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外為決済リスクの削減について — 経過報告 —

(日本銀行仮訳)

1998年 7月13日
国際決済銀行
支払・決済システム委員会

日本銀行から

 全文は、こちら(bis9807b.lzh 312KB [MS-Word])から入手できます。

記者発表文

外為決済リスクの削減に関する民間部門の進展状況を中央銀行は前向きに評価

 ニューヨーク連銀総裁で、G-10諸国の中央銀行の支払・決済システム委員会(以下ペイメント委)議長であるウィリアム J. マクドノー(近々議長を退任の予定)は、本日(日本時間7月13日)「民間部門は外為決済リスクヘの取組みに有望な進展をみせてきたが、なされるべきことはまだ多く残っている」と述べた。ペイメント委によって今回新たに発表される報告書は、G-10中央銀行が2年前に外為取引の決済に伴うシステミック・リスクを削減するために協調してストラテジーをスタートさせて以来の、民間部門における取組みの進展状況を評価するものである。

 G-10諸国の中央銀行総裁は、外為決済リスクに取組むためのG-10中央銀行のストラテジーを再確認し強化することに合意し、本日バーゼル銀行監督委員会(以下バーゼル委)に対し、銀行の外為決済リスクに関する国際的な銀行監督上のガイダンスを策定するよう要請した。最近バーゼル委の議長に任命されたマクドノー氏は、こうしたガイダンスについて、中央銀行がこの問題に対処するためのより強固なストラテジーの重要な要素になるだろうと述べている。

 また、G-10諸国の中央銀行総裁は、外為決済リスクの削減を目指す民間部門のイニシアチブと協調し、このストラテジーを世界規模で推進し、その進展状況をモニターするというペイメント委の役割を本日再確認した。

 1996年3月におけるペイメント委報告書の公表以来、外為決済リスクは、G-10諸国の中央銀行にとって最優先の課題となってきた。この報告書は、銀行が外為取引の決済において莫大なエクスポージャーに直面していること、また、たとえ1つの取引相手の破綻に見合うリスク額であっても常に銀行の自己資本総額を上回る可能性が存在することを明らかにしたものであった。

 本日公表された報告書は、マクドノー氏が過去4年半に亘って議長を務めてきたペイメント委の協力によって作成された。起草したのは、ニューヨーク連銀のローレンス M. スウィートが議長を務める「外為取引の決済リスクに関するステアリング・グループ」(ペイメント委の下に設置)である。本日、報告書の公表にあたり、マクドノー氏は以下のように発言した。

 「中央銀行は2年前、民間部門に対し、外為決済リスク削減のための行動を採るよう求めた。現時点で我々はこの呼掛けに応じて民間部門がとってきた行動を前向きに評価している。特に、この間における業界グループのイニシアチブの有望な進展によって、多通貨サービスは民間部門によって提供されるのが最も望ましいとするG-10中央銀行の見解の正しさが確認された。」

 「個別銀行レベルでの進捗も顕著ではあったが、なされるべきことはまだ多く残っている。バーゼル委によって策定されるガイダンスを通じて、全ての銀行が外為決済リスク管理のための行動を起こすことが適当であり、かつそうすることによって誰も不利益を被らない、ということを示すことができると望んでいる。」

 オールソップ・レポートとして知られる1996年の報告書は、銀行が事務手続やリスク管理方法の改善によりこうしたリスクを削減できること、また優れたデザインの多通貨決済メカニズムやネッティングの仕組みによって、個別銀行の外為決済リスク削減能力が大いに高められることを示した。

 G-10諸国の中央銀行総裁は1996年、オールソップ・レポートに盛られた外為決済リスクに対する以下の3項目のストラテジーを了承した。

  • 個別銀行が外為決済エクスポージャーを管理するために採る行動
  • 業界グループがリスクを削減する多通貨サービスを提供するために採る行動
  • 中央銀行が民間部門の迅速な進展を促すために採る行動

