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OTCデリバティブ取引の決済およびカウンターパーティのリスク管理

(日本銀行仮訳)

1998年 9月17日
国際決済銀行
支払・決済システム委員会
ユーロカレンシー・スタンディング委員会

日本銀行から

 BIS支払・決済システム委員会、およびユーロカレンシー・スタンディング委員会は、スイス・バーゼルで開催されたG10中央銀行総裁会議の了承を経て、『OTCデリバティブ取引の決済およびカウンターパーティのリスク管理』を公表しましたので、記者発表文および報告書の仮訳(要旨および用語集)を掲載し、その内容をご紹介します。報告書の全文は、こちら(bis9809b.pdf 310KB)から入手できます。

 なお、記者発表文および報告書の原文(英文)はBISのホームページ(アドレス:http://www.bis.org/(外部サイトへのリンク))に掲載されておりますので、併せてご参照下さい。

記者発表文
OTCデリバティブ取引の決済およびカウンターパーティのリスク管理

 BIS支払・決済システム委員会(CPSS、<訳注>議長=ハルトマン・ブンデスバンク理事)およびユーロカレンシー・スタンディング委員会(ユーロ委、<訳注>議長=山口副総裁)は、本日、報告書「OTCデリバティブ取引の決済およびカウンターパーティのリスク管理」を公表する。近年、G10中央銀行が設置した各委員会は、デリバティブ取引の急速な発達、および、それが銀行およびその他の取引参加者ならびに金融システム全体のリスクに対し、どのような意味を有するかに関して多くの検討成果を発表してきた。しかし、これらの報告書の中で、OTCデリバティブ市場の参加者が実際にどのような形でカウンターパーティ・リスク(取引相手にかかるリスク)を管理しているかについて、包括的な調査および分析を行ったものはなかった。この間隙を埋めるため、両委員会は合同でこの報告書を公表する。

(OTCデリバティブ取引の決済およびカウンターパーティ・リスクの管理)

 本報告書は、OTCデリバティブに関連するリスクを整理するとともに、OTCデリバティブ取引の決済やリスク管理における実務慣行を説明している。OTCデリバティブ取引にかかる事務処理やカウンターパーティ・リスクの管理手法は、G10諸国にほぼ共通するものであることが判明した。すなわち、標準化されたマスター契約および取引の確認書(コンファーメーション)の雛形が、ほとんどの取引に用いられている。取引データの入力からコンファーメーションを経て決済に至るまで、取引にかかる事務処理は自動化されつつある(ただし、比較的複雑な取引については手作業の部分が残っている)。カウンターパーティの信用リスクを緩和するために、ネッティングが採用されるようになっているほか、担保の利用も次第に増えている。さらに、OTCデリバティブ取引の大部分は相対で決済されており、クリアリング・ハウスの利用は少ない。

(主な論点と中央銀行の関心事項)

 次に、本報告書は、より詳細な検討が必要となる論点を3つ提示している。すなわち、以下の論点は、カウンターパーティ・リスクとシステミック・リスクがどのような影響を受けるかに関連している。

  1. (1)マスター契約の締結またはコンファーメーションの交換が遅延すること。
  2. (2)急速に担保の利用が広がっていること。
  3. (3)OTCデリバティブの決済がクリアリング・ハウスで行われるようになること。

第1の点についてみると、マスター契約が締結されていない、あるいはコンファーメーションが交換されないまま、かなりの取引が行われていた。これによって実際にどの程度リスクが高まっているかは判断できないが、マスター契約の締結未了やコンファーメーションの交換漏れによって、一括清算ネッティングを行いえなくなる可能性がある。第2の点についてみると、担保の利用によってカウンターパーティの信用リスクがかなり緩和される余地がある反面、担保の利用によって流動性リスク、法的リスク、カストディ・リスクおよびオペレーショナル・リスクが新たに生じるため、これらのリスクを管理しなければならなくなる。最後に、OTCデリバティブ取引におけるクリアリング・ハウスの利用は信用リスク、流動性リスク、法的リスクおよびオペレーショナル・リスクの削減に効果があるかもしれないが、そうした効果が発揮されるためにはクリアリング・ハウスが有効なリスク管理を行っているか、また、一部の取引をクリアリング・ハウスに移すことによって残った取引の信用リスクがどのように変化するか、に依存する。

(リスク削減のために考えられる対策)

 上記の3つの論点に関し、本報告書は、OTCデリバティブのカウンターパーティが直面するリスクを緩和し、グローバルな金融市場の安定性を向上させるために、市場参加者および各国当局が採り得る対策を提示している。

 まず、取引の文書化やコンファーメーション交換の遅延については、デリバティブ取引の当事者は未締結のマスター契約やコンファーメーション漏れの件数を再確認し、それによって生じるリスクを評価し、さらにそうしたリスクを適切に管理するための対策を講じなければならない。また、取引当事者は、現在稼働中または近々稼動が予定されている電子的なコンファーメーション突合システムを利用することによって、こうした遅延やその結果として生じるリスクが削減できないかを検討すべきである。金融機関の監督当局は、監督下にある金融機関(とくにディーラー)におけるこうした遅延やその結果として生じるリスクを調査し、金融機関の内部的な指針や手続がリスクを有効に削減しているかを評価し、必要に応じ実務慣行の改善を促すべきである。

 次に、担保の利用が拡大していることについては、デリバティブ取引の当事者は担保の利用によって生じる法的リスク(国際私法上の問題を含む)、オペレーショナル・リスク、流動性リスクおよびカストディ・リスクを評価し、こうしたリスクを十分に管理しなければならない。金融機関の監督当局は、信用リスクを削減する手段としての担保の利用について監督上の指針(オペレーショナル・リスクおよび法的なデュー・ディリジェンスに関する事項)を策定すべきである。さらに、市場参加者、監督当局および中央銀行は、担保契約の有効性に疑義があるような場合には、政府に対し法的な不確実性を解消するような対策を働きかけるべきである。

 最後に、クリアリング・ハウスの利用については、デリバティブ取引の当事者は信用リスクや他のカウンターパーティ・リスクを削減するために、クリアリング・ハウスを利用することの是非を評価すべきである。その際には、クリアリング・ハウスが有効なリスク管理を行っているか、また、一部の取引をクリアリング・ハウスに移すことによって残った取引の信用リスクがどのように変化するかに留意しなければならない。中央銀行および金融機関の監督当局は、OTCデリバティブのクリアリング・ハウスの設立に関し、無用の法的あるいは規制上の制約が課されないようにしなければならない。また、中央銀行および監督当局は、クリアリング・ハウスによって十分なリスク管理(参加者の破綻によって生じる損失のカバーを含む)が行われることを確保しなければならない。

