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【講演】金融政策の未来:貨幣経済学の歴史に学ぶ景気循環学会第38回大会における基調講演

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日本銀行副総裁 若田部 昌澄
2022年12月3日

1.はじめに

世界的にインフレが到来し、政府・中央銀行の対応に注目が集まっています(図表1)。このインフレは、中長期的に見てどれくらい持続するのでしょうか。これまでのマイルド・インフレ・レジーム、あるいはデフレを懸念した時代は終わり、高インフレの時代が到来するというナラティブが見られるようになりました1。他方で、今後のインフレの定着については、懐疑的な議論もあります(Wolf [2022a]Krugman [2022a、2022b])。

将来にわたってインフレは続くのでしょうか。2000年代から、世界では、低インフレあるいはデフレ、低成長、低金利の組み合わせで特徴づけられる長期停滞(secular stagnation)、「日本化(Japanification)」を懸念してきました。「日本化」の時代は、いよいよ終焉を迎えるのでしょうか。関連して、インフレの到来で、高圧経済論(high-pressure economy)の有効性、妥当性も議論の的になっています2。この講演では、現在のインフレよりも、インフレが今後どれくらい持続するかという中長期的な問いを巡って、金融政策と高圧経済論の将来について考えます。

かつてジョン・ヒックスは、貨幣上の大きな変動と貨幣経済学の歴史は密接に連動していると論じました。「貨幣に関する最も優れた著作の主要部分は時局的であ」り、「すべての時代を通じて――リカードウ以前からケインズ以後まで――貨幣そのものが進化を遂げてきて」いるため、「貨幣理論はある意味では金融史の部類に入る」と述べています(Hicks [1967a]、pp. 156-57;邦訳、212、214頁)。この講演では、金融政策の未来を考えるために、まず現在の議論を整理したうえで、過去の貨幣経済学の歴史(経済史と経済学史)に学びます。貨幣経済学の歴史が明らかにするのは、経済における名目値と、その決定における金融政策の役割の重要性です。ここで主として取り上げるのは古典派の貨幣経済学ですが、彼らは名目値が実質値に影響を及ぼす貨幣の非中立性について、認識していました。そして、最後に、歴史を踏まえたうえで金融政策の未来を展望します。結論として、マイルド・インフレ・レジームは終わらず、「日本化」の懸念は、特に日本においてはまだぬぐい切れていないことを示します。

  1. 1The Economist [2022a、2022b]Spence [2022]Rogoff [2022a、2022b]。景気循環学会会員によるものでは、嶋津 [2022]、あるいは片岡 [2022]があります。
  2. 2高圧経済論の古典はOkun [1973]です。日本銀行の研究については、開発ほか [2017]、日本銀行調査統計局 [2018]、米国における高圧経済論の評価については、Fatás [2021]を参照してください。

2.現在:マイルド・インフレ・レジームは終わったか?

世界的インフレの到来で、マイルド・インフレ・レジームは終わったのでしょうか3。高インフレの時代が到来するというナラティブは、次のように整理できます(図表2)。

第一に、政府の役割の増大です。政府規模、規制、財政赤字、政府債務の増大によって、経済にはインフレ圧力が増すという議論です。

第二に、中国の高度成長が終焉を迎えつつあり、新興国の成長率が下落して、先進国と新興国の成長率が収束しつつあります。

第三に、グローバル化の終焉、脱グローバル化です。財貿易の成長は、2008年を境に低迷しています。これに、最近の地政学的緊張と経済安全保障懸念の高まりによって、各国はサプライチェーンの再構築を迫られています。統合と効率化の時代から、分断と安定性の時代へと志向が変化することがインフレにつながるというわけです。

第四に、人口構成の変化です。Goodhart and Pradhan [2020]は、1990年から2018年までは、中国の台頭と先進国の人口構成によって巨大な労働供給がなされてきており、それが世界的低インフレの原因だったが、今後は中国と先進国での少子高齢化の進展によって逆転し、インフレ要因になると論じています。

第五に、気候変動対応に伴う脱炭素経済への移行で、いわゆる「グリーンフレーション(greenflation)」が起きるという意見があります。

第六に、地政学的リスクの高まりは、冷戦を含む戦時経済の再来につながるという意見があります(Pozsar [2022])。

まず、個別の論点について議論しましょう。第一の政府の役割ですが、政府の役割は、規模においては一貫して増大してきています4。1980年代から政府規模の抑制が多少試みられた時代がありましたが、傾向としては増大が続いています。規制については、その数と質を問題にしないといけないので、議論は複雑になりますが、少なくとも数に関してはむしろ増加傾向にあります。この期間、インフレ率は傾向的に下がってきました。また、政府支出および政府債務の対GDP比率とインフレ率との間には、明確な関係を見出すことができません(図表3、4)。

