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全国11支店金融経済概況 (2000年 1月)

2000年 1月31日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気をみると、全体としては持直しの動きが続いているが、公共投資の発注減少等から、そのテンポはやや緩やかになっており、企業マインドにも改善一服感が窺われる。最終需要面では、住宅投資は底固く推移しているが、公共投資は高めの水準ながら足許の増勢は一服している。この間、個人消費は一進一退の動きながら、総じてみれば力強さに欠けているほか、設備投資も減少傾向にある。こうした状況下、これまでの各種政策の下支え効果や輸出の増加等を背景に企業の生産活動が上向いているほか、収益もリストラ効果等から改善傾向にある。また、雇用情勢も依然厳しい状況ながら一段の悪化には歯止めが掛かりつつある。

最終需要面の動きをみると、公共投資は、新規発注の減少から工事ベースでの増勢は一服している。

住宅投資は、成約状況にはやや頭打ち感が窺われるが、住宅減税等の効果から持家や分譲マンションの着工は底固い動きが続いている。

個人消費は、大型小売店等の売上げは天候要因等による振れを伴いながらも総じて前年割れが続いているほか、耐久消費財についても売行き好調なパソコンや一部新型車以外は伸び悩んでいるなど、全体としては低調に推移している。この間、観光面では、法人客はなお低調ながら、国内の個人客や台湾、韓国からの団体客を中心に堅調な入込みが続いている。

設備投資は、一部には上方修正の動きもみられるが、全体としては減少が続いている。

企業の生産をみると、鋳鍛鋼製品・機械関連等では民間設備投資の低迷等から低操業を続けているものの、電子部品、自動車部品では国内・外の需要好調を背景に残業や休日出勤によるフル操業を継続しているほか、公共投資関連資材でも総じて高操業を続けているなど、全体では上向き基調にある。

企業収益については、売上げは総じて伸び悩んでいるものの、コスト削減効果等を背景に改善傾向にある。

雇用情勢については、依然厳しい状況にあるものの、有効求人倍率が下げ止まっているなど、一段の悪化には歯止めが掛かりつつある。

企業金融については、金融機関の融資姿勢の緩和等から、総じて落ち着いているほか、企業倒産についても概ね低水準で推移している。

金融面をみると、預金は企業筋での財務リストラの動きもあって、伸び率が鈍化しているものの、個人預金を中心に総じて堅調に推移している。一方、貸出は住宅ローンは高い伸びを続けているが、企業の資金需要の低迷から引続き低調となっている。

以上

東北地区金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行仙台支店

東北地区の景気は、企業の生産活動がウエイトの高い電気機械の生産好調を主因に、全体では前年の水準を上回っているほか、設備投資も生産好調な電気機械を主体に増加しているなど、引き続き上向いており、企業マインドも改善している。もっともそのテンポは、公共投資の減少、住宅投資の減速に加え、個人消費も厳しい雇用環境を映じて依然回復感に乏しく、緩やかなものに止まっている。

この間、企業倒産は、中小・零細先を中心に件数は前年を上回っているものの、金額は総じて落ち着いた動きとなっている。

金融面をみると、預金は公金が前年を下回っている一方、個人は横這い圏内の動きとなっている。貸出は地公体向けが増加しているものの、法人向けは依然として低調に推移している。

最終需要をみると、個人消費のうち、百貨店売上高は、初売りが好調なほか、食料品や身回品・雑貨も底固く推移しているものの、主力の衣料品は暖冬の影響からコート等重衣料の売行きが鈍く、総じて低調な域にある。家電販売は、季節商品の石油ファンヒーターや電子レンジは不振なものの、パソコン、携帯電話等の情報通信機器やデジタル製品(DVD・MDプレーヤー)は好調な販売を持続している。乗用車販売は、一部に新車投入効果がみられているものの、総じて低調に推移している。

公共投資は、公共工事請負金額が総じて前年を下回って推移しているほか、工事進捗ベースでも減少している。

住宅投資は、ウエイトの高い持家が前年割に転じており、減速感が強まっている。

11年度の設備投資計画は、大方の先で慎重な投資スタンスを崩していないものの、製造業では能力増強(半導体)や、グループ再編に伴う投資(金属製品)を行う先が一部にみられている。また、非製造業でも合理化・省力化、新規出店投資(卸・小売)のほか、需要増に対応した投資(運輸・倉庫)を計画しており、全産業では4年振りに増加する見通しにある。

