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総裁記者会見要旨(3月16日)

2004年3月17日
日本銀行

―平成16年3月16日(火)
午後3時半から約65分

【問】

本日公表の金融経済月報の基本的見解を踏まえた当面の景気動向についての総裁の見解を伺いたい。

【答】

その前に、本日ご報告することがある。既に発表している通り、1点目は、本日の政策決定会合で、銀行等保有株式取得機構に対する証書貸付債権の適格担保化を認めた。かなり技術的な側面もあるので、もしお尋ねがあれば、後程、担当部署に照会して頂けると有り難い。

2点目は、次回の金融政策決定会合までの金融調節方針について、現在の当座預金残高目標の30~35兆円程度を維持することを決定した。併せて、金融市場は現在極めて落ち着いた状況で推移しているが、年度末の金融市場の落ち着いた状況をきちんと最後まで保っていくために、注意深く対処していき、必要があれば、期末についての「なお書き」の適用をあえて辞さずに、必要な流動性をたっぷり供給するということを確認した。

「なお書き」の文章そのものは、従来からずっと使っている文章を特に期末であるからといって、特別の修正を加えてはいない。従来同様、期末については、現在の「なお書き」を使って、市場の平穏を保つため、万全を期すということを確認した次第である。

これが本日の決定の内容であるが、今、お尋ねのあったその裏付けとなる経済状況についての私どもの判断は、既に基本的見解として発表した通り、「わが国の景気は、緩やかに回復している」、この一言に尽きるという状況である。引き続き輸出の増加が生産の拡大、設備投資の回復につながるといった「前向きの循環メカニズム」が作動しているということが基本の判断である。それに加えて、最近では個人消費も日本経済を引っ張る最終需要の戦列に少し加わってきたような感じがある。また、先行きについても、着実に景気は緩やかな回復を続けるだろうと判断しているわけである。

物価についてみると、おそらくこうした景気回復の下で、需給ギャップというものが、少しずつ着実に縮まってきているのだろうと判断している。表立った物価の動きとしては、商品市況の上昇の反映もあるが、国内の企業物価が、前月比でみても、あるいは3か月前比でみても、このところ上昇してきているという点に注目している。

しかし、一方で、金融政策のメルクマールになっている消費者物価指数については、引き続き横這い状態にある。需給ギャップがなお残っているというのが基本的背景としてあるが、2003年度の消費者物価指数を押し上げたいくつかの一時的な要因はむしろこの先剥落していくということがあるので、消費者物価指数は当面、基調的には小幅のマイナスを続けるという従来の判断を今回も変えていない。物価動向については、今後とも引き続き日本銀行としては注意深くみていくということである。

【問】

そのような景気動向を踏まえて、本日の政策判断の結果に結びついた背景をご説明頂きたい。

【答】

ただ今申し述べたように、実体経済は、想定通り、緩やかな回復傾向を続けている。そして、おそらく物価の基調も少しずつ改善しつつあるのだろうという判断である。金融面の状況をみても、金融市場は非常に落ち着いており、期末を控えてもほとんど心配はない。やや長めの金利も落ち着いているし、株価も堅調である。為替市場の動きも今のところは、ひと頃に比べれば、不規則な動きが少し収まっている。

そうしたことを踏まえて、現在の緩和的な金融環境がこのまま維持されることにより、さらに景気回復をバックアップし続けていけるのではないかと判断したわけである。

【問】

3月期末の金融情勢について、特に金融システムあるいは企業の資金繰りを含め、どのような見通しか。

【答】

おそらく、3月期末にかけて、仮に金融市場で何か問題があるとすれば、通常であれば、既にこの時期にいろいろなかたちで市場が反応を示しているだろうと思われる。現在そのようなことは全くないことからしても、あまり隠れた問題も、この期末についてはないのではないか。

かなり潤沢な資金供給を続けているので、短期金融市場の状況は、ご承知の通り、凪のように落ち着いた状況になっている。資本市場をみても、かなり平穏な状況になっている。企業の資金調達との関連でみても、CP、社債といったものの発行環境も、企業にとっては非常に良好な状態が続いている。

この背景としては、日本銀行の資金供給が潤沢であるという点に加えて、わが国の景気が緩やかに回復している中で、企業のキャッシュフローが改善傾向にあり、期末にかけて資金を取り急ぐ必要があまり感じられないということが1つ指摘できると思う。また、わが国の金融システムについても、全体としてなお問題を抱え続けているにせよ、大手行を中心に、健全化に向けたこれまでの取り組みの成果が現れ始めていることの反映ではないかと思っている。

期末までまだ2週間ある。油断せずに、金融市場等の動きについては綿密に注視していきたいと思っている。

【問】

素材価格の上昇が最近かなり顕著になっているが、その一因には中国の需要増があることが要因とされている。素材価格が上昇する一方で、消費者物価がなかなか上がらないというかたちになっていることについては企業にとっては良い影響でないと思われるが、総裁の考えを伺いたい。