第二の成長率鈍化については、これがインフレ的かデフレ的かは、自明ではありません。むしろ、低成長は長期停滞で懸念されてきた現象そのものであり、低成長ゆえに低インフレという議論がなされてきました。

第三に、グローバル化が低インフレをもたらしてきたという議論は実証的に決着がついていませんし(黒田 [2018])、そもそもグローバル化が終焉したかどうかの判断は時期尚早であるという見解もあります。財貿易の伸びは近年鈍化しているものの、サービス貿易は、依然として高い伸びを続けています(図表5)。もちろん、経済安全保障の観点からのサプライチェーンの再構築は、費用の最小化よりも調達の安全性を志向する点でコスト・プッシュ要因になり得ます。他方、サービス産業は労働集約的ですので、AIの利用などによるサービス産業の自動化がグローバルに進展し、賃金が世界的に平準化されるならば、ディスインフレ的かもしれません(Baldwin [2022]Wolf [2022b])。

第四に、人口動態の影響は不確定です。確かに少子高齢化による労働供給の減少は、インフレ要因となる可能性もあります。他方で、寿命延伸は、人々の予備的貯蓄動機を高め、貯蓄率を押し上げる可能性があります。また、少子化は、労働力人口のみならず消費者の人口を減らすことにもなるなど、成長率に対しては負の影響を及ぼす可能性があります。ただし、これは(特に日本では)、むしろデフレ的要因とされてきたものです。

第五の「グリーンフレーション」については、脱炭素化の経済金融環境に及ぼす影響は様々です。脱炭素化を負の外部性への対応と考えれば、これまで負担していないコストを負担することとなるなので、コスト・プッシュ要因になりますが、この点はインフレ率を押し上げるのか、あるいは総需要抑制を経由してディスインフレ的に働くのか、自明ではありません。しかしながら、むしろ脱炭素関連の投資が盛り上がるならば、それは総需要を刺激するのでデマンド・プルによるインフレ要因にもなり得ます。その点では、「グリーンフレーション」が起きるかどうかは、コスト・プッシュの側面ではなく、総需要の動向が重要とも言えます(Schnabel [2022])。

最後に、戦時経済の到来です。これは最もインフレ的な可能性があります。過去12回の主要な戦争は、戦争中とその後に至るまでインフレ率と名目利子率を急激に引き上げ、特にグローバルに闘われた戦争では、戦後1年後にインフレ率が平均して8%のピークに達し、鎮静化するまでには3年くらい要するという研究もあります(Chankova and Daly [2021])。

次に、より一般的に、こうした要因が物価動向に与える影響についての留意点を述べます。第一に、ここで挙げられているインフレ要因なるものの多くは、コスト・プッシュ要因です。しかし、コスト・プッシュ要因によるインフレは持続しないことが知られています。外的なショックが生じると古い価格体系から新しい価格体系へと調整する動きが起きます。その調整後には、定常経路でのインフレ率に戻ると考えられますので、定常経路でのインフレ率がどう影響を受けるかが重要です。もちろん、コスト・プッシュ要因が持続し続ける可能性はありますが、それが定常経路でのインフレ率を引き上げるかどうかは不確定です。

第二に、コスト・プッシュ要因によるインフレが持続しないということと関連しますが、ここで挙げられているのは実物的要因であり、それらが物価にどのような影響を及ぼすかは、自明ではありません。物価を貨幣に対する財・サービスの相対価格と考えるならば、貨幣的要因を考慮することが必要になるはずです。

第三に、このことを金融政策の枠組みで考えるには、自然利子率と市場利子率の関係で考えるのが妥当です。実物的要因がインフレ的であるためには、市場利子率を所与としたときに、自然利子率が上昇する傾向がみられる必要があります。しかし、以上で挙げられた実物的要因が、自然利子率に及ぼす影響経路は多岐にわたります5(図表6)。

人口動態について例を挙げると、引退する家計は貯蓄を取り崩す傾向にありますので、資金供給は減少する可能性があります。これは自然利子率を引き上げる方向に作用します。一方で、寿命の延長を予想する家計は、その分貯蓄を増やそうとするため、資金供給は増える可能性があります。これは自然利子率を引き下げる方向に働きます。加えて、人口の減少が労働力人口を減らすと、一人当たり資本装備率は上昇するので、資金需要は減る方向に働きます。これは自然利子率を引き下げる方向に働きます。全体として人口動態が自然利子率に及ぼす影響は不確定というべきでしょう。さらに、全体として不確実性が増すとすると、人々の予備的貯蓄動機を高め、貯蓄ひいては資金供給は増える可能性があります。これもまた自然利子率を引き下げる方向に働きます。

