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総裁記者会見要旨 ( 5月22日)

2001年 5月23日
日本銀行

―平成13年 5月22日(火)
午後 3時から40分間

【問】

まず最初に、総裁のいわゆる辞意表明報道というか、一連のごたごたというか、我々も第三者的に表現することはなかなか出来にくいが、一連の報道等によると、総裁は一旦辞意を表明したものの、その後辞意を撤回され、現在は続投するという意向であると我々は聞き及んでいる。この間に何があったのか、あれ以降初めての会見ということでもあるので、詳細というか率直に、今どういうようにこの件を総括しているのか、お聞きしたい。また、総裁の任期はあと二年弱あるわけだが、今後総裁としていつまで続投というかおやりになるつもりなのか、率直な見解を伺いたい。

【答】

そろそろ1か月前の話で、こちらも正確に覚えていないが、色々お書きになったのにはびっくりした。一連の報道を前提に何があったのかと言われても、お答えすべきことは何もないわけで、正直、返事に窮するというところである。

報道では、私は健康上具合が悪くて、前内閣に辞意を表明したとかいうことだが、私はご覧のように健康は極めて良好である。それから、内閣に辞意を表明したという事実もない。一連の辞任の報道というのは、そもそも私の意思を確認もしないでお書きになったもので、どういう情報に基づいて記事にされたのか、私には知る由もない。

ちょうどG7で、成田からこれから一勝負してこようと張り切って出かけた時に、ああいう記事が出て、私もびっくりしたが、現地でも外国の中央銀行の人たちが色々お聞きになるし、記者の方々もたくさん出て来られて──普通は財務大臣の方へ行くのだが、今回ばかりは私の周りに集まって来られて──、これはえらい事だなという感じがした。従って、私には全く理解できない。

ご質問の私の心境とか、いつまで総裁を続けるかとかいうようなことについても、答えようがないわけだが、幸いなことに今まだ健康な状態である。歳はかなりとっているが。御社の記事だったか、ちょうど私の数え年で喜寿の誕生日に「老総裁」というのを書いて頂いて、大変光栄に思っている(笑)。誉めてくれているのか、持ち上げてくれているのか、エンカレッジしてもらったに違いないと思う。そういうようなこともあり、歳はとっていることは間違いないが、今度大臣になられた塩川さんも私より三つ歳が上で、私よりもずっと元気で、おっしゃることも非常に筋を得て、ああいう方を見ているとまだまだやれるなという感じがする。

従って、引き続き総裁として職務に全力であたっていきたいと思っている。

【問】

そうすると任期一杯務めるというふうに結論的には受け取って良いか。

【答】

まあ、今の所は、まだ任期は再来年の3月だから。

【問】

内閣府が発表した5月の月例経済報告では、「景気は弱含んでいる」という表現から、「さらに弱含んでいる」と判断を後退させた。一部には、「景気は昨年ピークをつけて、既に景気後退局面にあるのではないか」とも言われている。この点についての総裁の見解を伺いたい。また、昨日公表された5月の金融経済月報で、日銀の判断は「調整局面にある」と据え置かれたが、この判断についても、どうして据え置かれたのかということと併せ伺いたい。

【答】

5月の月報をご覧になったと思うが、あそこに書いたように、日本の景気は、昨年中は緩やかな回復過程を辿ったが、米国をはじめとする海外経済がかなり急速に減速して、それを受けた格好で昨年末頃から回復テンポが鈍化し、最近では、──私どもの言葉で「調整局面」と言っているが──調整局面に至っているという判断である。

もう少し細かく申し述べれば、海外経済の減速を背景にして、当然のことながら輸出の減少が起こっている。このために生産が大幅に減少している。この他にも、これがいずれは企業の収益環境を厳しくしていくだろうと思うし、業況感は製造業を中心に悪化してきていると言って良いと思う。また、これまで増加を続けてきた設備投資が、機械受注等をみても頭打ちになりつつあるようにみられる。

この間、家計の所得環境は比較的底固い動きのように見える。ただ、労働時間などを通じて、生産減少の影響が家計にも響くということを考えると、今後の動きは注意深く見ていく必要があると思っている。

こうした状況下、わが国経済は、生産面を中心に調整を続けていく可能性が高いと思う。その後の景気展開については、やはり米国景気をはじめとして、海外景気の動向やITその他情報関連需要の動向に左右されるところが大きいのではないかと思う。