【答】

今の素材価格の上昇は、やはり世界的な景気回復傾向の強まりが基本的背景になっている。その中に中国の高成長という要因が大きく加わってきているということによって、国際商品市況、原油価格、海上運賃いろいろな面で価格の上昇圧力が高まっているということが背景だろうと思われる。

これは今、グローバルに経済の回復が進んでいるということを素直に表していると思われる。通常であれば──過去の世界経済であれば──、中間段階の価格あるいは最終段階の小売ないし消費者物価の段階に、あるタイムラグをおいて波及していくということが普通の姿であるが、今回はその波及の時間的な間隔が少し過去のパターンより長くなっているという感じがする。中間段階の価格には、波及がだんだん及んできている──国内においても企業物価が上昇傾向を示し始めていることに現れ始めている──と思うので、さらに景気の順調な回復が続けば、末端の段階の消費者物価指数、あるいは小売物価というところにも経済のロジックとしては影響が及んで来るというように思われる。もっともその時間的な距離──リードタイム──がどれくらいあるかということは、今のところ明確にはつかめない状況である。もしこのリードタイムがあまり長いと、確かに原材料高、製品安というようなかたちで企業経営上、多少の問題がでてくるという可能性がないとは言えないが、現在までのところ景気の順調な回復そのものが需要全般を強めていき、企業の収益力がそれだけ高まるという見方のほうが強くて、原材料高、製品安によって企業経営が決定的なダメージを受け、マクロ経済にまで悪い影響が及ぶリスクまで判断が及んでいない、というのが一般的な見方ではないかと思う。

【問】

3月20日で就任1年を迎えるが、総裁ご自身で1年を振り返って点数をつけるとすれば100点満点で何点か。

【答】

1年過ぎた区切りということだが、日本銀行の仕事というのは、毎月とか1年とか年度という区切りがない仕事──音楽でいえば無窮動のような、ずっと流れているという仕事──であり、日々挑戦ということで、私自身の仕事の姿勢も目標に向かって真っすぐに進むというものだ。あまり立ち止まって自分の点数は何点かと考えない性格であり──これは学生時代からそうであるが──、自分の点数は気にしないでやっている。皆さんが点数をつけるとすれば、かなり厳しい点数がついているのだろうと思っているし、全く後ろを振り返らずに反省もなく前進しているのかと思われるのも困るが、私自身としては常に反省を繰り返しながら、しかし基本の姿勢は目標に向かって前進するという姿勢を貫いている。現在の自分の点数はわからない。皆さんの目つきからすると、点数はかなり低いなと思いながら進んでいる。

【問】

この1年の金融政策を通じて、デフレという長いトンネルの出口に近づいたという実感はあるのか。

【答】

日本銀行としては、デフレ克服というのは実体経済の持続的な成長軌道への復帰ということと一体でなければ実現できないと思っている。また、実体経済の持続的な成長軌道への復帰ということは、経済の構造改革、特に民間部門の経営上の構造改革がしっかり伴い、経済が新しい付加価値創造力を身に付けながら前進できる状況まで持っていくということが一番大事であり、それとともにデフレ脱却の道というものも次第に開けてくると思っている。従って、金融政策としては、民間部門とりわけ企業部門のリストラ努力、そして新しいビジネスモデル構築のための努力を、金融面の条件を十分企業にとって有利な環境を整える──整え続ける──ことによってサポートするという戦略をとって、今日に至っているわけである。経済が、徐々に持続的な回復パスの方向に前進しているということは非常に喜ばしいことだと思っている。

しかし、物価面の動向は、先程お話したとおり、川上段階の物価が上がっても川下段階の物価への波及は世界経済全体としても過去のパターンに比べれば遅れるという変化がある。また、日本経済の場合には、おそらく他の先進国よりも大きな需給ギャップを解消するという宿題を引きずりながら動いているということもあるので、消費者物価指数が──特殊要因とか一時的な要因を含んでいるとはいえ──、ゼロ近傍まできていると、数字の上では残りの距離が短いように見えるが、私自身は、まだ残りの距離──ラスト・ワン・マイル──を本当に克服しきるまでには、相当な苦労がいると覚悟している。かたちの上ではデフレをコーナーに追い込んだように見えていても、決して手を緩めるわけにはいかない。現在の緩和姿勢を断固続けるという作戦で臨みたいと思っている。

【問】

景気回復基調が強まってくるとなると長期金利をはじめ金利の上昇気運がでてくる──先般も1.4~1.5%近くまで上がった──と思うが、こうした状況に対して、構造改革をサポートするということで長めの金利も抑えるようなかたちでのオペレーションをされていくのか。

2点目に、福井総裁は金利を抑えることで構造改革をサポートしていくとの意見である一方、速水前総裁は金利があることが構造改革を進めるという意見であったが、この違いについてはどう解釈すればよいのか。

