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【講演】 人手不足を越えて:持続的経済成長への展望 日本経済団体連合会審議員会における講演

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日本銀行総裁 黒田 東彦
2017年12月26日

1.はじめに

日本銀行の黒田でございます。本日は、わが国の経済界を代表する皆様の前でお話しする機会を賜り、誠に光栄に存じます。

早いもので、今年も残すところ1週間となりました。本日は、この1年を締め括るにあたり、本年の内外経済を振り返るとともに、戦後2番目の長さとなった今回の景気回復局面について、人手不足とその克服という観点に焦点を当てながら、過去の事例と比較しつつお話しします。そのうえで、日本銀行による金融政策運営についてご説明し、最後に、来年の日本経済に対する期待を述べたいと思います。

2.新たなフェーズに入った世界経済

それでは、世界経済の話から始めます。私は、昨年のこの場で、世界経済は、「グローバル金融危機の負のレガシーを清算し、新たなフェーズに入りつつある」とお話ししました。実際、やや長い目でみると、世界経済は、2008年のリーマン・ショック以降、抑制された状態が続いていましたが、本年は、こうした大きな流れが変化する転換の年であったように思います。

一例として、世界貿易の動きをみてみます(図表1)。世界各国の輸入を合計して算出した世界貿易量は、リーマン・ショック以降、世界の経済成長率を下回る伸びにとどまり、「スロー・トレード」と呼ばれる低調な状況が続いていました。貿易の影響を受けやすい製造業の活動も抑制されてきました。もっとも、こうした流れは、昨年後半から今年にかけて反転しています。新興国を中心に在庫調整が大きく進捗したこともあって、このところ、素材、情報関連財、資本財といったモノの動きが活発化しており、世界の貿易量は、再び世界経済の成長率を上回るペースで増加しています。これと歩調を合わせる形で、グローバルな製造業の景況感も、昨年前半に底を打ち、本年は大きく改善しています。地域別の経済成長率をみても、最近は、先進国、新興国ともに緩やかに上昇しており、世界経済はバランスのとれた成長を実現しています。

先行きについても、緩やかな成長が続くとみています。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しをみると、上方修正が続いており、先進国、新興国のいずれも、来年にかけて、堅調な伸びを維持する姿が見込まれています。最近の国際会議では、「世界経済の同時成長(synchronous growth)」という言葉が頻繁に使われるようになってきました。一頃に比べて、各国からの参加者の顔が一様に明るくなっており、世界経済が新たなステージに入ったことを強く実感しています。

3.わが国の経済情勢:息の長い景気回復

続いて、わが国の経済情勢についてお話しします。今申し上げた世界経済の成長にも後押しされて、この1年、わが国の経済は着実に改善しました。7~9月の実質GDP成長率は、年率+2.5%と高めの伸びとなり、これで、2016年1~3月から数えて7四半期連続のプラス成長となりました。

個別にみると、わが国の輸出は、アジア向けの情報関連財などを中心に増加基調にあります。国内需要も増加しています。企業収益が改善するなかで、設備投資は増加傾向を続けています。個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、振れを伴いながらも、緩やかに増加しています。公共投資も、昨年度の経済対策の執行などに伴い、高めの水準を維持しています。このように、現在のわが国経済は、外需と内需、民需と公需といった複数の柱に支えられて、バランスよく、緩やかに拡大しています。景気拡大の裾野が幅広い経済主体に拡がっていることも、最近の大きな特徴です。私どもの短観の業況判断DIをみますと、大企業や製造業だけでなく、中小企業や非製造業でもプラスの判断が続いています(図表2)。地域的にみても、全ての地域で業況判断が大きく改善しています。

今回の景気回復については、その息の長さも特徴です。2012年12月に始まった今回の景気回復局面は、連続60か月に達したとみられます(図表3)。これは、高度成長期の只中にあった「いざなぎ景気」の57か月を超えて、戦後2番目の長さとなります。戦後最長の景気回復は2002年から2008年にかけての回復局面であり、第2位は今回です。第3位は1965年から1970年までの「いざなぎ景気」で、第4位は1986年から1991年までの「平成景気」です。