 今般の公表資料に関し、ご質問等がありましたら、金融市場局金融市場課までご照会ください。

公表資料の原文がご入用の場合は、金融市場局金融市場課までお知らせ下さい。


OTCデリバティブ取引の決済およびカウンターパーティのリスク管理に関するスタディグループ報告書

要旨と改善に向けた提言

背景と目的

 近年、G10諸国の中央銀行の様々な委員会は、OTCデリバティブ取引の急速な拡大が銀行およびその他のデリバティブ取引の相手方や金融システム全体が抱えるリスクにどのような影響を及ぼすかという観点から、数多くの報告書を公表している。しかしながら、こうした報告書のうち、市場参加者がカウンターパーティ・リスクを管理するうえで実際に利用している実務慣行や取引プロセスについて、包括的な調査や分析を行ったものは存在しない。こうした間隙を埋めるため、BIS支払・決済システム委員会(CPSS)およびユーロカレンシー・スタンディング委員会(ユーロ委)は、共同でスタディ・グループを組成した。

 このスタディ・グループには2つの目的が与えられた。第1の目的は、OTCデリバティブ取引におけるドキュメンテーション(契約内容の文書化)、取引プロセスおよび決済ならびに同取引に関連したカウンターパーティ・リスク管理等の点について銀行の方針や実務慣行を明確かつ包括的な形で理解するために、OTCデリバティブ・ディーラーを対象とした調査を実施することであった。第2の目的は、カウンターパーティ・リスクを著しく増幅させたり、金融システム全体をリスクに晒しかねないような実務慣行上の問題があればそれを特定するとともに、新たなサービスの導入を含む実務慣行の変化がどのような形でこうしたリスクの削減に資するかを考察することである。

 当報告書は、このスタディ・グループの作業の結論を報告するものである。当報告書ではOTCデリバティブに関連するリスクを整理するとともに、これらの取引を行うディーラーがどのようにして取引を決済し、そのリスクを管理しているかについて多くのディーラーに共通して用いられている実務上の慣行を説明する。その上で、(1)取引のドキュメンテーションやコンファーメーションにおける遅延、(2)急速に拡大しつつある担保付取引、および(3)クリアリング・ハウスの利用可能性、といった事象がリスクに及ぼす影響について一歩踏み込んだ分析結果を報告する。この分析に基づいて、スタディ・グループは、デリバティブのカウンターパーティの行動のみならず、監督当局や中央銀行に対し、カウンターパーティ・リスクおよび金融システムに対するリスクを削減するための一連の改善に向けた提言を策定した。

現状の方針と取引のプロセス

要約

 当スタディ・グループは、それぞれのG10諸国から2先を含むOTCデリバティブ市場における主要なディーラー30先との面談を実施した。面談は、事前に共通の質問事項を配付し、それに基づいて実施された。

 全体的にみると、取引のプロセスやカウンターパーティ・リスク管理にかかる実務慣行は、G10諸国においておおむね共通していることが面談により明らかとなった。たとえば、ドキュメンテーションについては、標準的な契約書やコンファーメーションの雛形(とくに国際スワップ・デリバティブズ協会〈ISDA〉によって作成されたもの、およびいくつかの国毎のマスター契約)が利用されている。取引データの把握からコンファーメーションおよび決済に至る一連の取引プロセスの処理は自動化される傾向にあるが、より複雑な仕組み取引(structured transactions)の場合には、依然として手作業を伴うのが通例である。カウンターパーティに対する信用リスクを削減する手段としては、ネッティングが利用されているほか、担保契約の活用も徐々にではあるが増加しつつある。最後に、OTCデリバティブ取引の大多数は取引当事者間で相対で決済されている。G10諸国の中では、唯一スウェーデンにおいてOTCデリバティブ取引の大半がクリアリング・ハウスで決済されているほか、ロンドン・クリアリング・ハウスが大手市場参加者対象に1999年からクリアリングを開始する計画にある。

マスター契約

 すべてのG10諸国におけるディーラーは、他のディーラーやエンド・ユーザーとの間でOTCデリバティブ取引の条件を確定するためにマスター契約を利用している。ディーラーは、特定のカウンターパーティとの間で発生する全ての取引を単一のマスター契約の下で実行することを望んでいる。また、一括清算ネッティング(後に詳述)を可能な限り広い範囲の債務に適用することにより、カウンターパーティに対する信用リスク・エクスポージャーの最小化を図ろうとしている。なお、ISDAが作成したマスター契約が最も広く利用されているが、国毎のマスター契約も利用されている。

 多くのディーラーは、カウンターパーティと取引を実行する前にマスター契約を締結することが望ましいと考えているものの、マスター契約の締結交渉が長引くことも少なくない。そうしたことから、調査したディーラーすべてにおいて、あるカウンターパーティとすでに取引を実行しているにもかかわらずマスター契約の締結が終わっていないという、バックログが存在することが判明した。大半のディーラーにおいては、そうしたバックログはカウンターパーティの5%から20%程度となっているが、30%といった水準にまで達している先も少数ながらみられた。

 マスター契約が未締結であることの問題点として、ほとんどのディーラーは、カウンターパーティがデフォルトした場合に当該先との取引にかかる一括清算ネッティングが行えなくなり、信用リスクが増幅されかねないことを挙げている。こうしたことから、ディーラーは、一括清算ネッティング条項を含むマスター契約の主要な部分をコンファーメーションの中で参照したり、別途添付したりする(「詳細な形式による(ロング・フォーム)コンファーメーション」と呼ばれる)ことによって対応している。大半のディーラーは、未締結のマスター契約のバックログ発生状況をモニターしたり、そうしたバックログを解消するうえで段階的な対応を行うなどのプロセスを確立している。

