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全国11支店金融経済概況 (2000年 4月)

2000年 4月24日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気は、民間需要が依然として盛り上がりに欠けるなかで、各種政策支援の一服等から、全体として持直しの動きに幾分足踏み感が窺われており、企業の景況感もやや慎重化している。最終需要面では、住宅投資はなお底固く推移しているが、公共投資は工事進捗ベースでは頭打ちの状態が続いている。また、個人消費は一進一退の動きながら、総じてみれば回復感に乏しく、設備投資も一部に下げ止まり気配が窺われるものの、引続き減少傾向にある。こうしたなかで、IT関連向け需要や輸出の増加等を背景に企業の生産は緩やかながら引続き増加しており、収益もリストラ効果等から改善傾向にあるが、雇用情勢は依然として厳しい状況が続いている。

この間、当店では、3月30日、有珠山噴火による災害発生等に備え、関係金融機関に対し、北海道財務局との連名文書により、状況に応じて適切な対応を行うよう要請した。これを受けて、関係各金融機関では、災害関連の融資や預金の払出し等に関する特別措置を講じている。

最終需要面の動きをみると、公共投資は、経済新生対策に基づく補正予算分の発注等が増加しているが、工事進捗ベースでは頭打ちの状態が続いている。

住宅投資は、持家を中心に成約状況にはやや頭打ち感が窺われるが、分譲マンション等の着工は底固い動きが続いている。

個人消費は、大型小売店等の売上げが天候要因等による振れを伴いながらも前年割れを続けており、耐久消費財についてもパソコンや一部新型車以外は伸び悩んでいるなど、全体としては低調に推移している。この間、観光面では、国内の個人客や台湾、韓国からの団体客を中心に堅調な入込みが続いていたが、有珠山噴火(3月31日)に伴い、周辺地域のツアー等への影響を懸念する声が聞かれている。

設備投資は、情報通信関連の能力増強投資や大型小売店の出店など、一部に下げ止まり気配が窺われるものの、全体としては依然として減少傾向が続いている。

企業の生産は、全体としては緩やかながら引続き上向き基調にある。電子部品や自動車部品では国内・外の需要好調を背景にフル操業を継続している。また、建設関連資材でも土木工事向けを中心になお高めの操業度を続けているほか、紙・パでも広告需要の持直し等から生産水準を引上げている。他方、鋳鍛鋼製品、木材・木製品等では民間設備投資の低迷等から低操業を続けている。

企業収益については、売上げは総じて伸び悩んでいるものの、コスト削減効果等を背景に引続き改善傾向にある。

雇用情勢については、有効求人倍率が低水準横這い圏内で推移しているなど、依然として厳しい状況が続いている。

企業金融については、金融機関の融資姿勢が次第に前向きに転じていること等を背景に、総じて緩和基調にあるほか、企業倒産についても、振れを伴いつつも概ね低水準で推移している。

金融面をみると、預金は、個人預金が堅調に推移しているものの、法人預金では建設業等での財務リストラによる預貸相殺の動きがみられることなどから、全体では伸び率が鈍化している。一方、貸出は、住宅ローンがなお高い伸びを維持しているが、企業の資金需要低迷等を背景に、全体では低調に推移している。

以上

東北地区金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行仙台支店

東北地区における景気の回復ペースは、緩やかなものとなっており、昨年来、改善を続けてきた企業マインドは、ここへきてやや足踏みしている。

すなわち、鉱工業生産は、情報通信関連を中心に引き続き増加している。しかしながら、当地区に影響の大きい公共投資や住宅投資に先行き頭打ち感が強まっているほか、個人消費も一部耐久消費財を除き総じて回復感に乏しい状態が続いている。また、雇用面でも、有効求人倍率は緩やかながら改善している一方、常用雇用者数は前年を下回って推移しており、依然として厳しい状況にある。この間、企業倒産は、件数・金額とも高水準で推移している。

最終需要をやや詳しくみると、個人消費のうち、家電販売は、パソコン等情報通信機器やデジタル製品(MDプレーヤー・DVD)が引き続き好調なほか、白物家電にも動意が窺われる。また、乗用車販売も、新車投入効果等から前年を上回って推移している。一方、百貨店売上高は、身回品・雑貨が高級ブランド品の好調から前年を上回って推移しているものの、主力衣料品は春物商品の不振から、食料品も生鮮品を中心に、それぞれ前年を下回って推移しているなど、個人消費全体としては、総じて低調な地合が続いている。

公共投資は、請負・工事着工金額とも前年を下回っている。また、12年度の予算編成に当たり、財政難から抑制的なスタンスをとっている地方公共団体が多いこともあって、先行きさらに工事量の頭打ち感が強まっている。

