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平成17年度の考査の実施方針等について

2005年4月4日
日本銀行

1.平成16年度を振り返って

(1)考査実施状況

平成16年度においては、国内銀行46先、信用金庫67先、外国銀行・証券会社等40先の合計153先に対し、考査を実施した。

考査実施先数の推移 (先)
14年度 15年度 16年度
国内銀行 38 50 46
信用金庫 67 69 67
外国銀行・証券会社等 10 21 40
合計 115 140 153

(2)考査・モニタリングを通じて把握された金融システムの現状等

(総括)

16年度は、(1)将来展望を重視した資産価値の把握、(2)リスク管理の高度化、(3)多様な信用供与チャネルの創造、(4)円滑な決済の確保、の4つを基本的視点として、考査・モニタリングを実施した。

考査・モニタリングから得られた現状認識を整理すると、まず、金融機関の不良債権処理については、オフバランス化の進展や企業再生努力の効果から、全体として大きな進展がみられ、不良債権比率は着実に低下した。金融機関の収益力は、信用コストの減少等から改善しており、経営体力も回復の方向にある。また、この面では、不良債権処理を進める過程で、経営統合・合併により収益力や資本基盤の強化を図る動きがみられたほか、積極的な資本調達により自己資本の充実を進める動きも目立った。この間、リスク管理・経営管理面ではなお課題が残されており、収益力についてもさらなる改善余地があると思われる。

主要なリスク・カテゴリー毎に整理すると、以下のとおりである。

(信用リスク)

金融機関の信用リスク管理については、全般的にさらなる改善がみられた。自己査定の精度は総じて向上し、その結果に基づいて償却・引当が行われるようになっており、貸出資産の健全性は回復してきている。ただし、一部の先では、(1)債務者の将来キャッシュ・フローの見積もりが妥当でない、(2)担保不動産の処分可能見込み額が実勢処分価格と乖離している、(3)貸出条件緩和債権の認定に用いられる基準金利の設定が合理的でない、などの問題がみられた。

企業再生については、大手銀行で、大口債務者の抜本的な再建計画の策定が概ね完了し、懸案であった大口不良債権問題の処理に目処がついた。また、地域金融機関においても、企業再生に向けての体制整備が進み、その成果が徐々に顕われてきている。再生手法についても、産業再生機構の機能を活用したり、会社分割、DES(Debt Equity Swap)など新しい手法を取り入れる動きが広がった。しかし、その一方で、経営改善計画の検証や債務者企業に対する経営指導の面で、より踏み込んだ対応が必要な事例も見受けられた。

金融機関では、内部格付制度の整備や、それに基づく信用リスク計量化の動きが広がりつつある。こうしたなか、内部格付制度が整備されている金融機関の考査においては、貸出ポートフォリオ全体の経済価値とリスク量を把握し、そのリスク特性や先行きの信用コストを評価するため、EL(期待損失)・UL(非期待損失)の計量結果を踏まえた議論を行った。信用供与チャネルの多様化という観点からは、これら金融機関との間で、自己資本の状況や、個別貸出債権のリスク・リターンも踏まえ、能動的な与信ポートフォリオ管理によるリスク量のコントロールや収益力の向上について議論し、認識の共有を図った。

また、金融機関は、このところ、シンジケート・ローン、スコアリング・モデルを活用した中小企業向け無担保定型ローン、不動産関連ノンリコース・ローンといった新たな与信や、住宅ローン債権流動化等への取組みを拡大している。考査においては、こうした取組みとそのリスク管理の状況を確認したが、貸出債権の集合的管理に当って、モデルの検証が不十分なためリスクの把握が適切でないなど、課題のある事例もあった。

(市場リスク)

市場リスクに関して、大手銀行では、統合リスク管理の枠組みの下でリスク量を管理する手法が定着してきている。16年度中は、総じて長期金利の上昇に対して警戒的な運用スタンスが目立ったが、統合リスク管理の面では、計測手法を精緻化しつつ、金利リスクの増大に備えて、債券投資への資本バッファーの配賦を増加させるなど、資本制約が緩和するなかで、より合理的な運営が指向されていた。

