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【特定職(業務分野特定タイプ)】辻口 康宏

【特定職(業務分野特定タイプ)】辻口 康宏

金融機構局 考査運営課長

1994年4月  金沢支店入行 発券課 業務課 営業課 1999年9月  考査局 2004年4月  名古屋支店 2006年7月  横浜支店 2009年2月  金融機構局 2013年6月  金沢支店 2015年6月  金融機構局

考査の重責

日本銀行は、金融システムの安定を確保するため、金融機関に立ち入って経営状態を把握する考査を行っています。私はこの考査業務に通算で約14年間携わっています。この間、最も強く印象に残っているのは、わが国がバブル崩壊後の不良債権問題で大きく揺れた2000年前後の考査です。当時は、経営状態が大きく悪化していた金融機関も少なくなく、経営の存続が危ぶまれていた金融機関の考査では、破綻した場合の金融システムへの影響や取引先企業への波及等についても注意深く調査し、万全を期していました。他方で、当時の考査でお話を伺った金融機関の職員の多くは、経営悪化の責任が殆どない、真面目に働いていた方々であり、当然その方々にはご家族もいらっしゃいました。金融機関が破綻すると、そこに勤める職員やその家族、取引先企業等にも影響が及ぶため、当時は日本銀行の一員として金融システムの安定に貢献したいという気持ちと、生活基盤が脅かされることになる金融機関職員等を思う気持ちとの間で、葛藤しながら考査を行っていた記憶が今も鮮明に残っています。

2023年春、米欧金融機関が相次いで破綻(救済合併含む)する事態が発生しました。「歴史は繰り返さないが韻を踏む」(全く同じではないが、似たようなことは起きる)という言葉がありますが、再びわが国で金融機関の破綻が相次ぎ、多くの方々の生活に悪影響を及ぼすことがないよう、考査で確り金融機関の経営状態を把握していきたいと思っています。

重要な支店の機能

私はこれまでに2つの支店で課長を経験しています。支店は日本銀行の業務を遂行する現場であるとともに、日本銀行が政策判断する際の材料となる各地域の状況を報告する役目を負っています。

ある支店では、過去の問題発覚等で経営が混乱し、1年間で預金が▲2割近く流出した金融機関がありました。本店のみでは、全国の金融機関全てを詳細にモニタリングすることはできませんので、当該金融機関については、支店が監督当局である地元の財務局等と密接に連携しながら、経営状態を把握し、日次で預金の流出状況をモニタリングしていました。幸いにも当該金融機関は破綻することなく、後日、別の金融機関と経営統合しました。そこに至るまでの関係者の苦労は相当なものでしたが、モニタリングや財務局を含む関係機関との調整の面で支店が果たした役割は非常に大きく、地域の金融システム安定に支店が大きく貢献した事例の1つです。

また、支店では、足元の経済状況や先行きの見通し等について、地域の企業経営者の生の声をお聴きして本店に報告しています。ご存じのとおり、実際に経済を動かしているのは企業や家計です。経済指標を読み解くには、企業など経済活動主体の生の声を集め、それを体系的に理解する必要があります。全国各地にある32の支店は、この重要な機能の一翼を担っています。

多士済々な組織

日本銀行の職員数は約4,600人です。メガバンク等日本を代表する大企業と比べると小さな組織ですが、中央銀行業務という特殊な仕事を担っていることもあり、様々なスペシャリストが在籍しています。考査で言えば、金融機関の会計実務やバーゼル等の国際金融規制、様々なリスク管理の手法等に詳しい方々のほか、それこそ破綻処理実務を担っていた人もいます。日本銀行には、理論や知識に詳しいだけでなく、それを実務に落とし込み、実践していく力を持った職員が多数在籍しており、この実務対応力の高さが中央銀行業務を支えています。

現在、Fintechの急速な広がりやサイバー攻撃の増加など、金融機関および中央銀行を取り巻く環境は大きく変化しています。1人1人では出来ることは限られますが、優秀な職場の仲間達と力を合わせて、今後も中央銀行業務を安定的に遂行していきたいと思います。

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