コンファーメーション

 ほとんど全てのOTCデリバティブ取引は電話で実行される。取引が実行されると、カウンターパーティとの間で取引の確認、決済といったプロセスを辿る。コンファーメーションを作成する主な目的は、取引当事者間で取引の経済的な条件が合意されていることを確認することである。ディーラー間での取引の場合、双方がコンファーメーションを作成するのが通例であるが、エンド・ユーザーとの取引ではディーラーが用意したコンファーメーションをエンド・ユーザーが点検したうえで返送するのが一般的である。取引実行後、1日から5日の間にファクシミリやテレックスによってコンファーメーションを送付するディーラーが一般的である。S.W.I.F.T.は主にFRAや外為オプション取引について利用されている。

 すべてのディーラーは未完了のコンファーメーション——すなわちカウンターパーティから返送されてこないコンファーメーションやカウンターパーティからコンファーメーションが返送されてきたものの発出したディーラー自身のコンファーメーションと一致しないもの——を抱えている。カウンターパーティの中には、とりわけエンド・ユーザー(必ずしもそれに限定される訳ではない)など、なかなかコンファーメーションを返送しない先も存在すると報告されている。また、コンファーメーションの内容が一致しないことも頻繁にみられる。調査対象先の多くは、受け取ったコンファーメーションの5%から10%相当について不一致があると報告したが、中には30%や場合によっては50%といった高水準の不一致を報告している先もみられる。そうしたことから、最も活動的なディーラーは、何百もの未完了コンファーメーションのバックログを抱えており、そのうち90日以上滞留しているものは、全体から見れば一部ではあるが無視できない割合である、と報告している。

 取引のコンファーメーションが未完了であることによってリーガル・リスク(取引の法的有効性が危うくなることによる)や、マーケット・リスクと信用リスク(取引の記録や経営情報システムにおいて誤データが訂正されずに処理されることによる)が高まってしまうことをほとんどのディーラーは理解している。ただし、トレーダーの電話での会話が常に録音されそのテープが保管されている(通常6か月間)ことを背景に、口頭による契約が法的に有効なものであることを指摘するディーラーも多かった。コンファーメーションにおける不一致の大多数は、マーケットリスク、信用リスクを測定するうえで鍵となるような重要な経済的条件に関するものというよりは、むしろ、具体的な支払期日を決定するための取引慣行といった、さほど重要ではない要件に係わるものであることが報告されている。

決済

 OTCデリバティブ取引では、満期までの期間中定期的に、または満期日に(期中と満期日の両方の場合も)支払が発生する。マスター契約には同一期日における同一通貨による支払債務のネッティングを可能にする規定が置かれているものの、現状をみると、電算システムが統合されていない等システム面での制約によりディーラーがネットの決済額を計算し、これに基づいて事務を処理することが困難なため、ペイメント・ネッティングは限定的にしか行われていない。ただし、大半の先ではOTCデリバティブ取引に起因する決済額は全体の決済額からみればわずかでしかない。

一括清算ネッティング

 おそらくOTCデリバティブ・ディーラーが直面している最大のリスクはカウンターパーティに対する信用リスクであろう。このリスクを削減する手段として一括清算ネッティングは極めて有用である。マスター契約は、ある取引当事者がデフォルトした場合、デフォルトしていないカウンターパーティは、デフォルト先と行ったあらゆる取引の清算手続きをすぐさま行い、取引を市場価値によりネット・アウトすることにより単一の債権または債務に置き換えることができると規定している。ディーラーは、ほとんどのG10諸国で一括清算ネッティングの法的有効性が確保されていると確信しているが、疑義のある国が存在すると指摘する先もあった。法的に有効な一括清算ネッティングにより、カウンターパーティに対する信用リスクが20〜60%削減されることが報告されている。

担保

 最近、いくつかのディーラーは、カウンターパーティに対する信用リスクを削減するために担保付取引の活用を急速に拡大させてきている。最も先進的な担保化プログラムを有するディーラーは、カウンターパーティ総数の10〜30%に達する先との間で担保付取引を行っている。しかしながら、大半のディーラーにおいては担保の活用はあまり活発ではない。もっとも、調査対象先のほとんど全てのディーラーは、近い将来担保付取引が急拡大していくことを予想している。

 ISDAマスター契約に付属するクレジット・フォーム(クレジット・サポート・アネックス(CSA))は担保付取引のドキュメンテーションの標準形となりつつある。CSAはカウンターパーティの間での交渉により決められる別表(スケジュール)部分を含んでおり、別表部分にはカウンターパーティの信用極度額(threshold)——すなわち、取引相手方が受け入れる無担保の信用リスク・エクスポージャー額——も含まれている。一般に、信用極度額はカウンターパーティの格付を反映し、格付が高いほど信用極度額も大きくなるといった具合に決められる傾向がある。カウンターパーティの間では差し入れる担保物の種類について合意に達しておく必要がある。ほとんどの先ではG-7諸国またはOECD諸国政府が発行した債券や現金を適格担保として認めている。また、わずかながら社債や株式を適格担保とする先も存在する。

 カウンターパーティに対し担保の受渡を請求する頻度はディーラーによって様々である。大半のディーラーはエクスポージャーと担保価値を日々計測しており、CSAの下ではいつでも担保の受渡を請求することができることとなっている。しかしながら実際のところ、多くの先では、担保によってカバーされていないエクスポージャーが著しく大きい場合を除き、週次ベースや月次ベースで担保の受渡を行っている。また、転担保(rehypothecate)を行う場合——すなわち、カウンターパーティから受け入れた担保を、他のカウンターパーティからの担保差入請求に応えるため、またレポ市場において低コストで資金調達を行うために差し入れる——にカウンターパーティの承認が必要な場合、ディーラーはこうした承認を与えることが多い反面、エンド・ユーザーはあまり承認を与えない。もっとも、転担保を行うディーラーは米国を除くと滅多にいない。これは転担保に供する担保物を把握し管理するシステムをディーラーが未だ構築していないからである。

 担保付取引によって信用リスクが削減される一方、リーガル・リスクやオペレーショナル・リスクは高まってしまう可能性があることをディーラーは認識している。ディーラー各社は、担保物の所在地の法域およびカウンターパーティの所在地の法域における担保契約の法的有効性に関するリーガル・オピニオンを常に求めるようになっている。ディーラーは、担保物の所在地の法域下における担保契約の法的有効性は問題ないと考えているが、多くの法域下でカウンターパーティの破綻が生じた場合に担保契約が法的有効性を認められるかどうかについては不確実性が高いことを認めている。オペレーショナル・リスクについて、ディーラーは、CSAの実行には高水準の事務処理面が要求されることを指摘している。もっとも、いくつかのディーラーは、担保の授受が確実に行われるような担保管理システムをすでに内部で構築している。また、セデル銀行やユーロクリアが提供している担保管理サービスを利用することによって、担保付取引にかかる事務処理の一部をアウトソーシングしている先もわずかながらみうけられる。

