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日本長期信用銀行の考査契約違反行為に関する事実の公表について

1999年10月20日
日本銀行

  1. 平成10年5月から6月にかけて株式会社日本長期信用銀行に対して考査が実施された際、同行が「考査に関する契約」(以下「考査契約」)に違反し、求められた報告、説明、資料の提供に関して正当な理由なく情報を提供しなかった事実、および虚偽の情報を提供した事実がありましたので、考査契約第13条に基づき、これを公表します。
  2. 同行が行っていた考査契約違反行為の主な内容は以下の通りです。
    1. (1)考査期間中に考査会場に備付けるよう、予め日本銀行が同行に指示した諸会議の資料等の一部につき、意図的な削除が行われ、削除された資料類は地下倉庫に隠匿されていた(考査契約第13条第1項第5号の「情報提供を正当な理由なく行わない場合」に該当)。
       また、同様に日本銀行が考査期間中に考査会場に備付けるよう指示した諸会議の資料等の一部につき、改竄された上で会場に提出されていた(考査契約第13条第1項第6号の「虚偽の情報を提供した場合」に該当)。
    2. (2)同行では、情報の秘匿体制を考査期間を通じて徹底させたため、日本銀行が自己査定結果の適切性をチェックする、いわゆる資産査定の段階で、個々の債務者の経営状況等に関し同行より開示される必要のあった一部の重要情報についても情報提供が行われなかった(考査契約第13条第1項第5号の「情報提供を正当な理由なく行わない場合」に該当)。
      さらに、情報の秘匿を続けた結果、資産査定の段階で、債務者の経営概況につき客観的に見て経営実態からかけ離れた説明が行われていた例がみられた(考査契約第13条第1項第6号の「虚偽の情報を提供した場合」に該当)。
  3. 考査先金融機関と日本銀行の間の相互信頼と協力関係は、日本銀行が日本銀行法に定められた考査の責務を果たして行く上での大前提であり、これらの金融機関と日本銀行との当座預金取引関係全般を支える重要な基礎ともなるものです。こうした点に鑑みれば、上記のような行為は日本銀行として看過しえない、非常に遺憾な行為であったと言わざるを得ません。
  4. 同行は、昨年10月の特別公的管理への移行以来、経営陣・株主とも一新され、いわば新たな銀行として再出発していこうという途上にあり、現経営陣は特別公的管理の一刻も早い終了を目指して努力しています。
     現経営陣が、今回の事態を生む背景となった経営上の問題点を解消し、内部管理の一層の充実を図ることは、事態の再発防止に不可欠であると同時に、同行が特別公的管理を早期かつ円滑に終了し、新たな出発を遂げる上でも極めて重要です。このため、本日、同行の現経営陣に対して、こうした面での改善状況につき別途報告するよう要請しました。
  5. 日本銀行としては、今回判明した事実関係を重く受け止め、厳正な考査の確保に努めるとともに、万一、考査先金融機関が重大な契約違反行為に及んだ際には、こうした事実の公表や、場合によっては取引関係の見直し等によって厳正に対処する所存です。

以上