住宅投資は、持家の着工集中から昨年12月、本年1月と一時的に増加したものの、その後は11年度第3回住宅金融公庫融資申込受理戸数の低調等を背景に再び減少している。

12年度の設備投資計画をみると、非製造業での大型投資一巡から、全産業では前年度を下回っている。ただし、製造業については、能力増強投資等を中心に、年度初からほぼ前年並みの投資規模が見込まれている。

主要製造業の生産動向をみると、電気機械は、パソコン等情報通信関連やデジタル製品の受注好調を背景に、半導体や完成品で生産水準をさらに引き上げ、ないしはフル操業を継続しているほか、関連部品(液晶、コネクタ、コンデンサ等)も高操業を続けている。

輸送用機械では、全体としては既存車種の販売不振から低水準の生産を継続しているが、他地域からの生産シフトや一部車種のモデルチェンジ等を背景に、生産水準を引き上げる動きもみられる。

その他消費関連業種では、時計、衣料品は大幅な減産を継続しているが、カメラはデジタル製品の受注好調から生産水準を引き上げている。また、紙・パでは、新聞・印刷用紙が広告需要の拡大から生産水準を引き上げているほか、段ボール原紙も堅調な生産を続けている。

設備関連業種(鋳物、切削工具、工作機械、工場ラインシステム、半導体製造装置)では、国内自動車・家電メーカー向けが当該業種の設備投資抑制から減産を継続しているものの、半導体製造装置等では半導体メーカーの設備増強等を背景に高操業を持続している。

建設関連業種(窯業・土石、鉄鋼二次製品)では、公共投資減少の影響がみられ始めているものの、一部地域における特定大型プロジェクトの進捗から、今のところ全体としては堅調な生産を継続している。

12年度の売上・収益計画をみると、建設では減収・減益となるものの、IT・エレクトロニクス関連の好調持続期待等もあって、全体としては増収・増益となっており、一応、回復基調を維持している。

雇用面をみると、有効求人倍率は、生産好調な電気機械や新規出店を行っている小売、サービスなどの求人増加から、緩やかながら改善している。しかしながら、常用雇用者数は、製造業が海外生産シフトやリストラの実施から前年を下回って推移しているほか、建設業も減少に転じるなど、依然として厳しい状況が続いている。

企業倒産をみると、建設、卸・小売関連の中小・零細企業を中心に、件数・金額とも高水準で推移している。

金融面をみると、預金は、個人の伸び悩みや法人の落込みを主因に増勢が鈍化してきている。また、貸出は、法人向けが不振なほか、個人・地公体向けも伸びが鈍化しており、前年割れ幅がここへきて拡大している。

以上

北陸地区金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行金沢支店

北陸地区の景気は、輸出や生産の増加を背景に持ち直し傾向を辿っている。また、円高の企業収益面に及ぼす悪影響等の懸念材料はあるものの、企業マインドは収益好転などを背景に総じて改善してきており、そうした中で、設備投資が下げ止まりから増加に転じつつあるなど、民間需要の回復に向けた動きもみられ始めている。

最終需要面の動きをみると、住宅投資は、新設住宅着工が住宅金融公庫借入申込み件数減少の影響もあって、先行き頭打ち感が窺われる。また、これまで高水準で推移してきた公共投資も緩やかな減少傾向を辿っている。

個人消費は、スーパーの売上げや観光入り込み客数の低迷等もあって全体としては未だ回復感に乏しい状態にあるが、家電、乗用車の販売が若年層向けを主体に堅調に推移しているほか、百貨店売上げも婦人向けの衣料品や身回り品などの販売が持ち直すなど、底堅い動きが広がってきている。

輸出は、海外景気の回復等を背景に、情報機器関連部材の電子部品等が欧州、東アジア向けを中心に増勢を持続しているほか、軸受や塩ビ樹脂等でも東アジア向けが持ち直しており、また、合繊織物が東アジア向けを中心に前年を上回るなど、全体として増加傾向を続けている。

設備投資は、製造業を中心に下げ止まりから増加に転じつつある。すなわち、企業の設備過剰感はなお根強いものの、生産増加や企業収益の改善が続く中で、需要好調な電子部品等の分野で積極的な能力増強投資が続いているほか、繊維、金属等他の業種においても競争力向上に向けた投資に踏み切る動きがみられ始めている(12年3月企業短期経済観測調査<北陸3県>、12年度計画前年度比、全産業+5.2%、うち製造業+7.5%)。

