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総裁記者会見要旨 (4月13日)

1998年 4月14日
日本銀行

—— 平成10年 4月13日(月)
午後 3時から約50分間

【問】

先週末に発表になった金融機関との交際に関する内部調査および行内処分の結果についての総裁の受止め方如何。

【答】

皆さん十分経緯はご承知だと思うが、前営業局証券課長が逮捕されたことに端を発して、松下前総裁、福井前副総裁が引責辞任をし、それに先立って内部調査というのが始まって、2か月近くかかって主に調査役以上600人に対して、過去5年間における取引先との交際の内容、頻度、それからそれが適切なものであったか正当なものであったかというようなことを調べてもらった。自主申告ということに基づいてヒアリングをして、詳細な調査が必要だというものについては対象者を絞り込んで更なる調査を実施した。それには外部の法律の専門家も入ったし、必要に応じて取引先の金融機関へも照会して、そこから書面の回答も頂いている。こういう調査を経て、——調査役以上と申し上げたが、一部に調査役以下の者も入っているが——結果が大体揃ったのと、先般の吉澤前課長の起訴とがほぼ同じ時期に決まったので、私どもとしては4月1日から新法が施行された訳であるし、いつまでもこの問題で行内の皆が暗い気持ちで過ごすのは良くないという感じがしていたので、なるべく早く処分の決定をしたいという気持ちを持っていて、その方向で進めてもらった結果、(先週の)金曜日に98人の処分が決まった訳である。そのうち5名は給与返上・譴責と、氏名も公表した訳である。

そういう結果を通じて感じたことは、やはり意外に、5年を通じての数字だから、かなり長い期間で回数も多くなるというのは自然のことだったのかもしれないけれども、私の感じとしては自己規律という点で段々甘くなってきているというか、いささか徹底を欠いたことがあったのではなかろうかという感じがする。

そういうことでかなり広範な処分になった訳であるが、これからは法律も変わったし、ビッグ・バンで金融のシステムも変わっていく訳で、マーケットとの直接の対話をこれからどうやっていくのか、あるいは金融機関との接点の持ち方をどういうふうなやり方でやっていくのか、日本銀行の場合は取引関係であるから話合い、あるいは相手をよく知っていなくてはならないこともある訳で、新しい接触のスタイルを構築していく必要があるというふうに思っている。

これらがこれからの一つの課題であると同時に、これから今後一人一人がもう一度原点に帰って中央銀行のあるべき姿というものを自分自身がしっかりと持って、公正にして、外から誰が見ても「さすが日本銀行だ」というふうに言われるような業務のやり方、あるいは生活の態度というものが必要だということを、この機会にもう一度話をした。

また私どもも、正・副総裁等がこれからの決意を表明する意味で役員俸給を2割カットして返上をするということをした。「服務準則」あるいは「日本銀行員の心得」というものもできているし、これからの新しい話合いの場所を考えていくについても「コンプライアンス委員会」といったようなものもできてきた訳であるから、これからどういうふうに私どもが引き締めてやっていくか、日本銀行の今後の努力を見守って頂きたいと思う。

【問】

 今日、「金融経済月報」が公表されたが、前回までに比べて相当景気認識が厳しいものになったかと思うが、現状の景気認識および今後の金融政策スタンス如何。

【答】

 先週の木曜日に金融政策決定会合が新しいメンバーで初めて行われ、経済の現状判断とこれからの金融政策について、ほぼ6時間余り議論をして決定した訳だが、経済の現状判断については、「景気の停滞が続く中で企業マインドも広汎に悪化しており、経済活動全般に対する下押し圧力が強い状況にある」ということで殆ど皆一致した。

最終需要面では、個人消費、住宅投資が低迷しているし、それが長引いている。また純輸出の増加テンポが鈍化しているほか、設備投資の減少の兆しも現れ始めてきている。

こうした最終需要動向の弱さを背景にして、在庫が大幅に増え始めている。生産の減少も続いている。この結果、企業収益が急速に悪化、あるいは雇用や所得環境が厳しさを増してきている。これが国内需要の一段の低迷に繋がっているように思う。