 本日公表された報告書は、過去2年間に亘るこうした項目それぞれについての進展状況を評価している。

・個別銀行

 主要な市場参加者の多くは、外為決済リスクへの対応に著しい進展を遂げている。この問題についての認識は一層高まり、このリスクについての経営レベルの責任も確立された。リスクは適切に測定、管理され、リスク削減のための措置が採用されている。しかし、一部の市場参加者はまだ必要な行動を採るのを躊躇しているのも事実である。

・業界グループ

 バイラテラル・ネッティングのサービスが発展した。また2つの既存スキーム(ECHO<Exchange Clearing House Limited>とMultinet)がCLSサービシズに統合された結果、マルチラテラル・ネッティングの将来像はよりはっきりしたものになった。CLSサービシズは増資に成功し、外為取引の決済に当たって、「即時に個々の取引をリンクさせた決済」(continuous linked settlement)を行う銀行(CLS銀行)を創設するためのベンダーを選定した。業界グループの中には、伝統的な外為取引を「差額決済契約」(Contract for difference、以下CFD)によって置換えるなど、この問題に対する別のアプローチを模索しているものもある。

・中央銀行

 大口決済システムについては、新たなシステムの導入や、稼働時間延長の実施や予定など、大きな改善が施された。中央銀行は、外為決済リスク削減に向けた努力を行うにあたり、業界グループや各国監督当局と協力して作業を行ってきた。  新たに公表される報告書は、1996年報告書とともに、BISのウェブ・サイト(http://www.bis.org)(外部サイトへのリンク)に掲載されているほか、BIS出版部(ファックス:+41-61-280-9100)から入手可能である。

本報告書のポイント

外為決済リスクとは何か

 外為決済リスクとは、外為取引における一方当事者が売却通貨を支払ったものの、(取引相手方の破綻により)買入通貨を受取ることができないリスクである。ペイメント委のオールソップ・レポート(『外為取引における決済リスクについて』、バーゼル、1996年3月)によると、現在の市場慣行では銀行間の外為決済エクスポージャーは数日間存続し、これは、外為取引の規模を勘案すると、たとえ1つの取引相手の破綻に見合うリスク額であっても常に銀行の自己資本総額を上回る可能性が存在することを意味している。

リスク削減のためのG-10中央銀行のストラテジーとは何か

 このストラテジーは、民間部門によるこの問題への対応策の重要性を強調したものである。具体的には、個別銀行が外為決済リスクを管理・削減するために採る行動、業界グループがリスクを削減する多通貨サービスを提供するために採る行動、中央銀行が民間部門の迅速な進展を促すために採る行動、という3項目に亘るアプローチを伴うもの。

リスクを削減する上でどのような進展があったか

個別銀行の行動

  • 主要な市場参加者の多くは、外為決済リスクへの対応に著しい進展を遂げている。今日この問題の認識は、経営レベルを含め一段と高まっており、多数の銀行がこの問題の対応に多くの経営資源を投入している。
  • 2年間のモニタリング期間中、調査対象となった多数の銀行はリスク管理に対する明確な経営レベルの責任を確立し、既に管理上、外為決済エクスポージャーを大きさおよび存続期間の等しい他の信用エクスポージャーと同等に扱うに至っている。
  • エクスポージャーは幾分削減され、その測定方法も多少改善されている。
  • これらのいずれの分野においても、近い将来一層の改善が見込まれている。

業界グループの行動

  • バイラテラル・ネッティングは、FXNETValunetSWIFT Accordによって提供されるサービスおよびIFEMAやその他の標準的な契約の利用の増加とともに拡大してきた。
  • CLSサービシズという企業が設立され、外為取引の決済に当たって「即時に個々の取引をリンクさせた決済」を行う銀行(CLS銀行)を創設する計画を進めている。
  • その後にCLSサービシズと、2つの既存のマルチラテラル・ネッティング会社(ECHOMultinet)が統合されたことによって、マルチラテラル・ネッティングの将来像がよりはっきりとしたものになった。
  • 伝統的な外為取引を差額決済契約(Contract for difference、CFD)と呼ばれる方法により置換えるなど、この問題に対する別のアプローチを模索している業界グループもある。

