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金融政策決定会合議事要旨

(2005年1月18、19日開催分)*

  • 本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2005年 2月16、17日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

2005年2月22日
日本銀行

(開催要領)

1.開催日時
2005年1月18日(14:00~15:51)
1月19日(9:00~12:28)
2.場所
日本銀行本店
3.出席委員
  • 議長 福井俊彦(総裁)
  • 武藤敏郎(副総裁)
  • 岩田一政(  副総裁  )
  • 植田和男(審議委員)
  • 須田美矢子(  審議委員  )
  • 中原 眞(  審議委員  )
  • 春 英彦(  審議委員  )
  • 福間年勝(  審議委員  )
  • 水野温氏(  審議委員  )
4.政府からの出席者
  • 財務省 石井 道遠 大臣官房総括審議官(18日)
    上田 勇 財務副大臣(19日)
  • 内閣府 浜野 潤 政策統括官(経済財政運営担当)

(執行部からの報告者)

  • 理事平野英治
  • 理事白川方明
  • 理事山本 晃
  • 企画局長山口廣秀
  • 企画局審議役前原康宏
  • 企画局企画役内田眞一
  • 企画局企画役山岡浩巳
  • 金融市場局長中曽 宏
  • 調査統計局長早川英男
  • 調査統計局参事役門間一夫
  • 国際局長堀井昭成

(事務局)

  • 政策委員会室長秋山勝貞
  • 政策委員会室審議役武井敏一
  • 政策委員会室企画役村上憲司
  • 企画局企画役加藤 毅
  • 企画局企画役武田直己

I.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(2004年12月16、17日)で決定された方針1に従って運営した。この結果、当座預金残高は31~34兆円台で推移した。

  1. 「日本銀行当座預金残高が30~35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。」

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、日本銀行による潤沢な資金供給のもとで、無担保コールレート翌日物(加重平均値)は、概ねゼロ%近傍で推移した。ターム物レートも、引き続き低位で安定的に推移している。

長期金利は、景気の先行きに対する慎重な見方が続く一方で、昨年末にかけて株価が上昇したことなどから、最近では1.4%近辺で推移している。

株価は、米国株価の堅調な推移を背景に海外投資家による日本株買いがみられたことなどから上昇し、足もとは、日経平均株価は11千円台半ばで推移している。

為替市場では、円の対米ドル相場は、米国貿易収支が過去最大の赤字額となったことなどを受けて上昇し、最近では102~104円台で推移している。

3.海外金融経済情勢

米国経済は、家計支出や設備投資などの国内民需が引き続き増加しているほか、雇用者数も改善傾向を辿っているなど、景気拡大が続いている。クリスマス商戦もまずまずの仕上がりとなった模様である。先行きも、景気拡大が続く見通しである。

ユーロエリアでは、ユーロ高等を背景に、生産や雇用面での停滞感が根強く、景気回復のモメンタムは弱い。

東アジアをみると、中国は、内外需ともに力強い拡大が続いている。固定資産投資の年初来累計前年比は引き続き高い伸びとなっており、生産の伸びも高い。NIEs、ASEAN諸国・地域では、テンポは幾分鈍化しているものの、景気拡大が持続している。12月26日に発生したインド洋津波は、インドネシア等の諸国に大きな被害をもたらしたが、経済活動に対する直接的な被害は比較的小さいとの見方が大勢である。

米欧の金融資本市場では、長期金利は、米国では市場予想比強めの経済指標などを背景に若干上昇したが、欧州では前回会合時とほぼ同じ水準で推移している。株価は、米国は昨年末にかけて上昇した後、年明け後には軟調な展開となった。欧州では通貨高の一服などを好感しジリ高となった。

エマージング金融資本市場では、インド洋津波の発生後も、株価や対米国債スプレッドが堅調に推移する国・地域が多かった。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

輸出は、10、11月と増加したが、このうち自動車や鉄鋼の増加には一時的な要因が影響していることやIT関連財が弱い動きをしていることなどからみて、なお横ばい圏内の動きを脱していない。先行きは、海外経済が米国と東アジアを中心に拡大を続けるほか、IT関連分野の調整圧力も和らぐことから、増加基調が続くとみられる。

