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銀行の透明性の向上について

(日本銀行仮訳)

1998年 9月22日
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行から

 全文は、こちら(bis9809e.lzh 44KB [MS-Word])から入手できます。

プレス・ステートメント

バーゼル委員会が銀行の透明性に関する指針を公表

 本日、バーゼル銀行監督委員会は、銀行の財務報告についてのパブリック・ディスクロージャーに関する銀行および銀行監督当局のためのガイドラインを公表した。これらの提言は、米国通貨監督庁の国際関係担当副長官でバーゼル委員会の委員でもあるSusan Krause女史が議長の透明性小委員会(バーゼル委員会傘下)が作成したペーパーに示されている。本ペーパーは、監督当局が積極的にパブリック・ディスクロージャー基準の向上を奨励することを提言している。

 本ペーパーは特に、銀行が、財務上の業績、財務状況(自己資本、ソルベンシー、流動性に関する情報を含む)、リスク管理の戦略と体制、リスク・エクスポージャー(信用リスク、マーケット・リスク、流動性リスク、オペレーショナル・リスク、リーガル・リスク、その他のリスクを含む)、会計方針、および基本的な業務、経営およびコーポレート・ガバナンスに関する情報、の6つの大きな分野で有益なディスクロージャーを行うことを提言している。

 バーゼル委員会は、銀行がこれらのカテゴリーについて、財務報告をはじめとするパブリック・ディスクロージャーで記述することを強く提言する。それぞれの大きな分野について、金融機関の活動内容を勘案しつつ、十分に詳細なディスクロージャーが要請されるであろう。しかしながら、金融市場が比較的未発達な国においては、監督当局の最優先事項は、包括的な監督当局向け報告システムを整備することであるとも述べている。すべての監督当局が、レポートで議論されている情報や監督上関心のある他の情報にアクセスすることが奨励されている。

 バーゼル委員会の議長で、ニューヨーク連邦準備銀行総裁であるWilliam J. McDonough氏は、「バーゼル委員会は、透明性について、実効的に監督されている安全かつ健全な銀行システムにとっての重要な要件と考えている。金融市場の参加者が、現時点での信頼でき、理解しやすい情報を有していれば、銀行監督当局の努力を強化しうる」と述べている。

 Krause女史は、銀行の透明性向上の重要性を強調しつつ、「この提言によって、実効的な銀行監督の必要性が低下する訳ではない。逆に、十分な監督と透明性が相俟って、安定的な銀行システムを促進させるように機能する」と述べている。

 本ペーパーの公表は、実効的な銀行監督と安全かつ健全な銀行システムを促進するためのバーゼル委員会による長年に亘る作業の一部である。これらの提言は、バーゼル・コア・プリンシプルを補足し、他の国際的な作業部会に役立つであろう。

 McDonough議長によれば、「本ペーパーは、銀行の透明性向上に向けての重要な第一歩である。私は、これらの提言に対する市中の見方を聞くことに強い関心がある。バーゼル委員会は、今後本件についての詳細な指針によるフォローアップを通じて、本ペーパーの提言を強めていくことを企図している」とのことである。

1998年9月22日

バーゼル銀行監督委員会(The Basle Committee on Banking Supervision

 バーゼル銀行監督委員会は、1975年にG10諸国の中央銀行総裁会議により設立された銀行監督当局の委員会である。同委員会は、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、スウェーデン、スイス、英国及び米国の銀行監督当局ならびに中央銀行の上席代表により構成される。現在の議長は、ニューヨーク連邦準備銀行のW.J. McDonough総裁である。委員会は通常、常設事務局が設けられているバーゼルの国際決済銀行において開催される。

透明性小委員会(The Transparency Sub-group

 透明性小委員会は、市場規律の強化、安定的かつ効率的な市場の振興、および銀行組織に対する実効的かつ包括的な監督の向上を目的として、1996年に、バーゼル銀行監督委員会により設立された。同小委員会では、監督当局や市場参加者がリスクを評価する際に必要とする情報に関する問題を特定化し、指針を作成することによって、この目的を果たしている。小委員会は、バーゼル委員会に参画している組織におけるディスクロージャーや当局向け報告に関する銀行監督の専門家によって構成されている。議長は、米国通貨監督庁の国際関係担当副長官で、バーゼル委員会の委員でもある、Susan Krause女史である。

