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EMEAP金融市場ワーキンググループ調査報告書
「EMEAP域内の短期金融市場」の抄訳公表について

2018年8月10日
日本銀行

EMEAP(東アジア・オセアニア中央銀行役員会議)金融市場ワーキンググループでは、本日、「EMEAP Money Markets(EMEAP域内の短期金融市場)」を公表しました。

日本銀行では、今般、本報告書の抄訳を作成しました。

エグゼクティブサマリー

短期金融市場は、民間金融機関ならびに中央銀行の重要なインフラとしての機能を果たしており、金融機関が金利の見通しや資金の需給に基づき短期資金を調達・運用する場である。EMEAP域内の短期金融市場は、資本流入が続いてきたこともあり、引き続き潤沢な流動性を有しているが、資本フローが反転した場合、流動性は徐々に低下し得る。こうした問題意識の下、本報告書は、短期金融市場の現状およびEMEAP域内の政策面の取り組みを纏めることを目的としている。本報告書は、各法域において短期金融市場が独自の進化を遂げていることを踏まえた上で、域内の同市場を更に発展させるために有益な情報を提供する。

WGFMのアンケート調査は、EMEAP域内の短期金融市場が過去数年にわたり総じて成長してきたことを明らかにした。これは、着実な経済成長だけでなく、域内で実施された政策面の取り組みにも起因している。これらの政策面の取り組みは、各市場固有の構造や発展の軌跡に合わせて策定されたものである。本調査は、各法域における市場規模の多様性を確認するとともに、市場参加者の構成も異なることを示した。特に、中央銀行と地場銀行が市場の大半を占める法域もあれば、非銀行や外資系金融機関等の多様な参加者で市場が構成される法域もあることが分かった。このような特性が明らかになることで、市場を更に深化させ、タイト化し得る金融環境に対応する上で各法域が直面する様々な課題が浮き彫りとなった。

金融サイクルのいずれかの時点で短期金融市場の潜在的な課題が顕在化する可能性があることを踏まえ、本報告書は、EMEAP域内の民間市場参加者の知見を取り入れ、短期金融市場を支える政策面の取り組みを概観する。特に、以下の3つの領域において、政策が取り組まれてきた。

  1. (i)レポ取引の推進。非銀行の参加や空売りの自由化、債券流通市場の流動性改善を目的とした債券貸出の導入等の制度改革が含まれる。
  2. (ii)ターム物取引促進へ向けた基盤作り。ターム物取引に関するポストトレード事務の合理化や事務コスト軽減に向けた取り組みが行われている。
  3. (iii)金融調節の枠組みの見直し。円滑かつ安定した金利形成を促すとともに、変化する金融サイクルに対して準備を進めている。

本報告書は、域内の金融市場の更なる発展に向けたEMEAPの取り組みのひとつである。また、EMEAPは、最近、流通市場における現地通貨建て債券の流動性を支えるべく、PAIF債券貸出を導入した。これにより、域内の短期金融市場の機能を更に強化している。EMEAPは今後も様々な活動を通じて金融市場の発展に貢献していく。

照会先

国際局国際連携課

Tel : 03-3277-3561