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全国11支店金融経済概況 (2000年 7月)

2000年 7月24日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気をみると、全体として持直しの動きは足踏み状態にあり、企業の景況感もやや慎重化している。最終需要面では、民間設備投資が増加に転じるなど、改善の動きがみられるものの、個人消費は総じてみれば依然として盛り上がりを欠き、公共投資も頭打ち状態が続いているほか、住宅投資も減少傾向が窺われている。こうしたなか、企業の生産は、情報通信関連需要や輸出の増加等を背景に堅調に推移し、企業収益もリストラ効果等から改善傾向にあるが、雇用情勢は依然として厳しい状況が続いている。

最終需要面の動きをみると、公共投資は、地方分を中心に12年度予算が減少している中、工事進捗ベースでも頭打ちの状態が続いている。

住宅投資は、分譲マンション等の着工はなお底固い動きが続いているが、主力の持家が前年を下回って推移しているなど、減少傾向が窺われている。

個人消費は、パソコン等一部商品の売行きは好調ながら、大型小売店等の売上げは天候要因等による振れを伴いながらも前年割れを続けているほか、耐久消費財も総じて伸び悩んでいるなど、全体としては低調に推移している。この間、観光面では、有珠山噴火の影響や格安ツアーの減少等から、入込み客数はこのところ前年を下回って推移している。

設備投資については、情報通信関連での追加的な能力増強投資や小売店等での販売力強化を狙った案件を中心に上方修正され、全体としては増加に転じている。

企業の生産は、鋳鍛鋼製品、木材・木製品等では民間需要の低調を映じて低操業を続けているものの、電子部品や自動車部品では国内・外の需要好調を背景にフル操業を継続しているほか、紙・パでも広告需要の増加等から高操業にあるなど、総じて堅調な動きを続けている。

企業収益については、売上げは小幅の増加に止まっているものの、コスト削減効果等を背景に、引続き改善している。

雇用情勢については、有効求人倍率が依然として低水準に止まっているなど、厳しい状況が続いている。

企業金融は、金融機関の融資姿勢の緩和等から、総じて落ち着いているが、企業倒産をみると、建設、卸・小売、家具等を中心に件数は増加傾向にある。

金融面をみると、預金は、個人預金が堅調に推移しているものの、法人預金では預貸相殺等の動きが引続きみられること等から、全体では伸び率が鈍化傾向にある。一方、貸出は、住宅ローンの高伸が続いているが、企業の資金需要低迷等を背景に、全体では低調に推移している。

以上

東北地区金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行仙台支店

東北地区の景気は、明暗が交錯する中で、緩やかながらも回復を続けている。

すなわち、公共・住宅投資が減少しているほか、個人消費も耐久消費財を除き今一つ回復感に乏しい状態が続いている。しかしながら、鉱工業生産は、情報通信関連を中心に引き続き増加しており、設備投資は、こうした好調業種を主体に増加している。また、雇用面でも、常用雇用者数は前年を下回って推移しているが、有効求人倍率は改善傾向にある。

こうした中、企業の業況感についてみると、足許は業種間の明暗が交錯し、横這い圏内の動きとなった。もっとも、先行きは、公共・住宅投資関連業種が悪化するものの、多くの業種が改善することから、全体として改善が見込まれている。

最終需要をやや詳しくみると、個人消費のうち、家電販売は、パソコン等情報通信機器が続伸しているほか、エアコン等夏物商品も好調な売行きを示している。また、乗用車販売も、新車投入効果等から前年を上回っている。しかしながら、大型小売店売上高は、高級ブランド品や一部の夏物商品が堅調なものの、その他商品は全般的に売行きが鈍く前年を下回って推移しているなど、個人消費全体としては、今一つ回復感に乏しい状態が続いている。

公共投資をみると、請負金額は、月により振れがあるものの年度初来累計で前年を下回っている。更に先行きも、東北新幹線延伸等の大型プロジェクトはあるものの、財政難から抑制的なスタンスをとっている地方公共団体が多いこともあって、基調的には減少が見込まれる。

また、住宅投資は、着工戸数が主力持家の減少から前年を下回って推移しているほか、12年度第1回住宅金融公庫融資申込受理戸数も主力マイホーム新築分を中心に前年を下回るなど、低調な地合が続いている。

一方、12年度の設備投資計画(東北地区短観)をみると、製造業では、電気機械が一段の能力増強投資を行うほか、他の業種においても新製品開発投資等の動きがみられ、引き続き前年度を上回っている。この間、非製造業では、一部業種の大型投資一巡から前年度を下回る計画となっているが、小売等を中心に計画の上積みを行う動きもみられ、設備投資全体としての増加基調は維持されている。