先行きについても、在庫水準が既に高くなっている中で、国内の民間需要には目立った回復を見込みにくいように思われる。その一方で既に実施されている金融システム安定化策とか、特別減税に加えて、金融政策決定会合開催時点までに、まだ追加的な景気対策の可能性がいつどうやって出てくるかということが分かっていなかった訳だが、これが本日公表した「金融経済月報」に示されている経済に関する認識である。そうしたことを踏まえて、先週の金融政策決定会合では討議の結果、当面の金融政策運営について現状維持とすることを決定した訳である。

その後になって、橋本首相から4兆円の特別減税を含む大型の総合経済対策の骨格が公表された訳であり、現下の経済情勢に照らすと誠に時宜を得た措置であり、この方針に沿って財政面からの対策が講じられていくならば、私どもの金融緩和基調の維持と相俟って、景気の回復にも大きな効果を期待できるのではないかというふうに考えている。

【問】

 昨日、自民党の野中幹事長代理が、所謂「総合経済対策」の結果、日本銀行にも利上げの検討の余地が出てくるのではないか、あるいはすべきではないかといった趣旨の発言をされているが、利上げの余地は視野に入っているのか。

【答】

私はその講演を聞いてもいないし、見てもいないので、何とも言えない。ただ、対策が決まったから、金利を上げてもよいということには直接繋がらないと思っている。

【問】

日銀の経理について公表する考えはあるか。

【答】

概要について公表するということは今までどの程度やっているのか、私はよく知らない。必要なものは主務官庁に報告しているし、あと会計検査院の検査も受けているはずである。

【問】

「金融経済月報」は、景気は、生産が落込み、企業の収益が悪くなって、所得が落ち、内需が冷え込むという悪循環の惧れを示していると思うが、総合経済対策が打たれることによる景気のテコ入れ効果よりも、景気の悪循環の方が強まらないか。景気の悪化する速度と対策の強さについてどう判断しているか。

【答】

物価の方は内外の需給緩和を反映して、国内卸売物価が下落を続けているし、消費者物価の方も基調的には前年比上昇率がゼロ近辺まで低下してきている。

経済活動の現状をみると、雇用・所得環境が厳しさを増しており、これが内需の一段の低迷に繋がっている訳で、こうした面からみると、物価は当面軟調に推移する可能性があると思う。

その一方で、先週、橋本首相から、大型の総合経済対策の骨格が発表された訳で、その詳細の内容については、今後の検討を待たなければならない部分もあるが、10兆円の真水と全体で16兆円という数字が出ている。これらの規模からみると、これが企業や家計のコンフィデンスの回復には必ずプラスになってくると思うから、所謂「デフレ・スパイラル」を回避させるものになることは、十分に期待できると思う。

こうしたことを踏まえつつ、私どもとしても、政府の検討状況や、今後の経済活動の展開を注意深く見守って参りたいというふうに思っている。

【問】

為替については先週、日銀が非常に大胆な介入をし、それを受けて120円台に入ってきたが、今の為替水準について——レベルは別にして——どのように考えているか。

また、G7が15日から始まるが、ロンドンでのG7以降の為替について、今回のG7の場で言及するのか、あるいはG7での協調を提案するのか。

【答】

為替は、昔から、市場が決めるものであって、多少の介入をしても、市場がそれを納得しなければ効かない訳である。ただ、今の水準が高いとか安いとかいうことは、なかなか一概には言えないが、経常収支の黒字が非常に増えているということは確かな事実であるから、——惧らくドルにして100億ドル近い黒字に毎月なっていると思うが——年ベースで1,000億ドルを超える黒字は、かつての非常に多かった時に接近してきている——GDPに対して3%近い黒字が出る可能性がある。これは、輸出もそこそこ伸びているが、やはり国内の景況の悪さを反映し、また為替の円安を反映して、輸入が増えてこないということが非常に大きな障害になっているのではないかと思う。

それで、諸外国がG5、G7などでも、惧らく日本に対して「国内景気をもっと良くして、輸入を増やせ」ということを言ってくるに違いないと私は推測する。それはそのとおりであって、今のアジア諸国の通貨危機に基づく経済の建直しというものを救うものは、IMFがコンディショナル——条件——を付けて、指導をしながら必要な資金を供与して、それに主要国が、場合によっては追随して金を貸している訳であるが、究極的には彼らの基礎産業というか、競争力をもった——原料、燃料だけでなく——産業が輸出の競争力をもって、日本やアメリカなどに売っていく──輸出主導の経済復興が起こっていかなくてはいけないのだろうと思う。そういう意味からも、「日本がもっと市場を開き、どんどん物を買っていかないと、彼らは立ち直れないぞ」というような批判なり、声は今後のG7でも大いに出てくるに違いないというふうに思う。