設備投資は、引き続き増加傾向にある。先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は10月に7~9月対比で-3.4%の減少となった後、11月には大幅増加となった。また、建設投資についても、建築着工床面積は均してみれば増加傾向を続けている。12月の短観等でも積極的な投資計画が示されていることなどから、振れはあるものの、設備投資の増加基調は維持されているとみられる。先行きについても、内外需要や企業収益の増加が見込まれるもとで、設備投資は増加傾向を続けると予想される。

個人消費は、底堅く推移している。乗用車新車登録台数は、7~9月に増加した後、10~12月は前期比-0.4%と横ばいになった。12月は鋼材不足による生産後ずれの影響から登録が遅れているが、需要自体は堅調とみられる。また、家電販売は順調な増加傾向が続いている。ただ、全国百貨店、スーパーの販売額やサービス関連の指標は、天候要因等の影響から弱めの動きとなっている。先行きの個人消費については、雇用者所得が緩やかな増加に向かう可能性が高いとみられるもとで、緩やかに回復していくと予想される。

生産は、10~11月平均では、7~9月対比で弱含みの動きとなっている。電子部品・デバイスが在庫調整により減少するなど、IT関連分野の調整が生産の数字を押し下げるかたちになっている。需要が好調な素材関連でも、生産能力の上限に達している品目が多いことから、生産が増加しにくい状況が続いている。また、こうした鋼材不足が輸送機械の生産の制約となっている。先行きについては、当面はIT関連分野の在庫調整の影響が残るとみられるが、海外経済の成長が続き、内需の回復基盤もしっかりしていることを踏まえると、生産は次第に増加基調を取り戻していくと考えられる。もっとも、IT関連分野は、在庫調整の進展度合い、最終需要の動向の両面で不確実性が大きいため、これらの動向は注意深くみる必要がある。

雇用・所得環境をみると、求人関連指標や失業率は振れを伴いつつも改善傾向を続けており、雇用者数は増加傾向にある。一人当たり平均でみた賃金はなお減少傾向が続いているが、特別給与を中心にマイナス幅は縮小している。雇用者数の増加とあわせて考えると、雇用者所得の下げ止まりがはっきりしてきている。先行きについても、企業の人件費抑制姿勢は継続するとみられるが、企業収益の増加や雇用過剰感の緩和が続くもとで、雇用者所得は緩やかな増加に向かう可能性が高い。

物価動向をみると、国内企業物価は、内外商品市況高や需給環境の改善を反映して上昇している。一方、消費者物価(除く生鮮食品)は、11月は前年比で-0.2%と10月に比べ若干マイナス幅を拡大した。これには公共料金の引き下げ等が影響している。先行きも、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くほか、公共料金が下落していることから、小幅のマイナスで推移すると予想される。

以上の動きからみて、わが国の景気は、生産面などで弱めの動きがみられているが、基調としては回復が続いていると考えられる。

(2)金融環境

民間の資金需要は、企業の借入金圧縮スタンスが維持されている中、回復方向の動きに足もと一服感がみられる。こうしたもとで、民間銀行貸出も、基調としては回復傾向を辿ってきたが、このところ減少幅が横ばいの動きとなっている。この間、民間銀行の貸出姿勢は緩和してきており、企業からみた金融機関の貸出態度も、中小企業を含め、引き続き緩和している。

資本市場調達については、CP・社債とも良好な発行環境が続いており、CP・社債の発行残高は引き続き前年を上回って推移している。流通市場における社債の信用スプレッドは、格付けの低いものまで含めてかなりの低水準となっている。

マネタリーベースの伸び率は、前年比4%台で推移しており、マネーサプライ(M2+CD)は、前年比2%程度の伸びとなっている。銀行券発行残高は、11月の改刷が押し上げ要因として作用していることなどから、前年比2%台の伸びで推移している。

II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

足許の経済情勢について、委員は、わが国の景気は、生産面などに弱めの動きがみられるものの、一時的な踊り場の局面であり、基調としては回復を続けているとの認識を共有した。また、先行きについても、景気は回復を続けていくとの認識が共有された。何人かの委員から、支店長会議での各地からの報告も、大勢としてそうした見方であったとの認識が示された。

海外経済に関して、委員は、これまでの高めの成長から幾分減速するものの、拡大を続けていくとの見方を共有した。

米国経済について、多くの委員は、一時的な停滞を抜け出し、景気拡大を続けているとの認識を示した。その背景としては、7~9月の実質成長率が上方改訂されたこと、クリスマス商戦もまずまずの仕上がりとみられること、企業収益が高水準であり、雇用者数も改善が続いていることなどが指摘された。