主要製造業の生産動向をみると、電気機械では、パソコン等情報通信関連やデジタル製品の受注好調を背景に、完成品やロジックICでフル操業を継続しているほか、関連部品(液晶、コネクタ、コンデンサ等)も高操業を続けている。また、AV部品、電子部品もアジア向けを主体とした輸出の増加から一部の先で生産水準を引き上げている。

輸送用機械では、他地域からの生産シフトや新型車投入から生産水準を引き上げる先も少なくないが、既存車種の販売不振から減産する先もみられている。

消費関連業種では、時計、衣料品は大幅な減産を継続しているが、カメラは低価格品の需要好調や新機種投入効果から、またレンズも受注増から、生産水準を引き上げないし増産を継続している。食品では、練製品は低水準の生産が続いているものの、缶詰、冷凍・レトルトでは受注増から生産水準を引き上げている。また、紙・パでは、段ボール原紙は低調な生産を継続しているが、新聞・印刷用紙は堅調な生産を続けている。

設備関連業種(鋳物、切削工具、工作機械、工場ラインシステム、半導体製造装置)では、大方の先で自動車・家電メーカーを中心とした設備投資抑制の影響から減産を継続しているものの、半導体設備関連では受注好調を背景に生産水準を一段と引き上げている。

建設関連業種では、窯業・土石、鉄鋼二次製品は一部地域の大型プロジェクトの進捗から、また合板は住宅品質確保促進法施行に伴う需要増を見込み、それぞれ高水準の生産を継続しているものの、鉄鋼、金属製品は民需の落ち込みから低調な生産を続けている。

11年度の売上・収益動向をみると、窯業・土石、建設・不動産が公共工事の発注遅れ等から減少するものの、電気機械を中心とした情報通信機器等一部耐久消費財の好調持続に加え、個人消費全般の持ち直し期待から製造業、非製造業ともに微増収の見通しにあるが、収益は、リストラ実施等による経費削減効果から大幅増益を予測している(この結果、全産業では3年振りの増益を予測)。

雇用情勢については、有効求人倍率は、新規求人数が生産好調な電気機械やサービスを中心に増加していることを主因に、一段の悪化に歯止めがかかっているほか、所定外労働時間も、電気機械を中心に引き続き前年を上回っている。もっとも、常用雇用者数は、前年を下回って推移しており、総じて厳しい環境が続いている。

企業倒産をみると、金額は前年を下回っているものの、件数は年末にかけて建設、小売の零細先を主体に増加している。

以上

北陸地区金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行金沢支店

北陸地区の景気は、輸出や生産の増加から、持ち直しに転じている。また、企業マインドも、収益の回復などを背景に、着実に改善している。もっとも、雇用・所得環境に目立った改善がみられないほか、円高が企業収益面に及ぼす悪影響等の懸念材料もあることから、民間需要の速やかな回復は依然期待しにくい状況にある。

最終需要面の動きをみると、住宅投資は、新設住宅着工が高めの既往受注を背景に増勢を維持するなど、堅調な動きを続けているが、住宅金融公庫の金利上昇の影響もあって先行き頭打ち感が窺われる。また、これまで底堅い動きを続けてきた公共投資も、着工工事が減少傾向にある。

個人消費は、家電製品等の販売が堅調に推移しているほか、乗用車販売(除く軽)もこのところ増加しているが、一方で、スーパーの売上げや観光入り込み客数等、依然として前年割れの指標も少なくないなど、全体としては今一つ回復感に乏しい状態が続いている。

しかしながら、輸出は、携帯電話用部材等の電子部品が欧州向け、東アジア向けを中心に増勢を持続しているほか、合繊織物が東アジア向けを中心に前年を上回っており、また、軸受や塩ビ樹脂等でも東アジア向けが持ち直すなど、増加傾向にある。

設備投資は、根強い設備過剰感等を背景に総じて慎重な投資姿勢が続いているが、企業収益の改善や生産持ち直しの中で減少テンポが緩和しており、情報関連等一部には能力増強投資に踏み切る動きも出始めている。

こうした最終需要動向を映じて、生産は、窯業・土石、アルミ建材等の公共・住宅投資関連で増勢一服感が出始めてはいるが、電子部品の増勢持続や、合繊織物の持ち直し等を背景に、全体としては増加傾向が続いている。