物価面でも、国内需給バランスの面から、物価に対する低下圧力が働きやすい状況にある。それにここにきて更に一段とはっきりとしてきているのが、供給サイドで技術進歩や流通合理化、規制緩和による輸入を中心とした安い物の供給というのも、物価を引き続き下落方向に働かせる可能性も十分あると思っている。これは長年日本の消費者が文句を言っていた内外価格差が縮小していくという意味では、消費者にはプラス要因であるが、経済全体としてはやはり企業の売上・収益といったようなものを通じて、景気の低下要因には十分なり得るとみている。

景気がピークとかボトムとか言うのは非常に難しいし、言い難いと思う。私どもが思い切った金融緩和策を3月に打ち出して、そういった金融緩和策を継続しているのは、今申し上げた厳しい景気認識を考えて採った措置であるとお考えお頂きたい。

【問】

このところ日銀の資金供給オペで札割れが続いているが、日銀は3月19日の量的緩和の際に、資金を潤沢に供給するために長期国債の買い切りオペの増額に踏み切ると表明した。しかし、実際にオペの増額には踏み切らずに、先週はオペの手法の技術的な見直しを行って、追加的な措置を発表された。そういう所から考えると、どうも日銀は長期国債の買い切りオペをやりたくないのではないか、それが本音ではないのかという印象も受けるが、こうした技術的対応で、当座預金残高目標の達成を維持していくことは可能なのか。

【答】

ご承知のように、日銀の長期国債の買い切りオペというのは、毎月2千億円ずつ2回、計4千億円続けてきているのであるから、これがかなり増えてきていることはご承知の通りであると思うが、銀行券の残高までということにしてあるので、その分買い増す余地は十分ある。

しかし、この3月の政策決定でも、「日本銀行当座預金を円滑に供給するうえで必要と判断される場合」には長期国債の買入れを(増額)するということを書いたわけである。

一部のオペで「札割れ」が生じているとおっしゃるが、これは日銀が供給した資金が如何に市場に潤沢に出回っているかというふうに取って頂いて良いと思う。日銀当座預金を5兆円程度に保っていくというターゲットを実現するうえで、支障が生じているわけではない。従って、現時点では、長期国債買入れを増額する必要はないと判断している。

ただ、市場取引を円滑にしていくために、更にオペの参加者のニーズを踏まえて、オペ手段の整備を図っていくことは必要だと思う。これは中央銀行として当然の責務であると思う。

そういう意味で、今回の決定会合では、手形買入オペにおける手形期間を3か月以内から6か月以内としたり、中期国債──2年、4年、5年、6年債を合わせて80兆円くらいの発行残高になっている──が市場にあるわけであるから、長期を買わなくてもこういうものを先に買うのは自然の成り行きであると思う。また、オペ金利の刻み幅を変えたのも、オペをやり易くするためとご理解頂きたい。今回こういう措置を取り、引き続き円滑な金融市場調節を行っていって、資金供給力の強化を図っておくことが適当であると判断した次第である。

【問】

小泉内閣は、構造改革の中でも不良債権処理を中心課題として掲げているが、依然として破綻懸念先以下の処理が中核に据えられている点は前政権と同じであり、ともすると要注意先の問題が中心課題から置き去りにされている感もある。そのような不良債権問題、経済の構造改革問題に関して総裁としてどう考えているのか。また、小泉政権の改革は今後どういうふうに進展すべきと考えているか。

【答】

まず初めに構造改革の話から入りたいが、構造改革とは何も不良債権処理だけではもちろんない。今回、新内閣で初めて行った経済財政諮問会議でも、構造改革なしには景気回復はないのだということを総理ははっきりおっしゃった。これからどうやって、これを一つ一つ実現していくか、財政の問題もあるし、地方財政の問題もあるであろうし、道路特定財源の問題もある。構造改革というのはかなり広範な改革であるから、そういうものを一つ一つ取り上げてやっていこうということであって、私どもも、3月19日に現行の金融緩和政策を発表した時に、実体経済面で十分に金融緩和効果が発揮されていくためには、「不良債権問題の解決を始め、金融システムや経済・産業面での構造改革の進展が不可欠の条件である」ということを書いた。「日本銀行としては、各方面における抜本的な取り組みが速やかに進展することを強く期待している」と書いたわけである。

もちろん、金融緩和措置の効果というのは、ご覧のように市場では十分出てきている。CPや社債はもちろんのこと、短期金利がゼロ金利政策の頃の水準以下にまで下がってきているというようなことをご覧頂いても、かなり緩んできていることは確かだとお感じ頂けると思う。そういう意味では、金融資本市場においては、今回の措置は既に効果を発揮しているわけであるが、これが経済全体を支えて、経済の拡大に繋がっていくためには、実体の政策面でしっかりした手が打たれないといけないと思う。