中央銀行の行動

  • 外為取引の決済に潜在的な利便をもたらす新たなシステムの導入など、近年、大口決済システムについては著しい改善が施された。
  • システムの稼働時間延長が実施されたり、または予定されており、異種通貨のシステム稼働時間の重なりが増大している。
  • 関係中央銀行は、CLS銀行が中央銀行に口座をもつことや国内決済システムにアクセスすることに関し、CLSサービシズと議論を行っている。
  • ペイメント委の代表は、外為決済リスク問題に関し各国監督当局ととともに作業を行っている。

これまでの進展は十分か

 過去2年間の進展状況を全体としてみると、外為決済リスク問題に対する取組みには有望な進展がみられ、これがさらに大きな進展へとつながっていくものと考えられる。しかし、なされるべきことはまだ多く残っている。例えば、調査対象行の多くが外為リスクの管理に明確な経営幹部レベルの責任を確立し、自行のエクスポージャーを適切な管理下においているものの、調査対象行のうち1割がこの基準を満たせていないことについて、G-10中央銀行は懸念を有している。また、エクスポージャーの測定方法についての改善は、概して低レベルからの改善である。このため、調査対象行の60パーセント以上がいまだに自行のエクスポージャーを過小評価している。さらに、現在の慣行を改善したりバイラテラルないしマルチラテラルなオブリゲーション・ネッティングの利用を増やすことによって、エクスポージャーを削減していく余地がまだかなり残っている。

 業界グループの多くのイニシアチブもまだ検討の途上にある。また、G-10中央銀行は、個別銀行が直面する外為決済リスクが、業界グループの対応策によって大幅に削減され得るとはいえ、そうした対応策だけではリスクを完全に消滅させるとは考えにくいとみている。したがって、外為決済エクスポージャーを管理するモメントが個別銀行によって確実に維持されることが重要である。

なぜストラテジーが強化されたのか

 G-10中央銀行は、1996年に当初のストラテジーを導入するに当たって、追加措置の要否を見極めるため、2年間に亘って民間部門の行動の進展状況を綿密にモニターすると発表した。そうした評価が行われた結果、これまでの勢いを持続させるためにはストラテジーが強化されるべきであるとの結論に至った訳である。

次のステップは何か

 本日公表された報告書にあるように、強化されたストラテジーは以下のように要約できる。

個別銀行の行動

 自行の外為決済エクスポージャーについて適切な与信管理プロセスをまだ適用していない銀行は、速やかに対応を採るべきである。これは、自行における外為決済エクスポージャーの管理に関する現行の事務を改善することにより、個別銀行がこの問題に対処する余地がかなりあることを認識したものである。

業界グループの行動

 業界グループは、個別銀行のリスク削減努力に貢献するサービスおよびプロダクトを引続き開発・提供していくべきである。これは、1996年のオールソップ・レポートにあるように、多通貨サービスは民間部門によって提供されるのが最も望ましいとするG-10中央銀行の見解を再確認するものである。

中央銀行の行動

 G-10中央銀行は、ペイメント委を通じて、世界規模でこのストラテジーを推進し、進展度合をモニターし続けることとする。各国中央銀行は、外為決済リスク削減の実現に資する自国決済システムの改善を行い、あるいはこうした改善努力を継続していくものとする。また、各国中央銀行は、情宣活動、道義的説得、然るべき監督当局による措置を最適に組合わせることで、国内市場における民間部門の行動を今後とも促していく。さらに、バーゼル委は、銀行の外為決済リスクの管理に関する国際的な監督上のガイダンスを策定することにより、これらの努力を後押ししていくこととなろう。

国際的な監督上のガイダンスはどのような形を採るのか

 G-10諸国の中央銀行総裁は、オールソップ・レポートの勧告に沿った形で、外為決済リスクの慎重な管理についての国際的な監督上のガイダンスを策定することを、バーゼル委に要請した。G-10諸国の中央銀行総裁は、バーゼル委に対し、外為決済エクスポージャーに自己資本比率規制を課すことは要請していない。