今挙げた4つの景気回復局面には、それぞれ特徴がありました。例えば、いざなぎ景気の頃は、人口が着実に増加するなか、欧米諸国に「追いつき追い越せ」の掛け声の下で、年平均10%を超える経済成長が実現していました。当時の経済に満ち溢れていた先行きに対する成長期待は、現在とはかなり異なります。また、平成景気については、幅広い経済主体の期待が過度に強気化し、これが投資活動や消費者の行動を過熱させた、いわゆるバブル経済の時期と重なります。

一方で、これらの局面には類似する点もあります。特に、どの局面も、その前後の時期に比べて、労働需給がタイト化しました。現在の人手不足の影響が賃金や物価に波及していくメカニズムを確認するうえで、こうした過去の経験は示唆に富みます。言葉を変えれば、過去の経験は、人手不足が今後の日本経済をどう変貌させていくかについて、現在の我々に重要な手がかりを与えてくれると考えています。そこで以下では、もう少し具体的に当時を振り返ってみたいと思います。

4.人手不足と賃金、物価、生産性:過去の経験と現在への示唆

過去の経験

過去と現在を比較するに当たり、最初に、理論的な整理をしておきたいと思います。人手不足に伴う賃金上昇により、コスト・アップに直面した企業は、通常、次の2つの選択肢を検討します。ひとつは、収益を確保するため、賃金コストの上昇分を、製品やサービスの販売価格に転嫁することです。もうひとつは、人手不足への対応として、省力化投資や生産・販売体制の見直しにより、同じ人数で、より多くの製品やサービスを生産することです。この場合、賃金コストが上昇しても、販売価格への転嫁を避けつつ、収益も確保できるようになります。人手不足に伴い従業員の時給が2倍になっても、新たな生産設備を導入し、従業員一人が以前の2倍の製品を作り出すことができるようになれば、製品の価格を引き上げることなく、以前と同様の収益率を確保することができます。

これをマクロ経済の視点からみると、販売価格の引き上げは物価の上昇に繋がり、企業における生産・販売体制の効率化は、経済全体の生産性向上に繋がります。人手不足による名目賃金の上昇は、物価の上昇に反映される部分と、労働生産性の向上によって吸収され、物価の上昇には繋がらない部分に分解されます。見方を変えれば、名目賃金の上昇から物価の上昇を差し引いた部分が、生産性の向上によってもたらされることになりますが、この部分は実質賃金の上昇に相当し、家計の実質所得の増加に繋がります。所得の増加により家計の購買力が高まれば、消費活動が活発化し、これが企業収益の拡大を通じて、新たな投資を後押しします。このように、賃金の増加が、所得から支出への好循環を作り出し、さらなる景気拡大を促すメカニズムが働くことになります。

先ほどお話ししたように、今回を含む4つの景気回復局面では、いずれも労働需給がタイト化しましたが、仔細にみると、その度合いには差があります(図表4)。2000年代半ばの局面では、有効求人倍率がせいぜい1倍程度にとどまり、今述べた前向きのメカニズムを作動させるには不十分でした。こうしたもとで、賃金の上昇圧力は限定的なものとなり、デフレが続くとともに、消費も盛り上がりに欠いた状態が続きました。振り返ってみると、戦後最長の景気回復局面であったにもかかわらず、外需、さらにはその背後にあった米国の信用バブルに依存した、いわば自律性に乏しい景気回復であったように思います。

一方で、いざなぎ景気と平成景気においては、有効求人倍率が現在と同じ1.5倍程度に達し、人手不足が顕著となるもとで、賃金が上昇し、経済の前向きな循環メカニズムがしっかりと働きました。そこで、これらの時期に起きていたことを、具体的にみていきたいと思います。