こうした最終需要動向を映じて、生産は、窯業・土石、アルミ建材等の公共・住宅投資関連で増勢が一服してきているが、電子部品の増勢持続や合繊織物の増加等を背景に、全体としては増加傾向が続いている。

この間、雇用面をみると、有効求人倍率(含むパート)は、パートを中心とした新規求人数の増加から緩やかに改善している。また、雇用者所得は、所定外給与が生産増を映じた所定外労働時間の増加から着実に持ち直しているほか、所定内給与も下げ止まりつつある。

金融面をみると、預金は、個人預金では、定期性預金の伸びが鈍化しているが、流動性預金が引き続き高い伸びを続けていることから、全般に底堅く推移している。一方、法人預金は、信用保証協会の保証付貸出に伴う資金滞留の一巡もあって、低調な動きとなっている。

貸出は、個人向けが、住宅ローン堅調の一方、消費者ローンの低迷持続を背景に引き続き低調裡に推移している。また、法人向けも、設備資金需要が依然低迷していることに加え信用保証制度拡充効果の一巡等もあって、全般に低調な推移となっている。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏の中で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済をみると、民間需要の自律的な回復メカニズムが作用し始めてきたものの、その機能はなお十分とは言い難い状況にある。最終需要面をみると、公共投資には力強さが感じられないものの、個人消費は全般的には停滞基調を脱していないとはいえ、動意の窺われる商品が増加しつつあるほか、住宅投資も高水準を持続、輸出もアジア向けを中心に増加している。また、設備投資も下げ止まりから回復の兆しが窺われる。このため、企業収益の回復に加え、企業の景況感も改善が続いているほか、県内企業の生産も持ち直し傾向が続いている。この間、労働需給面は、改善傾向を持続しているものの、依然緩和した状態に変わりはない。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、百貨店売上高はセールの実施による婦人衣料や雑貨等の販売好調から足許増加に転じているものの、低調の域を脱していない。一方、家電販売はパソコン販売の好調持続に加え、白物家電にも動意がみられることから、前年を上回る状況にあるほか、乗用車販売も、モデルチェンジ車種や新規投入車種の販売好調から前年並みの水準にまで回復している。

設備投資を3月に実施した「企業短期経済観測調査(神奈川県分)」(以下「3月短観」という)でみると、県内企業の99年度の設備投資計画は、製造業では3年連続の減少(前年比△21.2%)、非製造業でも2年連続の減少(同△18.9%)が見込まれている。2000年度については、非製造業で引き続き前年を下回る抑制的な計画(同△6.5%)となっているものの、製造業で4年振りに前年を上回る計画(同+10.0%)となっており、全産業でも3年振りに前年を上回る計画(同+8.3%)となっている。

住宅投資は、住宅減税拡充策の効果等から分譲マンションを中心に高水準を持続している。一方、公共投資については、政府の経済対策の効果等から工事進捗をみたが、公共工事請負額は前年割れで推移しており、力強さが感じられない。

輸出面では、アジア経済の好転等を背景とする自動車部品や事務用機器等の増加から、横浜港の輸出額(通関ベース)は前年11月に22か月振りに増加に転じ、足許2月も前年を上回っている。また、3月短観でみても県内企業の99年度下期中の輸出額は、ほぼ前年同期のレベルまで回復した模様であり、今年度上期には6期振りに前年同期を上回る見込みにある。他方、横浜港の輸入額(同)についても、原油、非鉄金属等の原材料価格上昇等を反映して、前年11月に17か月振りに増加に転じて以降、4か月連続で前年を上回っている。

県内企業の生産をみると、全体としては持ち直し傾向を持続している。すなわち、完成車メーカーでは、新型車の販売好調に伴い生産水準を引き上げる先が一部でみられるほか、これを受けて自動車部品メーカーの一部でも、生産水準引き上げの動きがみられる。また、汎用電子部品、移動体通信、半導体関連では、パソコン・携帯電話の販売好調を主因に繁忙感が継続している。工作機械でも、情報通信機器関連を中心とする内外需の回復から、全体として生産水準は回復傾向を辿っている。化学、鉄鋼などの素材業種でも、韓国、タイなどアジア地域経済の持ち直しを映じて生産水準が回復している。

雇用面をみると、リストラの進展もあって企業の雇用過剰感は一頃に比べ弱まってきているほか、新規求人倍率、有効求人倍率とも昨夏来の改善傾向を持続している。もっとも、労働需給は依然緩和した状態に変わりはない。