これに対し、地域金融機関では、収益面の要請から、総じて有価証券運用への依存度を高めており、市場リスク管理の重要性が増しているが、経営体力に関連付けたリスク限度枠の設定が未だ浸透していないなど、管理体制の整備が十分でない事例も少なからず見受けられた

大手銀行の株式保有は、経営安定化の観点からさらに圧縮が進められ、全体としては中核資本(Tier I)を下回る水準となった。考査においては、企業再生の過程で保有が増加している非上場優先株式についても、経済価値の評価を巡って議論を行ったが、改善余地のあるケースもあった。

この間、金融機関では、運用利回りを確保するため、仕組債、不動産投信、ヘッジ・ファンド等への投資を積極化しつつある。これらの投資について、評価モデルも用いながら、リスク管理体制を検証したところ、経済価値の把握やリスクの内容・量の認識等の面で問題のある先が少なからずみられた。

(決済・流動性リスク)

金融機関の流動性管理は総じて慎重に行われており、決済面でも大きな問題は発生しなかった。こうしたなか、大手銀行では、不良債権処理の進展や収益の改善を背景に市場の評価が向上してきたことから、今年に入って、円貨について、流動性管理面における警戒的なスタンスを幾分緩める動きがみられたほか、外貨については、調達環境の改善を反映して、運用を積極化する動きがみられている。

この間、考査における管理体制の検証結果をみると、金融緩和が長く続くなかでリスクの認識が十分とはいえず、ストレス分析や緊急時対応計画・訓練の充実が必要と思われるケースも見受けられた。

(業務リスク等)

金融機関では、事務の本部集中、外部委託の拡大等により事務効率化を図る一方、新規業務への取組みを進めており、業務に係るリスクの特性が大きく変化している。このため、業務リスク管理の重要性は高まっているが、こうしたリスクをコントロールしていくためには、事務の変化を踏まえた規程類の整備、トラブル情報の活用、内部監査の実効性向上などの面で、一層の努力が必要である。

コンピュータ・システムの運行に関しては、16年度中、大規模なシステム障害の事例は前年度に比べて減少したが、顧客に影響の及ぶ各種の障害は引続き発生した。また、システム統合やシステム共同化のプロジェクトが計画比遅延する事例もみられた。このため、考査・モニタリングでシステム構築・運行管理が適切に行われているか確認したが、プロジェクト管理や外部委託先管理の面で改善余地のあるケースがみられた。

災害時等の業務継続体制については、徐々に整備が進展している。16年度は、台風や地震など大規模な自然災害に見舞われた金融機関が少なくなかったが、その際には、早期の営業体制の確保、ATMを含むシステムの立上げ等が総じて円滑に行われ、地域における金融機能の提供という面で概ね適切な対応がとられた。ただ、考査における検証結果をみると、緊急時対応訓練の内容やバック・アップ施設の充実などの面では、なお改善を要する先が多かった。

この間、顧客情報管理についても対応状況を確認したが、一層の体制整備が必要な事例が少なくなかった。

  • 本稿では、事務、コンピュータ・システム、業務継続など業務運営全般に係るリスクを業務リスクと呼称している。

2.平成17年度の考査の実施方針

(1)考査の視点

日本銀行は、去る3月18日に「ペイオフ全面解禁後の金融システム面への対応について」を公表し、今後の金融システム面の対応を、危機管理重視から、金融システムの安定を確保しつつ、公正な競争を通じて金融の高度化を支援していく方向へと切り替えていく方針を明らかにした。