主な論点と問題点の分析

 ディーラーに対する面談の結果を当スタディ・グループで検討したところ、3つの論点を特定することができ、それらについてさらに踏み込んだ分析を行うこととなった。その論点とは、(1)マスター契約の締結や取引のコンファーメーションが遅延すること、(2)担保の利用が急拡大していること、および、(3)OTCデリバティブのクリアリング・ハウスの利用が拡大する可能性があることがカウンターパーティ・リスクやシステミック・リスクにもたらす影響である。

ドキュメンテーションやコンファーメーションの遅延

 一括清算ネッティングの法的有効性が確保されている法域では、マスター契約を利用することによってカウンターパーティに対する信用リスクを大幅に削減することができる。もっとも、マスター契約を締結する前でも取引を実行する取引慣行があり、マスター契約を締結していないカウンターパーティがデフォルトした場合に当該カウンターパーティとの間に存在する取引を一括清算ネッティングすることができなくなる惧れがある。カウンターパーティがデフォルトした際、当該カウンターパーティとマスター契約が締結されていた場合に限って、カウンターパーティの破綻時に一括清算ネッティングを行うことを認めている法域もいくつか存在する。

 前述したとおり、ほとんどの先では、マスター契約締結前に取引が実行される場合、マスター契約の基本的な部分を参照するとの文言をコンファーメーションの中に盛り込んだり、一括清算ネッティング条項をコンファーメーションに明示的に添付することによって、一括清算ネッティングのメリットを享受しようとしている。そのようなコンファーメーションを利用することによって所期の目的を達成できるかもしれないが、こうした手段に頼る前にディーラーは、コンファーメーションに付け加えられた文言が契約当事者間で法的に有効なものであるかどうかデュー・ディリジェンスによって確認する必要がある。いくつかのディーラーは必要な法的な分析を行っていると報告しているが、そのほかの先ではこの法的な問題についてあまりに楽観的であるように思われた。

 当スタディ・グループは、少なくともいくつかの法域では、マスター契約が未締結であることによって、カウンターパーティに対する信用リスクが著しく高まる可能性があることに鑑み、未締結のマスター契約のバックログを減らしたり、それに付随するリスクを削減するうえで効果的と考えられる方策を探った。ディーラーとの面談では、以下のような措置がかなり効果的であることが示された。すなわち、(1)マスター契約の利用を求める方針の厳格な運用、(2)未締結マスター契約のバックログ発生状況をチェックし定期的に上級経営陣に報告することによって、上記方針の例外的事象(審査部署の承認を必要とする)を密にモニターすること、(3)信用リスクの大きさに応じてマスター契約の締結に優先順位を付けること、および、(4)バックログの解消を行う責任者を明確化するとともに、同責任者がその仕事に必要な経営資源を確保できるような制度を確立すること、である。最後に、ドキュメンテーションが未完了であることによって一括清算ネッティングを行えるかどうか疑義がある場合には、当該カウンターパーティとの間の信用リスク・エクスポージャーの計測は当該取引の残存期間を通じてグロス・ベースで行われる必要がある。

 未完了のコンファーメーションに目を転じてみると、取引内容が確認されていないことにより当該取引自体やネッティングを行う権利の法的有効性に疑義が生じる可能性がある。いくつかの国では、詐欺防止法(statute of frauds)が定められており、契約が法的に有効であるためには、それが書面にて作成され署名されなければならない。そうした場合には、コンファーメーションが未完了である取引を一括清算ネッティングの計算に入れることに疑義が生じる。これは、ネッティングがマスター契約の法的有効性だけでなく、マスター契約によってカバーされている個々の取引の法的有効性によっても影響を受けるからである。口頭による契約の法的有効性が確保されている法域では、コンファーメーションが未完了であったとしても取引の法的有効性が損なわれることはない。もっとも、こうした法域であっても、署名されたコンファーメーションはカウンターパーティとの紛争を回避する重要な証拠として機能している。また、取引のコンファーメーションが未完了であると、(可能性としては小さいものの)取引を記録する際に入力データのエラーが看過されてしまい、マーケット・リスクや信用リスクが増幅されることにもなりかねない。マーケット・リスクや信用リスクの定量的な測定手法は、その基準となる取引データが正確な場合にのみ有効なものとなるからである。

 ディーラーが取引データの捕捉からコンファーメーションの作成を自動的に処理する内部管理システムを強化することによって、短期的には未完了コンファーメーションに付随するリスクを削減することができよう。多くの場合、OTCデリバティブ取引に関するデータの入力やコンファーメーションの作成は手作業のままとなっている。しかしながら、取引プロセスの自動処理化によって正確なコンファーメーションの作成が可能となったとしても、カウンターパーティからの返送が遅れたり、カウンターパーティのコンファーメーションに誤りがあるために、取引のコンファーメーションが未完了のままになる可能性もある。そうした場合には、すでにみた未署名のマスター契約のバックログを減らすために有効な措置と同様の対応を採ることによって、未完了コンファーメーションの残高を減らすことができよう。

 しかしながら、いかに効果的な内部管理を行っていたとしても、コンファーメーションの標準化やコンファーメーションの自動マッチング・システムが利用可能になるまでの間は、いくつかの取引についてコンファーメーションが完了するまでに相当時間がかかる状態が続くことになろう。対応策として考えられるのは、S.W.I.F.T.アコードのようなマッチング・サービスを利用することであるが、これについても大きな限界があるとみるディーラーも存在する。いかなるサービスも、一定数以上のユーザー集団がいないと各ユーザーは参加コストに見合わないと判断するであろう。また、S.W.I.F.T.の場合、カウンターパーティがすべてネットワークにアクセスできるわけではないし、新しいアコード・システムではより複雑なOTCデリバティブ取引を処理することができない。こうした限界のため、面談した大半のディーラーではS.W.I.F.T.以外に様々な代替手段を模索している。