主要製造業の生産動向をみると、電気機械は、情報通信関連の受注好調を背景に、半導体が能力増強投資後もフル操業を継続しているほか、パソコン等完成品や関連部品(液晶、コネクタ、コンデンサ等)も高操業を続けている。

輸送用機械では、末端需要の持ち直しや対米輸出の好調等から、生産水準を一段と引き上げる動きがみられている。

その他消費関連業種では、衣料品が減産を継続している一方、カメラはデジタル製品の受注好調から更に生産水準を引き上げている。また、紙・パでは、新聞・印刷用紙、段ボール原紙とも堅調な生産を続けている。

設備関連業種では、工作機械等が国内家電メーカーを中心とした受注持ち直しから減産を緩和しているほか、半導体製造装置等も半導体メーカーの設備増強等を背景に高操業を継続している。

一方、建設関連業種(セメント・同二次製品、鉄鋼二次製品、木材・木製品)では、大型プロジェクト向けは堅調ながら、公共投資の減少や民需の低迷から、全体としては低調な生産を行っている。

12年度の売上・収益計画(東北地区短観)をみると、公共・住宅投資関連業種(建設、木材・木製品、窯業・土石)では減収・減益となるものの、電気機械を中心とした多くの業種では、IT関連の好調持続やその他末端需要の持ち直し期待等もあって増収・増益を見込んでおり、全体としては回復基調を堅持している。

雇用面をみると、常用雇用者数については、製造業が海外生産シフトやリストラの実施から引き続き前年を下回って推移している中、建設業が公共投資等の減少から前年比マイナス幅を拡大しているなど、総じて厳しい状況が続いている。もっとも、有効求人倍率は、生産好調な電気機械や新規出店を行っている小売、サービスなどの求人増加から改善傾向にある。

企業倒産をみると、建設、卸・小売関連の中小・零細企業を中心に、件数は引き続き高水準で推移している一方、金額は昨年みられた大口倒産の減少から前年を下回って推移している。

金融面をみると、預金は、公金が低調なものの、個人が底固く推移しているほか、法人のマイナス幅も縮小傾向にあり、一段の増勢鈍化には歯止めがかかった。一方、貸出は、個人・地公体向けが横這い圏内の動きとなっている中、法人向けが引き続き低迷しているため、前年を下回って推移している。

以上

北陸地区金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行金沢支店

北陸地区の景気は、輸出が増加傾向を辿っていることに加え、設備投資の増加が明らかになるなど、持ち直し傾向を強めている。

最終需要面の動きをみると、まず、輸出は、情報機器関連部材の電子部品等が欧州、東アジア向けを中心に増勢を続けているほか、合繊織物や繊維機械が東アジア向けを中心に前年を上回っており、軸受でも東アジア向けが持ち直すなど、増加傾向を辿っている。

また、設備投資は、企業マインドの改善などを映じて、製造業を中心に業種面の広がりを伴いながら増加している。企業の設備過剰感は総じてなお根強いものの、生産の増加や企業収益の改善が続く中で、電子部品等の分野で積極的な能力増強投資が続いているほか、繊維、金属等他の業種においてもITの活用や競争力向上等を企図した投資に踏み切る動きが広がってきている(12年6月企業短期経済観測調査<北陸3県>、12年度計画前年度比、全産業+9.6%<前回3月調査時+5.2%>、うち製造業+13.6%<同+7.5%>)。

個人消費は、スーパーの売上げ低迷等もあって今一つ回復の力強さには欠けるものの、家電販売が堅調に推移しているほか、乗用車販売が若年層向けを主体に増勢が続いている。また、百貨店販売が婦人向けの衣料品や身回り品などを中心に持ち直しつつあり、観光入り込み客数も下げ止まり感が窺われるなど、改善の動きが広がってきている。

この間、住宅投資や公共投資は緩やかな減少傾向を続けており、関連業界では業況面への影響を懸念している。

こうした最終需要動向を映じて、生産は、窯業・土石、アルミ建材等の公共・住宅投資関連や化学の一部で頭打ちないし緩やかな減少が続いているが、一方で、電子部品や合繊織物の増勢持続に加え、繊維機械、工作機械などの持ち直し傾向の強まりから、全体としては一段と増加している。