その中でも示したとおり、考査においては、引続き金融機関の経営実態の把握に努め、最後の貸し手機能の発揮に備えるとともに、今後は、金融機関がリスク管理・経営管理の高度化を進め、顧客ニーズに応えて創造的な業務展開ができるよう支援し、それを通じて金融システム全体としての機能度や頑健性の向上に貢献していくことに力点を置く方針である。

17年度においては、こうした方針を踏まえ、以下の5点を基本的視点として考査を実施する。

(保有資産や金融取引全般の経済価値とリスクの把握)

多様な業務展開を前提にすると、金融機関にとっては、貸出資産のみならず、保有する資産や金融取引全般にわたり、経済価値とその変動可能性(リスク)を把握することが重要になる。

まず、貸出資産については、これまでもDCF(Discounted Cash Flow)法的な考え方を用いて経済価値の適切な把握に努めてきたが、今後もその考え方を広く応用して、金融機関との間で、貸出資産の評価に関する認識の共有を図る。その際、経済価値が金融機関自身の経営状況に応じ変動し得る親密企業向け貸出などについては、その特性を踏まえた評価方法について議論し、評価の精度を高めていく。

また、内部格付制度が整備されている金融機関においては、貸出ポートフォリオ全体としての経済価値とリスクを評価するに当って、与信集中リスクや景気循環の影響等も考慮して、EL(期待損失)・UL(非期待損失)の計測を行い、評価の精度向上を促しつつ、信用リスクのコントロールや貸出金利の設定について議論を深めていく。

この間、中小・零細企業向け貸出について、債権プールを集合的に捉えて経済価値を評価し、リスク管理を行う手法が徐々に広がっている。小口の貸出債権について、こうした管理手法が定着していけば、金融機関は、そうした与信ポートフォリオ全体としてのリスク量を適切な水準にコントロールしながら、個別の与信判断を行うことが可能となり、貸出を通じた地域経済への貢献と経営の健全性確保の両立を図るに当って有用なツールとなることが期待される。考査においては、そうした方向性も展望しつつ、貸出債権の集合的管理の実情把握に努める。

貸出以外の資産のうち、上場有価証券などの市場価格が存在する資産については、これまでも時価評価(mark-to-market)で経済価値を把握してきた。しかし、金融機関では、仕組債、仕組預金・貸出、私募不動産投信、非上場優先株式など、市場価格が存在しない資産の運用が増加している。今後は、これら市場価格が存在しない資産や新種の資産についても、評価モデルに基づき(mark-to-model)経済価値の把握を進める。そうした評価モデルについては、その改善に向けて金融機関とともに検討を深めていく。また、繰延税金資産も、その経済価値が、金融機関自身の将来収益とその変動可能性によって大きく変化する資産である。その評価についても、金融機関との間で議論を深める。

(統合リスク管理の強化)

信用リスク、市場リスク、業務リスク等様々なリスクを統合的に管理する枠組みを有効に機能させれば、金融機関はリスク・リターンと限りある自己資本の有効な活用について、客観性の高い判断材料を得ることができるようになり、それは、より合理的・効率的な経営の実現につながると考えられる。考査においては、金融機関の経営の実情に応じ、統合リスク管理の枠組みの整備・活用を促していく

具体的には、大手銀行など既に管理体制の整備が進んでいる先とは、リスク計量手法の一層の高度化、計量対象とするリスクの範囲拡大、各リスク間の相関の把握等について議論を深めていく。

一方、統合リスク管理の枠組みが未だ整備されていない先については、新しい自己資本比率規制(バーゼルII)への対応という観点も踏まえ、管理の考え方について認識の共有を図るほか、データの蓄積、リスク計量手法の確立等体制整備の動きを支援する。また、有価証券運用が増加している地域金融機関に対しては、信用リスクや業務リスクに割り当てる資本のバッファーを考慮のうえ、有価証券投資に配賦する資本を定め、経営体力と関連付けた形で投資量・リスク量の限度枠を設定するよう促していく。