この間、雇用面をみると、有効求人倍率(含むパート)は、新規求人数の増加から若干ながら改善している。一方、雇用者所得は、生産の増加に伴う所定外労働時間増加から、所定外給与が持ち直しつつあるものの、所定内・特別給与が減少していることから、低迷が続いている。

金融面をみると、預金は、個人預金では、定期性預金の伸びが鈍化しているが、流動性預金が引き続き伸びを高めていることから、全般に底堅く推移している。一方、法人預金は、保証協会保証付貸出に伴う資金滞留の一巡もあって伸びが鈍化している。

貸出は、個人向けが、住宅ローンで回復傾向がみられるものの、消費者ローンの低迷持続から、引き続き低調裡に推移している。また、法人向けも、設備資金需資が依然低迷していることに加え、保証協会保証付貸出も安定化保証制度の導入一巡等から伸び率が鈍化しており、全般に低調な推移となっている。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏の中で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済は、生産が持ち直し、企業収益も回復過程に入り、企業の景況感もかなり改善しつつあるが、民間需要の自律的回復力はなお乏しい状態にある。すなわち、個人消費は一部に動意があるとはいえ、全般的には盛り上りに欠けるほか、設備投資も依然として低迷している。また、公共投資の増加も一服感がみられつつある。しかし、住宅投資が回復傾向を持続しているほか、輸出もアジア経済の好転等を背景に増加傾向にある。このため、県内企業の生産は、電気機械、素材業種等で生産水準を引き上げるなど、全般的に持ち直し傾向にある。この間、労働需給面は、若干改善をみつつあるものの、依然緩和した状態が続いている。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、家電販売はパソコン等一部品目で好調なものの、暖冬の影響による暖房器具等の売上不振もあって、低調の域を脱していない。また、百貨店売上高も暖冬の影響もあって冬物衣料等の動きが鈍いなど、前年割れが続いているほか、乗用車販売も軽自動車は引き続き高水準ながら、軽自動車を除くベースでは依然前年を下回っている。この間、レジャー関連では、2000年問題の影響から旅行を控える動きもあって、国内・海外旅行とも低調に推移している。

設備投資を前年12月に実施した「企業短期経済観測調査(神奈川県分)」(以下「12月短観」という)でみると、県内企業の平成11年度の設備投資計画は、製造業では前回(前年9月)調査に比べさらに下方修正され、3年連続の減少(前年比△20.3%)の見通しとなっている。また、非製造業では前回調査に比べ上方修正にはなったものの、2年連続の減少(同△19.1%)が見込まれている。

住宅投資は、住宅減税拡充策の効果等から分譲マンションを中心に回復傾向を持続している。一方、公共投資については、政府の経済対策の効果等から工事進捗をみたが、足許工事増加に一服感がみられつつある。

輸出面では、アジア経済の好転等を背景とする自動車部品やVTR等の増加から、横浜港の輸出額(通関ベース)は前年11月に22か月振りに増加に転じたほか、12月短観でみても、県内企業の今年度下期中の輸出額は5期振りに前年を上回るものと見込まれている。他方、横浜港の輸入額(同)についても、原油、非鉄金属等の原材料や事務用機器等の増加から、同様に17か月振りに前年を上回った。

県内企業の生産をみると、全体としては持ち直し傾向にある。すなわち、完成車メーカーでは、新型車発売に伴い生産水準を引き上げる先が一部でみられるほか、これを受けて部品メーカーでも、生産水準引き上げの動きがみられる。また、汎用電子部品、移動体通信、半導体関連では、パソコン・携帯電話の販売好調を主因に繁忙感の高い状態が継続しているほか、化学、鉄鋼等の素材業種でも、アジア経済の持ち直しを映じて生産水準が回復しつつある。さらに工作機械メーカーでも、パソコン・携帯電話関連を中心とする内外需の回復もあって、生産レベルは若干持ち直し始めている。

雇用面をみると、リストラの進展もあって製造業、非製造業とも一頃に比べ、過剰感は弱まってきているほか、新規求人倍率、有効求人倍率とも若干改善をみつつあるが、労働需給は依然緩和した状態が続いている。

金融面をみると、貸出面では、全般的に資金需要が低迷していることから、小幅ながら前年割れが続いている。一方、預金面では、全体の8割弱を占める個人預金の伸び率が堅調に推移していることを主因に、前年を上回っている。この間、企業倒産は、件数、金額とも減少傾向を続けている。