  1. 3マイルド・インフレ・レジームと高インフレ・レジームとの区別は自明ではありませんが、前者は各国主要中央銀行のインフレ目標2%近傍で推移する状態、後者は、インフレ率が2桁にはいかないとしても、2%を倍以上上回って推移する状態と考えられます。
  2. 4The Economist [2021]では、1870年以降の先進国において、政府支出の対GDP比率が傾向的に上昇していることを示しています。政府規模の増大は、アドルフ・ヴァーグナーの政府経費膨張法則やピーコック=ワイズマンの転位効果仮説として知られています。そのほか、Robinson [2020]も参照してください。
  3. 5なお、Gopinath [2022]は、新型コロナウイルス感染症後の動向が自然利子率に与える影響を、格差、人口動態、労働供給、生産性、貯蓄と安全資産への需要、先進国の負債、気候変動への転換という七つの観点から整理しています。そのうち、自然利子率を明確に引き上げるのは、先進国での負債と気候変動に伴う投資の二つに限られます。

3.過去:貨幣経済学の歴史

ここまで、金融政策の影響については議論をしてきませんでした。自然利子率が変動したとしても、市場利子率は所与ではありません。ここで分析枠組みについて整理をしましょう。現在の分析枠組みは、これまでの貨幣経済学の歴史のなかで培われてきたものでありますが、まだ解決されていない論点も多く残っています。ここでは、貨幣経済学の歴史のうち、いわゆる古典派と呼ばれる人々、主にデイヴィッド・ヒュームとヘンリー・ソーントンの貨幣経済学を取り上げます(図表7)。Fisher [1911]に倣って、貨幣数量理論は、短期については貨幣の非中立性を認めながら、長期では貨幣は中立的である、という整理が定着しています。しかしながら、実際には長期における非中立性を認識していた論者もいました(Humphrey [1991])。

(1)価格革命とヒューム

15世紀に南米大陸で発見された貴金属が欧州に大量に流入しました。それから17世紀半ばまで、欧州では、インフレ率は1.0から1.5%程度にまで高まりました。これを価格革命と呼びます。貨幣数量理論はこの経験から出発していますが、ここではヒュームを取り上げましょう。ヒュームは「貨幣について」(1752年)で、次のように述べて、価格革命が実物経済に与えた影響を認めています。

大量の貨幣は、ローマ数字のようにむしろ不便であり、その保蔵にも運搬にもより多くの労苦を要する。もっとも、正しいと認められねばならないこの結論にもかかわらず、アメリカにおける鉱山の発見以来、それらの鉱山の所有国を除くヨーロッパのすべての国民において産業活動が増加したのは確かであって、それは、他のいろいろな理由があるうちでもとくに、金銀の増加に原因を求めるのが正当だと言えよう。こうしてわれわれは、貨幣が以前よりも多量に流入し始めるあらゆる国においては、あらゆる物が新しい様相を呈することを知る。すなわち、労働と産業活動は生気を帯び、商人は企業に一層熱心になり、製造業者は一層勤勉と熟練を増し、農民でさえ、より敏速かつ注意深く耕作するようになる(Hume [1987]、pp. 285-86;邦訳、233頁)。

ここでいう産業活動は、単純に労働供給の量だけでなく、その質も含むものとして解釈すべきです。けれども、ヒュームは次のように限定を付します。「金銀の増加が産業活動にとって有利なのは、貨幣の取得と物価の騰貴との間の間隙ないし中間状態においてだけである」(Hume [1987]、p. 286;邦訳、233-34頁)。その理由は、貨幣賃金契約の硬直性にあります。それを前提とすると、価格の上昇は、一時的には実質賃金を減らして労働者が労働供給を増やしていくに過ぎないとします。結局、ヒュームの結論は、「貨幣量の大小は、一国内の幸福に関しては少しも重要な問題ではない」(Hume [1987]、p. 288;邦訳、234-35頁)というものです。しかし、その直後に、彼はまた次のように述べます。

為政者の優れた政策は、できることなら貨幣量を絶えず増大させるようにしておくことだけである。なぜなら、その方策によって、彼は国民のうちにある勤労意欲を活発に保ち、すべての実質的な力と富を成り立たせている労働の貯えを増大させるからである。貨幣が減少している国民は、実際にはそのとき、多くの貨幣をもたなくともそれを増加させつつある他の国民よりも、弱小で貧困である。このことは、貨幣量の変化は、その増減のいずれにせよ、それに比例した物価の変化を直ちには伴わないということを考慮する時に、容易に説明がつくであろう(Hume [1987]、p. 288;邦訳、234-35頁)。

ここで示されているのは、第一に、貨幣は長期的には実物経済に影響を及ぼさず、物価を決めるだけに終わるというものです。貨幣が影響をもたらすとしても、それは間隙ないしは中間状態にしか過ぎない、という長期の中立性命題です。しかし、第二に、政策論として述べていることは、貨幣の非中立性を示唆しているとも捉えられます。しかも、そこではインフレの利益と対比して、デフレの弊害が指摘されています。