金融機関が、保有資産の経済価値やリスクを適切に把握し、統合リスク管理を活用したうえで、それらに関する情報を開示していけば、預金者や投資家にとっても金融機関の経営やリスク・リターンに関する評価が容易になり、金融機関経営に対する市場規律がより効果的に働くことが期待される。こうした観点から、考査においては、金融機関のリスク管理状況に関する情報開示の充実を促していく

(能動的な与信ポートフォリオ管理の定着)

金融機関が、統合リスク管理の枠組みの下で、リスク・リターンについてより客観的に判断できるようになれば、自らの最適な与信ポートフォリオの形成に向け、資産を能動的に入れ替えるインセンティブが強まると考えられる。その結果、債権流動化、証券化などクレジット関連市場の取引が拡大し、信用供与チャネルの多様化が進めば、金融システム全体として機能が向上していくと期待される。

こうした観点から、考査においても、金融機関の能動的な与信ポートフォリオ管理に向けた取組みを支援するとともに、融資慣行の見直しなど必要な環境整備について、金融機関と議論を深める。

(円滑な決済の確保)

日本銀行は、金融システムにおける決済の連鎖の実態とリスクの所在を常に的確に把握し、必要な場合には、流動性供給の面で適切な対応をとる方針である。考査においては、システミック・リスクの顕現化を防止する観点から、決済システムに内在するリスクの把握に努めるとともに、ペイオフ全面解禁後の金融機関の流動性管理の実態についてつぶさに検証していく。

17年度は、大規模な勘定系コンピュータ・システムの統合や複数の金融機関が関係するシステムの共同化が予定されているため、その準備状況について検証していく。併せて、決済システム全体の安定運行の確保という観点から、集中決済機関や、金融機関等が決済業務の一部を委託している先についても、必要に応じ調査を行う。

また、大規模な自然災害等の発生に備え、金融機関の業務継続体制やその際の日本銀行との連携についても入念に確認を行う。

(金融取引の安全確保に向けた管理の強化等)

金融取引の安全確保は、金融システムの安定や、機能度の向上を図っていくうえで重要な前提となる。このところ、金融機関業務の多様化、偽造カード等金融犯罪の手口の巧妙化、情報漏洩事件の増加等を背景に、金融取引の安全確保の重要性が改めて認識され、預金者や投資家の関心も高まっている。考査においても、この面に関する金融機関の管理体制(法令遵守基準の設定、システム面の対応、検査・監査体制等)を確認し、必要に応じその強化を促していく

また、リスク管理・経営管理全般にわたって、意思決定や執行が予め定められた手続きに則って行われ、その結果について事後的に客観的な評価が行われているかどうかを検証し、金融機関の実情に応じて、そうした内部統制の機能向上を支援していく。

以上のような基本的視点に則して、17年度考査における重点項目を、リスク・カテゴリー毎に敷衍すると、別表のようになる。

(2)考査運営面での対応

日本銀行としては、17年度の考査運営に当り、考査の機会が金融機関のリスク管理・経営管理の高度化を支援するものとなるよう、経営陣と十分に議論を重ね、ともに諸問題解決の方策を探っていく方針である。また、会計処理のあり方については、今後も必要に応じ監査法人を交えた議論を行っていく。

考査の実施に当っては、引続き金融機関の負担軽減に配慮する。とくに、17年度からの新たな考査方針を踏まえ、考査の重点を、個別資産の検証からリスク管理体制の点検へとさらに移していくこととし、貸出査定の検証に係るサンプル抽出率を引き下げる。また、それぞれの金融機関の状況に応じ、立入調査の内容、考査チームの陣容、考査の期間などについて、より弾力的な運用を行っていく。

さらに、考査関連資料の授受を効率化するため、日本銀行考査オンライン・システムのより積極的な活用を図る。併せて、考査・モニタリングにおける金融機関との財務データの授受を効率化するとともに、市中における金融情報ネットワーク高度化の動きを支援する観点から、17年度中に、財務データを伝送する際の利便性の高いデータ形式のひとつであるXBRL(eXtensible Business Reporting Language)を活用した資料の授受を開始する予定である。