担保付取引の急拡大

 担保付取引の急速な拡大は、カウンターパーティに対する信用リスクを大幅に削減でき、それゆえOTCデリバティブ市場の安定性を強化し得る。にもかかわらず、担保付取引の利用は信用リスクを完全に解消するものではなく、むしろ流動性リスク、リーガル・リスク、カストディ・リスク、オペレーショナル・リスクといった他のリスクを派生させる可能性もある。もしこれらのリスクが効果的に管理されないまま、ディーラーが担保契約によってクレジット・ラインや自己資本規制の制約を逃れて業容を拡大していった場合、カウンターパーティに対するリスクが増加してしまう可能性がある。

 一般に担保契約は、法的に有効である限り、カウンターパーティのデフォルトによる潜在的な損失を削減する。カレント・エクスポージャー、すなわち現時点でデフォルトが発生した場合の損失、に対する影響は比較的明白であるが、潜在的な将来のエクスポージャー(ポテンシャル・フューチャー・エクスポージャー)に対する影響は相当複雑である。担保契約の構造上、信用リスク・エクスポージャーに対し担保価値が大幅に下落する可能性は非常に小さいものの、担保不足が生じる可能性は排除できない。これは、仮にディーラーが担保権を完全に行使できたとしても起こり得る。極端な場合、担保付取引がカウンターパーティのデフォルト時に損失を拡大させる可能性もある。担保契約を締結していない場合、あるカウンターパーティとの取引のポートフォリオの市場価値が負になる場合、そのカウンターパーティに対するカレント・エクスポージャーはゼロとなる。しかし、もし当該カウンターパーティに対して担保を差し入れていると、担保受入先のデフォルトによって担保が返戻されない場合には、損失に晒されることとなる。

 担保付取引によってカウンターパーティは資金繰りの面で圧力に晒されることとなる。あるカウンターパーティとの取引の市場価値が下落した場合には、担保を受け渡すよう請求通知がなされるが、こうした通知は日々行われる。ディーラーのOTCデリバティブ取引は損益が比較的釣り合っており、その取引のかなりの部分についてはカウンターパーティとの担保契約によってカバーされている。もし、ディーラーが転担保を可能とするようなシステムを有しているのであれば、あるカウンターパーティからの担保差入れ請求に対しては、かなりの場合、他のカウンターパーティから受け入れている担保を利用することによって対応することができる。

 担保付取引の主なリーガル・リスクは担保契約の法的有効性が否定されるリスクである。担保権者は、担保契約が法的に有効なものであることをデュー・ディリジェンスによって確認する必要がある。また、担保権者は、担保権について、その発生、第三者対抗要件の具備、弁済順位を規定する法を特定し、当該法の下で担保権の法的有効性を確保するために技術的な問題がないかどうかを検討する必要がある。最後に、担保権者は、担保差入先の破綻処理を規定する法を吟味しつつ、担保差入先の破綻時に担保権を実行できるかどうか検討する必要がある。こうした問題は関係する法域が単一であっても複雑なものとなり、一般化しているクロス・ボーダー取引の場合にはさらに複雑なものになる。

 担保付取引を実務上行う場合には、複雑な情報処理システムの開発や様々な内部管理面での対応が必要となる。そのため、担保付取引ではオペレーショナル・リスクが極めて重要である。システム面での不備や内部管理体制面での脆弱性によって、取引や担保の市場価値算定が不正確であったり担保契約の諸条件が不正確に記録されている場合には、受渡請求される担保が不足することもあり得よう。請求した担保が確実に受け取られているかどうか、担保の保有状況について常時モニターする必要がある。一方、こうした難しい課題に対応するためにシステムや内部管理体制を構築・整備することは、取引当事者のリスク管理能力を飛躍的に高めることになろう。取引を日々値洗いすることはマーケット・リスクと信用リスクの効果的な管理を促進する。おそらく、さらに重要なのは、ポートフォリオの市場価値を日々算出しカウンターパーティと突き合わせることによって、取引に対する内部的な評価に対し日々外部による検証を行うことになる点である。

 担保契約は、カストディ・リスク、すなわちカウンターパーティから受入れた担保を保護預りしているカストディアンの破綻や過失、詐欺行為などにより損失を生じるリスクを増加させるかもしれない。担保を証券集中保管機構において自己勘定で保有することによりカストディ・リスクを削減しようという動きが複数のデリバティブ・ディーラーにおいて見受けられる。カストディ・リスクからの損失を回避するためには、担保権者の資産をカストディアンや他のディーラーが寄託した資産から分別管理する(segregation)手法が有効である。

 バイラテラル・ネッティングの利用が拡大しているにも関わらず、最大手のディーラーである世界的に業務展開する金融機関にとってOTCデリバティブ取引から生じる信用リスク・エクスポージャーは無視できなくなっている。そのため、これらの金融機関のひとつが破綻することになれば、他のディーラーがOTCデリバティブ取引によって蒙る損害はシステミック・リスクが伝播する経路となりうる。ディーラー相互のエクスポージャーに担保を付けることは、原理的には、そうした経路を通じてシステミック・リスクが伝播される可能性を大幅に削減することになろう。しかしながら、上述したとおり、担保の利用はリーガル・リスクや流動性リスク等その他のリスクを伴うものであり、ディーラーがこうしたリスクを効果的に管理しない場合には金融システムにとって脅威となりうるものである。リーガル・リスクとしては、カウンターパーティの支払不能時に担保契約の法的有効性がある法域もしくは関連する複数の法域で否認されるリスクが存在する。そのようなリスクが顕現化した場合には、広範囲にわたり損失が発生することになろう。これは、多くの取引当事者が担保契約の法的有効性に依存しており、もし当該契約の法的有効性を疑っていれば避けたであろうエクスポージャーを抱えていることが予想されるためである。流動性リスクに関しては、担保付取引の利用が拡大するにつれてディーラーが資金繰り面での圧力に対しより脆弱になることが予想される。すなわち、市場価格の大きな変化によって担保に対する需要が著しく増加しかねないからである。したがって、ディーラーにとって、担保に対する潜在的な需要を予測するためにストレス・テストを行い、予測した担保需要が確実に満たされるよう、効率的な転担保を図るなど、必要な対策を講じることが極めて重要となる。もしディーラーがそうした作業を怠れば、市場が乱高下するような時期に資金繰り面の圧力を飛躍的に増大させることとなろう。