透明性(Transparency

 本レポートでは、透明性について、情報の利用者が銀行の財務状況や業績、業務活動、リスク・プロファイル、およびリスク管理の体制について正確に評価することができるような、信頼性と適時性のある情報のパブリック・ディスクロージャーと定義している。この定義は、単なるディスクロージャーだけでは、必ずしも透明性をもたらすとは限らないことを前提としている。本ペーパーは、信頼性、適正性、適時性、および比較可能性といった、透明性のある情報の定性的特徴について議論しており、銀行の透明性を向上させるディスクロージャーに関する指針を含んでいる。

市場規律(Market discipline

 本レポートにおける中心的な概念は市場規律である。これは、健全で十分に管理された銀行は、情報を有している市場参加者と、より良い条件で取引ができる、との見方に基づいている。換言すると、市場は、適切な状況では、効果的にリスクを管理している銀行に対し報酬を与え、リスク管理が脆弱ないし効果的ではない銀行に対しては罰則を与えることによって、銀行監督を補強する規律的なメカニズムを有している。ただし、銀行の活動とそれらの活動に内在するリスクを適切に評価するための適時性と信頼性のある情報に市場参加者がアクセスできる場合にのみ、市場規律は効果的に機能しうる。

パブリック・ディスクロージャーの役割(The role of public disclosure

 本レポートで記述されている主要なトピックスの一つは、銀行の健全性を促進させるパブリック・ディスクロージャーの役割である。ある章では、効果的なディスクロージャーの効用や、透明性と市場規律を確保する方法について詳細に記述している。また、本レポートは、ディスクロージャーの基準や手法を設定したり、これらに影響を及ぼす際、あるいは銀行のディスクロージャー基準の遵守状況を評価する際に、監督当局が重要な役割を果たしうることを示している。

ディスクロージャーに関する提言(Disclosure recommendations

 本レポートにおけるディスクロージャーに関する提言は、一般的なレベルにとどまっている。バーゼル委員会は、IOSCO専門委員会と共同で、大手の銀行と証券会社のトレーディングおよびデリバティブ取引に関するより詳細なディスクロージャーの提言を以前に公表している。

本レポートは誰にとって有用なものか?(To whom is the report useful?

 本レポートは、公に開示すべきと銀行監督当局が確信しているものを示唆する資料として、銀行にとって有用であろう。銀行監督当局、立法者、およびその他の基準設定主体は、自国のパブリック・ディスクロージャーや、監督上の報告の基準や手法を評価し、改善させる場合(例えば、バーゼル委員会の実効的な銀行監督のためのコア・プリンシプルを導入する際)、ひとつの基準として当指針を利用できる。また、透明性の問題について議論している他の国際的なグループにとっても、本レポートは有用であろう。

本レポートの全文をどこで入手できるか?(Where can I obtain the full report?

 「銀行の透明性の向上について」のテキストは、1998年9月22日の英国標準時の12時(正午)より、インターネット上のBIS Web Sitehttp://www.bis.org(外部サイトへのリンク)から入手することができる。また、バーゼル委員会の事務局やバーゼル委員会のメンバーである銀行監督当局や中央銀行からも入手可能である。

目次

  1. エグゼクティブ・サマリー
  2. 1.はじめに
  3. 2.健全性を促進するうえでのパブリック・ディスクロージャーの役割
    1. (a)市場規律とディスクロージャーの効用
    2. (b)効果的なパブリック・ディスクロージャー
      1. (i)透明性の達成
      2. (ii)市場規律の達成
    3. (c)パブリック・ディスクロージャーの潜在的な欠点
  4. 3.透明性向上における監督当局の役割
    1. (a)ディスクロージャーの基準・慣行を設定したり、これらに影響を及ぼす際の監督当局の役割
    2. (b)監督当局による銀行に関する情報のディスクロージャー
    3. (c)監督当局によるディスクロージャー基準の遵守のレビュー
  5. 4.監督当局の情報ニーズ
  6. 5.透明性のある情報の定性的特質
    1. (a)包括性
    2. (b)目的適合性および適時性
    3. (c)信頼性
    4. (d)比較可能性
    5. (e)重要性
  7. 6.銀行の透明性を高めるための提案
    1. (a)財務上の業績
    2. (b)財務状況(自己資本、ソルベンシー、流動性等)
    3. (c)リスク管理の戦略と体制
    4. (d)リスク・エクスポージャー
      1. (i)信用リスク
      2. (ii)マーケット・リスク
      3. (iii)流動性リスク
      4. (iv)オペレーショナル・リスクおよびリーガル・リスク
    5. (e)会計方針
    6. (f)基本的な業務、経営およびコーポレート・ガバナンスに関する情報
  8. 7.結論