この二つがいかに両立するのかを巡っては、これまで多くの解釈がなされてきました6。この二つの命題の整合性はともかく、後者に高圧経済論の源流を見出すこともできるかもしれません。重要なのは、貨幣数量理論を唱えたヒュームは、現代でいう短期と長期の区別をしながらも、名目値と実質値には複雑な関係があることを認識していたということです。なお、ヒュームは持続的な経済成長を発見した経済学者の一人であり、経済成長の原動力を人々の産業活動と知識と制度に求めていました。重要なのは、そうした経済成長の実物的要因と貨幣的要因がどのように関連するかです7。最近の研究では、価格革命には実物的影響があったことも示されています。貴金属生産が増えると名目GDPが増え、実質GDPが増えると同時に物価の上昇はそれほど起きませんでした8。また、元FRB議長アラン・グリーンスパンは、デフレは企業の活力を停滞させるから怖いと論じましたが9、ヒュームの議論はそれと重なる部分があります。

  1. 6研究文献の整理と解釈については、坂本 [2011](199-251頁)、Dimand [2013]Schabas and Wennerlind [2020](pp. 159-60)を参照してください。
  2. 7Brewer [2010]Schabas and Wennerlind [2020]を参照してください。
  3. 8ある時点で既存のストックに対する貴金属生産が10%増大すると、その9年後の時点で実質GDPは約0.9%増大し、その後は増加ペースを緩めるとともに物価の上昇が続くとのことです(Palma [2022]、pp. 1608-9)。
  4. 9渡辺 [2022]、285-87頁に紹介があります。

(2)銀行制限期とソーントン

ヒュームは、銀行と紙券信用の役割については懐疑的でした10。銀行については、ヒュームの友人でもあったアダム・スミスが有益性を示しましたが(Laidler [1981])、紙券信用の分析は、次の世代を待つことになります。それが、ソーントンの業績です。

1797年、ナポレオン戦争を背景として、イギリスで通貨の金への兌換が停止されます。一時的な措置のはずが、1821年まで継続します。この時代を銀行制限期と呼びます。金兌換の停止以降、イギリスではインフレが続きます。その後の金兌換の再開をめぐって、論争が繰り広げられました11。ソーントンは、この論争のさなかに『紙券信用論』(1802年)の刊行をはじめとして活躍しました。彼の業績は、3点にまとめることができます12。第一に、信用が金融において大きな役割を占める時代背景のもとで、金融面での急激な変動がなぜ経済変動につながるのかについての分析を行ったこと、第二に、現在で言う自然利子率と市場利子率の区別に基づく理論を開拓したこと、第三に、市場利子率の設定と流動性供給の面で、中央銀行の金融政策とプルーデンス政策への道を開いたことです。

第一に、金融面での急激な変動が経済変動につながる理由は、貨幣の性質にあります。不況になると、商工業者たちは貨幣を求めて自分たちの製商品を売り払おうとしますが、その一方で全般的な買い控えが生じます13。結果として、「貨幣が並外れて不足するために、製造業者たちはたとえ自分たちの製品の販売価格がまだ利潤の余地を残していても、操業を止めないまでも縮小する必要にどうしても迫られる」ことになります14Thornton [1978]、p. 118;邦訳、100頁)。この結果生じる価格の下落は、雇用に影響を及ぼします。

[工業製品の価格]の下落そのものはもし極度に進めばその製造に従う人々の労働を停止させる可能性をもつ。製造業者たちはその製品の売れ行きがきわめて悪いとみると、自然とその職工たちを解雇する。もし銀行券が収縮したために、ありとあらゆる商品の価値が永続的に下落し、さらに・・・賃金率も下落すると仮定できるならば、確かに手持ちの在庫には損失が生じるであろうが、将来の製造を促進する度合いは同じであるとみるのが正しい。しかし、銀行券が通常の数量から非常に大幅にかつ突然に縮小する傾向があれば、平常とは違った、一時的な窮迫をひきおこし、この窮迫の結果価格を下落させる。しかし、一時的窮迫からおこる価格下落は、おそらくこれに相応する程度の賃金の下落を伴わないはずである。というのは、価格の下落や窮迫はともに一時的と理解されているであろうし、また賃金率は周知のように財の価格ほど変動しやすくはないからである。したがって、ここで述べているような窮迫からおこる不自然な、また異常な低価格が製造工業の生産を極度に阻害するだろうと懸念することには、理由がある(Thornton [1978]、pp. 118-19;邦訳、100-101頁)。

