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バーゼルIIに向けた継続的な進展

2004年 1月15日
バーゼル銀行監督委員会

日本銀行から

 全文は、こちら(bis0401b.pdf 33KB)から入手できます。

仮訳

プレス・リリース

 バーゼル銀行監督委員会は、昨年10月にマドリッドで定めた予定に従って、銀行の自己資本に関する国際合意の改訂作業を引き続き進展させている。当委員会は、本日バーゼルで開催された会合において、2004年央の目標に向けて、残された論点の進展状況を検討し、主要事項について決定を行った。

パブリック・コメントは信用関連損失に関する当委員会の提案を支持

 当委員会は2003年10月、期待信用損失と非期待信用損失にかかる自己資本規制上の取扱いを見直す提案を行った。本提案に対しては、金融機関・業界団体等から52のコメントが寄せられた。コメントは、当委員会が示した提案を概ね支持し、これによって、規制上の自己資本が先進的な銀行の用いる経済資本のモデリング・プロセスを裏付ける考え方により近付くことに賛同している。当委員会は、これらのコメントは新合意の質を高めることに寄与すると考える。

 当委員会は、10月に行った提案を実施するために必要となる具体的な修正を決定し、近く公表する。当委員会はまた、余剰引当の認識に関する上限は自己資本の補完的項目(Tier2)を基礎とするべきではないという業界のコメントに同意し、当該上限を信用リスクアセットの一定比率(今後決定)に代えることを決定した。

証券化エクスポージャーの取扱いに関する大幅な進展

 当委員会は、新合意に関する第三次市中協議文書(CP3)へのパブリック・コメントに応えて、証券化関連エクスポージャーの取扱いを簡素化し、より業界実務に近いものとすることについて合意した。新しい取扱いにおいては、銀行は自らの内部評価を外部信用格付にマッピングすることによって、資産担保コマーシャル・ペーパー導管(asset-backed commercial paper conduits)に対する無格付のエクスポージャー(主として流動性ファシリティ)に適用するリスクウェイトを導出することが認められる。また、無格付の証券化エクスポージャーに係る所要自己資本を算定する手法として、より簡素な「当局が設定する関数式(Supervisory Formula)」の利用が可能となる。また、オリジネーターとなる銀行、投資家となる銀行ともに、格付を有する証券化エクスポージャーに対して「格付準拠方式(RBA)」を等しく用いることが認められる。更に当委員会は、ポジションに付随するリスクの水準により近いものとするため、RBAのリスクウェイトの水準調整を行った。

 修正の要点は「付A」に述べられている。当委員会はまた、証券化に関する提案の修正点を明示した、より詳細なテクニカル・ノートを近く公表する。

 更に、以下の分野においても進展がみられた。

信用リスク削減および関連事項における進捗

 当委員会は、業界のコメントに応えて、信用リスク削減手法の認識ルールを改善することについて合意した。当委員会はまた、信用リスク削減の取扱いは業界の実務、特にダブル・デフォルトの効果に係るものを反映するために進化し続けるべきであることを認識している。当委員会は、ダブル・デフォルトの効果を認識する必要性を認めるが、その解決策を決定するに先立って、計測をはじめ全ての側面への影響を検討することが不可欠である。当委員会は新合意の実施以前に、健全性の観点から妥当な解決策を可能な限り迅速に案出することを企図しつつ、引き続き本件について作業を行う。

 当委員会は、本作業と並行して、証券監督者国際機構(IOSCO)と協力のうえ、カウンターパーティー・リスクおよびトレーディング勘定に関連する論点を検討していくこととしている。

第二の柱の実施に関する明確化

 当委員会は、銀行業界との間で行った最近の協議に照らし、自己資本に関する監督上の検証、すなわち新合意の「第二の柱」の実施について明確化のための説明を行うことについて合意した。説明は、本プレス・リリースに「付B」として添付されている。

母国当局・現地当局間の協力

 当委員会の新BIS規制実施作業部会(AIG)は、2003年8月に公表した原則(「新BIS規制のクロスボーダー実施に関する基本原則」)に則って、実例に基づく幾つかのケース・スタディを行っている。本作業は、当委員会のメンバーである当局がクロスボーダー実施の実務的な側面を理解するうえで大きな助けとなっている。

 当委員会は、オペレーショナル・リスクの先進的計測手法(AMA)をクロスボーダーで実施する際の原則について合意した。これらの原則は、多国籍銀行グループ内の国際的に活動する重要な機関が十分な自己資本水準を維持し、健全なリスク管理を行う必要性と、当該グループ内で実務的にAMAを適用する必要性の双方を満足させるものである。本提案の詳細および関連する原則は近く公表される。

スケジュール

 各作業部会は、残された論点について、2004年5月に開催される当委員会の次回会合において提案を行い、それを踏まえ、当委員会は、所要自己資本の水準調整の問題についても併せて検討する。これにより、当委員会は2004年央の目標どおりに新規制案の文書を公表することが可能になり、当該文書は、国内実施のプロセスおよび業界の準備作業を進めるための堅固な基盤となる。当委員会は、2003年10月のプレス・リリースにおいて公表した決定に従い、新合意の実施に先立って所要自己資本の水準調整を再度評価する。

 当委員会は、銀行システム内の所要自己資本総額をほぼ現在の水準に維持するという目標を再確認した。当委員会は、より先進的な手法を採用するインセンティブを設けつつ、より単純な手法における所要自己資本総額を現行ルールにおけるものとほぼ同様とすることを意図している。更に、当委員会は、合意が常にリスクの測定と管理に関するベスト・プラクティスに即したものであり続けるよう、継続的に作業を行う。