以上

東海地区金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の最近の経済動向をみると、個人消費は、総じてみればなお低迷の域を脱していない。設備投資は、減少している。公共投資は、高水準ながら頭打ちとなっている。一方、輸出は、引き続き増加している。この間、住宅投資は、比較的高いレベルで横這いとなっている。

こうした需要動向等を背景に、生産は、全体として持ち直している。また、雇用情勢の悪化テンポは鈍化しつつある。この間、物価は引き続き軟調に推移している。以上を総合すると、東海地区の景気は、底入れ圏内にあると判断される。

金融面をみると、企業の業績不芳に加え、預貸相殺等の財務リストラの動きが散見されることもあって、資金需要は引き続き低迷基調にある。また、金融安定化特別保証制度の導入に伴い98年10月以降信用保証協会保証付借入が増加したが、その効果も一巡している。こうした状況下、金融機関の貸出は、前年比マイナスで推移している。

個人消費・・・非耐久消費財支出をみると、衣料品や日用品を中心に消費者の低価格指向がみられる中、依然低迷しているが、百貨店売上げには下げ止まりの兆しが窺える。耐久消費財支出をみると、乗用車販売については、軽乗用車の新規格車投入効果が一巡しているほか、普通・小型車において、一部ニューモデルの堅調にも拘らず、既存モデル車の不振が続いていることから、全体としては弱含みとなっている。一方、家電量販店の売上げは、パソコン関連製品を中心に前年を上回って推移している。この間、サービス支出では、旅行、レジャー関連に底固さを窺わせる動きがみられている。

設備投資・・・製造業では、自動車関連等の大企業が、根強い生産設備の過剰感を背景に、投資額を一段と絞り込んでいるほか、中小企業でも、先行きの需要に対する不透明感等を背景に、抑制的な投資姿勢を続けている。この間、非製造業では、小売、通信で99年度設備投資計画を積み増す動きがみられている。

住宅投資・・・新規住宅着工については、99年度第1回住宅金融公庫融資申込み件数の伸び悩みを映じて持家着工が前年並みとなるなど、全体として頭打ちとなっている。住宅販売については、引き続き堅調に推移している。

公共投資・・・地方自治体における今年度予算が直近の補正後でもなお前年を大きく下回る中で、このところ公共工事の発注は前年割れで推移している。このため、建設業者の官庁関連の工事量はなお高水準ながら頭打ちとなっている。

輸出・・・主力の米国向けは、自動車・同部品や情報関連製品が増加している。また、アジア向けも増加している。一方、欧州向けについては、頭打ちとなっている。中東・中南米向けは、円高の影響もあり減少となっている。

生産・・・加工業種では、自動車の生産が、既存モデル車の国内販売不振にも拘わらず、新型車投入効果や輸出の増加から引き続き増勢基調にあるほか、ビデオカメラが、内外の需要堅調を反映し、生産水準を引き上げている。また、ICパッケージでも、輸出向けの持ち直しから生産水準をやや引き上げている。また、二輪車でも、北米向け輸出の堅調持続から高操業にある。一方、工作機械は、国内外からの受注低調を背景に、低操業を継続している。
素材業種では、窯業製品の一部で、住宅向けに比較的高めの操業を続けているほか、普通鋼・鋼板類でも、主力の自動車向けの持ち直しやアジア向け輸出の堅調に伴って、高操業を続けている。特殊鋼でも、自動車向けの持ち直しから減産を緩和している。また、紙・パルプでも出荷持ち直しから操業度を引き上げている。一方、条鋼類は、民間建設の低迷等を背景に、減産緩和を一服させているほか、繊維製品や洋食器でも、個人消費等の低迷や在庫調整のため、生産を抑制している。

雇用・・・常用労働者数の前年比マイナス幅は引き続き拡大傾向にあるものの、所定外労働時間が生産の持ち直し等を反映して前年を上回って推移しているほか、有効求人倍率も、依然極めて低水準ながら、若干改善がみられる。

物価・・・消費者物価は、引き続き前年水準を下回っている。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行京都支店

最近の管内景気は下げ止まりから、輸出や生産を中心に緩やかな持直しに転じている。こうした中で、企業の業況感は引続き改善している。もっとも、企業の設備投資・雇用スタンスは総じて引続き慎重なものに止まっている。