【答】

金利を抑えるということを言ってしまうと、マーケットを人為的に操れるような印象になってしまうのであまり適当な言葉ではないと思う。もし私が使っていたとすれば、言葉の使い方として反省しなくてはならないと思う。消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまでは量的緩和の枠組みを続ける──これは、流動性を大量に供給し続けることで、量的緩和プラス時間軸効果を持つことになる。これがマーケットで正しく理解されれば、長めの金利についても、少なくとも早めに跳ね上がるということに対しては、マーケットが自らブレーキをかける要素になるのではないかと思う。そういう政策を我々は明確にとり続けるという意味である。結果としてでてくる金利が、実体経済ないし物価の先行きの動向と過不足なくマッチしたものであれば、それはそれでいいということである。マーケットの金利形成が、先行きの動きをあまり先取りしすぎて、金利が先に跳ね上がるということを極力避けて、安心して金利形成ができるような諸条件を金融面からの流動性供給およびメッセージの発信ということで実現していきたい。ここのところは人為的に抑えられるものではなく、マーケットと日本銀行との息がいかに合うかということが大事である。

【問】

2点目の構造改革を進めるにあたってのスタンスの違いについてはどうか。

【答】

そんなにスタンスが違うかどうかはわからないし、速水前総裁とも議論したことはないが、常にそうした議論はある。つまり、むしろ金利を思い切って上げたほうが一種の企業淘汰が進むとか、構造改革がすっきり進むという議論がある一方で、ドラスティックな手段をとると、構造改革を一定の合理的な期間があればできる企業までその時間的余裕を奪ってしまい、経済全体の息の根を止めるという議論もある。従って、答えは真中にしかないということになると思う。金利が先行きの経済ないし物価状況と平仄のとれるかたちで自然に形成されていくという部分を大事にしながら金融政策をやっていくことが、結果としては構造改革を早くかつ円滑に進める方法ではないかと思う。経済が生き物である以上、構造転換というものは早くなければいけない一方で、パスも円滑でなければならないと思う。多分、速水前総裁と議論すれば、そんなに意見の差はないのではないかと考えている。

【問】

先程、デフレをコーナーに追い込むために努力を続けるとおっしゃっていたが、現下の経済状況において、今後の政策運営にあたっての課題、注目点について伺いたい。

【答】

デフレをコーナーに追いつめたと断言したわけではない。実体経済が少しずつ良くなっている、そして消費者物価指数の前年比変化率も一時的要因を含めればゼロ近傍まで来ているということで、かたちの上ではデフレをコーナーに追いつめたかのごとくみえるけれども、残りの距離の克服について、我々は決して気を緩めないということである。気を緩めないとはどういう意味かというと、あくまでも、以前からお示ししている3つの条件が満たされるまでは、断固として今の量的緩和姿勢を堅持する、この点について自ら疑問を抱くようなことなく守り続けるということである。景気の回復についての信認度合いを強く持っておられる方々からは、いつまでも市場機能を犠牲にしないで、早く日本銀行は次のことを考えろ、とのご意見もだんだん増えてきているが、我々はまだその時期ではないということを強く心に決めている。

【問】

足許、所得や雇用環境の回復が遅れている中で、個人消費はやや強めに出ている状況にあるようだが、この要因についてどのように考えるか。

【答】

個人消費については、私どもは基本的には個人所得の増加に伴って個人消費も回復する、あるいは所得が増加して、初めて本当の個人消費の回復だと思っている。そういう意味では、ここしばらくの間の個人消費の動きは、私どもの事前の予想よりは少し強めに出ている。これが一時的なものだということをあえて申し上げるわけではないが、個人所得の回復にしっかり裏付けされた個人消費の回復というところに我々の判断が行き着くまで、もう少し確認の時間がほしいと思う。しかし、その前の段階から個人消費が少し強くなってきているのは事実であって、これはいったい何なのかというところまで見据えるのはなかなか難しい問題だと思う。貯蓄率が緩やかに下がりながら消費が増えているという現象だが、経済全体に対するコンフィデンスの回復が、個人にとっても、暗いばかりの心理状態が少し明るくなって、そこに新しい商品・サービスの提供があれば財布の紐が少し緩むという現象として出ている可能性があると思っている。しかし、それらの動きが永続的かつしっかりしたものになるためには、やはり個人所得の回復を伴いながらというところまで行き着く必要があると思う。企業のリストラの進捗状況をみると、製造業のほうではダウンサイジング——リストラ──一本やりで収益を出してきた段階から、投資、そして新しい付加価値創出、生産性の向上というかたちで収益を上げていくステージに少しずつ振り代わってきており、その中で先端を行く企業からだんだん個人所得への還元も始まってきていると思う。こうした動きが広がっていくことが非常に大事で、個人消費の動きは、そうした企業部門の動きと合わせ技でこれからよく見ていく必要がある。企業部門について、非製造業の回復が非常に遅れていると言い続けてきているが、ダウンサイジング——リストラ——というかたちでの体質改善が時の経過とともに少し加速度がついてきているような気がする。タイムラグはあっても、いずれは非製造業についても、次の段階へ行く可能性がある。そういう意味では、今の構造改革を伴いながらの景気回復のパスというものを、金融面からもしっかりサポートしていくということが、間違いのない道だと思っている。

