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第83回信託大会における総裁挨拶要旨(西村副総裁代読)

2008年4月14日
日本銀行

 本日は、第83回信託大会にお招き頂きまして、誠にありがとうございます。また、信託銀行の皆様におかれましては、平素より、日本銀行の政策や業務の運営に多大なるご協力を頂いております。この席をお借りして、厚くお礼を申し上げます。

 わが国の経済は、エネルギー・原材料価格高の影響などから減速しています。3月短観の結果をみても、企業の業況感は慎重化しています。もっとも、企業収益が幾分弱まりつつも総じて高水準を維持し、雇用者所得も緩やかな増加を続けるもとで、設備投資や個人消費は底堅く推移する可能性が高いと考えています。景気の先行きについては、当面減速が続くものの、その後は緩やかな成長経路をたどると予想されます。

 物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、経済全体の需給が概ねバランスした状態で推移するもとで、石油製品や食料品の価格上昇などから、プラス基調を続けていくとみています。

 ただし、米国サブプライム住宅ローン問題に端を発した国際金融資本市場の動揺や世界経済の減速、エネルギー・原材料価格高などを背景とする中小企業の収益環境悪化や生活関連品の値上がりなど、現在、日本経済は、内外ともに多くのリスク要因を抱えています。

 日本銀行としては、今後も、公表される指標や情報、内外の金融市場の状況などを丹念に点検し、先行きの経済・物価の見通しの蓋然性とそれに対するリスクを見極めた上で、適切な政策判断を行い、物価安定のもとでの持続的成長の実現に引き続き貢献していく所存です。

 次に、金融システム面について申し上げます。わが国の金融システムは、引き続き全体として安定した状況にありますが、昨年来の国際金融資本市場の不安定化や国内外経済の不透明感の増大など、金融機関経営を取り巻く環境には変化がみられます。米国サブプライム住宅ローン問題のわが国金融機関、金融システム面への影響については、私どもとして、今後とも、注意深く点検を続けていく考えです。

 この間、こうした環境変化を受けて、証券化関連など複雑な仕組みを持つ金融商品のあり方を巡り、グローバルに様々な議論が行われ始めています。皆様方が提供される信託の仕組みは、わが国の金融ビジネスにおいても、既に資産の運用・管理・流動化といった様々な面で活発に利用されており、それだけに、日本の信託ビジネスが、このような国際的な議論も踏まえながら、今後とも幅広い分野で金融イノベーションの一層の推進力となっていくことを期待しています。

 私ども日本銀行としても、取引先金融機関に対する考査・モニタリングにおいて、信託を活用した仕組みを含めた、多様な金融仲介チャネルに関するリスク管理体制の整備状況を把握・検証させて頂くとともに、各種セミナーの開催などを通じ、金融の高度化に積極的に貢献して参りたいと考えています。

 ご清聴ありがとうございました。

以上