アジア・ボンド・ファンド2の運用開始について
2005年 5月12日
EMEAP
(日本銀行仮訳)
EMEAPプレス・ステートメント
EMEAP1(Executives' Meeting of East-Asia and Pacific Central Banks)(外部サイトへのリンク)メンバー中央銀行は、アジア・ボンド・ファンド2(ABF2)について、ファンド・マネージャー、マスター・カストディアン、インデックス・プロバイダーの任命、そして同ファンドへの約20億米ドルの資金払込み完了、を発表する。
- 正式名称は、東アジア・オセアニア中央銀行役員会議。オーストラリア、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイの11ヶ国・地域の中央銀行・通貨当局から構成される。
2004年12月に公表した通り、ABF2は、汎アジア債券インデックス・ファンド(Pan-Asian Bond Index Fund、PAIF)および8つの各国ファンド(Single-market Funds)から構成される。PAIFは、EMEAP8ヶ国・地域の現地通貨建てソブリン債および準ソブリン債に投資する単独の債券ファンドである。8つの各国ファンドは、EMEAP8ヶ国・地域のそれぞれの国で、現地通貨建てソブリン債および準ソブリン債に投資する。
EMEAPメンバー中央銀行のPAIFへの投資は、約10億米ドルであり、ファンド・マネージャーには、State Street Global Advisors Singapore Limited (SSgA) が任命された。関係当局の承認が前提となるが、PAIFは、シンガポールで登録され、当初香港で上場される予定である。PAIFの他のEMEAP諸国における上場は、後日検討される予定である。
EMEAPメンバー中央銀行は、8つの各国ファンドに対しても総額で約10億米ドルを投資しており、それぞれのファンドのファンド・マネージャーとして、以下の先を任命した。
各国ファンド | ファンド・マネージャー |
---|---|
ABF China Bond Index Fund | China Asset Management Corporation Limited |
ABF Hong Kong Bond Index Fund | HSBC Investments (Hong Kong) Limited |
ABF Indonesia Bond Index Fund | PT Bahana TCW Investment Management |
ABF Korea Bond Index Fund | Samsung Investment Trust Management Company Limited |
ABF Malaysia Bond Index Fund | AmInvestment Management Sdn. Bhd. |
ABF Philippines Bond Index Fund | Bank of the Philippine Islands |
ABF Singapore Bond Index Fund | DBS Asset Management Limited |
ABF Thailand Bond Index Fund | Kasikorn Asset Management Company Limited |
PAIFおよび8つの各国ファンドのマスター・カストディアンには、Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limitedが選定された。
9つのABF2ファンドがベンチマークとしてトラックするiBoxx ABFインデックス・ファミリーも、International Index Company (IIC)が、本日よりその提供を開始する。IICは、iBoxx ABFインデックスが、市場から受入れられ、そして信認されるよう、その組成に際してはAsian Index CommitteeおよびAsian Oversight Committeeという枠組みを通じて、域内外の有力市場参加者と意見交換を実施している。iBoxx ABFインデックスの詳細は、公開されている2。
- 2iBoxxインデックス・シリーズの詳細は、IICのホームページ(http://www.indexco.com(外部サイトへのリンク))より、入手可能である。
投資家にとって、パッシブ運用のABF2は、アジアの現地通貨建て債券に投資を行ううえで、低コストかつ効率的な商品が登場することを意味する。債券市場育成の観点からは、ABF2は、アジアにおける新しい資産クラスの創出を意味しており、ABF2イニシアティブがもたらしたインフラ整備や税制・規制面の改革と相俟って、域内債券市場の中長期的な拡大および深化に貢献するであろう。
ABF2のファンド・マネージャーは、それぞれ、今後、数ヶ月以内に各ファンドを他の公的セクターおよび民間セクターの投資家に開放すべく、それが適当と認められる場合には上場するために、関係当局と協力し、必要な認可を得ていく予定である。EMEAPメンバー中央銀行は、今後もABF2の進捗状況について、適宜、情報を開示する予定である。
以上
- (注)ABF2の概要についてはAnnex参照。
Annex
ABF2概要
ABF2とは?
アジア・ボンド・ファンド(ABF)とは、EMEAPメンバー中央銀行がアジア域内および各国の債券市場の拡大・深化を目指して取組んだイニシアティブである。EMEAPメンバー中央銀行は2003年6月、ABFの第一段階(ABF1)を創設し、EMEAP域内(日本、オーストラリア、ニュージーランドを除く8カ国・地域)の発行体による米ドル建てソブリンおよび準ソブリン債への投資を開始した。更に、その成功を受けて、EMEAPメンバー中央銀行は、2004年12月、ABFのコンセプトを現地通貨建て債券に拡大したABFの第二段階(ABF2)の開始を公表した。
ABF2は、汎アジア債券インデックス・ファンド(Pan-Asian Bond Index Fund、PAIF)および8つの各国ファンド(Single-market Funds)から構成される。PAIFは、EMEAP8ヶ国・地域の現地通貨建てソブリン債および準ソブリン債に投資する単独の債券ファンドである。8つの各国ファンドは、EMEAP8ヶ国・地域において、それぞれ現地通貨建てソブリン債および準ソブリン債に投資を行う。
ABF2の開始は、アジア・オセアニア地域の中央銀行間協力の歴史に残る一里塚を築くものである。
ABF2のもたらす恩恵とは?
短期的には、ABF2は、パッシブ運用の債券ファンドという革新的で低コストかつ効率的な商品を提供することにより、アジアにおける債券に対する投資家の認知度を向上させることに貢献するであろう。より長期的には、とりわけ、以下のような手段を通じて、域内債券市場の拡大・深化、そしてアジアにおける金融仲介の効率性向上に繋がるものである。
- 新型金融商品の創出:PAIFおよび8つの各国ファンドは、アジアにとって、新しい資産クラスに位置付けられる。例えばPAIFは、パッシブ運用の上場債券ファンドとして、EMEAP8カ国・地域の債券市場に分散投資を行いたいという域内外の投資家に対して、便利でコスト・パフォーマンスの良い手段を提供するものである。
- 市場インフラの整備:ABF2の開始に先立って、EMEAPは、市場インフラの改善に向けて幾つもの取組みを行った。例えば、透明性、信頼性、複製容易性を兼ね備えたiBoxx ABFインデックスの導入は、アジア市場の重要なインフラの一つに数えられるものである。同インデックスは、数多くの有力市場参加者から提供される価格に基づいて算出され、市場の状況を反映するように工夫されている。
- EMEAP域内における市場改革の促進:ABF2イニシアティブは、クロスボーダー投資を促進するための税制や規制の改革を後押ししている。例えば、PAIFは、中国において外国機関投資家として初めて、インターバンク市場へのアクセスを許可された。また、マレーシアでは、2005年4月1日より外国為替管理規制を緩和した。それに先立って同国は、国際金融機関に対して国内市場における債券発行を認めたほか、非居住者に対して、リンギ建て債券からの利子収入について、源泉徴収税を課税免除している。タイも、2005年1月7日より、同国の国債および政府系機関債からの利子収入について、非居住者への源泉徴収税を課税免除している。更に、EMEAP各国・地域は、必要に応じて、債券ファンドや債券ETFの上場に関する法規の整備を積極的に進めている。ABF2イニシアティブが実行段階に入ることに伴い、こうした取組みが更に増えていくことが期待される。