【問】

ペイオフの全面解禁まで、あと残り1年になったわけであるが、この全面解禁そのものについての総裁の考え方をお聞きしたい。また、金融機能強化特別措置法の審議が今月いよいよ本格化してくるのであるが、この法案が目的の1つとする金融機関、特に地域金融機関の再編・合併についての総裁のお考えを改めてお聞きしたい。

【答】

この問題については、私の個人的な見解まで交えて過去に何回もお答え申し上げているが、やはり来春のペイオフ解禁というのは、どうしても確実に実行に移してもらいたいと思っている。

企業部門の構造改革が相当進んできた。あと1年経つと、おそらく非製造業についても構造改革がかなり進むだろうと思う。その先はやはり資源再配分機能というのが金融面からもしっかり働く。金融仲介機能がもっと生きたものになっていく。この企業部門と金融部門との表裏一体となった新しい資源再配分機能こそ日本経済の新しいバイタリティを築く両輪になっていくわけで、ペイオフ完全解禁がさらに先送りされると、ある意味で日本経済は片肺飛行のままその先もしばらくいくということになるので、この課題は必ず果たさなければならないと思う。

今申し上げたことからも、ペイオフ完全解禁というけれども、何か政府が無理してアクションを起こすというのではなく、金融機関自身も相当程度リストラ——自らの経営改善努力——を進めてきているという前提に立って私は申し上げている。特に、大手行については先行して進んでいるけれども、地域金融機関についても程度の差はあれ来春のペイオフ完全解禁ということを目指して経営体質の改善努力が進められてきているので、是非、来春という時点でそれがジャスト・ミートするように、今後の経営改善努力を加速してもらわなければならない。これが最大の条件である。つまり、金融機関自らの努力によってペイオフ解禁の条件を相当程度整えるということが条件になってくると思う。

ペイオフ完全解禁までの期間、あるいは解禁後も、それぞれの金融機関において合併・再編ということを伴うかもしれないが、合併・再編無しの場合、あるいは合併・再編有りの場合も、ペイオフ完全解禁まで、そして解禁後も、なおしばらくの間は競争力を構築する努力が続けられるということである。そうした自主的な経営体質の改善努力の一環として資本不足という部分があり、ほんのわずか政府の支援があり、より体質強化のプロセスが円滑に進むということであれば、新しく政府の用意されるフレームワークを利用されると良いのではないか。これこそ政府の道具としてではなく、民間のほうの道具として上手く使っていくということであれば非常に良い結果を生むのではないかと思う。

【問】

景気が循環的に回復しているということは論を待たないかと思うが、総裁は、特に民間部門の構造改革——これは定義が難しいが——の必要性をおっしゃっている。こうした中、ここ数年テーマになっている政府部門の改革、特区および規制改革といったことに関連して、最近は行政改革、歳出改革、規制改革、地方再生といった動きが──景気回復の影響があるのかどうかわからないが──なかなか進捗していないという声がある。例えば、99~2000年の景気回復局面でも構造改革の必要性が叫ばれたにも拘わらず、なかなか上手くいかずにITバブル崩壊とともに萎んでしまった経緯もあるが、今、いわゆる構造改革はどのような局面にあるのか。また、「もう少しこういうことをしたほうが良いのではないか」というようなお考えがあれば教えて頂きたい。

【答】

いつも強調して申し上げているが、民間部門の構造改革を完成形に近いところまでもっていこうとすれば、当然のことながら、政府の力によって成し遂げなければいけない構造改革というものはもっと前進しなければいけない。それは今の質問のご趣旨として持っておられるところではないかと思うが、私も全く同感に思う。

景気の回復がある程度順調に進めば、公的部門の構造改革はむしろ切迫性がなくなって、既得権益打破の努力が少し緩むのではないかとか、金融緩和政策をあまり長く続け過ぎると、民間部門まで含めて構造改革の努力が緩むのではないかというご心配の声をよく聞くし、我々自身もそれは非常に心配するところである。二律背反というか、構造改革を伴いながら物事が良い方向にいけば、構造改革の努力にブレーキがかかる。この矛盾を常に抱えながら前進していかなければならない。例えば、先程申し上げたようなペイオフ解禁のように期日をきちんと決めて予定したものは絶対に延ばさないとか、政府が政府自身のプログラムとしてきちんと国民に約束されたものについては、やはり期日通りに一定の成果をあげるということをきちんとやって頂く必要がある。そのことは、国民的な監視の対象としてきちんとチェックしていく必要があるだろうと思う。