中国経済について、多くの委員は、固定資産投資が高めの伸びを続けているなど、内外需とも力強い拡大を続けているとの見方を示した。ある委員は、中国政府による過熱抑制策の結果、建設投資の伸びがやや鈍化する中で、中国の建設用鋼材等の輸出圧力が強まっていると指摘した。

このように海外経済の拡大が続くとの見通しのもとで、わが国の輸出は、基調的には増加していくとの見方が共有された。もっとも、何人かの委員は、足もとの鉄鋼や自動車の輸出増加は一時的な面があるほか、IT関連分野は弱い動きをしていることから、今後の輸出の増加テンポについては、素材関連の供給制約や世界的なIT関連需要の回復度合いなどを見極めていく必要があると指摘した。

設備投資について、多くの委員は、11月の機械受注が大幅な伸びとなったことや、企業収益が高水準を維持すると見込まれること、現在調整下にあるIT関連分野でも設備投資の大幅な先送りの動きはみられていないことなどから、今後とも増加傾向が続くとの認識を示した。ある委員は、バブル崩壊後の長期にわたるストック調整や過剰債務の調整進捗等を背景に、建設投資が再びサイクルの長い回復局面に入った可能性があると指摘した。また、別の委員は、製造業の中堅中小企業や非製造業まで設備投資の裾野が広がってきているとの認識を示した。一方、複数の委員は、中小企業の収益悪化を示唆する調査結果もみられることから、中小企業を含め、2005年度以降も設備投資の増加が続くかどうかについては、今後とも注意してみていく必要があると指摘した。

個人消費について、委員は、底堅く推移しているとの見方を共有した。何人かの委員は、年末商戦を含めて家電販売は増加傾向を示しているほか、乗用車販売についても、需要は堅調と指摘した。また、先行きについても、多くの委員は、企業の雇用過剰感が後退する中で雇用者所得が緩やかな増加に向かう可能性が高いことから、個人消費は緩やかに回復していくとの見通しを述べた。一方、複数の委員は、消費者コンフィデンスが頭打ちである点や税制見直し等の消費への影響には留意する必要があると指摘した。

生産について、委員は、IT関連分野の在庫調整が進行中であることや素材関連で生産能力の制約から生産が増加しにくくなっていることなどから、足もと弱含みの動きが続いているとの認識を共有した。IT関連分野の在庫調整について、多くの委員は、IT関連需要の裾野が広がっていることや在庫積み上がりに対し早期に調整が始まっていることなどから、今回の調整は2000年から2001年にかけてのITバブル崩壊時のような深刻なものにはならないし、調整も本年春以降には終了するのではないかとの見方を共有した。これに関して、複数の委員は、IT関連分野の調整の進捗度合いは製品毎に異なることから、いつまでに調整が一巡するかは現段階では見極めが難しいと付け加えた。ある委員は、在庫調整の影響は深刻にならないとしても、携帯電話や半導体などの世界需要は来年度にかけて横ばいになるとの予測があるほか、デジタル家電の分野においても価格競争は激化の方向にあることなどから、調整一巡後もIT関連に景気の牽引役としての役割を期待することは難しいと指摘した。

雇用・所得面では、多くの委員は、求人関連指標や失業率など労働需給を反映する諸指標が改善を続けている中、雇用者数が増加傾向にあるほか、賃金も概ね下げ止まりつつあることから、雇用者所得の下げ止まりが明確になってきているとの認識を共有した。

物価面に関して、委員は、国内企業物価はこれまでは内外商品市況高や需給の改善を反映して上昇しているが、先行きは原油高の一服等から上昇テンポが緩やかになるとの認識を共有した。また、委員は、消費者物価の前年比は小幅のマイナスで推移しており、先行きについても基調としては緩やかにマイナス幅が縮小していくとみられるが、固定電話通信料引き下げの指数面への影響等により一時的にマイナス幅が拡大する可能性があるとの認識を共有した。これに関連して、ある委員は、電話通信料の引き下げや電力自由化をにらんだ電力料金の引き下げにより、消費者物価は0.3%程度押し下げられる可能性があるとの見方を示した。また、別の委員は、景気の下振れや、不良債権処理に伴う資源配分の改善による潜在成長率上昇の可能性から、GDPギャップの縮小幅が予想していたよりも小さくなっている可能性があり、先行きの回復力の強さが消費者物価への影響の点で重要であるとの見方を示した。

