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金融経済月報(基本的見解1)(2004年 3月)2

  1. 本「基本的見解」は、3月15日、16日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
  2. 本稿は、3月15日、16日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2004年 3月16日
日本銀行

 わが国の景気は、緩やかに回復している。

 輸出はこのところ大幅に増加しており、設備投資も回復を続けている。こうした動きを背景に、鉱工業生産も増加している。また、雇用者所得は徐々に下げ止まってきており、個人消費も足もとはやや強めの動きとなっている。一方、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少している。

 先行きについても、景気は緩やかな回復を続けるとみられる。

 すなわち、海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出、設備投資を中心に最終需要の回復が続き、生産も引き続き増加していく可能性が高い。もっとも、企業の過剰債務などの構造的な要因は、徐々に和らぐ方向にあるとは言え、依然として根強い。また、企業の人件費抑制姿勢も引き続き強く、当面、雇用・所得環境に目立った改善は期待しにくい。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。

 物価の現状をみると、国内企業物価は、内外の商品市況高などを反映して、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、米価格の上昇など一時的な要因も押し上げに働く中、ゼロ%近傍で推移している。

 物価の先行きについて、国内企業物価は、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、米価格の上昇などから、当面ゼロ%前後で推移する可能性が高いが、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況のもとで、基調的には小幅のマイナスを続けると予想される。

 金融面をみると、企業金融を巡る環境は、信用力の低い企業についてはなお厳しい状況にあるが、総じてみればやや緩和される方向にある。CP・社債の発行環境は高格付け企業を中心に総じて良好な状況にあるほか、民間銀行の貸出姿勢は幾分緩和している。また、民間の資金需要は減少テンポが幾分緩やかになってきている。こうしたもとで、CP・社債の発行残高は引き続き前年を上回って推移しており、民間銀行貸出は減少幅がわずかながら縮小してきている。この間、銀行券発行残高の伸びが金融システムに対する不安感の後退などから低下傾向を続ける中で、マネタリーベースの伸び率は、前年比1割台半ばで推移している。マネーサプライは、前年比1%台の伸びとなっている。金融市場の動きをみると、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、短期金融市場ではきわめて緩和的な状況が続いている。為替・資本市場では、円の対ドル相場は前月と比べ下落している一方で、株価は上昇している。この間、長期金利は前月と概ね同じ水準となっている。

以上