貨幣の収縮が雇用に影響を及ぼす理由は、ヒューム同様、貨幣賃金契約の硬直性にあります。なお、ソーントンは、価格の下落と同時に賃金も同様に下落する場合には雇用への影響はないと考えています。しかし、賃金率には下方硬直性があるために、価格の下落が実物経済に影響を及ぼすということです。この影響の描写も、下記の勤労活動という言葉の利用も含めて、ヒュームを彷彿とさせます。

銀行券の大きな収縮は、従来行使されてきた一国の産業活動の大部分が、そうでない場合に到達するはずであった程、生産的になるのを阻害する。破たんが累増してゆく場合にはもちろん、あるいは支払いを履行する手段がはなはだ予想に反して思うように得られなくなっただけでも、前々から着手されている商業や製造業の計画なりもしくは各種の一般的な改良なりは、一様に変更されるかあるいは停止される。加えて、それまで投下された労力の部分は廃棄されたことにある。・・・問屋や小売店の手持ち商品の一部をなし、その店先を賑わすはずの財貨も製造業者の倉庫に充満し、さらにあまりに長く留め置かれるために損傷を被る状況となる。他方では、かえっていくらかの販売をよぎなくされる、そのためある市場に対して準備され、またそこに最も適している財貨が他の市場において売却される。このような時期には、消費に対して供給を規則正しく正確に割り当てたり、また適応させたりすることが行われなくなるし、さらにあらゆる品物を製作者の手から実際の用途に急いで送る経路も停まる。しかし、この迅速さこそ産業活動を生産的ならしめ、一国の全般的な資力を増やす大きな手段に属するものである。紙券信用に対して加えられる大きな急激な抑制はいずれもみな勤労活動に対する大きな抑制として働くだけでなく、上述した勤労活動の多くの誤用をももたらす(Thornton [1978]、pp. 119-21;邦訳、102-3頁)。

こうした勤労活動への抑制、誤用が長期的にどのような影響をもたらすかについて、ソーントンは述べていません。また、ソーントン自身は、インフレがデフレよりも望ましいとは考えていませんでした。しかし、少なくとも短期において貨幣的変動は実物経済に負の影響をもたらすので、望ましくないことは明確です。

第二の点について、製造業者や商人がどこまで銀行貸出を受けるかは、彼らの期待利潤率と市場利子率との関係で決まります。期待利潤率よりも市場利子率が低いと、銀行貸出は増え、貨幣量が増え、物価は上昇します。逆の場合には銀行貸出は減り、貨幣量が減り、物価は下落することになります。ソーントンは、インフレ予想の変化を考慮して、名目利子率と実質利子率を区別しています15。インフレ予想の変化の考慮は、後のアーヴィング・フィッシャー、二つの利子率分析は後のクヌート・ヴィクセルの先駆であり、どちらも現代のマクロ経済学の理論的基礎を形成しています。

そこから、第三の点である中央銀行の政策対応が問われることになります。当時のイングランド銀行は、中央銀行としての自覚はありませんでした。ソーントンが示したのは、イングランド銀行は、中央銀行として振る舞うべきだということでした。それは、まず市場利子率を期待利潤率と整合的に設定することで物価の変動を安定化させること、それと後のウォルター・バジョットにつながる金融危機対応としての流動性の供給です。金融逼迫が起きると、人々の貨幣への需要が急増し、銀行システムから貨幣を引き出す動きが起きます。その時に、個別銀行ならばそのまま貸し付けを減らすことが合理的ですが、全部の銀行がそれを行うと経済全体の貸し付けがますます減少してしまいます。金融逼迫時には、イングランド銀行は、むしろ寛大に貸し付けを行うことで、経済に流動性を供給すべきなのです。

  1. 10「紙券信用を人為的に増やそうと努力することは、およそ商業国の利益ではありえない」(Hume [1987]、p. 284;邦訳、232頁)。
  2. 11いわゆる地金論争については、Laidler [2000]を参照してください。
  3. 12ソーントンの卓越した業績については、Hicks [1967b]Laidler [1987]Murphy [2009](pp. 189-214)、Arnon [2011](pp. 96-125)、若田部 [2013](102-11頁)を参照してください。
  4. 13Hicks [1967b]は、これをケインズの流動性選好と関連付けています。
  5. 14邦訳は、適宜修正しています。
  6. 15ソーントンは、この区別を1811年の議会演説で行っています(Thornton [1978]、pp. 335-36)。なお、Humphrey [1983]によれば、実質利子率と名目利子率を最初に区別したのは、18世紀のスコットランド生まれのウィリアム・ダグラス(William Douglass)とのことです。