以上

(別表)

17年度考査におけるリスク・カテゴリー毎の重点項目

(信用リスク)

  • 貸出資産のみならず、保有する資産や金融取引全般にわたり、経済価値とその変動可能性(リスク)を把握。 貸出資産については、DCF(Discounted Cash Flow)法的な考え方を広く応用して、種々の形態の貸出について、経済価値とそのリスクを把握。 経済価値が金融機関自身の経営状況に応じて変動し得る親密企業向け貸出などについては、その特性を踏まえて評価方法を議論。 さらに、このところ金融機関が積極化している住宅ローンや中小・零細企業向け定型ローンについては、集合的にリスクを管理し、引当を行う方法の整備状況を検証。また、必要に応じて、債務者属性毎の管理の状況等を確認。住宅ローンが流動化されている場合には、残余部分のリスクが的確に把握されているかといった観点から、リスク管理体制の適切性を検証。
  • 新しい自己資本比率規制(バーゼルII)への対応という観点を含め、内部格付制度の基礎となるデータの蓄積や検証体制を確認するとともに、実績との乖離状況を踏まえて内部格付の精度を検証。 内部格付制度が未整備の金融機関については、その実情に応じて、考え方に関して認識の共有を図るほか、データの蓄積等体制整備の動きを支援。
  • 内部格付制度が整備されている金融機関においては、与信集中リスクや景気循環の影響等も考慮して、EL(期待損失)・UL(非期待損失)の計測を行い、評価の精度向上を促しつつ、信用リスクのコントロールや貸出金利の設定等について議論を深めていく。
  • 業況の悪化した債務者の再建可能性、再建可能な債務者に対する支援・働き掛けの適切性を確認。
  • クレジット・デリバティブなどの金融技術や各種クレジット関連市場等を活用した能動的な与信ポートフォリオ管理への取組状況を把握。 金融機関の実情に応じて、能動的な与信ポートフォリオ管理の考え方について認識の共有を図るとともに、そのためのリスク・リターンの客観的な把握や、必要な融資慣行の定着に向けて議論。
  • 競売や任意売却の実績、担保売却の方針、担保物件の現地での調査結果等を踏まえ、担保の処分可能見込額の適切性を検証。その際、必要に応じて、土壌汚染のある不動産担保の適切な評価が行われているか確認。

(市場リスク)

  • 貸出資産以外の保有資産や金融取引についても、経済価値とその変動可能性(リスク)を把握。
  • 金利リスクの計量・管理の体制を検証。その際、テイクするリスクの大きさを客観的に認識したうえで、経営体力とのバランスを考慮し、定められた手続きに則り意思決定がなされているか確認。 有価証券運用が増加している地域金融機関に対しては、信用リスクや業務リスクに割り当てる資本のバッファーを考慮のうえ、有価証券投資に配賦する資本を定め、それと関連付けた形で投資量・リスク量の限度額を設定しているか検証。
  • 保有株式に係る価格変動リスクの適切なコントロールについて議論。また、企業再生の過程で取得した非上場優先株式について、必要に応じプライシング・モデルを利用して、リスクを的確に認識しているか検証。
  • 金融機関が運用を拡大している仕組債、仕組預金・貸出、私募不動産投信、ヘッジ・ファンドなど新種の資産について、商品毎にリスクの特性等をきめ細かく点検。必要に応じプライシング・モデルを利用して、経済価値の把握状況を検証し、リスク管理体制を評価。
  • 金利変動に対してより頑健な運用・調達構造のあり方について議論。

(決済・流動性リスク)

