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【挨拶】わが国の経済・物価情勢と金融政策兵庫県金融経済懇談会における挨拶要旨

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日本銀行政策委員会審議委員 政井 貴子
2017年12月6日

I.はじめに

本日は、兵庫県の行政および金融・経済界を代表される皆様との懇談の機会を賜りまして、誠にありがとうございます。また、日頃より日本銀行神戸支店の業務運営に多大なご協力を頂いております。この場をお借りして御礼申し上げます。

金融経済懇談会は、日本銀行の政策委員が、金融経済情勢や金融政策についてご説明申し上げるとともに、各地の経済・金融の現状や日本銀行の政策に対するご意見などを拝聴させて頂く機会として開催しております。

本日は、経済・物価情勢や日本銀行の金融政策などについてお話させて頂き、その後、皆様から当地の実情に即したお話やご意見などを承りたく存じます。

II.経済・物価情勢

日本銀行は、10月末の政策委員会・金融政策決定会合において、「経済・物価情勢の展望」、いわゆる「展望レポート」を取りまとめ、2019年度までの経済・物価見通しを公表しました。

経済・物価情勢については、「展望レポート」の内容に沿って、お話したいと思います。

1.海外経済の動向

はじめに、海外経済の動向ですが、現状について、「総じてみれば緩やかな成長が続いている」と判断しています。

先行きについては、先進国の着実な成長に加え、その好影響の波及や各国の政策効果によって、新興国経済の回復もしっかりとしたものになっていくと想定しています。10月に公表されたIMFの世界経済見通しでも、概ね同様の見方が示されています(図表1)。IMFは近年、成長見通しを下方修正することが多かったのですが、今年度入り後は、むしろ上方修正が続いています。

主要地域別にみると、米国では、雇用・所得環境の着実な改善を背景として、家計支出を中心に回復を続けており、先行きについても、国内民間需要を中心にしっかりとした成長が続くと見込まれます。

欧州では、着実な回復を続けており、基調としては緩やかな回復経路をたどる可能性が高いとみられます。

中国については、当局が財政・金融政策を機動的に運営するもとで、今後も概ね安定した成長経路をたどると考えています。

中国以外の新興国・資源国では、輸出の増加や既往の資源価格の底入れ、各国の景気刺激策の効果などから全体として持ち直しているところですが、先行きについても、先進国の着実な成長の波及などから、成長率は徐々に高まっていくと予想しています。

海外経済に対する見方として、私自身は欧州の金融セクターを巡る懸念が後退するなど、海外経済の下振れリスクは全体として低下していると思います。こうした中、原油価格をはじめコモディティ価格がしっかりしていることに注目しています。グローバルにみると、先行き経済の不透明感が和らぐ中、過去数年間に控えられてきた資源関連の設備投資が今後相応に出てくる可能性は高く、来年度にかけて世界経済が着実な成長を続ける確度は高まっているとみています。

2.わが国の経済・物価情勢

(1)現状

次に、国内の経済・物価情勢についてお話します。

わが国の景気については、「所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している」と判断しています。日本銀行は、今年度入り後、2度にわたり、景気の総括判断を前進させました。内外需要の増加を映じて、鉱工業生産が増加基調にあるほか、労働需給は着実な引き締まりを続けています。この結果、労働と設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは着実に改善しています(図表2、3、4)。

国内需要の面では、設備投資は、企業収益や業況感が改善するなかで、緩やかな増加基調にあります(図表5)。9月短観における2017年度の事業計画をみると、GDPの概念に近いベースの設備投資計画は、前年比+6.9%と、9月調査結果の過去平均(2004~2016年度:+4.9%)をはっきりと上回るなど、大企業を中心に堅調なスタンスとなっています(図表6)。また、個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅さを増しているほか、住宅投資は横ばい圏内の動きとなっています(図表7)。輸出は、先ほどお話した海外経済の成長を背景に、増加基調にあります(図表8)。

今回の景気拡大の1つの特徴は、過去との対比でみて、幅広い地域、企業規模、業種に拡がっていることです。直近の9月短観では、中小企業の業況判断指数(DI)が約26年振りの高水準となりました。また、「地域経済報告」、いわゆる「さくらレポート」においては、今年入り後、多くの地域が景気判断を引き上げています。当地経済を含む近畿地域の景気判断については、足もと、7月、10月と2期連続で引き上げられています。