まず、いざなぎ景気についてです。この時期、有効求人倍率は、現在とほぼ同水準の1.49倍まで上昇しました。経済史の教科書や当時の文献を改めて読み返してみますと、深刻な人手不足のもとで賃金が上昇するなか、企業においては、先ほど整理したような、販売価格への転嫁と生産体制の効率化という2つの動きが同時に進行しました(図表5)。このうち、販売価格への転嫁の度合いについては、企業や業種によって差がありました。例えば、旅館や理髪店のような小規模なサービス業では、その営業を人手に頼る部分が大きく、賃金の上昇を合理化や効率化で吸収することが難しかったため、そのままサービス価格の引き上げに繋がりました。当時の統計には、理髪代が年平均10%のペースで上昇したことが記録されています。一方、生産体制の効率化という点では、主として製造業、とりわけ深刻な人手不足に直面した多くの中小企業が、積極的な設備投資に取り組みました。電気機械や自動車といった、裾野の広い加工組立産業が拡大したことも、中小製造業の設備投資を促しました。戦後しばらくの間、資本装備率の高い大企業と低い中小企業の間には、「二重構造」といわれる大きな生産性格差が存在していましたが、中小製造業が設備投資を進めたことで、企業規模間の生産性格差は急速に縮小しました。このように、当時は、物価の上昇だけでなく、生産性向上に向けた取り組みがダイナミックに進行しました。この結果、実質賃金がしっかりと上昇し、家計の購買力は大幅に増加しました。「新・三種の神器」と呼ばれた自動車、カラーテレビ、クーラーといった耐久消費財が急速に普及したのは、この時期でした。また、旺盛な消費活動は、より付加価値の高い製品を生み出すための、企業のさらなる投資を後押ししました。文字通り、賃金と物価が上昇するもとで、所得から支出への好循環が実現していました。

次に、1986年に始まった平成景気ですが、ここでも同様のメカニズムが働いたことが確認できます(図表6)。すなわち、有効求人倍率が1.5倍近くまで高まるなか、所定内賃金の前年比も4%前後まで上昇しました。そうしたもとで、賃金コスト上昇の一部が、製品やサービスの価格に転嫁されたため、物価の前年比は、3%程度まで高まりました。先ほど述べたように、過度な期待の強気化による影響は差し引く必要がありますが、企業による設備投資は活発化し、労働生産性も上昇しました。製造業において、ロボットを始めとするマイクロエレクトロニクス機器など新しい技術の導入が進んだほか、非製造業でも、オフィスのOA化などによる事務合理化の取り組みが行われました。これらの結果、実質賃金が上昇し、家計の購買力が高まりました。当時の消費ブームと、それが企業の投資行動の積極化に繋がったことを記憶されている方も多いと思います。

今回の景気回復局面への示唆

こうした過去の経験を踏まえて、今回の景気回復局面における、賃金・物価の動向と、生産性向上に向けた取り組みを確認したいと思います。

まず、賃金についてです。労働需給に感応的なパート雇用者の時給が前年比2%台まで伸びを高めているほか、正規雇用者についても、多くの企業で4年連続のベースアップが実現するなど、賃金の上昇圧力は少しずつではありますが、着実に高まっています(図表7)。もっとも、現実の賃金上昇ペースは、過去の局面と比べ、景気の拡大や労働需給の引き締まりの割に鈍いと言わざるを得ません。その背景には様々な要因がありますが、15年に及んだデフレの経験が、特に賃金の弱さという点で、現在の経済に大きく影響していると思います。わが国の場合、正規雇用者の賃金は、労働需給の変動に対してあまり反応しないと言われています。ベースアップの復活は、こうした状況を改善するうえで大きな意義がありますが、それでもなお、企業の賃金設定スタンスは、全体として慎重なものにとどまっています。労使ともに長期的な雇用・賃金の安定を優先するなか、デフレ経済の下で雇用調整や賃金カットを大きく行わなかった分、景気が拡大し、労働需給が引き締まってきても、賃金上昇に向けた姿勢になかなか切り替わることができない、といった指摘もあります。