選挙などのいろいろな事情があって、なかなか実際に実行することが難しいということは多々ありうるわけであるが、そのことと政府が国民にきちんと約束したことを実行して頂くということとはまた別の問題である。国民に約束されたことはきちんと実行して頂くということを、国民的な目でチェックしていく必要があると思う。

【問】

今のお話に関連するが、郵政改革について与党内や経済財政諮問会議で議論されている。郵政改革——郵貯改革だと思うが——について、金融界では完全民営化が声高に主張されているが、総裁ご自身のお考えをお聞かせ頂きたい。

【答】

郵政については、民営化という言葉で政府が国民に約束しておられるので、民営化ということを要素に皆が知恵を出し合わなければならないと思う。民営化というからには、きちんと採算のとれるビジネスとしてこれを組み立てる。政府保証や租税やその他の公的負担についても、普通の民間部門の経済主体と条件を等しくする。条件を等しくした上で収益性をきちんと確立する。この2つは絶対的な要件なので、それに合うように郵政のビジネスをどのように組み立てて実現していくことができるか、しっかり見ていかなければならないと思う。

特に、郵政の場合には、金融の仕事と保険の仕事が入っている。金融の仕事については、当然、民営化されれば一般の預金保険の対象にもなってくるし、もし民営化された郵政の金融事業が、採算がとれなくて途中でおかしくなるということになると、日本の金融システムに新たに大きなシステミック・リスクをもたらすということになると思う。従って、システミック・リスクの大きな新しい火種とならないように、そこにしっかり閂(かんぬき)を入れた制度設計が必要だということではないかと思っている。

【問】

今の景気の認識というのは、審議委員の皆さんが描いている標準シナリオに沿った動きなのか、それを上回った動きなのか。もう1つ、今の景気回復において、日銀の金融政策というのが大きな役割を果たしたのかどうか。福井総裁の手腕を評価する声がある一方で、今やっている金融政策の枠組みというのは、速水総裁時代からの枠組みは変わらずで、言葉は悪いが「ついていた」という声もあるが、どうお考えか。

【答】

まず、最初のお尋ねの点だが、10~12月——昨年第4四半期——の非常に高いGDPの数字に象徴されるように、少し景気回復全体のペースからいえば高目の数字が出ている——高目の数字が出ているというよりも、実際にIT関連の出荷などがある程度集中して数字も高めに出ているという意味であるが——。1~3月は当然その反動的修正の部分が入ってくるだろう——数字の上で、ある程度の減速は免れないだろう——と思っている。そして、それがどの程度かということをこの1~3月中によく確認したいと思っているが、我々は今、減速の度合いはそれ程大きくないかもしれないという感じを持ち始めている。そこに個人消費が、最終需要の中にほんの一枚かんでくるようになっているということも合わせて、今申し上げたような感触を持っているということである。

本当にそうなるかどうかは、もう少し1~3月の数字の出方も見ながら、最終的に確認したいし、シナリオとの関係でどの辺りの位置付けかということは4月の展望レポートの時にきちんと結論を出したいということである。取りあえずのところは、従来のシナリオの範囲内で、もしかしたらシナリオの中点よりはやや上をいっているかもしれないという感触は持っているが、そのように金融政策決定会合で判断を出したわけではない。

それから、もう1つの難しい質問だが、金利機能が生きている時代からもそうであるが、引き締めに比べて緩和というものは、紐をつけて後から押すようなもので、なかなか金融緩和による景気の押し上げ効果というものがわかったようでわからないという特性を持っていると思う。金利が生きている場合は、過去に幾重にも経験値の蓄積がある——海外にもあるし国内にもたくさん蓄積がある——ので、過去の経験則に基づいた分析、予測がある程度できるということである。一方、量的緩和の場合は、全く初めての経験であり、世界の中でも日本銀行が初めてこの政策に踏み切っている——過去に経験値の蓄積がない——というところがあるので、分析的になかなか示し難いつらさがある。速水総裁の時代——2001年3月——から量的緩和に踏み切って私が引き継ぐまでに既に2年経っていたが、2年しかない経験値というもので全てを語り尽くすことはできないと思う。私は2年経ってバトンを引き継いだ以上、過去の経験則はそれしかないわけで、そこから推し量ると、まず第1にやはり量的緩和というものが金融システム不安を吸収する力がかなり大きいと思っている。それが証拠に2001年3月以降——量的緩和が始まって以降——は、いろいろな金融的なアクシデントが起こっても、97~98年のような金融面のパニックは起こしていないということがある。