金融面をみると、貸出面では、全般的に資金需要が低迷していることから、前年割れが続いている。一方、預金面では、全体の8割弱を占める個人預金の伸び率が堅調に推移していることを主因に、前年を上回っている。この間、企業倒産は、一頃に比べれば件数、金額とも落ち着いた状況にある。

以上

東海地区金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の最近の経済動向をみると、個人消費は依然低調ながら減勢は鈍化している。設備投資の減少テンポも鈍化している。また、公共投資が再び強含みつつあるほか、輸出もなお増勢を持続している。一方、住宅投資は頭打ちとなっている。

こうした需要動向等を背景に、生産は全体として増加している。また、雇用情勢の悪化テンポには歯止めが掛かりつつある。この間、物価は引き続き軟調に推移している。以上を総合すると、東海地区の景気は、持ち直し始めていると判断される。

金融面をみると、企業が、在庫・設備の両面において、なお慎重な投資姿勢を維持していることに加え、預貸相殺等の財務リストラの動きが散見されることもあって、資金需要は引き続き低迷基調にある。こうした状況下、金融機関の貸出は、前年比マイナスで推移している。

個人消費・・・非耐久消費財支出については、百貨店売上げで宝飾品、美術品やミセス向け衣料が持ち直しているものの、全般的には衣料品や日用品を中心に消費者の低価格指向がみられており、総じてみれば弱含みとなっている。耐久消費財支出をみると、乗用車販売については、普通・小型車において、既存モデル車の不振が続いているが、一部ニューモデルが好調であり、このところ下げ止まっている。また、家電量販店の売上げは、パソコン関連製品を中心に前年を上回って推移している。この間、サービス支出でも、旅行、外食関連で底固さを窺わせる動きがみられている。

設備投資・・・製造業については、自動車関連等の大企業では、なお生産設備の過剰感が根強いため、能力増強に直結した投資は引き続き絞り込んでいるものの、競争力の維持・向上を企図した案件に関しては、抑制スタンスを緩和しつつある。また、中堅・中小企業では、生産の持ち直しや固定費削減等による収益の改善を眺め、設備投資に踏み切る動きがみられ始めている。この間、非製造業では、通信の設備投資が一服しつつある一方で、電力で大型電源設備投資が本格化しているほか、小売でも大店立地法への移行を控えた新規出店が続いている。

住宅投資・・・新規住宅着工をみると、マンション販売の堅調持続から分譲住宅は底固く推移しているものの、ウエイトの大きい持家については住宅金融公庫金利の低位抑制などの政策効果が一巡しつつあるため、全体として頭打ち傾向にある。

公共投資・・・昨年11月に打ち出された経済新生対策に伴う公共事業追加分の執行本格化により、ここへきて公共工事の発注は増加している。このため、建設業者の官庁関連の工事量は、再び増勢に転じつつあるとみられる。

輸出・・・欧州向けや中東向け、大洋州向けなどでは、為替円高の影響もあって弱含みとなっている。一方、アジア向けは、幅広い品目で一段と増加している。また、主力の米国向けは、自動車・同部品や情報関連財を中心に高水準で推移している。

生産・・・加工業種では、自動車の生産が、既存モデル車の国内販売不振にも拘わらず、新型車投入効果や輸出の好調から引き続き増勢基調にあるほか、ビデオカメラが、内外の需要堅調を反映し、生産水準を引き上げている。また、ICパッケージでも、輸出数量増から増産しているほか、工作機械も、国内受注の持ち直しを背景に、これまでの減産姿勢を緩和しつつある。また、二輪車でも、欧米向けの堅調持続やアジア向けの持ち直しから高操業を続けている。
素材業種では、普通鋼・鋼板類が、主力の自動車向けの持ち直しやアジア向け輸出の堅調に伴って、高操業を続けているほか、特殊鋼でも、自動車向けの持ち直しから減産を緩和している。また、棒鋼が、大型商業施設やマンション向けを中心に、減産を緩和しているほか、紙・パルプでも、出荷の緩やかな増加から操業度を引き上げている。一方、住宅向け窯業製品の一部(瓦、衛生陶器)の生産が頭打ちとなっているほか、繊維製品は、末端需要の低迷や安値輸入品の流入増から減産を強化している。

雇用・・・所定外労働時間が生産の増加を反映し前年を上回って推移しているほか、有効求人倍率も依然低水準ながら緩やかな改善を続けている。さらに、常用労働者数も引き続き前年を大きく下回ってはいるものの、足許ではマイナス幅が若干縮小している。

物価・・・消費者物価は、引き続き前年水準を下回っている。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行京都支店