物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が0%台後半となっています(図表9)。

(2)先行きの見通し

先行きについては、見通し期間中、景気面では「緩やかな拡大を続けるとみられる」と予想しています。国内需要は、きわめて緩和的な金融環境や政府の大型経済対策による財政支出などを背景に、増加基調をたどると考えられます。この間、海外経済の成長に伴い、輸出は基調として緩やかな増加を続けるとみられます。以上のもとで、2018年度までの期間を中心に、潜在成長率を上回る成長を維持するとみられます。2019年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって、成長ペースは鈍化するものの、景気拡大が続くと見込まれます。10月の展望レポートにおける政策委員見通しの中央値をみると、実質GDP成長率は17年度+1.9%、18年度+1.4%、19年度+0.7%となっています(図表10)。

主要な項目別にみると、まず、設備投資は、緩やかな増加を続けると予想しています。これは、きわめて投資刺激的な金融環境が維持されるもと、企業収益の改善や財政投融資の効果の発現、そして期待成長率の緩やかな改善などが効いてくるためです。具体的な案件としては、(1)オリンピック・都市再開発に関連した投資、(2)人手不足等に対応した効率化・省力化投資、(3)成長分野への研究・開発(R&D)投資などの増加が見込まれます。個人消費は、雇用者所得の増加などに加え、耐久財の買い替え需要もあり、基調としては緩やかな増加を続けると見込まれるほか、住宅投資は、横ばい圏内の動きを続けると予想されます。輸出は、基調としては、当面、わが国が比較優位を持つ情報関連や資本財が下支えとなって堅調に推移した後、海外経済の改善等から緩やかな増加を続けると予想しています。鉱工業生産についても、当面はしっかりと増加を続け、その後も、基調としては緩やかな増加を続けると見込んでいます。

また、物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格の押し上げ圧力は次第に減衰するものの、需給ギャップが改善するもとで、企業の賃金・価格設定スタンスも次第に積極化するとともに、予想物価上昇率も次第に伸びを高めていくことから、2%程度に向けて上昇率を高めていくと考えています。目先は、個人消費が緩やかに増加していくもとで、食料工業製品や生活関連財をはじめとする財の価格が次第に伸びを高めていくとみられるほか、一般サービスの価格は、外食や家事関連サービス等を中心に人件費上昇を転嫁する動きが拡がっていくと見込まれます。10月の展望レポートにおける消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、政策委員見通しの中央値は、17年度+0.8%、18年度+1.4%、19年度は、消費税率引き上げの影響を除き、+1.8%となっています(前掲図表10)。

見通しに対する上振れ要因・下振れ要因として、経済情勢については、米国の経済政策運営や地政学的リスクなど海外経済の動向、企業や家計の中長期的な成長期待、財政の中長期的な持続可能性が、また、物価情勢については、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向、マクロ的な需給ギャップに対する価格の感応度が低い品目があること、今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向が挙げられます。私自身は、経済の下振れリスクは限定的であると考えている一方、物価の下振れリスクは相応に大きいとみています。これは特に、企業の積極的な価格設定スタンスが、今後どの程度広がりをもってくるかには不確実性が大きいとみているためです。

III.日本銀行の金融政策

次に、日本銀行の金融政策についてお話します。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を実現するため、強力な金融緩和を行うことにより、きわめて緩和的な金融環境を実現しています。

1.長短金利操作付き量的・質的金融緩和

現在、日本銀行が採用している「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みは2つの要素から成り立っています。

1つは、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を維持する「オーバーシュート型コミットメント」です。これは、日本銀行の強い決意を示すことにより、予想物価上昇率を高めることが狙いです。この点は、後ほど再度触れたいと思います。

もう1つは日本銀行が長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」です。新しい枠組みでは、短期政策金利と10年金利の操作目標を示すこととしています。現在の「金融市場調節方針」では、短期政策金利を-0.1%に設定するとともに、10年物国債金利の操作目標を「ゼロ%程度」とし、これを実現するように国債買入れを行っています(図表11)。

2.強力な金融緩和の狙い

2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入して以降、金融緩和の基本的なメカニズムは変わっていません。すなわち、(1)日本銀行の大規模な国債買入れによって、イールドカーブ全体を押し下げること、そして(2)日本銀行が2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、予想物価上昇率を押し上げることです。これらによって、実質金利を引き下げることとなります(図表12)。

