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「中央銀行デジタル通貨に関する法律問題研究会」報告書

2019年9月27日
中央銀行デジタル通貨に関する法律問題研究会

  • (注)2020年6月22日に「金融研究第39巻第2号」として公表しました。

要旨

本稿は、日本銀行金融研究所が設置した「中央銀行デジタル通貨に関する法律問題研究会」(メンバー〈50音順、敬称略〉:池尾和人、岡田仁志、加毛明、神作裕之、神田秀樹〈座長〉、小出篤、佐伯仁志、白石忠志、森田宏樹、山本隆司、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。

近年、中央銀行が発行するデジタル通貨、すなわち中央銀行デジタル通貨(central bank digital currency: CBDC)に対する関心が国際的に高まっており、学界等でCBDCに関する議論や提案がなされているほか、海外の中央銀行等からも、CBDCに関する考え方を整理した報告書等が公表されている。また、一部の国では、発行を検討する動きもみられている。

その背景としては、金融分野における技術革新、決済サービスの変容、一部の国における現金利用の減少など、さまざまな状況変化のほか、新興経済国・発展途上国における金融包摂に向けた議論の高まりなどが挙げられる。他方、CBDCの発行については、金融システムや経済全体への影響を含め幅広い観点から検討する必要性が指摘されており、現時点では、わが国を含む多くの国々の中央銀行は、具体的な発行予定はないとしている。

もっとも、情報技術の急速な発展等を踏まえると、CBDCを発行する場合に生じうる法的論点を抽出・整理し、それらについてどのような解釈や議論が成り立つか、検討を試みることは有益と考えられる。また、そうした検討を通じ、通貨に求められる機能や、中央銀行マネーと民間銀行マネーとの関係性といった問題に関する理解も、より深めることができると思われる。

以上のような問題意識を踏まえ、本報告書では、まず、検討の前提とするCBDCの発行形態のモデルを整理している。そのうえで、私法上の論点、日本銀行法上の論点、情報取得を巡る法的論点、刑法上の論点を中心に、行政法や競争法等の知見も踏まえつつ、わが国におけるCBDCの発行に関する主な法的論点を抽出・整理し、検討を行っている。

日本銀行から

本報告書の内容や意見は、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。

なお、本報告書に対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、日本銀行金融研究所(E-mail : imes-law@boj.or.jp)までお寄せ下さい。