雇用面をみると、有効求人倍率(含むパート)は、パートを中心とした新規求人数の増加から緩やかに改善している。また、雇用者所得は、所定外給与が生産増を映じた所定外労働時間の増加から増勢を示しているほか、所定内給与も緩やかな持ち直し傾向にある。こうした中、民間夏季賞与は、企業収益の改善を映じて前年を若干上回る見込みにある。

金融面をみると、預金は、個人預金では、定期性預金が伸び悩んでいるが、流動性預金が引き続き堅調なことから、全般に底堅く推移している。また、法人預金は、企業の財務リストラの継続等を映じて定期性預金の前年割れが続くなど、低調に推移している。

貸出は、個人向けは、消費者ローンが依然低迷しているものの、住宅ローンが堅調に推移しており、全体では持ち直しが続いている。また、法人向けは、一部の業況好調先で前向きな設備資金需要等が散見されるものの、全体では依然低調な動きとなっている。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏の中で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済をみると、民間需要の自律的な回復メカニズムが作用し始めているものの、その機能はなお十分とは言い難い状況にある。最終需要面をみると、個人消費は、動意の窺われる商品が増加しつつあるとはいえ、全般的には回復感に乏しい状態にあるほか、公共投資にも依然力強さが感じられない。一方、住宅投資は持ち直し傾向にあるほか、設備投資も回復の動きが窺われている。また、輸出もアジア向けを中心に増加している。このため、県内企業の生産は、電気機械、輸送用機械、素材業種等で生産水準を引き上げるなど、全般的に持ち直し傾向を持続し、企業収益も改善してきている。この間、労働需給面は依然緩和した状態にはあるものの改善傾向を持続しているほか、雇用者所得も下げ止まりの兆しが窺われる。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、乗用車新車登録台数は、新規投入車種や特別仕様車の販売好調から足許増加に転じているほか、一部人気車種ではメーカー側で増産体制を組むなど、回復の兆しが窺われる。また、家電量販店売上高は、主力の白物家電の販売が引き続き低迷している中、パソコン販売の好調に支えられ前年を上回る状況にある。一方、百貨店売上高は、婦人衣料、婦人雑貨で動意がみられたものの、紳士衣料や食料品等の売上不振から、低調の域を脱していない。

設備投資を6月に実施した「企業短期経済観測調査(神奈川県分)」(以下「6月短観」という)でみると、県内企業の99年度の設備投資実績は、製造業で3年連続の前年割れ(前年比△25.8%)、非製造業で2年連続の前年割れ(同△13.7%)となった。一方、2000年度計画については、非製造業で引き続き前年を下回る抑制的な計画(同△11.2%)となっているものの、製造業で4年振りに前年を上回る計画(同+19.5%)となっており、全産業でも3年振りに前年を上回る計画(同+16.0%)となっている。

住宅投資は、住宅減税拡充策の効果等から分譲マンションを中心に高水準を持続している。一方、公共投資については、4四半期連続で前年割れとなっており、依然力強さが感じられない。

輸出面では、アジア経済の好転等を背景とする自動車や半導体電子部品、鉄鋼、事務用機器等の増加から、横浜港の輸出額(通関ベース)は、4か月連続して前年を上回っている。また、6月短観でみても県内企業の輸出額は2期連続(99年度下期、00年度上期)で前年を上回る見通しにある。他方、横浜港の輸入額(同)についても、原油・粗油や非鉄金属等の原材料、事務用機器等の増加から、7か月連続で前年を上回っている。

県内企業の生産をみると、全体として持ち直し傾向を持続している。すなわち、完成車メーカーでは、新型車や特別仕様車の販売好調に伴い生産水準を引き上げている先が一部でみられるほか、こうした動きを受けて自動車部品メーカーでも、生産水準を引き上げている先が広がっている。また、汎用電子部品、移動体通信、半導体関連では、パソコン・携帯電話の販売好調を主因に繁忙感が継続している。工作機械でも、情報通信機器関連を中心とする内外需の回復から、全体として生産水準は回復傾向を辿っている。化学、鉄鋼などの素材業種でも、韓国、タイなどアジア地域経済の持ち直し等を映じて生産水準が回復している。

雇用面をみると、リストラの進展もあって企業の雇用過剰感は一頃に比べ弱まってきているほか、新規求人倍率、有効求人倍率とも昨夏来の改善傾向を継続している。この間、現金給与総額(事業所規模5人以上)は、本年入り後、前年を上回る状態が続いており、下げ止まりの兆しが窺われつつある。