2番目に言えることは、あれだけ経済が——落ち込むという言葉が適当かどうかわからないが——調子の悪い状況になり、米国のITバブルが破裂するというような強いショックが加わってくるというようなことがあっても、デフレ・スパイラルに経済が落ち込むということを防いだということは、やはり実体経済に対する力も非常に大きいと受け止めて、速水総裁からバトン・タッチを受けたということである。従って、その後の経済について、いろいろな問題が起こっても量的緩和の下で金融市場の安定を保っていることへの自信はしっかり持っているし、実体経済の諸条件が整って——特にIT関連の新しい需要の波が起こってきて世界経済が立ち上がり、日本経済もその中にしっかり組み込まれて——、ある程度前進する力をつけていく時には、デフレ・スパイラルを防いだその力は、今度は前向きの力にある程度働くであろうということは想像できるわけで、その力をフルに利用すべきであるという考え方で政策をやっている。

金融面でこれだけ条件を整えると、企業にとっては金利コストが非常に低い状況が実現しているし、これがCPIが安定的にゼロ%以上になるまで続くということは、先行きについての金融コストが低いということも保証済みなわけなので、企業が必要な努力をしようと思えばその条件をフルに利用できる。もちろん、先程もおっしゃった通り、そういうふうに条件が甘いと、横になって寝ている——構造改革をサボっている——人にとっても、しばらく長続きするという効果を持っているかもしれない。これは1つの物事のプラスの面とマイナスの面であり、プラスとマイナスは差し引いて考えなければいけないが、差し引いて考えてみてもネットでプラスの力は結構あるのではないかと考えているわけである。

【問】

グリーンスパンFRB議長が3月2日の講演で、日本の為替・金融政策について、「巨額の為替介入と部分的な非不胎化は、永遠に続けられるものではない。日本のデフレが和らげば、このような政策の組み合わせというものは金融政策上問題が出てくるのではないか」との趣旨を言及し、その上で、「デフレの脱却に近づいているのではないか」ということをおっしゃった。それについてどのように受け取られているか。

【答】

日本の金融政策が、経済をデフレから脱却させるということに非常に強い焦点を当て続け、──経済、物価、そして金融市場の状況に合わせて──目いっぱい多めの流動性を供給し続けるという方針について、グリーンスパン議長は100%理解していると思う。デフレ脱却までは、日本経済は外からのショックに対して、脆弱性を引きずりながら出口のところまでいかなければいけない。いろいろなかたちの外からのショックということはありうるが、金融市場があまりにもボラタイルに動くことによるショックというのがかなり大きな打撃を与える。為替市場のボラティリティの高まりということもその大きな要素だという点も、私は繰り返し説明しており、グリーンスパン議長はきちんと理解していると思う。

実際に、金融政策がデフレ脱却のためにフルに持てる手段を適用し、この脆弱性を帯びた経済を何とか前進させている時に、為替市場への介入というのは、少なくとも政策の方向性として矛盾がないのだというふうに日本銀行としては理解しているという点も、グリーンスパン議長は理解していると思う。グリーンスパン議長がおっしゃるように本当にデフレ脱却の出口に差し掛かり、我々の金融政策のフレームワークについて、何がしかの修正ができる可能性が見えてくるということであれば、やり方によっては為替市場への介入というのは金融政策の方向性とは必ずしも合致しないということになりうると思う。我々としても、その組み合わせとしては、グリーンスパン議長のおっしゃっていることに違和感はない。しかし、我々は、今目前にそういう状況がきているとは思っていないし、グリーンスパン議長も、日本の金融緩和政策あるいは介入政策についても、出口政策──エグジット──はなかなか難しい──私が思っている程度にまで思ってくれているかどうかはわからないが──と、専門家としては十分意識しておられるので、あのような発言になったのではないかと思う。

【問】

おっしゃる通り、グリーンスパン議長は総裁のお考えを良くご存知だと思うが、その人がなぜあの時にわざわざあのようなことを言わなくてはいけなかったのか。見ようによっては、日米の金融当局の間で若干問題意識、あるいは現状分析が違っているのではないかという懸念を世の中に与えかねないことだと思う。アカウンタビリティを大事にされている総裁としては、そこは注意しなければならないところだと思う。そういう意味で、その後日本銀行とFRB、あるいは福井総裁とグリーンスパン議長との間で──いろいろなルートや機会があったかと思うが──、このことについて何か話し合われたのか、あるいは説明があったのか、お伺いしたい。

【答】

グリーンスパン議長のスピーチ以降、この点について、「あなたの発言について私は疑問がある」とか「こういう点について真意を聞きたい」というようなことを特にした覚えはない。先方のほうも、多分そう特別変わった話をしたという印象を持っているわけではないだろうと思っているのか、私のほうに対しても特別な説明はない。