それに対応して、今度の橋本政権の景気対策とか、あるいは為替相場といったようなものがどういうふうに変わっていくかが、これからの一つの課題だと思う。

【問】

海外からは、さらなる金融緩和——場合によっては公定歩合がゼロでもよいのではないか——というような声も出ているようであるが、それについてはどう考えているか。

【答】

公定歩合をゼロにするとか、ネガティブ金利にするとかいう声は、私も読んだり聞いたりはするが、これは言うべくしてそう簡単にできることでもないし、今の金利水準の中で、先般の金融政策決定会合で決まったように、オーバーナイトの無担保コール(レート)を公定歩合を若干下回るところに維持するような金融の緩め方を続けていくということが、今とれる精一杯の措置ではないかというふうに思う。

それと同時に、やはり早く(金融)システムの不安というか、金融機関が不良資産にこれからどういうふうに対応していくかという、——破綻を惧れている金融機関の対応というものが、早い時期に行われていくことが必要ではないかというふうに思う。どういう形でどこから出てくるか分からないが、この辺も昨年の秋頃までに比べると、随分情勢は変わってきていると私は思う。何故かというと、金融機関は皆早く不良資産を償却するという面での競争を始めているというふうに言ってもよいかと思う。今度の3月決算などは、まさにそういう形が外からよく見られたと思う。

その辺のスタンスも従来とかなり変わってきたと思うし、日本銀行としても破綻がいつ起こってもそれに対応して預金保険機構を通ずる対応とか、預金者に対するセーフティ・ネットあるいは特融で暫く繋ぐとか、あるいは合併・吸収その他の手を打っていく心構えというか、いつ、どこで何が起こっても準備対応できるだけの心構えと手順が固まってきている。

三つ目は、政府のサイドで30兆円、当面の預金者保護のための——金融機関が潰れても預金者を保護する——17兆円の資金準備と、さらに自己資本を増やすキャピタル・インジェクションをやっていく13兆円の資金とが準備されていて、必要に応じてそれが出ていくということが決まっている。そういう点を考えると、金融システムの不安というのは一時に比べればかなり薄くなってきていて——まだまだこれから何が起こるか分からないが——、あの頃に比べると一般の人たちの金融不安へのものの在り方というのは変わってきているように思う。

しかしこれもまた、やはり金利がある程度低い水準にあって、初めてできていくことであるから、この辺のところは設備投資や新しい事業を興していく企業の前向きの活動とともに、今の金利水準で暫くはいかざるを得ないのではないかというふうに思う。その辺のところは先般の金融政策決定会合でも殆ど皆同じような意見であったと記憶している。

【問】

仮にデフレ・スパイラルが進行して、(経済が)深刻な状態になった時でも、日銀の金融政策は打つ手がないというか、今やっていることが精一杯だとの考えか。

【答】

デフレ・スパイラルというのは、総理が言い出された対策がなるべく速やかに手が打たれていけば、そしてまた金融がそれを下支えするような形で、今の資金供与、金融緩和の実施を続けていくならば、そういう事態は避けられるというふうに思っている。

【問】

仮に、(デフレ・スパイラルが)避けられなかった時、日銀はどうするのか。

【答】

そういう仮の質問はお答えできかねる。その時の情勢に応じて適切な対応をとっていくしかない。その他にもアジアの情勢をみても、ご覧のようにインドネシアが一つのネックになっていたが、これが良い方向に動き始めているし、韓国も大体底を打ったような感じがしているし、中国なども朱鎔基氏が比較的しっかり押さえているから、東アジアも一時よりは見通しが明るくなってきたというふうに言ってよいのではないかと思う。

【問】

今の景気のおかげでビッグ・バンが加速的に進むのか、あるいは逆にビッグ・バンのおかげで日本の景気の回復が助けられるということがあるのか、それぞれの相互的な影響について、短期的・長期的な意見を聞きたい。