以上


1.要旨

 1996年、G-10諸国の中央銀行総裁は、民間部門と公的部門が協同して外為取引の決済におけるシステミック・リスクを削減する包括的なストラテジーを採択した。G-10中央銀行は、過去2年間に亘って有望な進展がみられたものの、なされるべきことはまだ多く残っているとの結論に至り、これを受け、ストラテジーを再確認し強化することを決定した。G-10中央銀行の支払・決済システム委員会(以下ペイメント委)によって作成された本報告書は、外為決済リスク削減の進展状況を評価し、上記ストラテジーの下における次のステップを取纏めたものである。

1.1 背景

 1996年3月に公表されたペイメント委の報告書『外為取引における決済リスクについて』(いわゆるオールソップ・レポート)は、G-10中央銀行のストラテジーとそのもととなる分析を記したものであった。この報告書は、銀行における外為取引の決済プロセスが、少なくともオーバーナイトで、しばしば数日間に亘って存続する、取引相手に対するエクスポージャーを一般にもたらしていることを指摘している。報告書はまた、日々の外為取引の規模が巨額であることから、ここで生じるリスクが、金融市場全体の安定性・流動性・効率性だけでなく、個別銀行の安全性や健全性に重大な懸念をもたらしている、と結論している。さらに、この報告書では、いくつかの大手銀行がこのリスクを認識しこれを管理・削減する方法を積極的に追求している一方で、他の多くの銀行は、こうした努力に多くの資源を投入することに対し引続き懐疑的であることが指摘されている。こうしたことから、報告書は、中央銀行によるこれまでの作業を踏まえて、リスク──特にシステミック・リスク──を削減するにはストラテジーが必要であるとの結論をまとめた。

 そこで合意されたストラテジーは、外為決済リスクの問題に取組む民間部門の行動に重点を置いている。具体的には、3つの項目からなるアプローチが採用された。第1の項目は、外為決済リスクを管理・削減するために個別銀行が採る行動(例えば、自行のバックオフィスの事務手順、コルレス業務についての取決め、リスク管理策の改善であるとか、オブリゲーション・ネッティングの利用拡大など)であった。第2の項目は、リスクを削減する多通貨サービスを提供するために業界グループが採る行動(例えば、オブリゲーション・ネッティングの仕組みや多通貨決済メカニズムの構築など)であった。第3の項目は、中央銀行が採る行動であった。これは、ストラテジーの力点が民間部門における行動に置かれる一方で、公的部門も民間部門の迅速な進展を促進する上で(例えば、積極的にこのストラテジーを促進したり、各国決済システムの改善を促すなど)重要な役割を担うべきであるという事実を考慮したものである。

1.2 最近の進展状況

 ストラテジーをスタートさせた際、G-10中央銀行は、このストラテジーが成功を収め、民間部門が外為決済リスクの削減に重要な役割を果たすものと考えていたが、十分かつタイムリーな進展が保証されていないことも認識していた。このため、ペイメント委が、2年間に亘って状況をモニターした上で追加的な行動の必要につき決定することが合意された。個別の市場参加者に対する2回に亘る調査や業界グループのイニシアチブの検討を含むこのモニタリングは、ペイメント委の下に設けられた「外為取引の決済リスクに関するステアリング・グループ」(以下ステアリング・グループ)によって行われた。こうした作業により、以下のような重要な事実が見出された。

個別銀行の行動

  • 主要な市場参加者の多くは、外為決済リスクへの取組みにおいて著しい進展をみせた。すなわち、この問題についての認識は、経営幹部レベルを含め大いに向上したほか、多数の銀行がこの問題に対処するために多大な資源を投入している。
  • 2年間のモニタリング期間中、多数の調査対象行は、このリスクを管理する上での経営レベルにおける明確な責任を確立したほか、リスク管理の目的から、外為決済エクスポージャーを規模および存続期間の等しい他の信用エクスポージャーと同等に扱うに至っている。
  • 測定方法が多少改善されたほか、エクスポージャーの削減も多少行われた。
  • これら全ての分野において、近い将来一層の改善が見込まれている。