最近の管内景気は、企業部門における持直しの動きが徐々に明確化しており、企業の収益や業況感も改善傾向を続けている。また、ここへきて設備投資も下げ止まっている。もっとも、家計部門を取巻く環境は総じて引続き厳しい状況にある。

最終需要面をみると、個人消費は、総じて回復感に乏しい状況にあるほか、住宅投資および公共投資も、基調としては頭打ちないし減少傾向にある。一方、輸出は、欧米・東アジア向けともに現地景気の拡大等を背景に増勢を強めている。設備投資は、引続き抑制スタンスを維持する向きが多いものの、一部に増加に転じる先もみられるなど、足許では下げ止まっている。このような最終需要の動向や在庫調整の進捗を反映して、生産は増加傾向を辿っている。

この間、企業収益は、企業のリストラを主因に持直し傾向が明確化している。一方、雇用・所得環境は一部に改善の動きも窺われるが、企業の人件費抑制スタンスの継続から総じてみると依然厳しい状況が続いている。

最終需要の動きをやや詳しくみると、 個人消費については、まず百貨店売上げは、一部では新規店舗のオープンに伴い盛り上がりがみられているものの、総じてみると一進一退の域を脱していない。自動車販売(新車登録台数<除く軽自動車>)も、新車投入効果のみられる小型車は堅調ながら、その他の車種は伸び悩んでおり総じて低迷が続いている。また、家電販売は、パソコンが好調に推移している一方、AV機器、白物家電等は低調な販売地合いとなっている。この間、京都観光についてみると、低温に伴う桜の開花期間の長期化もあって、入込み状況・ホテル等の稼働率は持直している。もっとも、観光客の低価格指向は依然根強く、関連業界の業況持直しには至っていない。

また、住宅投資については、住宅金融公庫の既往申込分の着工が一時的に集中したことから、持家中心に若干増加しているが、基調的には頭打ち傾向にあるとみられる。

公共投資については、補正予算の執行もあって若干持直しているものの、基調としては減少傾向を辿っている。

一方、輸出については、欧米向けが、パソコン・移動体通信機器用電子部品を中心に増勢を強めているほか、東アジア向けについても、NIEs向けの半導体・情報通信関連製品が好調に推移していることに加え、ASEAN向けの一般機械等も現地需要の回復を背景に増加しつつあり、全体でも一段と増加している。

設備投資については、根強い設備過剰感を背景に抑制スタンスを維持する向きが多いものの、IT(情報技術)関連業種における新製品開発・増産対応投資に拡がりがみられるほか、大型小売店での新規出店投資にかかる増額計画が散見されるなど、一部に前向きな投資スタンスで臨む先がみられていることもあって、このところ下げ止まっている。

生産面をみると、在庫調整が進捗する中で、輸出がIT関連中心に増勢を強めていることから、引続き増加傾向を辿っている。業種別にみると、電子部品や半導体製造装置では、欧米向けや、東アジアのアセンブリ拠点向けの輸出増加を受けて増産基調にある。また、これまで減少基調にあった一般機械、金属製品等でも、東アジア向け輸出の回復に加え、内需の一部にも持直し気配が窺われていることから、下げ止まりつつある。この間、地場産業の和装関連では、一部の企画商品等では底固い販売地合いがみられるものの、最終需要の不振を背景に引続き大幅減産を余儀なくされている。

企業収益をみると、11年度の経常利益は企業のリストラ本格化を主因に4年振りに増益に転じる見込みにある。また、12年度についても、売上げ増加やリストラの継続から引続き増益を見込む先が多くなっている。

こうした状況の下、雇用・所得面をみると、生産の増加傾向を反映して、製造業を中心に所定外労働時間が持直しつつあるほか、有効求人倍率も低水準ながら幾分改善している。もっとも、総じてみると、企業のリストラ継続等を背景に依然として厳しい状況が続いている。企業倒産は、件数が引続き前年を上回っている一方、負債金額は前年の大型倒産の反動から前年を下回っている。

金融面をみると、民間金融機関貸出については、特別保証制度を利用した貸出は増加しているものの、その増勢テンポは鈍化しているほか、一般企業需資も依然として不振が続いていることから、全体としては低迷を続けている。

預金については、法人預金は、企業のバランス・シート圧縮に伴う預金取崩し等から、伸び悩んでいる一方、個人預金は流動性預金を中心に底固さを維持している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行大阪支店

雇用・所得環境は依然厳しい情勢にあるが、輸出の増加やこれに主導された生産の緩やかな増加が続いているほか、民間需要面でも設備投資が持ち直してきているなど、管内の景気は、全体として持ち直しの動きが明確化している。