【問】

去年から取り組まれていることの中に、日銀内部の組織改革があると思う。本年7月をスタートに大きな改正に取り組まれるわけであるが、日銀がどのように変わるのか、その具体的な狙いをお伺いしたい。日銀のCI(コーポレート・アイデンティティ)戦略はどうあるべきか、草の根の情報公開というのはどうあるべきかという議論もあるように聞いているが、国民にとって日銀がどう変わるのか、どのように変えたいと総裁がお考えなのかお聞かせ頂きたい。

【答】

これはなかなか一発勝負ではいかないかもしれないと思う。昨年「組織活性化を始めます」という宣言をして、今おっしゃった通り本格的なものはこの7月からやるということになっているが、その後も、かなり粘り強く日本銀行のコーポレート・モデルを変える努力を続けていって、初めて日本銀行のCI戦略というものも国民の皆様に実感を持って伝わるようになっていくのであろうと思う。

日本銀行は、組織のスリム化とか、いわゆる合理化、ダウンサイジングとかいうことは相当しっかりやってきた自信がある。おそらく日本の公的機関の中で、こういう点では一番しっかりやってきたと自負してほぼ間違いないのではないかと思える。戦後のピークの水準と比べると、日本銀行は半分の人間でやっている。支店によっては3分の1ぐらいの人間でやっている。つまり、機械化対応に見合ってきちんと人員の合理化を過不足なく、あるいはそれ以上に進めてきている。戦後のピークに比べたら当たり前ではないかと言われるかもしれないが、過去5年間でみても、人員で1割ぐらい削減しているし、人件費も2割ぐらい削減している。相当思い切って削減してきており、ここから先はただ絞り込むばかりが能ではない。中央銀行サービスをより付加価値の高いものとして、国民の皆さんに提供していきたい。つまり、スリム化ということを超えて、我々はいかに付加価値の高いサービスを提供していくかというところへ視点を切り替えて、役職員の皆さんにもその意識でこれから行動してもらおうと思っている。そのための最初のきっかけをいろいろ与えようということである。つまり、効率化の努力の上に立って、これからは日本銀行の持っている力──役職員一人ひとりの能力と言って良いと思うが──を遺憾なく、サービスの付加価値を向上するという面に照準を当てながら発揮していく環境を作りたい。これが基本的な狙いである。

いろいろなことをこれからやっていくと思うが、とりあえず、組織と人事制度にある程度大胆なメスを入れようとしているのはそういうことである。例えば本店では長年続いていた「課」というものを原則廃止し、新しい付加価値の高い仕事ごとにユニットを組んで仕事をしていくわけであるが、そのユニットを引っ張っていく「担当総括」という人については資格の縛りを設けない。従来であれば、一定の年齢になって課長にならなければ引っ張って行く資格がないことになっていたわけであるが、そうではなくて、もっとも相応しい人を担当総括にすることによってそのユニットの仕事の付加価値が上がるようにしていくということが1つある。

また、管理職については、実績や能力を重視して年俸制の下におく。日本銀行の給与は5、6年前から年功序列の色彩を相当薄めているが、今回はっきり年俸制にすることによって、ただ効率を高めるということだけではなくて、全体として付加価値の高い仕事に取り組んでいくということと、賃金のあり方とを、完全に平仄の合うものにするというやり方である。

付加価値を高めていくためには、民間企業の場合でも、やはりマーケッティングというものが非常に大事になっている。マーケッティングが重要になっているということは、世の中の価値観を探り当てながら、自分の価値観のほうにもそれを取り入れながら、新しい価値を実現していくということである。従って、日本銀行の中だけで仕事をしていて内省的に出てくる価値観だけで「良いセントラルバンク・サービスだ」と言ってみても、本当の意味で付加価値の向上を伴ったものになっていないかもしれない。そういう意味で外との人材交流を拡大していく。これは日本銀行の人達を海外とか民間企業へ派遣することを増やすということだけではなく、外の人も日本銀行にきて働いて頂く、both way(双方向)で交流を図りたい。これは価値観の交流の中で、新しい付加価値を作っていくための土台を広げたいという意味である。

もう1つ重要なことは、特定の意識の高い人とかピック・アップされて管理職的な仕事をする人達だけがやるのではなく、こうした意識は日本銀行で働いている人すべてに共通のものとして、職場全体を活性化してもらわなければいけないので、どんな小さなことであっても、これから仕事の内容や進め方の洗い直しをしていく。それぞれの現場で提案をどんどん出してもらって、これを重視して、前例にとらわれない組み立て方で仕事をしていく。差し当たり、この3つのやり方でスタートを切りたいと思っている。

7月から実施と申し上げたが、最後に申し上げた点については、現在、支店を含めた各現場からどんどん新しい提案が出てくるようになっている。実はここから今回の活性化の口火は今切られつつあるという感じである。年俸制とか組織の改革については7月からであるが、草の根からの掘り起こし運動は既に始まっていると理解して頂きたい。