これは諮問会議でも申したことであるが、数字を言わせて頂くと、95年から2000年までの5年間で、マネタリーベースが──日本銀行から出しているお金であるが──年平均で7.9%ずつ増えている。「金融を緩めろ」、「資金を出せ」と皆おっしゃるが、これだけの勢いで5年間平均でずっと出し続けてきているわけである。それに対して、マネーサプライ(M2+CD)で見ると、この5年間の平均は3.3%伸びているだけである。その差額はどこへ行ってしまったのかということが一つ問題になるわけである。それと同時に、銀行の方は、貸出はこの5年間にプラスではなくて、マイナス0.4%と下がっているわけである。(貸出が)こういうふうに下がって、それでは銀行はどうやって稼いでいるのかということになるが、一つは、国債がこの間年平均10.7%増えている中で、銀行の保有国債は、5年間の平均で、15.4%増えている。それだけ銀行は国に資金を流していたということである。その資金がどのように経済にプラス影響を与えたということであるが、残念ながら名目GDPはこの5年間で平均わずかに0.6%しか伸びていない。実質GDPで言うと1.3%である。その間の消費者物価は、ほとんど横這いで、5年間平均で0.1%である。こういう状態で、私どもの方でいくら資金を出しても、経済自体が動き出さないと──政府だけではなく、むしろ民間主導のこういった構造改革が進み始めて、先行きを見て競争力のあるものを作り、それを売っていくという民間の動きが出始めないと──、こういうものは本当の効果をあらわしてこない。随分マスコミやエコノミストの方々などから、「金融を緩めろ、緩めろ」と言われたが、これだけ金融を緩めてその効果があまり出ていないということを、今度の新内閣は十分心得たうえで、やはり構造改革なしには景気の回復はないんだとはっきりおっしゃって、構造改革をしようと。構造改革というのも、不良債権の他に、かなり広い分野で手を染め始められている。こういうことが、この間の緊急経済対策の中にもはっきり書かれてはいるが、早く一つ一つのことが具体化されていくことが必要であると私は思う。

それと同時に、もう一つは、ご承知のように日本の消費者は、1,400兆円という大きな金融資産を持っていて、それがほとんど直接金融ではなくて、間接金融という格好で固定されていたわけである。そういうものを動かしていくためには、やはり消費者のマインドを、コンフィデンスを上げないといけないと思う。供給サイドで新しくクリエイトしていくのと同時に、需要サイドでも、消費者が不安を持たないで投資をしたり貯蓄をしたり、あるいは物を買ったりというふうになっていかないといけない。それにはやはり年金、401Kとか、健康保険とか、あるいは老人介護とか、さらに雇用の創出・流動化、そういうことをどんどんやりながら、構造改革がどんどん進んでいけば、経済は必ず伸びていくと思う。その二つがパラレルに動き出すということを、私どもは非常に期待しているわけである。時間はかかると思うが、打てるものから手は打っていくということが必要だと思う。

それでお尋ねの不良債権の問題になるわけであるが、不良債権について、どうやってこれを処理していくか。不良債権の早期の償却というのは必要なことであるし、緊急経済対策でも破綻懸念先以下の不良債権を対象にしてバランス・シートから切り落としていく、引き当てだけではだめで、やはりバランス・シートから落としていく、──直接償却という言葉を使っているが──その方法を今検討しておられるわけで、3つ方法があるということを柳沢大臣が昨日も国会でおっしゃっていたと思う。法的整理、私的整理、市場売却と。どれが先でどれが後ということではなくて、それぞれのケースにどれを使っていくかということが、早く動き出さなければいけないと私は思う。このことは、私も日本銀行総裁着任以来ずっと言い続けてきたことで、そういう意味では少し動き始めたかなという感じがする。それと同時に、30兆円の不良債権があまり動かないのは、新規に発生してくる不良債権というのが待っているのだということ。かなり銀行は償却しているが、いくら落としても新しい予備軍が出てきて、それが不良債権の席に座ってしまうといったようなことが続くのではだめなので、絶えず金融機関が債務者の経営とか財務の内容といったものを適確に把握して、既往の債務者区分とか引き当て額が適切であるのかどうか──引き当てのチェックは金融庁が厳密にやって下さっていることは確かであるし、それはそれでいいわけであるが、年に1度とか2年に1度とかいった検査を待つだけはなく、自発的にそういうものを常にチェックして不良債権の候補になるようなものを良くウォッチして、そうならない前に手を打っていく。必要に応じて、債務者区分の変更とか、追加引き当てといったようなことも行う、あるいは業況に変化が起き始めた場合には、債務者に対しては早期に経営改善の努力を促していくといったようなことが必要なのではないかと思う。こういう点に関して、私どもとしても、今後とも考査等の機会を捉えて、金融機関経営者に対して繰り返し申し述べていきたいと思っている。

