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金融経済月報(基本的見解1)(2000年 7月)2

  1. 本「基本的見解」は、7月17日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、7月17日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2000年 7月19日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0007.pdf 618KB)から入手できます。


 わが国の景気は、企業収益が改善する中で、設備投資の増加が続くなど、緩やかに回復している。

 最終需要面をみると、外生需要の面では、純輸出(実質輸出−実質輸入)が堅調な海外景気を背景に緩やかな増加傾向を辿っているほか、公共投資も補正予算の執行に伴い増加している。国内民間需要の面では、設備投資が増加を続けている。個人消費は、一部指標にやや明るさが窺われるものの、雇用・所得環境に目立った改善がみられない中で、全体としては回復感に乏しい状態が続いている。住宅投資は概ね横這いで推移している。

 このような最終需要の動向のもとで、鉱工業生産は増加している。企業の収益や業況感も改善を続けており、成長性の高い分野を中心に、設備投資増額など積極的な行動に転じる企業が増えている。家計の所得環境は引き続き厳しい状況にあるが、企業活動の回復に伴って所定内・所定外給与や新規求人が増加するなどの動きもみられ、賃金・雇用者数の減少傾向には歯止めが掛かりつつある。

 今後の経済情勢については、公共投資は遠からず減少に転じるとみられるものの、純輸出は海外景気の拡大を背景に緩やかな増加が続くと予想される。企業部門では、既存設備の過剰感がなお強く、借入金返済等による財務体質改善が引き続き意識されているが、企業収益の改善が続く中で、情報関連等の成長分野への設備投資は今後も増加する可能性が高い。また、企業収益の改善は家計所得の増加を通じて、個人消費にも好影響を及ぼしていくものと考えられる。もっとも、企業の雇用過剰感がなお強く人件費抑制スタンスに大きな変化がみられないだけに、家計所得の改善テンポは当面緩慢なものとなろう。以上を全体としてみれば、景気は、海外経済等の外部環境に大きな変化がなければ、今後も設備投資を中心に緩やかな回復が続く可能性が高いとみられる。なお、日本銀行による金融緩和措置などによる良好な金融環境も、引き続き下支え効果を発揮していくものと期待される。

 物価面をみると、輸入物価は、原油等国際商品市況が一旦下落したことを反映して、幾分下落している。国内卸売物価は、電気機器等の下落が続いているものの、これまでの原油価格上昇を受けた石油・化学製品の上昇等から、横這いの動きとなっている。消費者物価は、民間サービス価格がやや弱含んでいるほか、これまでの円高から輸入製品価格が低下しているため、幾分弱含みで推移している。企業向けサービス価格は、小幅の下落が続いている。

 物価の先行きについてみると、緩やかな景気回復の持続が展望されるもとで、需要の弱さに由来する潜在的な物価低下圧力は大きく後退している。また、原油価格上昇分の転嫁が、物価に対し一時的に上昇方向に作用するとみられる。他方、技術進歩を背景とする機械類の趨勢的な下落に加え、これまでの円高や流通合理化に伴う消費財価格の低下が下落方向に作用することから、総じてみれば物価は横這いないしやや弱含みで推移するものと考えられる。

 金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物金利は、ゼロ%に近い水準で推移しており、オーバーナイト資金の確保に対する懸念は払拭された状況が続いている。この間、コール市場残高は、若干増加している。

 ターム物金利は、6月中旬以降、ゼロ金利政策の解除の可能性を織り込むかたちで上昇している。ジャパン・プレミアムは、ほぼ解消された状態が続いている。

 長期国債流通利回りは、6月中旬以降若干上昇し、最近では1.7%前後で推移している。この間、国債と民間債(金融債、社債)の流通利回りスプレッドは、概ね横這い圏内で推移している。

 株価は、6月中旬にかけて一時下落したが、その後は、米国株価の上昇等を受けて持ち直している。

 円の対米ドル相場は、6月下旬には一時103円台まで上昇したが、その後は下落に転じ、最近では概ね107〜108円台での推移となっている。

 金融の量的側面をみると、民間銀行は、基本的に慎重な融資姿勢を維持している。ただ、民間銀行自身を巡る資金繰り面や自己資本面からの制約は緩和されており、大手行などでは、融資先の信用力などを見きわめつつ、融資を回復させようとする姿勢を強めている。

 しかし、資金需要面では、収益回復に伴うキャッシュ・フローの増加などを背景に企業の外部資金調達ニーズは乏しく、実体経済活動の改善が資金需要に結びつきにくい状況が続いている。また、企業はバランスシート調整の一環として、借入金を圧縮していくスタンスを維持している。これらの結果、民間の資金需要は引き続き低迷している。

 こうした中で、民間銀行貸出は、基調としては弱めの動きが続いている。社債やCPの発行も、落ち着いた動きとなっている。

 6月のマネーサプライ(M2+CD)の伸び率は、前月に比べ低下した。

 以上のような環境のもとで、企業からみた金融機関の貸出姿勢は厳しさが後退しており、企業金融には緩和感が広がりつつある。

以上