すなわち、最終需要面をみると、個人消費は、回復感に乏しい状況が続いているほか、設備投資もテンポは鈍化したものの依然として減少傾向にある。また、住宅投資は頭打ちとなっており、公共投資の増加も一服したものとみられる。一方、輸出は、欧米・東アジア向けともに現地景気の拡大等を受けて増勢を強めている。このような最終需要の動向や、在庫調整の進捗を反映して、生産は持直し傾向を辿っている。

また、企業収益は、年度上期に底入れしたとみられるが、引続き低水準にある。雇用・所得環境も一部に改善の動きも窺われるが、総じて依然厳しい状況が続いている。

最終需要の動きをやや詳しくみると、 個人消費については、百貨店売上げが、天候要因等もあって一進一退の域を脱していないほか、自動車販売(新車登録台数<除く軽自動車>)も、最近の新車投入効果は一部車種に限られたものに止まっており、全体では引続き低迷している。また、家電販売は、パソコン等では堅調を維持している一方、暖房器具・AV機器等は低調な販売地合いとなっている。この間、京都観光についてみると、年始・年末には相応の入込みがみられたが、観光客の低価格指向が根強く、低調地合いが続いている。

設備投資については、最近の情報技術(IT)革新を背景に、情報通信関連業種での新製品開発・増産対応投資がみられるほか、大型小売店で新規出店投資を増額する動きが散見されている。もっとも、こうした前向きな動きは依然として一部に止まっており、設備過剰感が根強い中、大方の先では引続き慎重な投資スタンスを維持している。

また、住宅投資については、新設住宅着工戸数が、分譲マンションでは堅調なものの、持家の増勢が鈍化しており、全体では頭打ちとなっている。

公共投資については、受注ベースで足許減少に転じているほか、工事ベースでも頭打ちとなっている。

一方、輸出については、欧米向けが、パソコン・移動体通信機器用の電子部品を中心に一段と増勢を強めているほか、アジア向けについても、NIEs向け半導体・情報通信関連製品を中心に増加しており、全体でも一段と増加している。この間、為替円高の影響については、輸出ウェイトの高い先を中心に収益下振れ要因となっている。

生産面をみると、在庫調整の進捗に加え、輸出が一段と増勢を強めていることから、このところ持直している。業種別にみると、電子部品は、欧米向け輸出の増加を背景に一段の増産をみているほか、半導体製造装置等でも、東アジアのアセンブリ拠点向け輸出の回復を受けて増産に転じている。一方、一般機械等も、内需は民間設備投資の低迷から依然として低調に推移しているものの、アジア向け輸出の回復に伴い、全体でも下げ止まりつつある。この間、地場産業の和装関連では、産地の在庫調整の進捗や、一部新商品の販売地合いに持直しがみられるものの、引続き大幅減産を余儀なくされている。

企業収益をみると、輸出・生産の持直しを背景に年度上期に底入れしたとみられる。また、先行きについては、リストラ策進捗に伴うコスト削減や輸出数量の増加等から増益を予想する先が少なくない。

こうした状況の下で、雇用・所得面をみると、足許の生産持直しを反映して、所定外労働時間が増加に転じつつあるなど、明るい動きも散見される。もっとも、企業の雇用過剰感が引続き高水準にある中、有効求人倍率は依然低水準で推移しており、雇用情勢は依然厳しい状況が続いている。企業倒産は、大型倒産の発生もあって、件数、金額とも総じて前年を上回って推移している。

金融面をみると、民間金融機関貸出については、特別保証制度を利用した貸出は引続き増加をみているものの、一般企業需資は依然として不振が続いていることから、全体としては低迷している。

預金については、法人預金は、企業のバランス・シート圧縮に伴う預金取崩し等から、このところ伸び率が低下している。一方、個人預金は流動性預金を中心に底固く推移している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行大阪支店

管内の景気は、雇用を中心に依然厳しい情勢にあるが、輸出の増加やこれに主導された生産の緩やかな増加が続いているほか、企業の収益・景況感も改善するなど、全体として持ち直している。

最終需要面の動きをみると、輸出は、米国向けが情報通信関連財・消費財を中心に堅調を持続しているほか、東南アジア向けも生産財・資本財を中心に増加していることから、全体として引き続き増加している。

設備投資は、多くの企業では引き続き抑制的な姿勢を続けているものの、情報通信関連などの一部企業で投資を積極化する動きがみられ始めており、全体として足許下げ止まりの気配が窺われる。