最終需要面の動きをみると、輸出は、米国向けが情報通信関連財・消費財を中心に堅調を持続しているほか、東南アジア向けも生産財・資本財を中心に増加していることから、全体として引き続き増加している。

設備投資は、依然抑制的な姿勢を続けている先が多いものの、情報通信関連分野の能力増強投資が増加しているほか、収益の改善を背景に、製造業を中心として合理化投資や維持・更新投資が徐々に拡がってきており、全体として持ち直している。

個人消費は、スーパーの売上が低調であり、百貨店販売も依然回復感に乏しい状況にある一方、パソコン等情報通信関連の支出は堅調に推移しているほか、足許の自動車販売も増加しており、総じてみれば一進一退の状況にある。

住宅投資は、全体として弱含み基調となっている。

公共投資は、これまでのところ緩やかに減少しているものの、発注ベースでは経済新生対策の実施等に伴い増加の動きがみられている。

生産は、在庫調整が概ね完了したとみられる下で、輸出の増加や情報通信関連財・資本財需要の強まり等に支えられて引き続き緩やかな増加基調にある。

企業収益は、生産の増加や、コスト削減・事業再構築といった経営合理化・効率化の効果から改善しており、3月短観(近畿地区)でも、12年度の経常利益は製造業、非製造業ともに、11年度に続き2年連続の増益が見込まれている。

雇用・所得環境をみると、有効求人倍率の上昇や所定外給与の増加など、悪化傾向には歯止めが掛かりつつあるものの、失業率はなお高水準で推移しており、全体としては依然厳しい状況にある。

物価は、横這いで推移している。

企業倒産件数は、このところ徐々に増加している。

企業金融についてみると、収益が改善している下で、金融機関の貸出態度の積極化もあって、総じてみれば逼迫感が和らいでいる。

金融面をみると、貸出については、設備資金等前向きの資金需要が低迷していることに加え、企業が借入金を圧縮する動きも続いていることなどから、低調な地合が続いている。金融機関の貸出態度は、総じてみれば依然慎重であるが、金融機関では資金繰り面や自己資本面からの制約が緩和されるなかで、中小企業向け貸出を積極化する動きを強めている。

預金については、個人預金、法人預金とも総じて堅調に推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行神戸支店

管内経済は、業種や個別企業による格差を伴いながらも、全体として底固さを増している。需要面では、個人消費がなお一進一退を脱しておらず、住宅投資、公共投資も先細り傾向にあるが、輸出が増勢を持続しているほか、設備投資も下げ止まりつつある。生産面では、情報関連向け(携帯電話、液晶)や鉄鋼等に支えられて持ち直し傾向が続いている。また、企業収益面でも、生産の持ち直しや売上げの減少に歯止めがかかる中で、リストラ効果が顕現化してきており、利益水準も回復しつつある。これらを背景に、企業の景況感は改善方向にある。

個人消費をみると、百貨店の売上高が、セールの実施や堅調な婦人服・身の回り品に支えられて改善傾向にあるものの、スーパーでは、依然前年割れが続いている。一方、乗用車販売は、新型車投入効果等により前年を上回って推移している。この間、家電販売では、白物家電の売行きにはばらつきが目立つが、情報通信関連や各種デジタル製品は引き続き高い伸びを示している。

企業の設備投資は、減価償却の範囲内に抑制するなど依然として慎重なスタンスを示している先が大勢となっているが、一部には生産・流通拠点の新設や新規出店に踏み切る先も出始めており、全体としては下げ止まりつつある。

住宅投資は、持家が増加しているものの、全体としては弱含み傾向にある。

一方、公共投資では、地公体の財政事情の悪化や前年の大型工事の反動減もあって、公共工事請負額は依然として減少傾向にある。

生産動向をみると、アジア向け輸出に支えられて鉄鋼の生産水準が高まっているほか、情報関連向けが好調な水晶振動子や射出成形機では高操業を続けている。また、民間設備投資関連では、機械設備や部品等(コンベア、コンデンサー等)で受注や引合いの持ち直しを受けて生産水準が徐々に上向いており、環境装置でも操業度が上昇している。一方、建設機械では、国内向け在庫調整により低操業となっている。

この間、地場産業では、一部で春物受注に動意が窺われるものの全般的に動きが鈍く、輸入品との競合、単価の下落等により、総じてみれば厳しい状態が続いている。

雇用面では、企業の雇用過剰感は依然大きいものの、パートを中心に雇用対策関連や小売、サービス業の新規求人の増加により、有効求人倍率の悪化傾向は足許一服している。

なお、消費者物価は、昨年急騰した生鮮食品の落着きにより全体では前年を下回って推移している。

金融面をみると、貸出は、一部に小口の設備投資資金借入れの動きもみられるが、全体の資金需要が依然低迷しているほか、特別保証制度の融資一巡もあって、前年を下回っている。

