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金融経済月報(基本的見解1)(2004年 1月)2

  1. 本「基本的見解」は、 1月19日、20日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
  2. 本稿は、 1月19日、20日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2004年 1月20日
日本銀行

 わが国の景気は、緩やかに回復している。

 輸出は増加しており、設備投資も緩やかな回復を続けている。こうした動きを背景に、鉱工業生産も増加している。また、雇用者所得は徐々に下げ止まってきており、個人消費は横ばい圏内の動きとなっている。一方、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。

 先行きについては、景気は回復を続けるが、そのテンポは緩やかなものにとどまると考えられる。

 すなわち、海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出や生産は増加を続け、設備投資も回復傾向がより明確化していくと予想される。もっとも、過剰債務などの構造的な要因が根強いことを踏まえると、設備投資の増勢は力強さを欠くものにとどまると考えられる。また、個人消費は、雇用・所得環境に目立った改善が期待しにくいもとで、当面、横ばい圏内の動きを続ける可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。

 物価の現状をみると、国内企業物価は、米価格の上昇や内外の商品市況高から強含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、米価格の上昇など一時的な要因も押し上げに働く中、ゼロ%近傍で推移している。

 物価の先行きについて、国内企業物価は、目先は強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、米価格の上昇などから、当面ゼロ%前後で推移する可能性が高いが、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況のもとで、基調的には小幅のマイナスを続けると予想される。

 金融面をみると、企業金融を巡る環境は、信用力の低い企業についてはなお厳しい状況にあるが、総じてみればやや緩和される方向にある。CP・社債の発行環境は高格付け企業を中心に総じて良好な状況にあるほか、民間銀行の貸出姿勢は幾分緩和している。こうしたもとで、CP・社債の発行残高は引き続き前年を上回って推移しており、民間銀行貸出は減少幅がわずかながら縮小してきている。この間、銀行券発行残高の伸びが金融システムに対する不安感の後退などから低下傾向を続ける中で、マネタリーベースの伸び率は、前年比1割台半ばに低下している。マネーサプライは、前年比1%台の伸びとなっている。金融市場の動きをみると、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、短期金融市場ではきわめて緩和的な状況が続いている。為替・資本市場では、円の対ドル相場や株価は前月と比べ幾分上昇しているが、長期金利は前月と概ね同じ水準となっている。

 わが国の経済・物価動向は、昨年10月の「経済・物価の将来展望とリスク評価」(展望レポート)で示した経済・物価の標準シナリオに概ね沿った動きを続ける、と予想される。こうしたシナリオが上振れまたは下振れるリスク要因としては、引き続き、海外経済の動向、金融・為替市場の動向、不良債権処理や金融システムの動向および国内民間需要の動向が挙げられる。このうち、海外経済については、下振れるリスクが展望レポート公表時に比べ小さくなっていると評価できる。一方、金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。

以上