業界グループの行動

  • バイラテラル・ネッティングは、IFEMAや他の業界における標準的な契約に基づく相対のアレンジメントや、FXNETValunetSWIFT Accordによって提供されるサービスの利用の増加とともに拡大した。
  • CLSサービシズという企業が設立され、外為取引の決済に当たって、「即時に個々の取引をリンクさせた決済」(continuous linked settlement)を行う銀行(CLS銀行)を創設する計画を進めている。
  • その後CLSサービシズと、ECHOおよびMultinetという2つの既存のマルチラテラル・ネッティング会社とが合併したことによって、マルチラテラル・ネッティングの将来像が一段と明確になった。
  • 伝統的な外為取引を差額決済契約(contract for difference、CFD)と呼ばれる方法で代替するなど、この問題に対する別のアプローチを模索している業界グループも存在する。

中央銀行の行動

  • 近年、大口決済システムについて、外為取引の決済に役立つ可能性のある大きな改善が施されてきた。
  • システムの稼働時間延長が実施されたり、または計画されており、様々な通貨のシステムについて稼働時間の重なりが増大してきている。
  • 関係中央銀行は、CLS銀行が中央銀行に口座をもつことや国内決済システムにアクセスすることに関し、CLSサービシズと議論を行ってきた。
  • ペイメント委の代表は、外為決済リスクの問題に関し各国監督当局ととともに作業を行ってきた。

1.3 追加的な行動の必要性に関する評価

 過去2年間の動きを全体としてみると、外為決済リスクの問題への取組みには有望な進展がみられ、これがさらに大きな進展へとつながっていくものと考えられる。しかし、なされるべきことはまだ多く残っている。例えば、調査対象行の多くが外為リスクを管理する上での経営レベルにおける明確な責任を確立し、自行のエクスポージャーを適切な管理下においているものの、調査対象行の1割がこの重要な基準を満たしていないことについて、G-10中央銀行は懸念を抱いている。また、エクスポージャーの測定方法について見受けられる改善は、概して低レベルからのものである。調査結果によれば、現時点では調査対象行の60パーセント以上が自行のエクスポージャーを引続き過小評価している。さらに、現行事務の改善やバイラテラルないしマルチラテラルなオブリゲーション・ネッティングの利用を高めることにより、エクスポージャーを削減する余地が相当ある。

 2年間の調査の対象とならなかった市場参加者については、利用できる体系的な情報が少ない。しかし、利用可能な情報によれば、これらの銀行では一般的にリスク認識がはるかに低く、リスク管理の改善はごく僅かしか進展していない。

 業界グループによるイニシアチブの多くは、まだ検討の途上にある。また、G-10中央銀行は、業界グループの対応策により個別銀行が直面する外為決済リスクが、いずれ大幅に削減されるとはいえ、完全に個別銀行のリスクを消滅させるとは考えにくいとみている。したがって、こうした外為リスク削減に向けた勢いが、個別銀行による外為エクスポージャー管理においても確実に維持されるようにすることが重要である。

1.4 結論

 G-10中央銀行は、上記ストラテジーが現在までの大きな進展に寄与し、さらに今後の進展への足がかりとなりうるものと考えている。したがって、G-10中央銀行は、こうした発展性を維持するため、このストラテジーを以下の方法によって再確認し強化することを決定した。

 ペイメント委は、このストラテジーの包括的な実施を引続き促進し、必要に応じて、G-10諸国の中央銀行総裁に、さらなる進展の状況について報告する予定である。ペイメント委の作業において鍵となる要素は、リスク削減に資する多通貨サービスの提供を計画中の、既存および将来における民間部門のグループとの間で、適切かつ可能な場合に協力を継続していくことであろう。さらに、ペイメント委は、世界規模での外為決済リスク削減を促しつつ、外為決済の分野における重大な進展を確認し評価を行っていくこととなろう。

