このページの本文へ移動

日本債券信用銀行の再建策及び北海道拓殖銀行と北海道銀行の合併

1997年4月26日
(議決日 1997年4月1日)
日本銀行政策委員会

本委員会は、4月1日、日本債券信用銀行について、(1)海外拠点からの撤退と人員・給与の大幅カットを含む徹底したリストラ、(2)関連ノンバンク3社の法的整理を含む不良債権の抜本的処理、(3)総額3,000億円程度の資本増強策の実施、などを柱とする経営再建策に関する報告を受けた。

同行の経営問題への対応は、内外金融市場の安定を図るうえで、早急な対処を要する重大な問題であり、同行の経営問題を解決し、その信認を回復させるためには、同行の徹底したリストラ努力を大前提として、不良債権の抜本的処理及びその結果として必要となる自己資本の復元を同時に図ることが必要と考えられた。

本再建策の策定に当たり、政府より日本銀行に対して、新金融安定化基金第一勘定(本行拠出分)の活用につき強い要請が寄せられた。本委員会は、(1)同基金が、日本債券信用銀行の経営再建策の一環として優先株の引受けを行うことは、「わが国金融システムの安定化及び内外からの信頼性確保に資すること」という同基金の目的に合致すること、(2)基金の活用は、日本銀行が資金供与を行う場合のいわゆる4原則(システミック・リスク顕現化の惧れ、日本銀行資金供与の不可欠性、モラルハザードの防止、日本銀行の財務の健全性の確保)に照らしても妥当と考えられること、に照らし、同行の総額約 3,000億円の増資に際して、同基金が民間金融機関等からの出資では不足する資本について、800億円を上限に優先株の引受けを行うことを適当と判断し、同基金定款等に定める手続に沿って同基金からの協議を受けた段階でこれに同意することを了承した。

また本委員会は、同日、北海道拓殖銀行と北海道銀行の両行が平成10年4月を目処として合併を行うための準備に入ることで合意に達したこと、および北海道拓殖銀行が海外営業拠点の撤収を含む抜本的経営改善策を講じ、今後は地域により密着した経営への転換を図る方針であることについて報告を受けた。両行は、同日発表された合併の基本事項の中において、(1)合併比率は1対1を基本とし、詳細は今後決定すること、(2)北海道拓殖銀行が存続会社となること、などを明らかにしている。

以上の件について、日本銀行では4月1日、以下のような総裁談話を発表した。


平成9年4月1日
日本銀行

総裁談話

I.日本債券信用銀行の経営再建について

  1. 今般、日本債券信用銀行の経営を抜本的に改善し同行の再建を図るための方策が、同行を始めとする関係者により取りまとめられた。
    その内容は、徹底したリストラの実施、不良債権の抜本的処理及び資本増強策からなっている。本件を取りまとめるに当たっては、まず何よりも、同行自身がこれまでに例をみない最大限の自己努力によるリストラ策を実施することを大前提とした。そのうえで、民間金融機関等が可能な限りの資本調達面での協力を行うほか、日本銀行としても大蔵省とともに、わが国金融システム全体の安定確保の観点から、必要な支援を行うこととした。
  2. 経営再建策の具体的な内容は次の通りである。
    1. (1)海外拠点からの撤退と人員・給与の大幅カットを含む徹底したリストラ
    2. (2)関連ノンバンク3社の法的整理を含む不良債権の抜本的な処理
    3. (3)総額3,000億円程度の資本増強策の実施
      1. 1)民間金融機関等による出資
      2. 2)新金融安定化基金による優先株の引受
  3. 日本債券信用銀行は、多額の不良債権を抱え、経営の困難に直面していたが、特に昨年秋以降は、内外市場において大きく信認が低下する事態に見舞われている。他方、同行は、内外の金融市場において、主要な金融機関として多額かつ広範な取引を通じて重要な役割を果たしている。こうした点に鑑みると、同行の経営不安は、内外金融市場の安定を図るうえで、早急な対処を要する重大な問題である。
    また、現在わが国は、21世紀に向けてわが国金融システムを抜本的に改革していくという大きな課題に取組んでいるが、同行の経営問題の解決を図ることは、そうした改革を円滑に進めていくうえでも必要なプロセスと考えられる。
    以上のような観点に立ち、政府及び日本銀行は、同行の経営問題を抜本的に解決し、その信認を回復させることが、わが国金融システム全体にとって緊要の課題であると判断した。また、そのための対応として、同行による徹底したリストラ努力を大前提として、不良債権の抜本的処理及びその結果として必要となる自己資本の復元を同時に図ることがどうしても必要と考えられた。
  4. 本件に関し、日本銀行としては、政府からの強い要請を踏まえ、同行単独の努力では困難な資本基盤の再構築について、新金融安定化基金の活用により、資本的基盤拡充のための支援を行うことが適当と判断した。
    日本銀行としては、日本債券信用銀行自身の努力に加え、関係者の協力も得て、本再建策が円滑に実施されることにより、預金者、金融債保有者の同行に対する信頼と市場における信認が速やかに回復するものと確信している。

II.北海道拓殖銀行と北海道銀行の合併について

  1. 本日、北海道拓殖銀行と北海道銀行の両行から、来年4月を目途に合併する方向で今後具体的検討を進めていく旨の報告を受けた。同時に、北海道拓殖銀行は海外拠点からの撤退を含む抜本的経営改善策を講じ、今後は地域により密着した経営への転換を図る方針である、との報告を受けた。
  2. 両行では、合併により北海道を主たる営業基盤としつつ、店舗の統廃合や重複投資の排除等により経営の効率化と、財務体質の強化を図るとしていることから、顧客に対するサービスの更なる向上や地域経済の活性化への一層の貢献が期待されるところである。
  3. 今回の合併構想は、わが国金融システムの大きな変革に積極的に適合しながら、強力な経営体質を持った銀行として発展していくために両行が自主的に話合い、合意したものと聞いている。日本銀行としては、そうした両行の思い切った経営判断を高く評価するものである。

III.わが国金融システムの信認確保に向けて

  1. 本日公表された日本債券信用銀行の抜本的な経営再建策、及び北海道拓殖銀行と北海道銀行の合併による経営効率化構想は、いずれも、わが国金融システム全体に対する不透明感の払拭と信認の確保に大きく寄与するものである。
    また、現在、わが国金融システムについては、いわゆる「日本版ビッグバン」構想の下で抜本的改革が図られているところであり、今回の経営再建策および合併構想は、そうした改革に向けての金融機関による主体的対応という観点からも意義あるものと考える。
    なお、これら金融機関の資金繰りについては格別問題は生じないとみられるが、一時的に流動性が不足するといった場合には、これまでも明らかにしているとおり、中央銀行として必要な支援を行う用意がある。
  2. 日本銀行としては、引続き、わが国金融システム全体の安定維持と21世紀に向けた抜本的改革の円滑な実施のために、政府と緊密に連携しつつ、全力を挙げて取り組む所存である。