日本銀行は、なぜこれほどまでに金利を引き下げる必要があると考えているのでしょうか。金融緩和の基本的なメカニズムは、景気や物価に中立な金利――自然利子率と呼ばれます――と比べて、実質金利を低位にすることです。わが国の自然利子率は、潜在成長率の低下などを映じて、趨勢的に低下しています1。日本銀行のスタッフの推計によると、最近では、概ね0%近傍で推移しています(図表13)。こうした推計値はその手法によって異なるため、相当の幅をもってみる必要がありますが、非常に低い水準となっています。すなわち、これほど低い自然利子率のもと、緩和的な金融環境を実現するためには、金利を非常に低位な水準まで押し下げる必要があるということです。このように、「イールドカーブ・コントロール」によって生み出された現在のきわめて緩和的な金融環境は、金融面から、わが国の経済活動を強力にサポートしていると考えています。

  1. なお、このように自然利子率が低下傾向を辿っているのは、日本に限ったことではなく、グローバルな現象です。このことは、リーマンショック以降、日米欧においてかつてないほどの低金利となっていることの背景の一つです。

3.「ノルム」の変化に向けて

わが国では、1990年代の後半から15年以上にわたり消費者物価の前年比がゼロないし僅かなマイナスが続くデフレの状態が続いてきました。わが国において、所謂デフレ・マインドがなかなか払拭されない背景の1つには、わが国の家計および企業が、デフレ期の環境に順応してきたことがあると思います。これほどまでに強力な金融緩和を5年近く続けても、2%の「物価安定の目標」を実現出来ていないことは、原油価格の大幅な下落といった外部環境があったにせよ、デフレ・マインドが想定以上にしつこかったことの証左だと思います。ただし、そうであっても、強力な金融緩和を行うこと――すなわち、わが国における自然利子率との対比でみて、実質金利を十分に低くすること――が必要であることは何ら変わりないと考えています。他方で、日本銀行の「量的・質的金融緩和」は、導入後5年近く経ちますので、その効果と副作用については引き続き肌理細かくみていく必要があると感じています。

最近、世界的にみて、物価の上昇が控えめとなっている背景として、経済のグローバル化やデジタル化の深化を指摘する向きが改めて多く聞かれるところです。これらの影響については、まだ実証的な研究が積み上げられているところであり、確たることは言えないようです2。もちろん、こうした経済構造の変化が物価に与える影響は十分に考慮されるべきことかと思います。しかしながら、グローバル化やデジタル化の影響が先進国の物価を押し下げている面が相応にあるとしても、わが国と米欧の物価動向を同じように議論することは適当でないと考えています。これは、米欧の場合、原油価格の大幅な下落を経験しつつも、インフレ期待は概ね2%でアンカリングされているとみられるほか、基調的な物価指標は1%台半ば程度で推移しているためです。この点、わが国の消費者物価(除く生鮮食品)は、先ほどお話したとおり、0%台後半(除く生鮮・エネルギーでは0%台前半)に止まっています。

わが国において、2%の「物価安定の目標」の実現には、デフレ・マインドを払拭し、社会全体にとって、「物価や賃金は毎年2%くらい上がってくるものだ」という物価観がしっかりと根付いていくこと――2%の物価上昇をノルム(規範)として定着させていくこと――が必要です。そのためには、先ほど申し上げたとおり、日本銀行が「物価安定の目標」の実現に向けた決意を示し、金融政策を運営していくことが何よりも大切です。その際、政府と日本銀行のコミュニケーションがしっかりと取れていることも求められると考えます。また、国全体の慣行や意識も変わっていく必要があると思います。最近、値上げを行う企業では、自社商品・サービスの値上げが20数年振りという例も多く、いまは企業自身も値上げの経験が乏しい状況です。消費者としても、一定程度の賃金・物価が上昇していく環境は当たり前のものとはなっていません。「ノルム」の変化とは、まさに、社会の色々な側面で変わっていくことです。次に、お話する金融教育は、一見、経済・物価や金融政策から離れているようにみえますが、今申し上げた「ノルムの変化」とも関係すると思っています。