  • ストレス分析を踏まえ、円貨・外貨両面で決済・流動性管理を検証。また、流動性逼迫時に想定している緊急対応の実効性を検証。
  • 新たな集中決済機関の稼動や決済構造の階層化の動きを踏まえ、資金、証券の決済状況について、問題が発生した場合のシステミックな影響を把握する観点から調査。
  • 風評リスクに備え、市場や預金者の信認を確保するための対応(情報開示の充実等)や有事を想定した体制整備に改善すべき点がないか確認。

(業務リスク)

(1)事務リスク
  • 事務処理の本部集中・外部委託が進む一方、内部監査における自店検査重視等の動きが進展している状況下、適切なリスク管理が行われているか検証。
  • 投信・保険等資産運用商品の販売、インターネット・バンキング、証券仲介業などの新ビジネスに関して、適切な業務運営やリスク管理を確保するための内部統制が有効に機能しているか検証。
  • 金融機関や集中決済機関が業務の一部を外部委託する動きが広がっていることを踏まえ、必要に応じて外部委託先の業務運営の把握、管理の強化を促す。
  • データ整備や分析力の向上等、リスク管理の高度化に向けた取組みを確認。
(2)コンピュータ・システム
  • 決済関連システムの安定的な運行を確保する観点から、システムの安全性・安定性、障害対応等を検証。
  • 大規模な勘定系システムの統合、複数の金融機関が関係するシステム開発・運用の共同化プロジェクト等について、システム構築・運行の管理体制、障害発生時 の対応の適切性を検証。また、リスクが集中する可能性のある集中決済機関などについても、決済システム全体の安定運行の確保という観点から、必要に応じて システム構築・運行の管理体制等を調査。
  • オープン系システムの導入やネットワーク化が進展するなかで、外部委託先を含めて、維持管理・運用が適切に行われているか確認。
(3)業務継続体制
  • 16年度に発生した大規模な自然災害の際の対応状況等を点検するとともに、拠点被災や広域災害に備えた計画の策定と訓練の実施、バック・アップ施設等の体制整備、日本銀行等外部との連携などについて確認。
(4)金融取引の安全確保
  • 口座不正利用、偽造カード、偽造銀行券・貨幣等、手口が巧妙化する金融犯罪への対応について、経営としての対応方針を確認し、それと整合的な形で適切な対応が講じられているか検証。
  • 個人情報保護の面で、顧客情報管理が法令等に則して適切に行われているか確認。また、システム面での情報セキュリティ管理が適切に行われているか検証。

(経営体力・統合リスク管理・内部統制等)

  • 債務者区分の遷移や営業基盤の経済実態を踏まえ、先行きの信用コストを検証。必要に応じて、一定のストレス下での収益予測を行ったうえで、金融機関の収益見通しを評価。
  • 金融機関自身の将来収益とその変動可能性を踏まえ、繰延税金資産の経済価値の評価と計上のあり方について議論。
  • 統合リスク管理について、リスクの計量手法の一層の高度化、計量対象とするリスク範囲の拡大余地、各リスク間の相関の把握等について議論。 統合リスク管理の枠組みが未整備の金融機関については、新しい自己資本比率規制(バーゼルII)への対応という観点も踏まえ、その実情に応じて、管理の考え方について認識の共有を図るほか、データの蓄積、リスク計量手法の確立等体制整備の動きを支援。
  • 統合リスク管理の枠組みの下で、各部門に対する資本賦課・収益評価などが適切に行われているか確認。
  • 保有資産の経済価値やリスク量、統合リスク管理の運営等リスク管理に関する情報開示の充実について議論。
  • 内部監査機能の充実・高度化を支援する観点から、リスク特性に応じた監査手法の導入、リスクの所在を踏まえた監査計画の立案、監査後のフォローアップ、経営陣の関与方法等について議論。
  • リスク管理・経営管理全般にわたって、意思決定や執行が予め定められた手続きに則って行われ、その結果について事後的に客観的な評価が行われているか検証し、内部統制の機能度を評価。
  • 新しい収益機会を創出するうえで、追加的な自己資本が必要となる場合の資本調達の可能性について議論。