クリアリング

 クリアリング・ハウスは、その参加先がクリアリングの対象とすることに合意したすべての取引について、自分自身をセントラル・カウンターパーティとして決済を行う。クリアリング・ハウスを創設することによってOTCデリバティブ取引に付随する様々な種類のカウンターパーティ・リスクを削減できる可能性がある。信用リスクに関しては、クリアリングによりマルチラテラル・ネッティングを行うことが可能となり、クリアリング対象取引について参加先の信用リスク・エクスポージャーを削減することができる。また、クリアリング・ハウスが通常採用している証拠金制度は、日次ベースのネット・エクスポージャーを削減または担保化していることになる。さらに、クリアリング・ハウスが効果的なリスク管理を行っている場合には、既存のカウンターパーティのすべてではないにしても、そのほとんどの先よりもクリアリング・ハウスの信用力は高くなろう。その一方で、今のところOTCデリバティブ取引のクリアリングは比較的単純な取引に限定して行うよう計画されているため、マルチラテラル・ネッティングによるリスク削減効果は限られてしまうかもしれない。クリアリング対象外の取引は、もともとのカウンターパーティとの間のバイラテラル・ネッティング契約によってカバーされることになるが、この場合、その相対ネット・ベースのエクスポージャーがかえって増加する可能性もある。さらに、すでにOTCデリバティブの担保付取引を行っているディーラーは、クリアリングによって信用リスクがさらに削減される可能性はほとんどないと考えるだろう。実際にディーラーは、信用リスクの削減等、自ら(そして、そのカウンターパーティ)にとって利益があると考えられる場合にのみ、クリアリング・ハウスに参加することになろう。信用リスクの削減効果を減殺するような要因があることから、クリアリング・ハウスの参加者は限定的なものになるかもしれない。

 クリアリング・ハウスは、ペイメント・ネッティングの範囲を拡大することによって流動性リスクを削減する可能性を有している。しかし、OTCデリバティブ取引関連の決済額は比較的小さいため、ペイメント・ネッティングの潜在的なメリットも小さい。リーガル・リスクもクリアリングによって削減されることになろう。クリアリング・ハウスにおけるデフォルト時の手続は各国法において特別に定められていることが少なくなく、クリアリング対象外の取引にみられるようなドキュメンテーション締結の遅れが容認されるとも考えにくい。また、クリアリング・ハウスは、参加先に対し事務処理の面で高い要求水準を設定し、また、取引コンファーメーションの自動処理化をさらに推し進めることによって、オペレーショナル・リスクを削減することもできよう。

 システミック・リスクの観点からみると、クリアリング・ハウスはリスクおよびリスク管理の責任を集中化する。問題は、クリアリング・ハウスが自ら晒されているリスクをいかに効果的に管理するかということになる。上場デリバティブ取引を扱っているG10各国の取引所では、リスク管理上の対応策をいくつか組み合わせつつ実施しており、一般に、非常に有効なものであることが知られている。こうした仕組みを、クリアリングの対象になると考えられる比較的単純なOTCデリバティブ取引に適用したとしても、同じように有効な成果が得られることになろう。確かに、そうした取引は、取引所で成立した価格で時価評価されるというよりはむしろモデルによって評価されることになろうが、クリアリング・ハウスは、取引所価格が存在しないような多くの取引についてすでに決済を行っており、これといった問題に直面していない。OTCデリバティブ取引は、多くの上場デリバティブ取引に比べポジションを一括清算するのに時間がかかることになると考えられるが、クリアリング・ハウスは証拠金を高めに設定したり予備的な財源を多めに確保することによって対応することができよう。

改善のための提言

 上述の各論点について、スタディ・グループは、市場参加者と各国当局がOTCデリバティブがカウンターパーティにもたらすリスクを削減し、また世界的な金融市場の安定性を強化するために採るべき行動を明らかにした。

取引のドキュメンテーションやコンファメーションの遅延について

  • カウンターパーティは、未締結のマスター契約や未完了のコンファメーションのバックログを吟味し、それに伴うリスクを評価し、これを効果的に管理すべく適切な対応を採るべきである。
  • カウンターパーティは、コンファメーションの電子的な交換や照合にかかる既存あるいは新規のシステムを利用することで、バックログやこれに関連したリスクを削減する余地がないか検討すべきである。
  • 監督当局は、監督対象先(特にデリバティブ・ディーラー)におけるバックログや関連リスクを吟味し、そのリスクを限定するために対象先が採っている方針と事務手続きの有効性を評価し、また実務上適切と思われるような改善を奨励すべきである。

担保付取引の拡大について

  • カウンターパーティは、担保付取引の利用に伴うリーガル・リスク(国際私法上の問題を含む)、オペレーショナル・リスク、流動性リスクおよびカストディ・リスクを評価し、これらの効果的な管理を確実に行えるよう努めるべきである。
  • 監督当局は、信用リスクを削減する手段として担保付取引が利用される際の監督上のガイドラインを、オペレーショナル・リスクや法的なデュー・デリジェンスに関する事項も含めて充実させるよう考慮すべきである。
  • カウンターパーティ、監督当局、および中央銀行は、各国政府が担保契約の法的有効性に関する不確実性を削減するために必要な行動を採るよう促すべきである。

クリアリング・ハウスの利用について

  • カウンターパーティは、信用リスクとカウンターパーティ・リスクを削減するに当たり、OTCデリバティブをクリアリング・ハウスで決済することによって生じ得るメリットを検討してみるべきである。その際、クリアリング・ハウスのリスク管理手法の有効性と、クリアリング対象外の取引にかかる相対ベースの信用リスクに与える影響を考慮することも重要である。
  • 中央銀行と監督当局は、OTCデリバティブのクリアリング・ハウスを設立する上で不要な法的あるいは規制上の障害が存在しないように配慮すべきである。また、両者は、クリアリング・ハウスが、参加者の破綻に伴う損失をカバーするための方策を含めて、効果的なリスク管理上のセーフ・ガードを設定・適用するようにしなければならない。こうした点からみて、スタディ・グループが念頭に置いているOTCデリバティブのクリアリング・ハウスは、既存のものであれ計画中のものであれ、現在各国当局によって監督・監視されている取引所型デリバティブのクリアリング・ハウスである点に留意すべきである。

付録

用語集

アウト・オブ・ザ・マネー(out-of-the-money):
権利を行使できる当事者が現時点でそれを行使すると損失が発生するようなオプション契約を形容する言葉。