【答】

外から強い企業がどんどん入ってくるということで、日本の企業が吸収されたり、競争に負けたりといったようなことが、起こるかもしれない。そういう意味での直接的なマイナスというか逆風というものがあるかもしれないが、いずれはやらなければならない「フリー、フェア、グローバル」というのは、それでないと食っていけないはずである。やや遅ればせながら、4月1日から対応するようになったということは、非常にプラスであると思う。

「ウインブルドン効果」などと言っているが、これからの日本の金融システムは、戦後一貫した所謂間接金融方式——家計は銀行や郵便局にお金を預けて、それを政府──あるいは財政投融資──や銀行が企業に貸して経済を興していくもの——から、資金を必要とする人が直接市場で資金を調達するとか、増資をするとか、社債を出すとか、コマーシャル・ペーパーや商業手形のようなものを出すといったものになる。そういうマーケットを作って、そこで資金調達を行うと同時に、内外、特に外から、国債、(政府)短期証券、大企業の社債、CP、BAといったものに、円への中長期・短期の投資が起こってきて初めて、市場は成り立つ。そういうものが今できつつあるということは、非常に明るい希望を持っている訳で、こういうビッグ・バンを成立させることによって、それがもたらす——日本の企業には吸収されるものも出てくるかもしれないが——波及効果は非常に大きいと思う。

英国のビッグ・バンの時もそうであったが、取引が急速に増えて、それに伴って、通信とかあるいは情報関連の波及産業というものが急速に増えて、雇用が増え、所得が増えた。この数字は、英国の数字などをご覧になると非常にはっきりと出ている。日本も、確かにこれまでの間接金融方式で、製造業としては、あっという間に世界一の強さを持つようになった訳であるが、サービス産業、第三次産業になると、これまでの規制の影響で、競争力を持たなかったというか、家計、消費者、あるいは庶民が、定まった値段で、定まった質のものを買うしかなかったという状況が続いた訳で、金融などを含めて新しい商品がどんどん海外から入ってくるということは、消費者にとっては非常にプラスであると同時に、新しい仕事を創っていく。

今日本のGDPの中で、サービス産業は60%を少し超えた位であるが、アメリカなどは、特にディ・レギュレーション、規制緩和・撤廃を行って、その後に急速に増えていった雇用というのは、情報産業を始め、サービス産業が多い。金融もそうであるし、室内装飾といった類のものもそうである。そういうものが、これから日本でも新しい雇用機会を作っていき、所得を生み出していくようになっていくことを、私は非常に期待している。

それと同時に、そのことによって、日本銀行が発行している円という通貨が使い勝手の良いものになっていくことによって、円が基軸通貨化していく方向が必ず出てくるに違いない。というのは、ご承知のように、日本は1兆ドル近い対外資産超過を持っており、今経常収支も年間1千億ドルを超える黒字がある訳であるし、個人の貯蓄も1,200兆円といったような巨額の貯蓄を抱えている。そうしたものが市場に出ていって、一方で資金を必要として調達しようとする企業の資金にサプライサイドで投資をしていくといったようなことが、——特に海外で円建ての決済が起こったり、円の外貨準備が増えていったり、あるいは円の投資が増えていったりといったようなことが——、必ず起こってくると思う。

そういう円・ドルあるいはユーロといったものが主要通貨になっていくことによって、世界全体の通貨制度も安泰化していくというふうに私は考えている。これは随分先のことになるかもしれないが、今度のアジアの金融クライシスの背景をみても、やはりドルにだけ固定していたことによる、まだドルにだけしか固定できなかったことによる不幸というものが、ああいうものを生み出していったというふうに思っているところである。

【問】

前回の金融政策決定会合では大蔵大臣と経済企画庁長官が午前中出席されたと思う。現在の日本経済の状況をみると、政府の追加的な経済対策の効果というものが期待される訳だが、そうすると今後の政策委員会で財政面の動向というものが強く働いてくる可能性も十分にある。つまり、大蔵大臣に対する政策委員会としての考え方、逆に政府の方の景気認識も含めた政策委員会に与える影響も出てくると思う。そうすると、所謂「独立性」の問題と絡めて、より財政と金融の政策面でのマッチングというものが行われてくる可能性があると思うが、今後、大蔵大臣の発言の中味を含めて、どの程度開示していくのか。政策委員会の今後のあり方、特に財政面と金融面の政策的な整合性などについての考え方如何。