  1. 2インフレの基本的な決定要因に、グローバルなアプローチを考慮すべきとの主張は、Borio BIS金融経済局長による主張が有名(最近の実証分析としては、Raphael Auer, Claudio Borio and Andrew Filardo (2017), "The globalisation of inflation : the growing importance of global value chains," BIS working papersがある)。一方、先進国において、グローバルなスラックが国内のインフレに直接的に与える明確な効果は確認されないとの分析が、FRBエコノミストから示されている(Jane Ihrig, Steven B. Kamin, Deborah Lindner and Jaime Marquez (2010), "Some Simple Tests of the Globalization and Inflation Hypothesis," International Finance。なお、2017年初までアップデートしても結論は不変の由)。

IV.金融リテラシーの向上に向けた取組み

1.国際的な気運の高まり

金融教育の重要性が世界的に再認識されることとなったきっかけは、リーマンショックの発生でした。OECDは2012年、「金融教育のための国家戦略に関するハイレベル原則」を策定し、G20ロスカボス・サミットで承認されています。ここでいう金融教育とは、単なる金融知識の普及ではなく、「金融の消費者ないし投資家が、金融に関する自らの厚生を高めるために、金融商品、概念およびリスクに関する理解を深め、情報、教育ないし客観的な助言を通じて、リスクと取引・収益機会を認識し、情報に基づく意思決定を行い、どこに支援を求めるべきかを知り、他の効果的な行動をとるための技術と自信を身に付けるプロセス」と定義されています3。G20首脳によって承認された原則のもと、金融教育の向上に向けた取組みはグローバルで進められており、金融教育のための国家戦略を採択する政府の数は、60近くまで増えているといいます。

  1. 3OECD (2005), Recommendation on Principles and Good Practices for Financial Education and Awareness.

2.わが国における金融リテラシー向上の意義

このように気運が高まる中、わが国では、金融庁や金融広報中央委員会が2013年に「金融経済教育推進会議」を設置し、金融経済教育を推進する取り組みを強化しています4、5。また、2014年からNISA(少額投資非課税制度)がスタートしていますが、本年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、家計の安定的な資産形成の促進に向けて、来年から始まる「つみたてNISA」を含め、NISA制度全体の更なる普及・促進を図るとともに、家計の実践的な投資知識の深化につながる金融・投資教育を充実させることが謳われています。将来に対する漠然とした不安を感じる人々が多い中において、金融リテラシーの向上は大切だと思います。また、先ほど申し上げたとおり、日本銀行は2%の「物価安定の目標」を実現することを目指していますが、賃金や物価が安定的に上昇する社会においては、金融リテラシーはなお重要性を増すことになるため、いまの日本における金融教育推進の意義は格段に大きいと思っています。

わが国における金融リテラシーについては、これまで様々な調査がありますが、いずれの結果をみても課題は少なくありません。昨年、金融広報中央委員会が行った「金融リテラシー調査」のうち、海外と比較可能な設問について比べると、わが国の正当率は、31か国中24番目の水準に止まっています6。また別のある調査では、デフレの意味を問う質問での正答率が2割強との結果となっています7。金融教育も「教育」である以上、課題が尽きないこと自体は当然だと思います。ただ、気になるのは、わが国においては、そもそも金融教育の必要性すら十分に認識されていないのではないかということです。例えば、金融庁が昨年実施した成人向けのアンケート調査では、「投資教育を受けたことがない」と回答した人――全体の約7割になります――のうち、約3分の2が、「金融や投資の知識を身に付けたいと思わない」と回答しています(図表14)。アンケート回答者のうち、半分弱がそのように答えているということです。殊に「投資」というと、「お金持ちがやるもの」との印象が拭えていないように思います8。このことは、デフレが長らく続いたことが影響している側面もあり得ると思いますが、金融教育の必要性が今以上に社会に認識されることが大切かと思います。そのことは、一定程度の物価上昇をより当然なものとして受け入れられることと表裏一体のようにも思います。