2.金融面の動向

金融面に関して、委員は、きわめて緩和的な環境が続いているとの認識を共有した。昨年末から長期金利が横ばいとなっている中で株価が強含んでいることについて、ある委員は、足もとの株価の推移は市場の景況感を反映しているとみられる一方、長期金利は景気要因よりも需給要因により動いているとの見方を示した。また、金融機関貸出の動向について、一人の委員は、金融機関がリスクテイク能力を高める中、中小企業向け貸出や不動産向け貸出等にも前向きになっていると述べた。

何人かの委員は、4月にペイオフ全面解禁を控えているが、金融システム不安が後退しているもとで、金融機関間の預金シフト等特段の資金シフトはうかがわれていないと指摘した。これに関連して、ある委員は、ペイオフ全面解禁が円滑に実現されれば、景気の持続性にとってもプラス要因であるとの認識を示した。

社債市場などで信用スプレッドが縮小している点について、ある委員は、低金利政策の継続により、イールドカーブのフラット化と信用スプレッドの縮小が生じており、投資家や金融機関は大きな金利リスク、信用リスクを抱えている可能性があると指摘した。また、別の委員は、潤沢な流動性が供給されているもとで、グローバルな投資家の中にはリスクに関して相当に楽観的な見方がみられるようになっていると述べた。

また、最近の地価の動向に関して、複数の委員は、東京都区部の地価がここにきて上昇に転じていることは注目すべき動きであると指摘した。

3.中間評価

以上のような経済・物価・金融面の情勢認識を踏まえ、10月の展望レポートで示した「経済・物価情勢の見通し」との関係では、(1)景気については足もと幾分下振れて推移したが、先行きは「見通し」に概ね沿った動きになる、(2)物価面では、国内企業物価は「見通し」に沿って推移し、消費者物価も基調は「見通し」に沿って推移するが、固定電話通信料引き下げの指数面への影響等によっては「見通し」をやや下回る可能性がある、との見方が共有された。

当面の注目すべきリスク要因として、多くの委員は、為替市場の動きと原油価格の動向、そしてIT関連分野の調整の帰趨を指摘した。ある委員は、鋼材価格の動向も注意が必要であると述べた。為替相場については、何人かの委員は、実体経済や金利格差といった循環的な要因からはドル高方向の、また、米国の「双子の赤字」に対する市場のセンチメントからはドル安方向の力がそれぞれ働いているとの見解を示した。このほか、複数の委員は、海外経済の動向に関して、グローバルにインフレが加速しないかどうかもリスク要因として念頭におく必要があるとの認識を示した。

III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

当面の金融政策運営について、委員は、前述のような経済金融情勢判断のもと、現在の「30~35兆円程度」という当座預金残高目標を維持することが適当であるとの認識を共有した。

当面の金融市場調節に関して、委員は、金融システム不安の一段の後退などから市場で資金余剰感が高まる中、このところオペで札割れが増加しているが、調節上の工夫により現行の当座預金残高目標を維持していくことが適当との認識を共有した。ある委員は、現在景気が踊り場を迎えている中、当座預金残高目標を維持することには積極的な意味があると指摘した。

先行きの金融政策運営に関して、ある委員は、金融システムの健全化による流動性リスクの低下を背景に、日銀当座預金残高への需要が減退していることを指摘したうえで、これまでの当座預金残高目標の引き上げの過程では金融市場の安定確保を通じて景気回復を支援することを変更の大きな事由としてきたことを踏まえると、オペの札割れにみられるように市場自身が不要であるとのシグナルを発している部分については、現行の政策の枠組みの中で慎重に当座預金残高を減額することが適当であると指摘した。これに関して、別の委員は、4月のペイオフ全面解禁を契機に金融市場の流動性リスクが一層後退していく場合、現在の当座預金残高を維持していくことの効果と副作用のバランスが変化することも考えられると述べた。また、ある委員は、財政資金の受払いが金融調節に与える影響について留意する必要があると述べた。何人かの委員は、現在の量的緩和政策は、金融不安への対応も含めてデフレからの脱却を目標としたものであり、金融不安の後退だけを理由に当座預金残高目標を減額することは説明が難しいのではないかとの認識を示した。また、一人の委員は、景気が踊り場を迎えている中で当座預金残高目標の減額が金融引き締めと誤解される惧れはないのかどうかなど、当座預金残高目標を調整することについては、慎重に検討すべき点があるとの認識を示した。別の委員は、当座預金残高目標の減額は景気が良い場合に限られるように思うが、当座預金残高目標を引き下げずに一時的な資金需給の振れを許容するような工夫も必要ではないかと述べた。ある委員は、当面の金融政策運営として、量的緩和政策を堅持していくことについては委員の間で共通の認識があると述べた。さらに、同じ委員は、市場の流動性需要の変化に応じて当座預金残高を調整することが適当であるかどうか、そうした当座預金残高の調整が市場関係者そして国民の理解を得ることができるのかといった点については、景気の動向と市場の反応を十分確認しながら、今後とも検討していく必要があるとの認識を示した。

