気候変動関連の市場機能サーベイ(第5回)調査結果
―市場機能向上の進展状況と今後の課題―
2026年6月5日
日本銀行金融市場局
要旨
気候変動問題への対応において、株式や社債等の金融商品価格に対する、気候関連リスク・機会の織り込みや、気候変動関連のESG債の発行環境の整備を通じた、金融市場による金融仲介機能の発揮は重要である。
日本銀行では、わが国における気候変動関連の市場機能の状況やその向上に向けた課題について、投資家・金融機関だけでなく事業法人等も含めた幅広い市場関係者の見方を継続的に把握することを目的として、2022年以降、「気候変動関連の市場機能サーベイ」を実施しており、今回が5回目の調査となる。
今回調査では、気候関連リスク・機会の価格への反映状況について、株式、社債ともに幾分後退したとの見方が示された。価格への反映が一段と進むための課題としては、引き続き、最も多くの先が発行体や投資家の広がりを挙げた一方、法定開示に向けた進展を受け、情報開示の拡充や標準化を挙げる先が減少した。
ESG債市場の現状について、本邦では、案件に一服感がみられるほか、ESG債発行にかかる事務負担や機動性も踏まえ一般社債が選好されたことなどもあり、新規発行額は減少した。ESG債の需給への見方は前回対比幾分緩和した。
ESG債市場の先行きについて、事業法人の約半分は大幅な資金需要を見込み、そのうち4割程度はESG債の活用を視野に入れている。市場拡大期に発行されたESG債の償還見合いでの借り換えもポイントとなる。また、気候変動対応に向けた社債投資を予定する投資家は幾分増加し、積極的な取り組みスタンスが維持されている。
トランジション・ファイナンスは、多排出産業を中心に活用が見込まれている。発行体は、採算性やリスクを補うための政策的なインセンティブを期待する一方、投資家は、グリーンウォッシングへの対応や費用対効果を見極める観点から更なる国際的な理解深耕や情報開示の進展を期待している。気候関連開示については、既にSSBJ基準の適用が義務化された発行体では、体制整備やデータ収集、マテリアリティの特定等の対応が進められていることが確認された一方、実務負荷の軽減や開示内容の標準化による発行体間の比較可能性の向上といった点が課題として指摘された。
気候変動対応を巡っては、国際的には、米欧を中心とした潮流の変化が指摘された一方、競争力を確保しつつ持続可能な形での取り組みに移行しているとの声が聞かれた。他方、わが国では、前回調査以降も、トランジション・ファイナンスの推進やSSBJ基準の適用義務化等、一貫した姿勢で施策を推進している点は市場参加者にとって重要な安心材料との声が広く聞かれ、多くの先は自社の取り組みを維持しているほか、取り組みの深化を指摘する声も聞かれた。
気候変動対応は、中長期的な視点での継続的かつ着実な取り組みが求められる。日本銀行としては、こうした点も踏まえ、今後も気候変動対応を巡る環境の変化や発行体・投資家の取り組みスタンスを継続的に把握し、気候変動関連の市場機能度を適切に確認してまいりたい。
日本銀行から
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