(3)その後の発展

その後の発展については別のところでも論じましたので、現代に関連するトピックについて簡単に述べます16。ソーントンはデフレについて懸念しましたが、デフレは短期的なものにとどまると考えていました。しかし、欧州が長期にわたるデフレ圧力にさらされる時代が到来します。1873年から1896年まで続いた19世紀末のマイルド・デフレについては、実物経済に影響を及ぼしたかどうかについて、今でも議論が続いています。当時は生産性が向上した「良いデフレ」だったとする議論や、労働市場・生産物市場が伸縮的だった19世紀の経済構造の調整能力に着目する意見がありますが、最近では物価データの計測誤差を補正するとやはりデフレは実物経済に悪影響を与えていたという研究もあります17Kaufmann [2020])。

この時代に、貨幣数量理論は、アルフレッド・マーシャル、すでに述べたフィッシャー、ヴィクセルによって、貨幣の需要供給理論として進化を遂げました。その本質は、同時期に起きた限界革命と呼ばれる経済学の革新と軌を一にしており、財・サービスの価格決定に需要供給理論が本格的に整備されたことと密接に関連しています18。なお、ヴィクセルは自然利子率をいかに定義するかについて検討していますが、それは短期ではなくむしろ長期の利子率です19

1930年代には、激しいデフレを伴う大不況が到来し、貨幣経済学は大きく進化し、マクロ経済学が誕生します。ジョン・メイナード・ケインズの革新性は、有効需要の理論の構築にありました。ただし、最も成功したケインズ解釈であるIS―LM分析が賃金や価格の硬直性を前提としているのに対して、ケインズの意図は賃金や価格の硬直性を前提としておりません。彼の場合、賃金や価格はむしろ伸縮的であればあるほど、経済の不安定性は増すことになります20

1970年代には、高いインフレが到来しました21。この時代には、ミルトン・フリードマンとマネタリズムの経済学が一世を風靡しました。もっとも、フリードマンの経済学は、ケインズ経済学の延長線上にあります。よく知られている貨幣数量理論の方程式MV=PQ(Mは貨幣数量、Vは貨幣の流通速度、Pは物価水準、Qは実質産出量)において、右辺PQは名目GDPになります。また、左辺は貨幣の供給、右辺は貨幣への需要と捉えることができます。ここで貨幣の供給からの因果関係を想定するならば、フリードマンの議論は、貨幣供給が名目GDPを決定するということです。名目GDPの変化のうち、物価と実質産出量のどちらがどれくらい変化するかは、総供給曲線の形状によります。仮に実質産出量が一定であるならば、Mの変化は物価だけを変化させますが、実質産出量は一定とは限りません。長期において貨幣の中立性が成り立つとはいえ、短期の非中立性は、古典派から続く認識です。

現代の議論に関連して重要なのは、フリードマンが述べた、コスト・プッシュ要因は持続的なインフレにはならないという命題です。

相対価格の変化と絶対価格の変化を区別することは極めて重要である。原油価格や食料価格が上昇すると、顧客はそれらにより多く払わなければならないので、その他の商品にはこれまでよりも支出を減らさざるを得ない。このことはその他の商品の価格を引き下げたり、価格上昇をより緩やかにしたりするに違いない。ある財の他の財と比較した価格が変化したからと言って、全ての商品価格の平均水準が大きな影響を受けなければならないわけではない。調整の遅れのために、石油価格や食料価格の急速な上昇は一時的にインフレ率を多少上昇させるだろう。だが、・・・インフレの基本的な原因は、産出の成長と比較した貨幣量の急速な成長である(Friedman [1974]:柿埜 [2019]、93頁に引用)。

もう一つ、この時代に、経済学における「期待」の役割が注目を浴びるようになりました。持続的なインフレに貢献するのは、外的なコスト・プッシュ要因よりもインフレ予想です。大インフレの鎮圧にはインフレ予想の鎮静化が必要でした。この「期待」の重視は、ロバート・ルーカスやトーマス・サージェントらによる合理的期待革命と結びつけられていますが、「期待」は論者によって差はあれ、貨幣経済学の歴史を通じて取り上げられてきました。そして、金融政策は、物価の安定のためにインフレ予想を安定化させることが重要な役割である、という認識が広がりました。現在多くの国の中央銀行で採用されている金融政策の枠組みであるインフレ目標は、1970年代大インフレの教訓から生み出されたものです。このような認識は学界でも中央銀行界でも次第に共有され、1990年代後半以降の日本での長期にわたるデフレを伴う停滞、2000年代の世界的金融危機とその後の不況への対応、そして2020年からの新型コロナウイルス感染症への対応を経て、現在でも維持されています。