次に、物価と生産性の動向についてみてみます。今述べたように、過去に比べて鈍いとはいえ、それでも、賃金は緩やかに増加しています。そうしたもとで、これまでのところ、販売価格を引き上げるよりも、自社の労働生産性を高め、賃金コストの上昇を吸収することを優先する企業の方が多いように見受けられます。例えば、最近、非製造業を中心に、幅広い企業が省力化・合理化投資に積極的に取り組んでいます。建設や小売、宿泊・飲食といった業種における本年度のソフトウェア投資計画は、前年に比べ、軒並み大幅な増加となりました。また、具体的な取り組みとしては、ホテルや旅館において、宿泊客対応にAIやロボットを活用している事例、建設現場にドローンを導入して作業を効率化した事例、自動管理された倉庫を新設し、倉庫内の作業員を半減させた運送業者の事例などが聞かれています。

こうした生産性向上に向けた取り組みの一方で、賃金コストの上昇を販売価格に転嫁する動きは、これまでのところ、運輸や外食など、労働集約的な業種やパート比率の高い業種の一部にとどまっており、全体として、勢いを欠いた状態が続いています。ここでも、長く続いたデフレの経験が大きく影響しています。値上げに対する消費者の許容度がなかなか高まらず、現在でも、値上げによる顧客離れを警戒する企業が少なくありません。多くの企業が、周囲の様子をうかがいながら、一歩前に踏み出しづらい状況となっているように思います。

ここまでの話をまとめますと、今回の景気回復局面においても、人手不足を起点とする賃金上昇圧力の高まりが、企業に対し、販売価格の引き上げや労働生産性の向上を促すというメカニズムは働いています。この点で、今回の局面は、2000年代半ばの回復局面ではなく、いざなぎ景気や平成景気に類似しています。同時に、これまでのところ、こうした動きは、過去の局面に比べて力強さを欠いています。特に、人手不足が叫ばれる割には、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくるのに時間がかかっています。

もっとも、賃金の上昇を促す環境は間違いなく整いつつあります。有効求人倍率は、既にいざなぎ景気や平成景気のピークを上回っているほか、失業率も3%を下回る水準が定着してきており、ほぼ完全雇用の状態にあると考えられます。企業収益は、過去の景気回復局面を大幅に上回り、既往ピークの水準で推移しています(図表8)。先行きについても、きわめて緩和的な金融環境が後押しするなか、しっかりとした景気の拡大が続くと見込まれ、労働需給は一段と引き締まっていくと思われます。こうしたことから、賃金の上昇とともに、物価や労働生産性が上昇し、家計や企業の支出活動が活発化していくメカニズムは、今後、ますます強くなっていくとみています。そうなれば、わが国の経済は、先行き、より持続的な拡大が続くと考えています。

なお、改めて、大事なことをひとつ付け加えておきます。ここまで、いざなぎ景気と平成景気を一緒にしてお話ししてきましたが、この2つには決定的な違いがあります。いざなぎ景気は、「一億総中流」と呼ばれた厚い中間層を形成し、その後の持続的な安定成長に繋がりましたが、平成景気は、持続的な経済成長ではありませんでした。実体経済面では、賃金の高い伸びと緩やかな物価上昇が実現しましたが、その裏側で蓄積していたバブルは、その後崩壊し、2000年代にかけての長い調整局面をもたらしました。今回の景気回復局面では、いまのところ、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されていませんが、引き続き、こうした金融面の動きについて、しっかりと点検していくことも大切であると考えています。

5.日本銀行の金融政策運営

次に、日本銀行による金融政策運営についてご説明します。

日本銀行は、2013年4月の「量的・質的金融緩和」の導入以降、2%の「物価安定の目標」を実現するため、強力な金融緩和を継続しています。昨年9月には、これを一段と強化し、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という新たな枠組みを導入しました。今申し上げたような、60か月に及ぶ今回の景気回復局面において、こうした一連の強力な金融緩和政策の貢献は大きかったと考えています。