  1. 4わが国では、1950年以降、経済自立を目標とした国民の任意的・積極的な貯蓄運動が「貯蓄推進委員会」のもと、進められた。民間の各団体の中核組織として発足した「貯蓄増強中央委員会」(1952年設立)が、その後、1988年、「貯蓄広報中央委員会」に名称変更され、経済、金融、通貨等についての正しい知識・情報提供を目的とした広報活動に主眼が置かれる組織となり、いまの「金融広報中央委員会」(事務局 日本銀行情報サービス局内)となっている。
  2. 5金融庁が設置した「金融経済教育研究会」の報告書(2013年4月公表)を踏まえて、金融経済教育の推進にあたっての課題について審議することを目的として、金融広報中央委員会を事務局とする「金融経済教育推進会議」が設置された。
  3. 6金融リテラシー調査は、日本の人口構成に合わせた25,000人のデータを用いたわが国初の大規模調査。海外との比較は、OECD調査(2016年、30か国が対象)との共通設問6問の正答率の単純平均値を比較。
  4. 7「物価が下がり続けるデフレ時代、次に正しいものは?」との問いに対し、回答は、(1)お金の価値が上がるので借金は有利、(2)お金の価値が上がるので借金は不利、(3)お金の価値が下がるので借金は不利、の三択(日本経済新聞2017年9月2日)。有効回答数は1,000人(全国の男女20~60代)。
  5. 8証券投資に関する調査では、証券投資全般のイメージとして、約3割が「お金持ちがやるもの」と回答している(日本証券業協会、「平成27年度 証券投資に関する全国調査」(調査対象は全国20歳以上の男女7,000人)。

V.おわりに ―― 兵庫県経済について ――

最後に、兵庫県経済についてお話させて頂きます。

当地は、阪神・淡路大震災から20年を経て、今年は神戸開港150年、来年は兵庫県発足150年と大変大きな節目を迎えています。

震災後、皆さまの官民一体となったご努力によって復旧・復興を遂げられており、新たな成長軌道に乗りつつあるように思います。このようなタイミングを捉えて、当地経済のさらなる発展に向けた様々な取組みが官民で進められていると伺っております。

まず、インフラ面では、神戸港において次世代コンテナターミナルと流通・加工・製造機能の高度集積が一体化した「神戸港ロジスティクスターミナル」などの整備に向けて取り組まれていると聞いています。また、神戸空港では民間事業者による関西国際空港および大阪国際空港との一体運営が開始される予定であるほか、三宮周辺地区の再整備に向けた議論が進められています。

次に、成長産業の育成面では、阪神・淡路大震災からの復興事業として策定された「神戸医療産業都市構想」の拠点であるポートアイランドに進出する企業数が着実に増え、雇用と経済効果を生み出しています。ポートアイランドにあるスーパーコンピュータ「京」については、理化学研究所が現在の「京」の100倍の計算性能を目標とする「ポスト『京』」の完成を目指しており、神戸医療産業都市との相乗効果も期待されています。このほか、水素エネルギーの活用や航空機産業の育成も進められており、わが国産業の高度化を牽引していく拠点として、益々その存在感を高めていくことが期待されます。

また、観光面では、神戸と姫路城、城崎温泉の3つの観光地をつなぐ周遊ルートを「ひょうごゴールデンルート」と名付け、兵庫県ではこれに重点を置いたプロモーションを展開されているとのことです。当地は、六甲の山々と海に囲まれた美しい神戸の街、世界遺産の「姫路城」、風情ある街並みと外湯めぐりで有名な「城崎温泉」など多彩な観光資源がありますので、伸び代が非常に大きいと感じています。昨年は、城崎温泉を訪れる外国人宿泊客が大幅に増加し、5年前の40倍の4万人を記録したという話も聞いています。日本を訪れたことのある外国人が増える中、インバウンド需要も「モノ消費」中心から「コト消費」中心に移行しているといいますので、東京オリンピック・パラリンピックを2020年に控え、当地の強みを活かした施策を進めていくチャンスだと思います。

最後に、地域創生という観点からは、国家戦略特区である養父市において、特区制度を活用した法人営農が展開されています。養父市が3年半前に中山間地農業の改革拠点として国家戦略特区に指定されて以降、農業の競争力強化に向けた様々な興味深い取組みが行われていることに注目しています。また、地域金融機関においても、地方自治体との連携を強化し、地元企業の人材確保や販路拡大などの支援に取り組んでおられます。

こうした多くの方々のご努力が実を結び、兵庫県経済が一層発展していくことを心より願っております。

ご清聴ありがとうございました。