一括清算(close-out):
満期前に契約を終了させること。

一括清算ネッティング(close-out netting):
あらかじめ定義されたデフォルト事由が特定の取引先に生じると、その取引先との間で約定されたがまだ履行期が到来していないすべての債権および債務を直ちに1回の支払いで清算する契約。なお、ネッティング(netting)およびペイメント・ネッティング(payment netting)参照。

エンド・ユーザー(end-user):
デリバティブを投資またはヘッジ目的で保有する主体。エンド・ユーザーはしばしば売りまたは買いの片方しか行わない。エンド・ユーザーには金融機関(銀行、保険会社、投資信託等)、非金融事業法人、政府、国際機関(世銀等)および個人富裕層が含まれる。なお、ディーラー(dealer)参照。

OTC(over-the-counter):
取引所が関与しない取引。OTC市場では、取引当事者は電話やコンピュータを使って直接取引する。

オプション取引(option contract):
一方の当事者が、特定の資産を、将来の一定期日において(または期日までに)特定の価格で、他方の当事者対し売り、または買う権利を得る(義務はない)取引。その際、この権利を得る当事者はプレミアムを支払う。

オペレーショナル・リスク(operational risk):
情報システムまたは内部管理上の欠陥によって不測の損失が生じるリスク。

掛目(haircut):
証券の時価と担保として利用される際の評価額との差額。担保の掛目は担保価値の下落に対し担保権者を保護する役割を果たしている。

カストディ・リスク(custody risk):
預託された証券が、預託先または預託先の復預託先の倒産、過失または詐欺によって失われるリスク。

カレント・エクスポージャー(current exposure):
取引の相手方が現時点で債務を履行しなかった場合に契約に生じる損失。そうした場合に当該契約を再び締結しようとする際に生じるコストという面から再構築コストともいわれる。なお、ポテンシャル・フューチャー・エクスポージャー(potential future exposure)参照。

期限前終了特約(early termination option):
契約当事者の双方に対し、当該契約をその期日前に終了させることを認める契約条項。場合によっては手数料の支払いが条件となっている。

金利先渡し取引(FRA、forward rate agreement):
金利にかかる先渡し契約で、将来の一時点に開始される具体的な期日を有する債務について支払われる、または、受け取れる金利を契約時に定めておく取引。

クリアリング・ハウス(clearing house):
取引のクリアリングおよび決済ならびにそうした契約にかかるリスク管理に関連するサービスを提供する組織。取引所の一部門であったり別法人だったりする。クリアリング・ハウスはしばしばセントラル・カウンターパーティとして全ての取引の相手方(売り方に対する買い手、買い方に対する売り手)となる。

決済前のリスク(pre-settlement risk<再構築コスト・リスク:replacement cost riskともいう>):
将来の一時点において履行されるべき取引の相手方が、取引の満期までに債務を履行しないリスク。これによって生じるエクスポージャーは、現在の相場によって現取引を再構築するためにかかるコストである。なお、信用リスク(credit risk)参照。

決済リスク(settlement risk<元本リスク:principal riskともいう>):
証券もしくは通貨の売り手が証券もしくは通貨を引き渡したにもかかわらず支払いを受けられない、または、証券もしくは通貨の買い手が支払いを行ったにもかかわらず証券もしくは通貨の引き渡しを受けられないリスク。この場合、証券または資金の価値全額がリスクにさらされる。なお、信用リスク(credit risk)参照。

コンファーメーション手続(confirmation process):
取引の相手方との間で取引の細目を確認する手続。通常、取引の細目および準拠すべき契約書等を記した文書(すなわちコンファーメーション)をファクシミリまたは郵便で交換し、相手方から提供された情報の正確性を確認すること(これをマッチング〈matching〉という)によって行われる。

先渡し取引(forward contract):
将来の特定の期日に特定の商品を特定の価格で一方の取引当事者が買い、他方の取引当事者が売ることを約した契約。

市場価値(market value〈再構築価値:replacement valueともいう〉):
ある契約について、現時点の相場に基づいてその契約を再び締結しようとする際に生じるコストまたは利益。 システミック・リスク(systemic risk):
支払・決済システムまたはより広く金融市場においてある参加者が期日に自己の債務を履行できなくなることによって、他の参加者または金融機関がそれぞれの債務(支払・決済システムにおける決済を含む)を履行できなくなるリスク。こうした債務不履行は、流動性または与信に大きな悪影響を及ぼし、結果として金融システムの安定性を阻害する危険性を有する。

質入れ(pledge):
ある債権者に対する債務の履行を確保するために、債務者または質物の差入人が、債権者に対し資産を引き渡すこと。質入れによって差し入れられた資産の上に担保権が生じる。なお、担保権(security interest)参照。

詳細な形式によるコンファーメーション(long-form confirmation):
マスター契約の主要条項を記載したコンファーメーション。取引当事者間にマスター契約が締結されていない場合、こうした詳細な形によるコンファーメーションやマスター契約の標準的な条項が適用される旨の文言を含んだコンファーメーションが用いられる場合もある。

譲渡(title transfer):
一方の取引当事者から他方に資産の所有権を移転すること。譲渡は担保の一形態として利用される。すなわち、担保の提供者は、担保権者に対し、後日同等の資産を約定にしたがって返還することを前提として、資産を担保として引き渡す。

信用リスク(credit risk):
取引の相手方が、債務の決済時点またはそれ以後に、当該債務を額面通りに決済しないリスク。信用リスクは決済前にも(再構築コスト〈replacement cost risk〉)、決済時にも(元本リスク〈principal risk〉)生じる。

スワップ(swap):
当事者が、将来の特定時点において、特定の算式に基づいて、相互に支払いを行うことを約する取引。

相殺(set-off):
相互に有する債権と債務を差し引いて消滅させる(または、相互に有する債務をより小額の債務の額まで履行したことにする)こと。相殺は法律上当然に実行される場合も、契約によって実行される場合もある。

多角的ネッティング(multilateral netting):
多角的なネッティングによるポジションは、ある参加者の他の参加者に対する相対ネッティングによるポジションを合計することによって計算される。こうしたネッティングは、すべての相対取引の買い手に対して売り手の役割を果たし、売り手に対して買い手の役割を果たす中心的な取引当事者(セントラル・カウンターパーティ、たとえばクリアリング・ハウス)を通じて行われる。多角的なネッティングによるポジションはそれぞれの参加者と中心的な取引当事者との間の相対ネッティングによるポジションとなる。なおネッティング(netting)参照。

