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金融経済月報(基本的見解1)(1998年 6月)2

  1. 本「基本的見解」は、6月12日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、6月12日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

1998年 6月16日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9806.pdf 403KB)から入手できます。


 わが国経済をみると、最終需要が低迷を続ける下で、生産は減少しており、とくに最近は雇用・所得環境の悪化が顕著となっている。

 最終需要面をみると、これまで減少傾向にあった公共投資は、下げ止まりつつある。その一方で、純輸出はアジア向けの不振からこのところ頭打ち気味となっており、設備投資は引き続き減少傾向を辿っている。また、個人消費は、悪化に歯止めが掛かっているが、回復感の乏しい展開となっており、住宅投資も一段と落ち込んでいる。こうした最終需要の弱さを背景として、在庫はなお積み上がっており、鉱工業生産は減少を続けている。この結果、企業収益がさらに悪化しているほか、最近は失業率が急ピッチで上昇するなど、雇用・所得環境の悪化が顕著になっている。

 先行きについては、98年度補正予算案が実施に移されれば、公共事業の追加や特別減税等の需要創出効果によって、現在の生産・所得・支出を巡るマイナス方向への循環には、歯止めが掛かることが見込まれる。しかし、足許の急速な雇用・所得環境の悪化等により、経済活動の水準がさらに低下することになると、財政面からの諸措置の効果を減殺することにもなりかねない。このため、企業・家計のコンフィデンスを含め、今後の経済活動全般の動きを注意深くみていく必要がある。

 この間、物価面をみると、卸売物価の下落傾向が続いているほか、消費者物価も、制度変更要因を除いてみると、僅かながら前年水準を割り込んだ。先行きについては、国際商品市況など輸入物価からの下落圧力はすでに弱まっており、また、経済対策の実施に伴って、需給ギャップの拡大にも徐々に歯止めが掛かると見込まれる。しかし、現下の在庫や需給ギャップの水準を踏まえると、物価は、なお暫くの間、全般に軟調に推移する公算が大きい。また、仮に国内需要がさらに弱まる場合には、物価下落圧力が一段と強まるリスクも念頭におく必要がある。

 金融面をみると、短期金融市場では、ターム物現物レートおよび先物レートはいずれも概ね横這い圏内で推移している。一方、長期国債流通利回りは、弱めの実体経済指標の発表などを受けて、4月下旬以降、過去最低水準の更新を続けたあと、ごく最近は幾分反発している。この間、株価は弱含みで推移しており、市場参加者の景況感は弱い状態が続いていることを示唆する動きとなっている。

 信用リスクに対する市場の警戒感には引き続き根強いものがみられ、国債・民間債の利回り格差は、昨年末以降の拡大したままの状態が続いている。

 量的金融指標をみると、マネーサプライ(M2+CD)の伸び率がこのところ低下してきているほか、民間銀行貸出も低迷を続けている。これは、民間銀行が慎重な融資姿勢を維持していることに加えて、経済活動の停滞持続に伴って企業の資金需要が落ち込んでいることが強く影響しているものとみられる。

 この間、中小企業などを中心に、企業によっては、アベイラビリティー、金利の両面で厳しい資金調達環境が続いており、その実体経済に与える影響について、引き続き注意深く点検していく必要がある。

以上