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みどり銀行に対する信用秩序の維持に資するための手形貸付にかかる特別措置の実施等に関する件

1998年6月12日
(議決日 1998年5月15日)
日本銀行政策委員会

みどり銀行は、旧兵庫銀行の経営破綻を受け、震災復興需要への対応と同地域における信用秩序維持のため、全国の金融機関及び地元企業等からの出資協力を得て、平成7年10月に設立された。しかしながら、震災後の地元経済の落ち込みにより債権の劣化が進むなど、経営状況が悪化していた。こうした中、みどり銀行が負う旧兵庫銀行に係る損失、不良資産等について、預金保険機構に対し資金援助を要請することを前提に、阪神銀行がみどり銀行を吸収合併することで、両行間の基本的な合意が得られ、平成10年5月15日、当該合意の内容等に関する対外公表が行われた。

こうした状況下、大蔵大臣から、日本銀行法第38条第1項の規定に基づき、みどり銀行に対する資金の貸付けに関する要請があった。これに対し、本委員会は、平成10年5月15日、(1)みどり銀行において預金払戻し等営業を継続するための資金の不足が生じた場合、預金者の不安心理の伝播等を通じてわが国信用秩序全体の安定が脅かされるおそれが強い、(2)そうした事態を回避するためには、同行の現況からみて、日本銀行による資金供与が不可欠となり、また、当該資金供与に当たっては通常の日本銀行貸出の適格担保が不足する事態が想定される、との判断の下で、下記の決定を行った。


大蔵大臣の要請に対し、みどり銀行の経営問題に関する処理方策が実施されるまでの間、同行に対する信用秩序の維持に資するための手形貸付につき、以下の特別措置を行う。

  1. 同行に対する手形貸付の担保については、日本銀行法第33条第1項第2号に規定する担保品で従来手形貸付の担保としていない種類のものについても、担保として適当と認められるものに限り、次の要領によりこれを担保として徴求し得る扱いとすること。
    1. (1)各担保品の担保価格は、その市場性および信用力を勘案し、時価(時価のない場合は額面)の80%を超えない範囲で定める扱いとする。
    2. (2)貸付利率は、基準貸付利率のうち「その他のものを担保とする貸付利率」(「国債、特に指定する債券または商業手形に準ずる手形」以外のものを担保とする場合の貸付利率。以下同じ。)を適用する。
  2. 上記1.の取扱いによっても担保品が不足する等やむを得ない場合には、同行に対し、日本銀行法第33条第1項第2号に規定する担保品および平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀第2669号)により担保として認められた証書貸付債権のいずれをも担保としない手形貸付を、次の要領により、日本銀行法第38条第2項に基づき行うこと。
    1. (1)貸付金額
      同行の資金繰りを勘案し、同行が預金払戻し等営業を継続するための必要最小限の金額
    2. (2)貸付期間
      日本銀行が適当と認める期間(3か月以内、但し必要やむを得ないと認められる場合には切替継続を行う)
    3. (3)貸付利率
      基準貸付利率のうち「その他のものを担保とする貸付利率」を適用する。
    4. (4)準備金
      本件貸付に関し、必要に応じて特別に準備金の積立てを行う。

なお、本委員会は、上記の決定に関し、大蔵大臣に対し次のとおり通知を行うことを決定した。

「みどり銀行に対する資金の貸付けにつき、日本銀行法(以下「法」という。)第38条第1項の規定に基づき貴殿から受けた要請(平成10年5月15日付蔵銀第1269号)に関し、同行に対し、同行の資金繰りを勘案した必要最小限の範囲内で、法第33条第1項第2号に規定する担保品及び平成2年12月13日付大蔵大臣認可(蔵銀2669号)により担保として認められた証書貸付債権のいずれかを担保とする貸付に加え、法第38条第2項の規定に基づき、必要に応じ、これらのいずれをも担保としない貸付けを行うこととしましたので、通知します。
なお、本行は、本件貸付けに関し、必要に応じて特別に準備金の積立てを行うこととします。」

また、本委員会は、現在日本銀行がみどり銀行に対して実施している劣後特約付貸付について、合併時点で存続銀行に引き継いだうえで、存続銀行の信用基盤の状況を見極めつつその後の取扱いを検討するとの基本方針で臨む旨の決定を行った。

さらに、本委員会は、本件に関し、次のとおり総裁談話を公表することを決定した。


平成10年5月15日
日本銀行

総裁談話
——阪神銀行及びみどり銀行の合併について——

  1. 今般、阪神銀行はみどり銀行を吸収合併し、兵庫県内において確固たる経営基盤を確立することにより「県民銀行」としての性格を一層明確にした経営を展開することで、両行間の基本的な合意が得られた旨報告を受けたところである。
    ただし、両行は、この合併に当たり、みどり銀行が負う旧兵庫銀行に係る損失、不良資産等について、預金保険機構からみどり銀行に対し資金援助が行われることを前提としており、今後その要請を行いたいとしている。
  2. みどり銀行は、旧兵庫銀行の経営破綻を受け、震災復興という特別な事情の下、復興需要への対応と同地域における信用秩序維持のため、全国の金融機関及び地元企業等からの出資協力を得て、平成7年10月に設立された銀行である。同行はこれまで、震災復興需要に支障が生じないよう金融機関としての使命を果たしてきたが、震災後の地元経済の落ち込みにより債権の劣化が進むなど経営状況が悪化していたところである。
    同行が今後とも地域において円滑な金融機能を発揮していくため、同じ地域に経営基盤をもつ阪神銀行と合併し新たに「県民銀行」として再出発することは、金融システムの安定化に資するとともに、震災復興需要に応え地元経済の健全な発展に貢献するという観点からも有意義なものであると考えられる。
  3. なお、合併に関する具体的な内容については、今後関係者間で協議していくこととなるが、日本銀行としても両行の合意を尊重し、合併が円滑に進められ、新銀行の経営が適切に行われるよう、大蔵省、預金保険機構、地元地方公共団体等と連携・協力していく所存である。
  4. 両行の合併までの間、みどり銀行においては通常通りの営業が行われる。また、みどり銀行の預金はすべて合併後の銀行に引き継がれることにより、完全に保護されるので、預金者におかれては心配されることなく、良識ある行動をとられることを強く希望する。
  5. なお、合併実施までの間、必要な場合には、日本銀行は日本銀行法第38条に基づく貸出を行い、みどり銀行の営業継続にかかる所要資金の確保に万全を期す考えである。