【問】

先程、量的緩和の効果について、「デフレスパイラルに陥らないようにするだけではなく、経済が前向きになった時も効果があるのではないかと思う」とのお話しがあった。一方で、これまで金融システムの安定化効果はあるが、ポートフォリオ・リバランスと言われるような、景気を押し上げていく効果については、なかなかないのではないかとか、見えにくいというようなことだったかと思う。おりしも量的緩和を行って3年ということで、その辺の評価を改めてしていくようなお考えはあるか。

【答】

今、デフレ脱却のために非常に重要な局面になっており、あまり立ち止まって仕事はしたくない。我々は確信のあることはどんどんやっていくということで、プレイ・グラウンドの上で非常に重要な局面が動いているので、ちょっとグラウンドから振り返って、コーチャーと相談するという時間はあまり持ちたくない。

【問】

先般、経団連の奥田会長が、量的緩和の出口からの目安として株価15,000円くらいということに言及された。今後も景気回復が続くと、政府、財界、海外等から、量的緩和からの出口を巡っていろいろな思惑が出てくるかと思うが、そうした局面で、日銀はどういうスタンスで出口を判断されていくのか。あくまで独立性をもって判断していくということなのか、あるいは周囲の環境、意見を良く聞いて出口を判断されていくのか。

【答】

ご質問の趣旨を正しく理解していなければお許し頂きたいが、出口か出口でないかということは、言ってみれば我々の会話のために便宜上使っている言葉であり、金融政策運営上、正確に定義されている言葉ではない。我々として、正確に申し上げているのは、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にプラスになるということである。しかも、それは3つの条件を満たした時に、今の量的緩和のフレームワークの修正の機会が来る。それまでは、今のフレームワークを維持し、その判断は日本銀行が行なう。つまり、3つの条件のうち、足許の消費者物価指数前年比がゼロ%以上に安定的に続いているというのは、見方が多少分かれるにしても、かなり多くの人が現実として認めるようになるだろうし、政策委員の多数が先行きの物価見通しをプラスに見るということも、これは全部集計してみれば、そうなるということは出てくる。そうすると、最後に、実質判断としても本当に量的緩和のフレームワークを変えて大丈夫か、ということが残るが、この部分は政策委員会で100%──他の判断を介在させないで──判断する、それが当然のことだと思っている。

株価15,000円云々ということについては、奥田さんと1回議論してみたいと思うが、なかなか我々にも株価の予測というのは難しい。株価がいくらになれば、日本経済がもう大丈夫な領域になったと言えるのかどうか、ちょっとわからないと思うが、私自身は、日本の株式市場の動きを見ていて、株価の形成メカニズムはだんだんしっかりしてきていると思っている。実体経済の好転振りに合わせて、少なくとも株価の底堅さは確認できるようになってきていると思う。しかし、株価形成を支えている投資家の構造をさらによく見ると、やはり外国人の投資家と国内の投資家の間で、投資態度にまだかなり違った状況が続いている。国内の投資家については、過去の持ち合い解消その他いろいろな要因があって、取りあえずその消化を急ぐ動き──できる時には早めに利益確定するという動き──がまだ強い状況で推移していると思う。もう少し時が経てば、国内の投資家も──外国投資家と同じになるかどうかはわからないが──きちんと企業の先行きのキャッシュフローや収益見通しに基づいて、より前向きの投資スタンスで株価形成の舞台で活動するようになるだろう、という点については、私も期待を寄せているが、結果としてどういう株価になるかはわからない。

【問】

先程、量的緩和のフレームワークを修正する局面で、金融政策と為替市場の方向性に異なる点があるかもしれないというご指摘があったと理解しているが、これはどういうロジックで理解すれば良いのか。

【答】

異なる点があると申し上げたわけではない。量的緩和のフレームワークを修正できる局面というのは、景気の持続的な回復への確信がより強まっているということであるし、物価が再びマイナスになるというリスクが非常に少ないという状況になるということである。言ってみれば、日本経済の持っている脆弱性が薄れる──外からのショックに対して弱い状況がずっと薄まる──ということなので、外国為替市場に限らず、金融市場から及んでくるショックについても、いちいちナーバスに考えなくても、そのショック自体を経済が吸収する力がついてくる、ということを申し上げた。従って、量的緩和のフレームワークを長く続けなければならないほどに経済が脆弱な場合と、そうではなくて、経済自身がショックを吸収する力を身につけてきた場合とでは、外国為替市場のボラティリティーの変化に対して、政府がいちいち手を貸してショックを和らげる政策をやり続ける必要があるかないかという判断自身も変わってくるということを申し上げたわけだ。金融政策はもうフレームワークの修正をしても良い、と我々が判断できるようになった時に、政府のほうは、引き続き従来と同じように経済は脆弱なものだという判断で、同じスタンスの介入政策を続けるということであれば、それは平仄が合わないが、多分そういうことは起こらないと思う。経済実態に対する認識は綿密にすり合わせられるだろうと思っている。

以上