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金融経済月報(基本的見解1)(2004年 7月)2

  1. 本「基本的見解」は、7月12日、13日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
  2. 本稿は、7月12日、13日に開催された政策委員会・金融政策決定会合の時点で利用可能であった情報をもとに記述されている。

2004年 7月13日
日本銀行

 わが国の景気は、生産活動や企業収益から雇用面への好影響を伴いつつ、回復を続けている。

 輸出、設備投資の増加が続いており、鉱工業生産も引き続き増加している。企業収益や企業の業況感も、幅広い分野で改善が続いている。こうしたもとで、雇用面にも改善の動きがみられており、雇用者所得は下げ止まってきている。個人消費もやや強めの動きを続けている。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は減少している。

 先行きについては、景気は回復の動きを続け、前向きの循環も明確化していくとみられる。

 すなわち、海外経済が高めの成長を続けるとみられるもとで、輸出、設備投資を中心に最終需要の回復が続き、生産も引き続き増加していく可能性が高い。企業の過剰債務など構造的な要因が企業活動に及ぼす影響も和らいできている。また、企業の人件費抑制姿勢は維持されているが、そうした中でも、生産活動や企業収益から雇用者所得への好影響は次第に明確化していくと考えられる。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。

 物価の現状をみると、国内企業物価は、内外の商品市況高や需給環境の改善を反映して、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスとなっている。

 物価の先行きについて、国内企業物価は、原油高の影響もあって、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、基調的には小幅のマイナスで推移すると予想される。

 金融面をみると、企業金融を巡る環境は、信用力の低い企業についてはなお厳しい状況にあるが、総じてみれば緩和される方向にある。CP・社債の発行環境は総じて良好な状況にあるほか、民間銀行の貸出姿勢は緩和してきている。企業からみた金融機関の貸出態度も改善の動きが一段と明確になっている。また、民間の資金需要は減少テンポが幾分緩やかになってきている。こうしたもとで、CP・社債の発行残高は引き続き前年を上回って推移しており、民間銀行貸出は減少幅の縮小が基調として続いている。この間、銀行券発行残高の伸びが金融システムに対する不安感の後退などから低下傾向を続ける中で、マネタリーベースの伸び率は前年比4%台となっている。マネーサプライは前年比2%程度の伸びとなっている。金融市場の動きをみると、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、短期金融市場ではきわめて緩和的な状況が続いている。為替・資本市場では、円の対ドル相場は前月と比べ上昇しているが、長期金利、株価は前月と概ね同じ水準となっている。

 わが国の景気は、4月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した「2004年度見通し」に比べて上振れて推移すると予想される。すなわち、輸出、設備投資を中心に最終需要の回復が続いているほか、生産活動などからの好影響が雇用面にも及んでおり、先行き、前向きの循環が明確化していくとみられる。物価面では、国内企業物価は、原油価格など内外商品市況の上昇や需給環境の改善を反映して、4月の「2004年度見通し」に比べて上振れて推移すると予想される。こうした国内企業物価の上昇の影響は、注意深くみていく必要があるが、川下段階にいくにしたがって、企業部門における生産性の上昇等によってかなりの程度吸収されると見込まれることから、消費者物価は、概ね4月の「2004年度見通し」に沿って、小幅の下落基調が続くと予想される。

以上