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金融経済月報(基本的見解1)(1999年 2月)2

  1. 本「基本的見解」は、2月12日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、2月12日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

1999年 2月16日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp9902.pdf 440KB)から入手できます。


 わが国の経済情勢をみると、公共投資の増加などを背景に、悪化テンポが緩やかになっている。

 最終需要面をみると、設備投資は大幅な減少を続けている。住宅投資については、新設着工戸数が、横這い圏内の動きになってきているが、水準は依然低い。また、個人消費も、一部には改善の動きもみられるが、全体としては回復感に乏しい状態となっている。一方、純輸出(輸出−輸入)が緩やかながらも増加基調を維持する中で、公共投資は増勢を示している。こうした最終需要の動向や、在庫調整が引き続き進捗していることを背景に、これまで減少傾向にあった生産は、横這い圏内の動きとなってきている。

 一方、企業収益は減少傾向を続けている。また、失業率が既往最高水準で推移しているほか、冬季賞与もかなりの減少となるなど、家計の雇用・所得環境は引き続き悪化している。企業金融面に関しては、足許改善の動きが続いているが、先行きに対する不安感は、なお払拭し切れていない模様である。以上のことから、企業・消費者心理は依然慎重なものとなっており、民間需要の回復の動きはみられていない。

 今後の経済情勢については、政府の経済対策の実施に伴い、来年度上期にかけて、公共投資の増加が経済を下支えしていくとみられる。また、日本銀行による金融面からの措置や、政府の貸し渋り対策も、引き続き効果を発揮していくものと考えられる。しかし、上記のように企業収益や家計所得が依然悪化の方向にあることに加え、民間金融機関の慎重な融資姿勢のもとで、企業金融面における制約要因もなお暫くの間は作用し続けるとみられることなどを考えると、民間需要が速やかに自律的な回復に向かうことは展望し難い。また、昨秋以降の円高進行やこのところの長期金利上昇の影響、さらには海外情勢の不透明感にも、留意が必要である。これらを踏まえると、景気回復を確実なものとするためには、金融システムの早期建て直しなどを含め、企業や家計が経済の先行きに対して自信を取り戻し得るような環境を整えていくことが重要である。

 物価面をみると、大幅な需給ギャップなどを背景に、国内卸売物価が下落傾向を続け、企業向けサービス価格も軟化している。消費者物価については、生鮮食品の値上がりから、前年比でみて上昇しているが、こうした一時的要因を除いてみれば、基調として軟調に推移している。今後の物価を取り巻く環境についてみると、来年度上期にかけて、公共投資が増加する一方、民間需要は低迷を続けるとみられるため、需給ギャップの明確な縮小は見込み難い。また、賃金の軟化が続いていることや、昨秋以降の円高進行も、物価の低下要因として作用し続けると考えられる。これらを踏まえると、物価は、今後も、下落基調を続けるものとみられる。

 金融面をみると、ジャパン・プレミアムやユーロ円金利(各3か月物)は、年度末を控えているにもかかわらず、落ち着いた推移を辿っている。これは、日本銀行による思い切った金融緩和の継続に加えて、金融システム建て直しに向けた取り組みの進展によって、邦銀の流動性リスクや信用リスクに対する警戒感が後退してきていることを反映している。

 一方、長期国債の流通利回りは、将来にわたる財政赤字拡大懸念などを背景に再び上昇している。また為替相場も円高気味の展開となっている。株価も軟調に推移している。これら相場の動きは、景気の回復を阻害する要因となりかねないものであるだけに、先行きの動向を注意深く点検していく必要がある。

 金融の量的側面に関連して、企業の資金需要面をみると、設備投資の大幅減少を背景に、実体経済活動に伴う資金需要は低迷を続けている。また、資金調達の厳しさを意識した企業の手許資金積み上げの動きも、徐々に収まってきている。一方、民間金融機関は、基本的に慎重な融資姿勢を維持しているが、信用保証制度の活用には引き続き積極的である。この結果、企業金融は、一頃に比べ逼迫感が和らいできている。

 もっとも、信用リスクに対する金融機関や資本市場の警戒感は根強く、格付けが低めの企業などでは、依然厳しい資金調達環境が続いている。

 こうした企業金融の動向が、今後、年度末に向けてどのような展開を辿るか、注目していく必要がある。

以上