貸出約定平均金利(総合ストックベース)は、このところ長期金利を中心に小幅低下傾向が続いている。

一方、預金をみると、個人預金は比較的堅調ながら、法人預金で財務リストラのための借入金返済が続いているうえ、2月は大型買収案件に伴う預金取崩しが響いて減少したため、全体では前年比マイナス幅を拡大している。

企業倒産は、中小・零細企業を中心に11/12月以降4ヵ月連続で前年を大幅に上回っている。

以上

中国地区金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行広島支店

中国地区の経済情勢をみると、個人消費は回復感に乏しい状況が続いているほか、公共投資はこのところ弱含んでいる。一方、設備投資はなお慎重姿勢ながらも下げ止まりの兆しをみせているほか、輸出は緩やかな増加傾向にある。こうした最終需要のもと、生産は持ち直していることに加えて企業マインドも改善が続いており、景気は持ち直しつつある。

最終需要の動向をみると、個人消費は、一部に引き続き明るい動きがみられるものの全体としては回復感に乏しい状況が続いている。パソコン販売は好調を持続しており、乗用車販売は前年を上回っている。一方、百貨店売上高は基調としては低調に推移しているほか、スーパー売上高も前年割れが続いている。

設備投資を3月短観(中国地区)からみると、11年度実績見込みは、前回調査(11年12月)と比べて下方修正され前年度比−5.5%となっている。また、12年度計画は同−0.3%と下げ止まりの兆しをみせている。

住宅投資について新設住宅着工戸数をみると、持家、貸家の一時的な増加から、このところ一進一退の動きとなっている。

公共投資は、足許の公共工事請負額が前年水準を上回ったものの、昨年夏以降の請負額の減少から、工事進捗ベースでは頭打ちになっているとみられる。

輸出(通関輸出金額を輸出物価指数でデフレートした実質ベース)は、欧米向けが減少しているもののアジア向けが持ち直していることから、全体では緩やかな増加傾向にある。

こうした最終需要のもと、生産は持ち直している。主要企業の生産動向をみると、鉄鋼、造船のほか、電気機械が電子部品(半導体等)、情報家電(MD、FAX、携帯電話)を中心に高操業を続けている。また、化学が海外需要の増加等から高目の生産となっている。自動車は安定的な操業度で推移している。もっとも、一般機械、縫製は依然として低調な生産が続いている。

雇用面をみると、有効求人倍率が改善するなど悪化に歯止めが掛かりつつある。もっとも、常用雇用者数が前年を下回って推移しているなど、雇用環境は全体として厳しい状況が続いている。

この間、企業収益を3月短観(中国地区)からみると、11年度実績見込みは、前回調査(11年12月)と比べて下方修正され前年度比−8.6%の減益となっているが、12年度計画では同+8.4%の増益計画となっている。

企業マインドを3月短観(中国地区)からみると、足許の業況判断は改善している(業況判断D.I.〈「良い」−「悪い」〉11年12月△27%→12年3月△21%→6月予測△23%)。

金融面をみると、貸出は引き続き低迷している。個人向けが住宅ローンを中心に伸びが鈍化しているほか、企業向けも設備資金需要が低調に推移している。

預金は伸びが鈍化している。個人預金は比較的堅調に推移しているが、法人預金は定期性を中心に低調な地合いが続いている。

以上

四国地区金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、業種や地域によるバラツキを伴いつつ、公共投資関連需要の下支えに加えて、情報機器関連や輸出関連需要の増加もあって、企業の生産活動は総じて持ち直してきている。また、企業の設備投資にも成長性の高い業種で、能力増強投資に踏み切る動きも出てきているなど、一部に 回復の兆しが窺われ始めており、景気持ち直しの足取りは、緩やかながらも明確化してきている。もっとも、住宅投資が今後、減少基調を辿る見込みにあるほか、雇用・所得環境に目立った改善がみられないなかで、個人消費が依然として回復感に乏しい状態が続いており、自律的回復の持続性や広がりについて、はっきり展望できる状況には至っていない。

需要動向

最終需要の動向をみると、輸出は欧米向け、アジア向けともに増加基調が続いているほか、公共投資は、足許、発注に頭打ち感が窺われているもの の、工事量ベースでは比較的高い水準を維持している。一方、住宅投資については、昨年後半の住宅金融公庫の借入れ申込み状況からみて、今後、緩やかながらも減少傾向を辿るとみられる。また、個人消費は、パソコン等情報関連機器および軽自動車が好調に推移しているものの、雇用・所得環境に目立った改善がみられないなかで、大型家電等の耐久消費財が低調に推移しているなど、依然として一進一退の状況が続いている。