担保(collateral):
それを受け入れる先に対する債務の履行を確保するため、それを提供する先から引き渡される資産。担保契約は質入れまたは譲渡担保等種々の法的構成を採ることができる。OTCデリバティブ取引においては、政府証券または現金が担保として用いられる。なお、質入れ(pledge)および譲渡(title transfer)参照。

担保管理サービス(collateral management service):
顧客から担保に関連する種々の業務を受託するサービス。担保の時価評価、担保受渡先との間での時価の確認、担保資産活用の最適化、担保の受渡等のサービスが含まれる。

担保権(security interest):
ある資産について発生する権利で、当該権利によって保全される債務を満足させるために、デフォルトの発生時に当該資産の売却を許す権利。

担保権者(secured party):
ある債務者に対する債権を保全するための担保を有する当事者。

ディーラー(dealer):
1つまたは複数の商品の市場において売り買い両方の取引を行う企業。OTCデリバティブのディーラーは、主として国際的に業務を展開している大手金融機関(ほとんどの場合銀行であるがいくつかの証券会社および保険会社を含む)であるが、非金融機関の関連会社の場合もある。なお、エンド・ユーザー(end-user)参照。

デフォルト(default):
一般的に、債務を期日に履行しないこと、または、契約当事者間であらかじめ定義しておいたデフォルト事由が発生すること。

デフォルト事由(event of default):
契約においてデフォルトに該当すると定義された事由。一般的に、期日における債務不履行、契約条項違反、倒産等が含まれる。

デリバティブ(derivative):
1つまたは複数の原資産(レート、指数を含む)の価格によってその価格が決定される金融上の契約。すべてのデリバティブは、分析の観点から、先渡し契約、オプションまたは両者の組み合わせに分解することができる。

転担保(reuse of collateral<転質:rehypothecationともいう>):
担保を受け入れた当事者が、それを自分の取引の担保として別の当事者に差し入れること。rehypothecationという語は一般的に質入れの場合に用いられる。

取引所型デリバティブ(exchange-traded derivative):
組織化された市場に上場され取引されるデリバティブ。デリバティブ取引所は一般的に定型化された契約および参加者に対するクリアリング機能を提供する。

取引の自動処理(straight-through processing):
人手による再入力やデータの形式変換を伴わずにフロント・オフィスの取引支援システムから取引の細目を取り込み、コンファーメーションや決済指図を自動的に発行する処理方法。

値洗い(marking to market):
期日を迎えていない金融商品を現在の相場で時価評価し、前回の値洗い時点から生じた利益または損失を計算すること。

ネッティング(netting):
取引の当事者間においてポジションまたは債務を差し引き計算すること。なお、一括清算ネッティング(close-out netting)およびペイメント・ネッティング(payment netting)参照。

バック・オフィス(back office):
企業において取引後の事務処理に責任を有する部署。単一の部局であるか、複数の部門に分かれる(ドキュメンテーション、リスク管理、経理、決済等の担当)かは企業組織の組み立て方による。いくつかの企業においては、これらのうちとくにリスク管理にかかる担当を、いわゆるミドル・オフィス部署(middle office function)として独立させている。なお、フロント・オフィス(front office)参照.

プレーン・バニラ取引(plain vanilla transactions):
最も一般的でほとんどの場合最も単純な類型のデリバティブ取引。プレーン・バニラは相対的な概念であり、厳密な一覧を作成することはできない。これに対し、特異な(あまり一般的でない)特徴を有する取引はエギゾチックもの(exotic)または仕組みもの(structured)と呼ばれる。

ブローカー(broker):
取引を行う可能性がある先に対し、売り買いの価格を提示するなどして取引を成立させ手数料を得る企業。取引の当事者にはならない。

フロント・オフィス(front office):
企業の取引部署または取引相手先との関係を深耕し管理することに責任を有する部署。なお、バック・オフィス(back office)参照。

ペイメント・ネッティング(payment netting):
同一期日に履行期を迎える同一通貨の支払を差し引き計算の上で決済すること。

法的リスク(legal risk):
法律または規制が予想しない形で適用されること、または、契約が法的手段に強制できなくなることによって損失が生じるリスク。

ポテンシャル・フューチャー・エクスポージャー(potential future exposure):
取引の満期までに、当該取引についての現時点での再構築コストを超えて生じ得る追加的なエクスポージャー。なお、カレント・エクスポージャー(current exposure)参照。

マスター契約(master agreement):
契約当事者間において将来実行される可能性のあるすべての、または一定範囲の、取引に適用される標準的な条件を定める契約。一括清算ネッティングの条項が含まれる。

マスター・マスター契約(master master agreement):
別々のマスター契約に基づいて実行される取引の一括清算ネッティングを定める包括的な契約。たとえば、取引当事者は、OTCデリバティブの種類によって準拠すべきマスター契約が異なる場合に、マスター・マスター契約を締結することで一層のリスク削減を目指すことがある。

リスク・ファクター(risk factor):
金融商品またはそのポートフォリオの価値に影響する変数。最も一般的なマーケット・リスク・ファクターは、金利、為替レート、株価およびコモディティ価格である。

流動性リスク(liquidity risk):
取引の当事者が、履行期に対応できないほどの資金(または担保)需要に直面するリスク。


インタビュー先のディーラー・リスト

  • ベルギー
    BACOB Bank
    Generale Bank
  • カナダ
    Canadian Imperial Bank of Canada
    Royal Bank of Canada
  • フランス
    Credit Agricole Indosuez
    Societe Generale
    Caisse des Depots et Consignations
  • ドイツ
    Commerzbank
    Dresdner Bank
  • イタリア
    Banca di Intermediazione Mobiliare IMI
    Instituto Bancario San Paolo di Torino
  • 日本
    東京三菱銀行
    第一勧業銀行
    日本興業銀行
  • オランダ
    ABN Amro
    ING Bank
    Rabobank
  • スウェーデン
    Nordbanken
    Skandinaviska Enskilda Banken
    Swedbank
  • スイス
    SBC Warburg Dillon Read
    Union Bank of Switzerland
  • イギリス
    Credit Suisse Financial Products
    Lloyds Bnak
    National Westminster Bank
  • アメリカ合衆国
    Bankers Trust
    Chase Manhattan
    Citicorp
    J.P. Morgan
    Merrill Lynch

以上