  1. 16若田部 [2009]、Wakatabe [2015、2017]を参照してください。
  2. 17なお、「ヴィクトリア均衡」を1820年代から1890年代と長めにとったFischer [1996]については、ロンド・キャメロンによる批判的な書評も参考になります(Cameron [1997])。若田部 [2013]、255-59頁も参照してください。
  3. 18Laidler [1991]を参照してください。この時代には、中央銀行の基礎理論としてもう一つ重要な議論として、フランシス・イシドロ・エッジワースの1888年論文があります(Edgeworth [1888])。
  4. 19Rogoff, Rossi, and Schmelzing [2022]、p. 8、note 9が論じているように、ヴィクセルの自然利子率は、短期と長期の利子率を含む経済全体の平均概念です。
  5. 20このプロジェクトは後に不均衡の経済理論の構築に受け継がれたものの、未完に終わっています。
  6. 211970年代の大インフレについては、若田部 [2022]で言及しました。

4.未来:歴史からの展望

最後に、これまでの歴史を踏まえて、未来の金融政策を考えます。そのために、まず未来の経済金融環境を考えてみます。

(1)歴史から得られる未来の経済金融環境と金融政策への示唆

Jorda et al. [2019]は、1870年から2015年までの日本を含む16か国について、実質安全資産収益率(r safe)、実質成長率(g)、実質総資産収益率(r wealth)には、おおよそ以下の関係が成り立つことを示しました。

r safe<g<r wealth

安全資産の収益率がもっとも低く、経済における財・サービスのフローの総体への収益率がそれに続き、リスク性資産を含む資産の総体への収益率が一番高いという関係は、直観的にも理解可能です。ここから三つの関係を導くことができます。

第一に、大戦間期と大インフレから2000年代くらいまでを除いて、r safe<gが成り立っています。gは、第二次大戦後の高度成長期には4%台に達しているものの、1970年代以降は2%台に落ちています。その後、グローバル金融危機の発生でさらに落ち込みましたが、最近でも2%程度を維持しています。実証的には、経済成長率と実質利子率との間には、相関関係はみられないとも言えます22

関連して、自然利子率の動向はどうでしょうか。自然利子率については各種の推計がありますが、実質利子率の動向を見る方法もあります。Schmelzing [2020]によれば、歴史的に見たグローバル実質利子率は、低下傾向にあります23(図表8)。

第二に、二つの大戦期を除いて、g<r wealthが成り立ちます。両者の差には、gの低下とr wealthの上昇のどちらも貢献しているものの、r wealthの上昇によるところがより大きいとされています。

第三に、ごく一時期を除けば、r safe<r wealthが成り立ちます。両者の差はリスク・プレミアムに相当しますが、それは近年縮小傾向にあります。ブレトン・ウッズ体制下では、安全資産収益率が低い一方、実質総資産収益率は住宅資産の収益率に押し上げられ高かったという関係がありましたが、近年実質総資産収益率は下がってきています。

仮に以上の関係が今後も続くとしたならば、未来の金融政策に与える示唆は何でしょうか。

第一に、自然利子率の低下傾向が続くとしたら、中央銀行の金融政策の課題は、依然として実質利子率をいかに効果的に下げていくかということになります。低インフレ時代にゼロ金利制約に直面した中央銀行は、金融政策の有効性を増すための対応を実行してきました。政策目標においては、様々な改善提案がされてきました(図表9)。結果として、2%のインフレ目標にコミットすることの重要性が再確認されました。手段においては、例えば、日本銀行では、量的緩和、マイナス金利、購入資産の多様化、イールド・カーブ・コントロール、フォーワード・ガイダンスなどを導入してきました。政策目標と手段の双方において、金融政策の有効性を増すための政策イノベーションの必要性は、今後とも増すことはあれ、減ることはないと言えます24

第二に、g<r wealthであるならば、総資産の対GDP比率は今後も傾向的に上昇することになります。ここで総資産と総負債の間に一定の正の相関関係があるとすれば、総負債の対GDP比率も傾向的に上昇することになります。このことは、資産価格の変動が資産(債務)残高を通じて経済に及ぼす影響が増大することを意味します。

第三に、リスク・プレミアムの縮小は、リスクの過小評価を招く可能性があります。Krishnamurthy and Muir [2017]は、リスク・プレミアムが縮小し、リスクの過小評価が起きるときに金融危機が多発するとしています。中央銀行は、金融システムの安定を維持すべく、今後ともますますマクロ・プルーデンス政策への備えが必要でしょう。

以上の考察は、過去の歴史、傾向に依拠していますので、こうした傾向が大きく変われば、結論も変わります。そうした大変動が今後起きる可能性は否定できません。しかし、2.で述べたように、今後自然利子率が傾向的に上昇するかどうかは不確定です。むしろ、自然利子率は、依然として下落していく可能性も否定できないと考えられます。長期の歴史から展望する限り、マイルド・インフレ・レジームは終焉しておらず、長期停滞、「日本化」の潜在的危険性は過ぎ去っていないというべきでしょう。