この間、設備投資は引き続き多くの企業が慎重なスタンスを崩していないが、成長性の高い分野を中心に、一部業種で能力増強投資に踏み切る動きが出てきている。

生産

企業の生産活動をみると、電気機械(情報機器向けメモリー、マイコン、液晶表示装置等)、紙・パルプ(特殊工業紙、チラシ用紙、段ボール原紙等)、化学(合成樹脂、無機化学等)、非鉄(電機銅、電気ニッケル)では、情報関連分野における需要の拡大やアジア向け輸出の増加等から高操業を持続、あるいは生産水準の一段引上げを図る動きがみられる。また、鉄骨加工(橋梁関係)では、公共投資関連の手持ち受注残の消化から、高目の生産水準を維持しているほか、住宅投資関連の金属製品(アルミサッシ)、木材・木製品(収納製品)、窯業・土石(住宅エクステリア製品)等も、足許では、まずまずの操業を維持している。

もっとも、鉄鋼や一般機械(建設用機械、産業・運搬機械等)では、需要低迷を背景に、引き続き生産調整を余儀なくされているほか、繊維(タオル)でもギフト需要の長期低迷や廉価品の輸入増に伴い、生産調整を強める先がみられている。

雇用

雇用情勢をみると、有効求人倍率は依然として低水準にあるものの、医療・福祉など一部サービス業で新規求人の動きがみられており、足許では、これまでの悪化傾向に歯止めがかかりつつあるように見受けられる。

金融

金融面をみると、預金は個人の流動性預金が底固い伸びを持続している。また、貸出は民間企業の資金需要が引き続き低迷しており、低調な地合いが続いている。

以上

九州地区金融経済概況

2000年 4月24日
日本銀行福岡支店

九州経済は、全体として持ち直しており、設備投資が緩やかながら増加に転じるなど民間需要面にも一部に回復の動きがみられ始めている。また、こうした中で企業の業況感も着実に改善してきている。

すなわち、在庫調整の進捗やアジア向け輸出の増加等から生産が増加基調にあるほか、設備投資も緩やかながら増加に転じている。また、公共投資も補正予算の執行に伴い再び増加し始めているほか、雇用面でも各種指標で横這いないし改善の動きがみられる。ただ、こうした一方で、住宅投資は緩やかに減少しているほか、個人消費も全体としてみれば回復感に乏しい状態が続いている。

最終需要の動向をみると、公共投資は、補正予算の執行が本格化する中、このところ生コン等一部公共関連財の出荷が再び増加し始めている。

住宅投資は、住宅ローン控除適用期限を睨んだマンション着工は引き続き 堅調に推移しているが、全体としては減少している。

個人消費は、足元、百貨店売上高、乗用車新車登録台数等の販売指標で持ち直しの動きがみられるが、全体としてみれば回復感に乏しい状態が続いている。

企業の設備投資は、依然抑制スタンスの先は多いが、半導体関連や通信では引き続き積極的な投資スタンスにあるほか、その他の業種でも、新規出店や工場集約化に伴う設備投資計画がみられるなど、全体としてみれば緩やかながらも増加に転じている。

この間、輸出は、欧州向け自動車等は減少しているが、引き続きウエイトの高いアジアや北米向けが半導体等電気機械を中心に増加しており、全体としては増加傾向にある。

企業の生産動向をみると、内需の低迷等を背景に素材業種等一部で低操業を継続しているが、在庫調整が進捗している中でアジア向け輸出の増加等から、IC、電子部品、鉄鋼、化学等で高操業を継続しているほか、一般機械でも持ち直しの動きがみられるなど、全体としては増加基調にある。

雇用面をみると、全体としては依然厳しい状況が続いているが、足元についてみると生産の増加等に伴い各種指標で横這いないし改善の動きがみられる。

企業倒産をみると、倒産件数は、中小企業金融安定化特別保証制度の利用により減少した前年の裏が出るかたちで、前年を上回って推移している。

金融面の動きをみると、銀行預金は、法人預金が引き続き前年割れとなる中で、個人預金が証券投資信託等へのシフトもあって伸びが鈍化していることから、全体でも伸びが低下している。銀行貸出は、設備資金等の資金需要が低迷している中、特別保証制度による貸出実行から高止まっていた前年の裏が出ていることもあって、減少幅が拡大している。

以上