個人消費は、乗用車販売が弱含みとなっている一方で、パソコン、デジタルAV機器等の売れ行きは引き続き良好なほか、通信関連の支出も増加傾向にあり、総じてみれば一進一退の状況にある。

住宅投資は、分譲はマンションを中心に増加しているものの、持家、貸家が減少しており、全体として弱含み基調となっている。

公共投資は、緩やかに減少している。

生産は、在庫調整がかなり進捗している下で、輸出の増加やパソコンの販売好調等に支えられて引き続き緩やかな増加基調にある。

企業収益をみると、夏場以降の円高が、輸出企業等の収益に対して減少要因として作用しているものの、生産の増加に加え、コスト削減や事業再構築といった経営合理化・効率化の効果が現れることから、製造業を中心に今年度下期の大幅増益を見込む先が多い。

雇用・所得環境をみると、新規求人数の増加や失業率の低下、所定外給与の増加など足許幾分か改善の動きもみられるものの、常用雇用者数は引き続き前年を下回って推移しており、所定内給与も減少基調にあることから、全体としては依然厳しい状況にある。

物価は、横這いで推移している。

企業金融については、各種対策の効果などから、総じてみれば逼迫感が和らいでおり、企業倒産件数も横這い圏内で推移している。

金融面をみると、貸出については、設備資金等前向きの資金需要が低迷していることに加え、企業が借入金を圧縮する動きも続いていることなどから、低調な地合が続いている。金融機関の貸出態度は、総じてみれば依然慎重であるが、金融機関では資金繰り面や自己資本面からの制約が緩和されるなかで、中小企業向け貸出を積極化する動きを強めている。

預金については、個人預金、法人預金とも総じて堅調に推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行神戸支店

管内経済は、個人消費が一進一退を続けているほか、企業の設備投資も低調に推移しているため、依然として大底圏を脱するには至っていない。また、雇用環境も悪化傾向には一応の歯止めがかかりつつあるものの厳しい状態が続いている。こうした中、国内の在庫調整の進捗やアジア向け輸出の増加により生産水準を引上げたり、リストラ効果から企業収益面に底入れの気配が窺われる等の明るい動きも見受けられる。

個人消費をみると、百貨店、スーパーの売上高は、天候要因や特別セールの実施、2000年問題関連需要の高まりなどを反映して振れを伴いつつも、総じてみれば盛り上がりを欠く状態が続いている。一方、乗用車販売は、一部で新型車投入効果がみられるものの、既存車種の販売不振や軽乗用車の新規格車の市場投入一巡等により、全体としては不冴えな状況に変化が窺われない。この間、家電販売は、白物家電やテレビ等が一進一退で推移する中で、情報通信関連や各種デジタル製品は高い伸びを続けている。

企業の設備投資は、一部に小幅上方修正する動きがみられるものの、過剰設備の下で先行きの需要動向が不透明とする先が多く、全体としてはなお低調に推移している。

住宅投資は、貸家での落ち込みが続いているものの、分譲マンションでは住宅ローン減税の適用を睨んだ駆込み着工がみられている。

一方、公共投資では、国、公団・事業団の落ち込みや、地公体の財政事情の悪化等から公共工事請負額は減少傾向にある。

生産動向をみると、建設機械やコンベアでは国内民間設備投資の抑制や北米向け輸出の減少から低操業となっている。一方、水晶振動子は移動体通信向けの好調を受けて高操業を続けているほか、鉄鋼や一般機械の一部(射出成形機等)では在庫調整の進捗やアジア向け輸出の増加により生産水準を引上げている。

この間、地場産業では、輸入品との競争や春物受注の不振等を背景に、低水準の生産が続いている。

雇用面では、雇用対策関連やサービス業、卸売業等での求人増がみられているなど、有効求人倍率の悪化傾向にはひとまず歯止めがかかりつつある。もっとも、企業の人件費抑制姿勢が続く中、2000年度の新卒採用予定者数が低水準の前年をさらに大幅に下回るなど、雇用環境は依然厳しい状況にある。

なお、消費者物価は、昨年急騰した生鮮食品の落着きにより全体では前年を下回って推移している。

金融面をみると、貸出は、金融機関の貸出姿勢積極化にもかかわらず、設備資金等の前向きな資金需要が依然乏しいうえ、財務リストラのための借入金返済の動きも続いていることから依然前年を下回っている。