  1. 22長期債のグローバル実質利子率と実質経済成長率の関係を見たRogoff, Rossi, and Schmelzing [2022]でも、明確な関係は示されていません。
  2. 23このグローバル実質利子率は、データの制約上、イタリア、オランダ、フランス、スペイン、英国、ドイツ、米国、日本の8か国の入手可能なデータを用いて、各国GDPシェアでウェイト付けした名目利子率とインフレ率から計算されています。そのため、最近の中国や新興国などの台頭は考慮されておらず、過少推計になっている可能性に注意が必要です。
  3. 24これらについては、Bernanke [2022]、pp. 330-65がまとまっています。

(2)「量的・質的金融緩和」政策の導入とその成果

もっとも、「日本化」が生じたからといって諦める必要はありませんでした。長年デフレに苦しめられてきた日本でも、2013年4月の「量的・質的金融緩和」の導入という金融政策の転換以降は、一定の成果が見られました。そもそも労働力人口が減少するもとでも経済成長は達成されてきましたが、2013年以降は失業率が下がり、就業者数が増えるなかで、経済成長率は改善し、物価も上昇しました(図表10、11)。労働力人口が減少しているために全体の経済成長率は下がって見えますが、その間に起きた就業率の変化を考慮してみた一人当たり実質経済成長率は、2000年代には0.4%だったのに対して、2010年代には1.3%に回復しています。これは1990年代と同程度の伸び率です(図表12)。このことは、労働者一人当たり生産性も上昇していることを意味します。労働参加率も上昇しました。雇用情勢の改善は、新卒の就職率を改善させ、いわゆる就職氷河期は消滅しました。もちろん、これまでの就職氷河期で苦労した世代を支援することは極めて大きな課題ですが、彼らが雇用される条件を作るためには、高圧経済の維持が必要になります。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、1998から2012年度の平均が-0.3%であったのに対して、2013年度以降は0.4%に上昇しました(図表13)。2%の「物価安定の目標」には達していないのは事実ですが、継続的に物価が下落するという意味でのデフレではない状況には到達しました25

以上のような経済・物価情勢の改善は、2013年の2%の「物価安定の目標」の採用を起点として始まりました。日本では長年デフレであったわけですが、持続的な金融緩和は実物経済に好影響を与えてきたと言えます。このことは結果として、「量的・質的金融緩和」が高圧経済論を支える一つの証拠を提示していると言えます。

  1. 25賃金と物価の関係については、若田部 [2022]、3.(2)で言及しました。

5.おわりに

この講演では、デフレの懸念を伴うマイルド・インフレ・レジームの時代が終わり、長期停滞、「日本化」の懸念は過去のものとなった、今後は高インフレ・レジームが到来する、というナラティブに対して、まだ長期停滞、「日本化」の懸念はぬぐい切れていないと論じてきました。具体的には、通常指摘されているコスト・プッシュ要因、実物的要因、自然利子率の変化だけでなく、貨幣的要因に着目することが必要であるという考えを示しました。

冒頭のヒックスの言葉が示すように、これまで貨幣経済学は現実の経済・金融動向との対応で変化してきました。物価の変動を経て、貨幣経済学では物価安定の重要性が強く意識されるようになりました。しかも、いわゆるインフレへの怖れだけでなく、デフレへの怖れも根強くありました。貨幣数量理論は、短期の非中立性と長期の中立性で特徴づけられるといいますが、その出発点から長期の非中立性の可能性も指摘されてきました。その背景には、市場における価格調整は完全ではないということがあります。その後、信用経済の発達とともに、二つの利子率分析が構築されてきました。二つの利子率の乖離は、不換貨幣制度のもとでは自動的に調整されることはないので、物価を安定化させるためには、貨幣の発行主体である中央銀行の役割が必要になります。

現在の貨幣経済学のモデルも、今後の状況次第では変化を求められる可能性があります。しかし、これまでの歴史が教えてきたのは、インフレ、デフレを決めるのに重要なのは貨幣的要因であり、その貨幣を管理する中央銀行の金融政策が重要な役割を果たすということです。

長年デフレが続いてきた日本の経験が示しているのは、デフレの懸念はなかなかぬぐい切れないということです。それでも、2013年からの金融政策により、デフレではない状況まで改善しました。デフレだからといって諦める必要はありませんでした。もっとも、これまでの日本の経験は、名目値と実質値、短期と長期、景気循環と経済成長といった経済学における様々な二分法に疑問を投げかけました。これらについては、理論的にも実証的にもまだ解明されていない点が多いと考えます。この意味では、貨幣経済学は発展途上であり、ヒュームの提起した問題はいまだに継続していると言えます26

  1. 26金融政策の有する資本と技術への履歴効果を強調する論文として、Jorda, Singh, and Taylor [2020]があります。また、労働参加率の変化を考慮した際には金融政策の反応が異なる可能性を指摘したものとして、Kurozumi and Van Zandweghe [2022]があります。

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