【答】

これは、新しい日銀法をみれば非常にはっきりする訳である。第三条に「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない」──これは独立性と透明性である。

その次に「政府との関係」というところで──第四条であるが──「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」というふうに書いてある。この間は第一回でもあったし、大蔵大臣と(経済)企画庁長官両方とも、最初、暫くの間出てお話をして頂いた。しかし、政策の決定権というのは9人の(政策)委員が持っており、仮に提言をされる場合にも、制約がある訳であるから、制度上ははっきり独立性は保たれているというふうに考えている。

ただ、日本銀行の側から言っても、政府が今やろうとしていることと全く違ったことをやっても、効果もないと思うし、お互いに連絡を密にしながら、それぞれの立場で機能を発揮し、イエス、ノーを言っていくということが、これからのあるべき姿だというふうに思っている。毎回出て下さるかは私は知らないが、それは自ずから機能の限界があることははっきりしているから、その辺は誤解のないようにして頂きたいと思う。

【問】

例えば、大蔵大臣の出席はどの程度にすべきなのか、そして、どの程度情報開示すべきなのか、というルール化を進める必要があるとの考えはないか。

【答】

それは、その時その時、重要な時期だと思ったら、大臣が出て来られると思うが、それをこちらが拒否をすることはないと思うし、私どもの議論を聞いて頂き、あるいは情報を伝えて頂くことは必要だと思う。

【問】

先程総裁は「前回の金融政策決定会合では現行の金利水準を維持することで全会で一致した」と言っているが、例えば「低め誘導の水準をもう一段緩和すべきだ」というような意見をされた委員とか、──いろんな意見が出なかったか。

【答】

多少意見を言った委員もあったし、ニュアンスの違いもあったけれど、その辺のところは一か月後の「議事要旨」の発表を待って頂きたいと思う。

具体的に誰がどういう意見を言ったかというのは、さらに数年先に公表することになっているから、今この時点でどういう意見があったかということは申し上げられないのでご勘弁頂きたいと思う。

【問】

今まで景気を下支えしていた輸出が鈍化し、デフレ懸念が強まっており、また金融政策では超低金利が継続しているという中で、どうして外準の5%程という大量な規模で円買い介入を行うのか。

【答】

介入のことについては一切申し上げる訳にいかないので、ご勘弁頂きたい。

【問】

どうして答えられないのか。

【答】

それは、市場に対して政府が介入するというのは、公にして協調介入だといったようなことを言う場合もあるし、黙ってやる場合もあるし、──その辺のところは公にすべきものではないと思う。

【問】

各国の中銀では事後的に報告している例もあると思うが、如何か。

【答】

事後的には、外貨準備等をみれば、ある程度見当はつくだろうと思うが、それ(介入)をいくらやったとかいうようなことは、どこの国も言っていないはずである。

危機になって、前のドル危機でカーターボンド等を出すとかいったような時、——これは私も関係したが——どれ位のスワップを増額して金を準備して介入したといったようなことを言ったこともあるけれども、それはそういうクライシスの時であって、通常は介入について一切公表しないのが普通である。

【問】

今の景気の状況からみて、整合的な為替政策というのはどのような政策であるか。

【答】

これは色々見方があると思うけれども、先程も申し上げたように、国内景気を高めて輸入を増やしていくということは、惧らく各国が、日本に要求していることであると思う。そういうものを無視する訳にはいかないであろう。惧らく今度のG7でも他の6ヵ国から出てくるであろうし、またその他のアジアの国々からも強く出てくる声だと思う。

【問】

各国の要請を受けてということになる訳か。

【答】

今問題は、輸出もあまり伸びていないが、輸入が著しく伸びていないということに問題がある訳であるから、日本の景気を良くして、外から物を買うというふうに持っていかないと、日本への期待というものは裏切られたという形になるだろうと思う。

日本もここまで大きくなってきたのは、アメリカに市場を開いてもらって、どんどん日本の製品を買ってもらったからここまで伸びてきたのである。ASEAN諸国等は今、自分達の固有の基礎産業を作って輸出主導で伸ばしていこうとしている訳であり、それの売り先と言えばやはり日本、あるいはアメリカであり、ヨーロッパである訳であるので、その中で日本への期待が一番大きいというふうに考えるべきであると思う。

以上