貸出約定平均金利(総合ストックベース)は、9月、10月の相次ぐ長プラ引下げの影響から、長期を中心に低水準圏内で小幅ながら低下している。

一方、預金をみると、法人預金は財務リストラのための借入金返済や、前年の特別保証制度貸出実行分の歩留まり分の剥落等により小幅前年割れとなったが、個人預金が引続き堅調に推移しているため、全体では前年を上回っている。

企業倒産は、中小の建設業を中心に受注減少等を背景に年末にかけて件数がやや増加した。

以上

中国地区金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行広島支店

中国地区の経済情勢をみると、個人消費は回復感に乏しい状況が続いているほか、住宅投資は頭打ちとなっている。設備投資は減少基調が続いているものの減少テンポは緩やかになってきている。また、公共投資は工事が高水準で進捗しているとみられる。こうした最終需要のもと、生産は持ち直しに転じていることに加え企業マインドも改善が続いており、景気は徐々に持ち直しつつある。

最終需要の動向をみると、個人消費は、一部に明るい動きがみられるものの全体としては回復感に乏しい状況が続いている。パソコン販売は好調を持続しており、軽乗用車販売も高目のレベルを維持している。一方、百貨店売上高は基調としては低調に推移しているほか、スーパー売上高も前年割れが続いている。

設備投資を12月短観(中国地区)からみると、11年度計画は前年度比−6.8%と引き続き減少計画となっているが、減少テンポは緩やかになってきている。

住宅投資について新設住宅着工戸数をみると、分譲は増加しているものの持家、貸家が減少しているため全体では頭打ちとなっている。

公共投資については、公共工事請負額は前年水準を下回って推移しているものの、既往の発注案件の消化により工事は高水準で進捗しているとみられる。

輸出(通関輸出金額を輸出物価指数でデフレートした実質ベース)については、欧米向けが減少しているもののアジア向けが増加していることから、全体では前年比マイナス幅を縮少している。

こうした最終需要のもと、生産は持ち直しに転じている。主要企業の生産動向をみると、造船が高操業を持続しているほか、電気機械も電子部品(半導体等)、情報家電(MD、FAX、携帯電話)を中心に高操業を続けており、化学も海外需要の増加等からやや高目の生産となっている。また、鉄鋼は増加傾向が続いているほか、木材・木製品でも生産水準を引き上げている。自動車はほぼ横這いで推移している。もっとも、一般機械、縫製は依然として低調な生産が続いている。

雇用面をみると、有効求人倍率がやや改善したものの依然として水準は低いほか、常用雇用者数が前年を下回って推移しているなど、雇用環境は全体として厳しい状況が続いている。

この間、企業収益を12月短観(中国地区)からみると、11年度計画は前年度比−1.3%の減益計画となっている。

企業マインドを12月短観(中国地区)からみると、足許の業況判断は改善した。なお、先行きは横這いの予測となっている(業況判断D.I.<「良い」−「悪い」>11年9月△32%→12月△27%→12年3月予測△27%)。

金融面をみると、貸出は引き続き低迷している。企業向けは、設備資金需要が低調なことに加え、前年の裏要因(前年は「中小企業金融安定化特別保証制度」を利用した貸出が増加)もあって、前年割れが続いている。個人向けは、住宅ローンを中心に増勢が鈍化している。

預金は伸びが鈍化している。個人預金は堅調ながら、法人預金は流動性の減少等から低調な地合いとなっている。

以上

四国地区金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区では、住宅投資が底堅く推移しているほか、アジア向け輸出も増加傾向にあり、こうしたことを背景に生産活動は持ち直しに転じている。その一方、企業の投資スタンスは引続き慎重なものに止まっており、個人消費も一進一退の状況にあるなど、依然として自律的回復へのはっきりした動きがみられるには至っていない。この間、公共投資は一部では頭打ちとなっている。

この結果、四国地区の景気は最悪期を脱して下げ止まった後は、持ち直しに転じつつある地域がみられる一方、横這い圏内で推移している地域もあるなど、やや区々な動きとなっている。

需要動向

最終需要の動向をみると、公共投資は、高速道路網整備といった大型継続案件などから、総じてみると底堅く推移しているが、従来の反動もあって新規発注が減少し頭打ち感が窺われる地域も一部にみられる。住宅投資は住宅減税効果等を背景として、新設住宅着工が堅調を持続している。また、輸出は欧米向けが引続き堅調なうえ、アジア向けについても回復が続いており、全体として増加傾向にある。

