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金融経済月報(基本的見解1)(2001年 2月)2

  1. 本「基本的見解」は、 2月 9日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、 2月 9日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2001年 2月13日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0102.pdf 610KB)から入手できます。


 わが国の景気は、緩やかな回復を続けているが、そのテンポは輸出の減速により鈍化している。

 最終需要面をみると、設備投資は増加基調を続けている。個人消費は、雇用・所得環境に目立った改善がみられない中で、全体としては回復感に乏しい状態が続いているが、一部指標にはやや明るさが窺われる。住宅投資は概ね横這いの動きとなっている。公共投資は減少テンポが鈍化している。一方、純輸出(実質輸出−実質輸入)は、米国、東アジアなど海外経済の成長鈍化を背景に減少に転じている。

 このような最終需要の動向のもとで、鉱工業生産は、引き続き増加しているが、そのテンポはかなり鈍化してきている。在庫は、海外需要の減少が大きい素材や電子部品の一部ではやや過剰感が生じているが、全体としてはなお低水準にある。この間、企業収益は改善を続けている。家計の所得環境は引き続き厳しい状況にあるが、労働需給が改善方向にあるなど、底固く推移している。

 今後の経済情勢についてみると、まず、公共投資は、政府による新たな経済対策の実施に伴い、増加に転じると予想される。企業部門では、既存設備の過剰感がなお強く、借入金返済等による財務体質改善が引き続き意識されているが、企業収益の改善が続く中で、情報関連等の成長分野への設備投資は今後も増加する可能性が高い。また、企業収益の改善は家計所得の増加を通じて、個人消費にも好影響を及ぼしていくものと考えられる。もっとも、企業の雇用過剰感がなお強く人件費抑制スタンスに大きな変化がみられないだけに、家計所得の改善テンポは当面緩慢なものとなろう。

 他方で、輸出は、海外景気の減速を背景に当面減少が避けられないとみられる。輸入については、消費財や資本財・部品を中心に引き続き増加が見込まれるため、純輸出は減少すると考えられる。こうした輸出面の動きを主因に、鉱工業生産は当面横這い程度で推移するとみられる。

 以上を全体としてみれば、設備投資を中心とした景気の緩やかな回復基調は今後も維持される可能性が高いと考えられる。また、日本銀行による金融緩和の継続などによる良好な金融環境に加え、政府による新たな経済対策も下支え効果を発揮していくものと期待される。しかし、海外経済がさらに減速する可能性や、内外資本市場の動きなど、景気に対する下振れ方向のリスクが高まっている点には留意が必要である。

 物価面をみると、輸入物価は、為替円安の影響を主因に上昇している。国内卸売物価は、電気機器等の下落が続いていることから、やや弱含んでいる。消費者物価は、石油製品が上昇したが、その他の輸入製品やその競合品の価格が低下しているため、幾分弱含みで推移している。企業向けサービス価格は、小幅の下落が続いている。

 物価を巡る環境をみると、最近の円安は物価を押し上げる方向に作用している。また、緩やかな景気回復の持続が展望されるもとで、国内の需給バランスは、基調としては徐々に改善していくものと見込まれる。しかし、このところ、その改善テンポが鈍化しているとみられるほか、これまで上昇要因として作用していた原油価格は反落している。技術進歩を背景とする機械類の趨勢的な下落に加え、流通合理化に伴う消費財価格の低下や、規制緩和を背景とする通信料金の引き下げも引き続き下落方向に作用するとみられる。これらを総じてみれば、当面、物価はやや弱含みで推移するものと考えられる。

 金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物金利は、概ね0.25%前後の水準で推移している。

 ターム物金利は、幾分低下している。ジャパン・プレミアムは、ほぼ解消された状態となっている。

 長期国債流通利回りは、1.4%台前半まで低下している。国債と民間債(金融債、社債)の流通利回りスプレッドは、概ね横這いないし幾分拡大している。

 株価は、引き続き軟調な動きとなっており、昨年初来の最安値圏内で推移している。

 円の対米ドル相場は、12月下旬以降の急速な円安傾向が一服し、最近では概ね114~116円台での推移となっている。

 資金仲介活動をみると、民間銀行では、融資先の信用力を慎重に見きわめつつ、優良企業向けを中心に貸出を増加させようとする姿勢を続けている。社債、CP市場など、市場を通じた企業の資金調達環境にも大きな変化はみられていない。

 資金需要面では、収益回復に伴う高水準のキャッシュ・フローを背景に企業の外部資金調達ニーズは乏しく、実体経済活動の改善が資金需要に結びつきにくい状況が続いている。また、企業はバランスシート調整の一環として、借入金を圧縮していくスタンスを維持している。これらの結果、民間の資金需要は引き続き低迷している。

 こうした中で、民間銀行貸出は、前年比−2%程度の弱めの動きが続いている。この間、社債の発行残高は、前年を若干上回って推移しているほか、CPの発行残高も高水準を維持している。

 マネーサプライ(M2+CD)は、郵便貯金からの資金シフトの動きを受けて、このところ、幾分伸びを高めている。

 企業の資金調達コストをみると、短期は横這い圏内で推移しているが、長期は市場金利の動向を背景に弱含んでいる。

 以上のような環境のもとで、金融機関の貸出姿勢や企業金融はこれまでの緩和された状態が継続している。ただ、株価の下落が、企業の資金調達環境にどのような影響を与えるか、注視していく必要がある。

以上