IV.政府からの出席者の発言

会合では、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 平成17年度予算においては、歳出・歳入両面における取組みの結果、財政規律堅持の姿勢を明確にすることができたと考えている。具体的には、社会保障関係費等の増加圧力の中、三位一体改革や聖域なき削減努力により、3年振りに一般歳出について前年度の水準以下に抑制し、新規国債発行予定額については4年振りに前年度よりも減額し、一般会計の基礎的財政収支も昨年度に引き続き改善した。また、歳入面については平成11年以降継続されてきた定率減税についてその規模を2分の1にすることとしている。
  • わが国の経済の現状をみると、一部に弱い動きがみられるものの、全体の動きとして景気は回復が続いている。こうした中、デフレは依然として継続している。したがって、日本銀行におかれては、引き続き量的緩和政策を堅持していく姿勢を明確に示して頂きたいと考えている。加えて、現在の民間需要主導の景気回復を持続的なものとしていくためには、今後とも金融政策の役割は重要であると考えている。こうした観点から、緩和的な金融環境が継続するとの期待が将来に亘り維持されるよう、新たな工夫の検討を行って頂きたいと考えている。

また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。

  • 景気の現状については、一部に弱い動きがみられ、このところ回復は緩やかになっている。最近の物価動向については、国内企業物価は上昇している一方、消費者物価は小幅な下落基調が続いており、GDPデフレーターは依然として1%台の下落となるなど、緩やかなデフレが続いている。
  • 政府は21日に「平成17年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」及び「構造改革と経済財政の中期展望―2004年度改定」を閣議決定する予定としている。「経済見通し」では平成17年度については、民間需要中心の緩やかな回復の継続と、政府・日本銀行一体となった取組みを進めることにより、デフレからの脱却に向けた進展を見込んでいる。また、「改革と展望―2004年度改定」では、集中調整期間後に見込んでいる成長経路、すなわち概ね名目2%程度あるいはそれ以上の成長を実現するため、各分野の構造改革をより加速、拡大することとしているところである。
  • 日本銀行におかれても、政府との意思疎通を密にしつつ、デフレからの脱却を確実にすべく、思い切った金融緩和を続けられることを期待する。その中でデフレ克服のためには、結果としてマネーサプライが増加することが不可欠であることから、効果的な資金供給に繋がるような措置も含め、さらに実効性ある金融政策運営を行って頂きたいと考える。また、金融政策運営に関する透明性の一段の向上に努める中で、デフレ克服までの道筋を明確に示して頂くことを期待する。

V.採決

以上の議論を踏まえ、委員は、当面の金融市場調節方針について、当座預金残高目標を30~35兆円程度とする現在の調節方針を維持することが適当である、との考え方を共有した。

議長からは、このような見解をとりまとめるかたちで、以下の議案が提出され、採決に付された。

議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとし、別添のとおり公表すること。

日本銀行当座預金残高が30~35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

採決の結果

  • 賛成:福井委員、武藤委員、岩田委員、植田委員、須田委員、中原委員、春委員、福間委員、水野委員
  • 反対:なし

VI.金融経済月報「基本的見解」の検討

当月の金融経済月報に掲載する「基本的見解」が検討され、採決に付された。採決の結果、「基本的見解」が全員一致で決定された。

この「基本的見解」は当日(1月19日)中に、また、これに背景説明を加えた「金融経済月報」は1月20日に、それぞれ公表することとされた。

VII.議事要旨の承認

前回会合(12月16、17日)の議事要旨が全員一致で承認され、1月24日に公表することとされた。

以上


(別添)
2005年1月19日
日本銀行

当面の金融政策運営について

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。日本銀行当座預金残高が30~35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。

なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

以上