一方、個人消費は、パソコン等情報関連機器が引続き好調に推移しているものの、雇用・所得環境に改善がみられない中で、暖冬の影響もあって冬物衣料や暖房機器などの季節商品販売が低調なほか、大型家電等の耐久消費財も盛り上がりを欠くなど、一進一退の回復感に乏しい状態が続いている。

この間、設備投資は、合理化・省力化投資や能力増強投資が一部にみられるものの、設備過剰感や先行きに対する不透明感から、多くの企業では慎重な投資スタンスを崩していない。

生産

企業の生産活動をみると、全体としてみれば、下げ止まりから持ち直しに転じている。すなわち、電気機械(情報機器向けメモリー、マイコン、液晶表示装置等)、紙パの一部(特殊工業紙、チラシ用紙、段ボール原紙)、化学(合成樹脂、無機化学等)等では情報関連分野における需要の拡大やアジア向け輸出の増加等から高操業の継続ないし生産水準の引上げを図る動きがみられる。また、公共・住宅投資の底堅い動きを反映して鉄骨加工(橋梁関係)、金属製品(アルミサッシ)、木材・木製品(収納製品)、窯業・土石(住宅エクステリア製品)等でも、まずまずの生産水準を維持している。もっとも、鉄鋼や一般機械(建設用機械、産業運搬機械等)では需要低迷を背景に多くの先で生産調整を継続しているほか、繊維(タオル、縫製品)でもギフト需要の長期低迷等から低操業を余儀なくされている先がみられる。

雇用

雇用情勢をみると、製造業を中心に調整圧力が根強く、有効求人倍率も低水準で推移するなど依然厳しい状況が続いているものの、一部では人員調整一巡などにより改善の動きもみられ始めている。

金融

金融面をみると、預金は、個人預金の流動性を中心にまずまずの伸びを持続している。貸出は企業向け設備・運転資金ともに資金需要が低迷しており、低調な地合いが続いている。

以上

九州地区金融経済概況

2000年 1月31日
日本銀行福岡支店

九州経済は、全般に下げ止まりから持ち直しの方向にあり、企業の業況感も改善が続いている。

すなわち、住宅投資が頭打ちとなっているほか、公共投資の増勢も一服しており、また、個人消費も回復感に乏しい展開が続いているが、在庫調整の進捗やアジア向け輸出の回復等から生産が増加しているほか、低迷が続く設備投資でも一部半導体関連や通信等において投資上積みの動きが広がっている。また、雇用面でも一部指標で横這いないし改善の動きがみられる。

最終需要の動向をみると、公共投資は、今年度入り後の発注水準が低調であったことを背景にセメント、合板等公共関連財の官公庁向け出荷が頭打ちとなっており、増勢が一服している。

住宅投資は、住宅ローン控除適用期限を睨み、マンション着工は増加しているが、全般には持家着工を中心に頭打ち傾向にある。

個人消費は、情報関連機器、一部小型乗用車の販売好調や歳暮商戦、初売り商戦の盛り上がりなど一部に明るい動きもみられるが、雇用・所得環境に目立った改善がみられない中で、全体としては回復感に乏しい展開が続いている。

企業の設備投資は、根強い設備過剰感等を背景に抑制スタンスの先が多いが、一部半導体関連や通信等では投資上積みの動きが広がっている。

この間、輸出は、欧州向けは自動車を中心に引き続き減少しているが、ウエイトの高いアジア向けが電気機械を中心に増加しているなど、全体としては持ち直しの方向にある。

企業の生産動向をみると、内需の低迷等を背景に一部素材業種等で低操業を継続しているが、在庫調整が進捗している中でアジア向け輸出の回復等から、IC、電子部品、鉄鋼、化学、合板等で高操業を継続するなど、全体としては引き続き増加している。

雇用面をみると、全体としては依然厳しい状況が続いているが、生産の増加等に伴い一部指標で横這いないし改善の動きがみられる。

企業倒産をみると、倒産件数は一昨年10月から取扱いが始まった中小企業金融安定化特別保証制度の効果が一巡したこと等から、このところ増加に転じている。

金融面の動きをみると、銀行預金は、個人預金が比較的高い伸びで推移する中で、法人預金の伸びが鈍化していることから、全体でも伸びが低下している。銀行貸出は、設備資金等の資金需要が低迷している中、特別保証制度による貸出実行が本格化した前年の裏が出ていることもあって、減少幅が拡大している。

以上