【問】

確認であるが、任期を全うされるのかという先程の質問に対して、「任期は再来年の3月である」という答えだったが、任期を全うされるというつもりで答えられたのか。それとも、「再来年の3月だから、まだ分からない」と理解していいのか。

【答】

2年後のことは、分かりません。しかし、任期は任期で5年と決まっているわけで、それが動くことはない。それに対して、私はご覧のように年を取っているが、健康ですから、今この大事な時に一生懸命頑張りたいと思っている。

【問】

総裁の職は非常に重いので、総裁が否定されても、参院選後にまた山がくるという報道が出ているが、その辺はどう見ているか。

【答】

「山」ってなんですか(笑)。どうもその辺がよく分からないが、何が山なのか。そういう話は誰がしているのか知らないが、耳寄りな話があったら教えて下さい。

【問】

では、今のところ、そういう話は一切ないということでいいのか。

【答】

ないですね。

【問】

塩川財務大臣が総裁に、「もし元気だったらお続けなさったほうがいいのではないか」と、半分慰留ともとれるような言葉をお掛けになったと、塩川さんご本人が言っているが、総裁は塩川さんとどのような話をしたのか聞かせてほしい。

【答】

塩川大臣は、(G7に)一緒に飛行機で行ったのだが、お聞きになってないわけだから、何もご存知ない。帰りは、大臣が先に帰られたのだが、「元気で一緒にやりましょうね」と言ってお帰りになった。

【問】

先般のG7に関してだが、同行された黒田財務官は、2月のパレルモG7の時と違って、かなり米国経済に対するG7各国の緊迫感がなくなってきたとおっしゃっている。米国の株式市場の悪化をみても、かなり落ち着いた感じを受けるが、米国経済について、2月のG7の時と比べると、先行きについて心配が薄らいできたという感じを総裁は持っているか。

【答】

まだそこまで行っていないが、FRBは随分早く1月3日に動き始めて、4か月余りで5回、合計2.5%の利下げを行っている。こういうこともあるし、もともと生産性が高いということもある。景気が減速するのも早かったけれども、これからどちらに動いていくかは、もう少しみてみなければ、何とも言えないのではないかと思う。本年後半には少しは明るくなるという見方が多いのだが、わが国の景気の先行きに大きな影響をもたらすものであるだけに、あまりここで、今年後半に良くなると決め込むのも早すぎるような気がする。

【問】

先程、塩川さんとのやりとりの話があったが、長く一緒にやられていた宮沢前財務相との間では、ご自身の進退について何か語ったとか、そういうことはあったのか。

【答】

いや、ありません。宮沢さんとはよくいろいろな会合で会うし、電話でもよく意見交換したりしているのだが、そうした話はしていない。

【問】

5月11日の月例経済報告等に関する関係閣僚会議において、初めて小泉首相にご挨拶され、「がんばってください」という話があったと直後に聞いているが、改めてその時のやりとりをお聞かせ頂きたい。

【答】

小泉首相とは、経済同友会の頃から時々行政改革の勉強会などでご一緒したりしているが、総理になられてからお会いするのは、月例経済報告の閣僚会議の時が初めてだったので、「がんばってください」とこちらからご挨拶をしたら、「あなたもひとつ、健康に留意してがんばってくださいよ」と言われて、「やりましょう」と言った。それだけです。それから、今回の経済財政諮問会議は、2時間半位やったが、非常に落ち着いて議論を聞いておられた。これは、私も頼もしいと思った。ご自分でも2時間以上じっと黙ってひとつの会合で居たのは初めてだとおっしゃっておられたが、それ位、力を入れておられるのだと思う。

【問】

今、経済財政諮問会議での話が出たが、先週小泉政権下での初めての諮問会議が開かれ、民間議員の方々から「すごく話しやすい」とか「熱意が感じられる」といった賞賛の声が強いが、総裁も実際に出られて、もうすこし詳しく諮問会議の内容・雰囲気とか、あるいは総裁も金融政策について発言しやすい雰囲気になったのか、その辺のところをお聞かせ頂きたい。

【答】

それは、非常にそういう雰囲気だったと思う。(会議の内容については)まだ、公表していないので──終わった後の記者会見以外で発表していないはずなので──申し上げるわけにはいかないが、私も色々発言させて頂いたし、非常に議論が前向きに動き始めたという感じである。

以上