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金融経済月報(基本的見解1)(2001年 4月)2

  1. 本「基本的見解」は、4月12日、13日に開催された政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策判断の基礎となる経済及び金融の情勢に関する基本的見解として決定されたものである。
  2. 本稿は、4月12日、13日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2001年 4月16日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、基本的見解の部分を掲載しています。図表を含む全文は、こちら(gp0104.pdf 693KB)から入手できます。


 わが国の景気は、輸出の落ち込みを主因に生産が減少するなど、調整局面にある。

 国内需要をみると、設備投資は増加を続けている。個人消費は、全体としては回復感に乏しい状態が続いているが、一部指標にはやや明るさが窺われる。住宅投資はやや減少している。一方、公共投資は増加に転じている。

 このように国内需要が底固く推移する一方で、米国、東アジアなど海外経済の急減速を背景に、純輸出(実質輸出−実質輸入)は大幅に減少している。その影響を主因に、鉱工業生産の減少が一段と鮮明になっており、在庫についても、電子部品や素材の一部で過剰感が高まっている。企業収益の改善テンポは、最近の輸出・生産の減少に伴って、大幅に鈍化しているとみられ、企業の業況感も製造業を中心に悪化している。家計の所得環境はなお底固さを維持しているが、新規求人や所定外労働時間などには、生産減少の影響が現われ始めている。

 今後の経済情勢についてみると、公共投資はここ暫く増加を続けると予想される。しかし、純輸出は、海外景気の調整が続くことを背景に、当面、減少を続ける可能性が高い。設備投資については、暫くの間、既発注案件の進捗が下支えに寄与するとみられるが、先行指標の動きを踏まえると、次第に頭打ちに向かう公算が大きい。また、程度は大きくないとはいえ、在庫面での調整圧力も、一部に高まりがみられる。このため、鉱工業生産は減少傾向が続くと見込まれる。こうした中で、企業収益は伸び悩み、家計の所得・消費の改善も滞りがちになっていくとみられる。

 以上を全体としてみれば、わが国の景気は、当面、生産面を中心に調整を続ける可能性が高いと考えられる。一方で、海外景気は米国を中心に本年後半以降は緩やかな回復傾向を辿るとの見方が一般的である。その場合は、円安の効果もあって、輸出が再び景気の下支え要因として作用すると考えられる。しかし、海外経済の減速が長引く可能性や、内外資本市場の動きが企業や家計の心理面などを通じて実体経済に悪影響を及ぼすリスクには、引き続き留意が必要である。

 物価面をみると、輸入物価は、為替円安の影響を主因に上昇している。国内卸売物価は、電気機器等の下落が続いていることから、弱含んでいる。消費者物価は、輸入製品やその競合品の価格が低下しているため、幾分弱含みで推移している。企業向けサービス価格は、小幅の下落が続いている。

 物価を巡る環境をみると、最近の円安は物価を押し上げる方向に作用している。しかし、景気の調整が続くもとで、国内需給バランス面からは、物価に対する低下圧力が働きやすい状況にある。このほか、技術進歩を背景とする機械類の趨勢的な下落や、流通合理化に伴う消費財価格の低下に加え、規制緩和を背景とする通信料金の引き下げが引き続き下落方向に作用するとみられる。これらを総じてみれば、当面、物価は弱含みで推移するものと考えられる。また、今後の景気動向には不透明な要素が多いだけに、需要の弱さに起因する物価低下圧力が強まる可能性にも留意が必要である。

 金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物金利は、3月19日の金融政策決定会合で金融市場調節方式が変更され、日本銀行当座預金残高が5兆円程度に増額されたことを受けて低下しており、最近ではゼロ近辺の水準で推移している。

 ターム物金利は、日本銀行による金融緩和の実施等を受けて、一段と低下している。ジャパン・プレミアムは、ほぼ解消された状態が続いている。

 長期国債流通利回りは、最近では1.4%台まで上昇している。国債と民間債(金融債、社債)の流通利回りスプレッドは、概ね横這いないしやや拡大している。

 株価は、上記緩和措置の実施や不良債権処理の進展に対する期待感等を受けて上昇している。

 円の対米ドル相場は下落しており、最近では概ね123〜125円台で推移している。

 資金仲介活動をみると、民間銀行は、融資先の信用力を慎重に見きわめつつ、優良企業向けを中心に貸出を増加させようとする姿勢を続けている。企業からみた金融機関の貸出態度や、社債、CP市場など市場を通じた企業の資金調達環境にも、大きな変化はみられていない。

 資金需要面では、高水準のキャッシュ・フローを背景に企業の外部資金調達ニーズは乏しく、資金需要が増加しにくい状況が続いている。また、企業はバランスシート調整の一環として、借入金を圧縮していくスタンスを維持している。これらの結果、民間の資金需要は引き続き低迷している。

 こうした中で、民間銀行貸出は、基調としては弱めの動きが続いている。また、社債の発行残高は、引き続き前年水準を上回っているが、伸び率はやや鈍化している。一方、CPの発行残高は、高水準で推移している。

 マネーサプライ(M2+CD)は、郵便貯金からの資金シフトの動き等を受けて、このところ、伸びを高めている。

 企業の資金調達コストをみると、市場金利の低下を受けて、短期および長期プライムレートが引き下げられるなど、引き続き低下している。

 以上のような環境のもとで、金融機関の貸出姿勢や企業金融はこれまでの緩和された状態が継続している。当面、日本銀行による追加的金融緩和措置の波及効果を見守る一方で、株価動向が金融機関行動や企業の資金調達環境に与える影響についても、引き続き注視していく必要がある。

以上