物価面でも、生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価の前年比は、2013年10月以降、約4年にわたってプラス基調を続けています(図表9)。こうした状況は、1990年代末以降、初めてのことです。既にわが国は、「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレではなくなりました。

もっとも、先ほど申し上げたとおり、わが国の物価は、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて弱めの動きが続いています。生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比は、引き続き、小幅のプラスにとどまっており、2%の「物価安定の目標」の実現までには、なお距離があると言わざるを得ません。こうした状況を踏まえ、日本銀行としては、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、引き続き、強力な金融緩和を粘り強く進めていく方針です。これにより、賃金や物価が緩やかに上昇し、所得から支出への前向きの循環が働くメカニズムを、さらに強力にサポートしていきます。

6.人手不足を越えて:新たなフェーズへの期待

そろそろ時間がなくなってきましたので、私の話を締め括りたいと思います。本日は、過去の景気回復局面を振り返ることを通じて、人手不足を出発点に、賃金や物価が上昇し、経済の前向きの循環メカニズムが働いていく可能性を指摘しました。もっとも、こうした人手不足が、個々の企業の皆様にとっては、経営上の大きな課題であり、対応にご苦労されていることも認識しています。実際、私どもの支店長会議などでも、「人手が足りず、顧客からの注文を断らざるを得ない」といった声が報告されているほか、「深刻化する人手不足が日本経済の成長制約になるのではないか」といった悲観論も耳にします。

しかしながら、私は、こうした悲観論には与していません。本日お話しした、かつての景気回復局面はその証左です。過去の経験によれば、日本経済は、人手不足という困難を乗り越えていく過程で、個々の企業が生産性を高め、経済全体の成長力を高めてきました。人手不足以外にも、わが国経済は、「成長制約」といわれていたものが実は制約ではなく、新たなフェーズの入り口であったことを、何度も証明してきました。1970年代に二度の石油危機が日本を襲ったときは、資源不足がわが国経済の成長を制約することが懸念され、「日本はゼロ成長に陥る」といった悲観論も広がりました。実際には、多くの企業による積極的な省エネ投資により、わが国は、世界で最もエネルギー効率の高い経済に変貌し、こうした困難を見事に克服しました。また、最近では、東日本大震災の発生後、電力不足やサプライチェーンの断絶が経済活動の制約になると心配されました。しかしながら、多くの企業は、自家発電設備の増設や生産拠点の移転・再構築に取り組み、驚くべき速さで生産能力を回復しました。

このように、経済は、短期的には制約と思われることがあっても、それを乗り越えていくことで成長していくのだと思います。そして、こうした困難を克服する原動力は、いつも皆様方企業の前向きな取り組みでした。今回の人手不足についても同様です。私は、わが国企業の問題解決能力に全幅の信頼を置いています。既に多くの企業が、設備投資などを通じた対応に着手されていますが、限られた人材を有効に活用するためには、他社に一歩先んじて行動し、目の前のビジネスチャンスを着実に掴むことが重要だと思います。また、企業の成長力を一段と高めていくためには、それなりの賃金を払ってでも優秀な人材を確保していくことも必要です。デフレのもとでは、他に先んじることはリスクであり、じっと待つことにメリットがあったかもしれませんが、既に状況は変わっています。デフレマインドを捨て去り、前向きにチャレンジする企業は、現れ始めています。今後、こうした企業がますます増えていけば、経済全体としても、賃金の上昇や生産性の向上とともに、緩やかに物価が高まる好循環が実現し、持続的な成長に繋がっていくものと考えています。

来たる年が企業の皆様にとって素晴らしい年になるということは、人手不足に伴う課題を克服しながら、日本経済が新たなフェーズに入っていくことを意味しています。このことを心より期待して、日本銀行としても、わが国の中央銀行としてなし得る最大限のサポートを続けてまいります。

ご清聴ありがとうございました。