 G-10諸国の中央銀行総裁は、このストラテジーをさらに推し進めて、オールソップ・レポートの勧告(付録1参照)に沿った形で、銀行に対する外為決済リスクの慎重な管理についての国際的な監督上のガイダンスを策定するため、バーゼル銀行監督委員会(以下バーゼル委)の関与を要請した。G-10各国の監督当局は、既に過去2年間に亘って、程度の差はあれストラテジーの実施に関与してきた。国際的なガイダンスは、関連する中小の市場参加者を含めたG-10諸国の全ての銀行における外為決済リスク管理に対して適用されるべき共通アプローチの提供に役立つであろう。バーゼル委はG-10内外の諸国の監督政策に強い影響力を持っているため、ガイダンスは、対応策の必要性に対する認識が現状低い地域での注意喚起を促すのにも役立つに違いない。共通のアプローチを確立することは、自分だけがリスクヘの対応に資源を投入することによって競争上不利な立場に追い込まれるのではないか、との銀行の懸念を和らげるのにも役立つであろう。各国監督当局が既に採用している対応策は、こうした国際的なガイダンスを策定する上で拠り所となりうる経験を提供している。

1.5 次のステップの要旨

 上記に鑑みれば、再確認し強化された3項目からなるストラテジーの下で、採用されるべき行動の要旨は以下のとおりである。

個別銀行の行動

 自行の外為決済エクスポージャーについて、適切な与信管理プロセスをまだ採用していない銀行は、速やかに対応を採るべきである。これは、自行における外為決済エクスポージャーの管理に関する現行の事務を改善することにより、個別銀行がこの問題に対処する余地がかなりあることを認識したものである。

業界グループの行動

 既存の、そして将来の業界グループは、個別銀行のリスク削減努力に貢献するサービスおよびプロダクトを引続き開発・提供していくべきである。これは、1996年のオールソップ・レポートにあるように、多通貨サービスは民間部門によって提供されるのが最も望ましいとのG-10中央銀行の見解を再確認するものである。

中央銀行の行動

 G-10諸国の中央銀行は、ペイメント委を通じて世界規模でこのストラテジーを推進し、その進展度合をモニターし続けることとする。各国中央銀行は、外為決済リスク削減の実現に資する自国決済システムの改善を行い、あるいはこうした改善努力を継続していくものとする。また、各国中央銀行は、情宣活動、道義的説得、然るべき監督当局による措置を最適に組合わせることで、国内市場における民間部門の行動を今後とも促していく。さらに、バーゼル委は、銀行の外為決済リスク管理に関する国際的な監督上のガイダンスを策定することにより、これらの努力を後押ししていくこととなろう。

***

 以下、本報告書のセクション2から4では、3項目からなるストラテジー——すなわち、個別銀行、業界グループ、中央銀行の行動——の下で採られる行動について記している。セクション5では、現状および追加的な行動の必要性に関する評価を行っている。

目次

  • 1.要旨
    • 1.1 背景
    • 1.2 最近の進展状況
    • 1.3 追加的な行動の必要性に関する評価
    • 1.4 結論
    • 1.5 次のステップの要旨
  • 2. 個別銀行の行動
    • 2.1 エクスポージャーの管理
    • 2.2 エクスポージャーの存続期間
    • 2.3 ネッティングの利用
    • 2.4 調査の対象とならなかった銀行について
  • 3. 業界グループの行動
    • 3.1 バイラテラル・ネッティング
    • 3.2 マルチラテラル・ネッティング
    • 3.3 CLS銀行構想
    • 3.4 ECHOMultinetとCLSサービシズの合併
    • 3.5 その他のイニシアチブ:CFD
  • 4. 中央銀行の行動
    • 4.1 公表、情宣活動および道義的説得
    • 4.2 監督的措置
    • 4.3 業界グループとのコンタクト
    • 4.4 資金決済サービスの改善
  • 5. 評価
    • 5.1 追加的な行動の必要性に関する評価
    • 5.2 バーゼル銀行監督委の関与
    • 5.3 ペイメント委の今後の役割
    • 5.4 次のステップの要旨
  • 付録1 外為決済リスクの管理に関するオールソップ・レポートの勧告
  •  2 外為調査関連資料
  •  3 エクスポージャー存続期間に関する追加的データ
  •  4 外為決済エクスポージャーの概算測定法