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りそな銀行に対する信用秩序の維持に資するための資金の貸付けにかかる特別措置の実施等に関する件

2003年6月20日
(議決日 2003年5月17日)
日本銀行政策委員会

平成15年5月17日、金融庁長官は、りそな銀行に対し、銀行法第26条の規定による早期是正措置命令を行った。

こうした状況下、金融庁長官および財務大臣から、りそな銀行に対する資金の貸付けについて以下の要請があった。

「本日、りそな銀行に対し、銀行法(昭和56年法律第59号)第26条の規定による早期是正措置命令が行われました。
同行においては、現時点で流動性に問題がある状況にはありませんが、万一預金払戻し等営業を継続するための資金が不足した場合には信用秩序の維持のため特に必要があると認められるので、日本銀行法(平成9年法律第89号)第38条第1項の規定に基づき、同行に対し、同行の資金繰りの状況等を勘案して必要な期間、同行の預金払戻し等営業の継続に必要な資金の貸付けを行うことを要請します。」

これに対し、本委員会は、同行について、預金保険法第102条第1項の規定に基づき、金融危機対応会議の議を経て、同項第1号に定める預金保険機構による株式等の引受け等の措置を講ずる必要がある旨の認定が行われたことを踏まえ、上記の要請に応じ、同日より、同行に対する信用秩序の維持に資するための資金の貸付けにつき、下記の要綱により特別措置を実施することを決定した。

  1. りそな銀行に対し、信用秩序の維持に資するため、日本銀行法(以下「法」という。)第33条第1項第2号に基づく資金の貸付けまたは平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀第2669号)により担保として認められた証書貸付債権を担保とする資金の貸付けを行う場合には、「通貨および金融の調節として行う与信以外の与信にかかる担保の取扱い等に関する件」(平成12年10月13日決定)記書き1.において準用する「適格担保取扱基本要領」(平成12年10月13日決定)に定める適格担保でない有価証券または証書貸付債権についても、担保として適当と認められるものに限り、次の要領によりこれを担保として徴求し得る扱いとする。
    1. (1)各担保品の担保価格は、その市場性および信用力ならびに「担保の種類および担保価格」(「適格担保取扱基本要領」別表1)に定める適格担保の担保価格との整合性を勘案して総裁が定める扱いとする。
    2. (2)貸付利率は、基準貸付利率に年0.25パーセントの割合を加算した利率を適用する。
  2. 上記1.の取扱いによっても担保品が不足する等やむを得ない場合には、同行に対し、法第33条第1項第2号に規定する担保品および証書貸付債権のいずれをも担保としない資金の貸付けを、次の要領により、法第38条第2項に基づき行う。
    1. (1)貸付方式
      手形貸付、電子貸付または当座貸越とする。
    2. (2)貸付金額
      手形貸付、電子貸付および当座貸越の金額は、それぞれ、同行の資金繰りを勘案し、同行が預金払戻し等営業を継続するための必要最小限の金額とする。
    3. (3)返済期限
      1. a. 手形貸付および電子貸付
        貸付けを行った日から3か月以内の日で本行が適当と認める日とする。但し、必要やむを得ないと認められる場合には切替継続を行う。
      2. b. 当座貸越
        当座貸越を行った日の業務終了時とする。
    4. (4)担保
      担保の差入れは貸付けの条件としない。
    5. (5)貸付利率
      1. a. 手形貸付および電子貸付
        基準貸付利率に年0.5パーセントの割合を加算した利率を適用する。
      2. b. 当座貸越
        貸越金については利息を徴しない。
    6. (6)貸倒引当金
      貸付けに関し、必要に応じて特別に貸倒引当金の計上を行う。
  3. 1.および2.による資金の貸付けは、預金保険機構が預金保険法第107条第1項の規定に基づき同行の株式等の引受け等を行う日まで実施する。ただし、総裁が同行の資金繰りの状況等を勘案して必要と認める場合には、政策委員会の議決を経て、実施する期間を延長し得るものとする。
  4. この要綱による措置を実施するために必要となる具体的事項は、総裁が定める扱いとする。

また、本委員会は、上記の貸出措置に関し、金融庁長官および財務大臣に対し、次のとおり通知を行うことを決定した。

「りそな銀行に対する資金の貸付けにつき、日本銀行法(平成9年法律第89号)第38条第1項の規定に基づき貴殿から受けた要請に関し、預金保険法(昭和46年法律第34号)第107条第1項の規定に基づき同行の株式等の引受け等が行われることを前提に、同行に対し、本日より、同行が預金払戻し等営業を継続するための必要最小限の資金について、日本銀行法第33条第1項第2号に規定する担保品及び平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀第2669号)により担保として認められた証書貸付債権のいずれかを担保とする貸付けに加え、同法第38条第2項の規定に基づき、必要に応じ、これらのいずれをも担保としない貸付けを行うこととしましたので、通知します。
上記の措置は、預金保険機構が預金保険法第107条第1項の規定に基づき同行の株式等の引受け等を行う日まで実施することとします。ただし、本行が同行の資金繰りの状況等を勘案して必要と認める場合には、実施する期間を延長し得ることとします。
なお、本行は、本件貸付けに関し、必要に応じて特別に貸倒引当金の計上を行うこととします。」

なお、日本銀行は、本件に関し、同日、次のとおり対外公表を行った。

平成15年5月17日
日本銀行

総裁談話

  1. 本日、りそな銀行より、15年3月期決算における自己資本比率が健全行の国内基準である4%を下回る旨の報告があり、金融庁から、同行に対して早期是正措置を発動した旨の連絡を受けた。また、預金保険法第102条に基づき金融危機対応会議が開催され、りそな銀行に対する資本増強の必要性の認定が行われた。
  2. 日本銀行は、日本銀行法第38条に基づく金融庁長官および財務大臣からの要請を受け、本日の政策委員会において、りそな銀行に対し、必要が生じた場合ただちに所要資金を供給する方針を決定した。現在、りそな銀行の資金繰りに問題はないが、今後、日本銀行として同行の資金繰りには万全を期していく考えである。
  3. 以上により、同行は支障なく営業を継続し、経営の健全化が図られることとなる。日本銀行としては、今後とも、わが国金融システムの安定確保のため、政府との緊密な連携の下、中央銀行として適切な対応を講じていく所存である。