに対するアプローチが多様に拡がっていくことを実感できたとき、が挙げられます。日本銀行にはたくさんの調査部署があります。ここでは物価を例にお話ししましたが、分析対象は実体経済に限らず、金融システムだったり、海外経済や金融市場だったりします。業務の進め方はそう変わりませんが、様々な部署を回る中で、いろいろなデータに触れることができますし、各部署で同じチームとして働く同僚や上司からたくさんのことを学べます。国内外のアカデミアの先生方や、海外の中央銀行や国際機関のリサーチャーの方々から、最新の研究内容をお話いただく機会も数多くあります。さらに、行内の留学制度を用いて海外大学院で体系的に経済学を学びなおす機会も得られます。刺激を受けながら学び続けたい人に、とても良い環境が揃っています。

みなさんも金融経済を探求するチームに加わりませんか。

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