金融面をみると、貸出面では、全般的に資金需要が低迷していることを主因に、前年割れが続いている。一方、預金面では、法人預金は低調に推移しているものの、全体の8割弱を占める個人預金の堅調な伸びに支えられ、全体の伸び率は横這い圏内で推移している。この間、企業倒産件数は、増加傾向に転じている。

以上

東海地区金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の最近の経済動向をみると、個人消費は依然低調ながら減少テンポが緩やかになっている。設備投資は下げ止まりから持ち直しに転じつつある。また、公共投資、輸出は増加している。一方、住宅投資は弱含んでいる。

こうした需要動向を背景に、生産は全体として増加している。また、雇用情勢の悪化には歯止めが掛かりつつある。この間、物価は引き続き軟調に推移している。このような状況の下で、企業の景況感は製造業を中心に着実に改善をみており、東海地区の景気は、持ち直していると判断される。

金融面をみると、資金需要は引き続き低迷しているものの、管内景気の持ち直しを受けて、減退傾向には歯止めが掛かりつつある。こうした状況下、金融機関の貸出は、前年比マイナス幅が縮小している。

個人消費・・・非耐久消費財支出については、全体として、衣料品や日用品を中心とした消費者の低価格指向から引き続き捗々しくない状況にある。耐久消費財支出をみると、乗用車販売は、普通・小型車における一部ニューモデルの好調が続いており、強含んでいる。また、家電量販店の売上げは、パソコン関連製品を中心に前年を上回って推移している。この間、サービス支出でも、旅行関連が底固く推移している。

設備投資・・・製造業については、自動車関連等の大企業では、なお生産設備の過剰感が根強く、総じて抑制的な投資スタンスを保持しているものの、情報通信関連需要への対応や競争力の維持・向上を企図した案件を中心に、設備投資を増加させる動きが増えている。また、中堅・中小企業でも、生産の持ち直しや固定費削減等による収益の改善を眺め、設備投資額を上積みする企業が少なくない。この間、非製造業でも、電力で大型電源設備投資が本格化しているほか、小売でも旧大店法に基づく新規出店が続いている。

住宅投資・・・新規住宅着工をみると、ウエイトの大きい持家を中心に住宅金融公庫金利の低位抑制などの政策効果が一巡しつつあるため、全体として緩やかに減少している。

公共投資・・・地方公共団体における2000年度当初予算額が前年を大きく下回ったことから、県、市町村分の今年度入り後の発注は低調に推移しているが、既往の経済対策を反映した高めの受注残を背景に、管内建設業者の官庁関連の工事量は増加している。

輸出・・・アジア向けが、幅広い品目で増加を続けているほか、主力の米国向けも、自動車・同部品や情報関連財を中心に高水準で推移している。さらに、欧州向けでも、自動車の堅調な現地需要を背景に持ち直しており、輸出は全体として増加している。

生産・・・加工業種では、自動車の生産が、新型車投入効果や輸出の堅調を映じて引き続き増加基調にある。また、ICパッケージや事務機器が輸出数量増から、ビデオカメラも内外の需要堅調から、それぞれ生産水準を引き上げている。さらに、工作機械やフォークリフトでも、受注の増加を背景に操業度を引き上げている。また、二輪車でも、欧米向けの堅調持続やアジア向けの持ち直しから高操業を続けている。
素材業種では、普通鋼・鋼板類や特殊鋼が、主力の自動車向けの持ち直しやアジア向け輸出の堅調に伴って、増産を続けている。また、紙・パルプも、パソコン等取扱説明書、チラシ向けの増加等から生産水準を引き上げているほか、棒鋼では、輸出や大型商業施設、マンション向けを中心に、減産を緩和している。一方、住宅向け窯業製品の一部(瓦、衛生陶器)の生産が減少しており、繊維製品も末端需要の低迷や安値輸入品の流入増から減産を継続している。

雇用・・・常用労働者数は引き続き前年をかなり下回っているものの、所定外労働時間が生産の増加を反映して伸びを高めているほか、有効求人倍率も改善を続けている。

物価・・・消費者物価は、総じて引き続き前年水準を下回っている。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行京都支店

雇用・所得環境はなお厳しい状態が続いているものの、輸出が一段と増勢を強めているほか、企業収益の改善等を受けて設備投資も増加に転じており、堅調な最終需要や在庫調整の進捗を背景に生産も増加するなど、管内景気は企業部門を中心に持直しの動きが明確化している。

最終需要の動きをみると、まず、輸出については、欧米向けが、パソコン・移動体通信機器用電子部品を中心に増加傾向を辿っているほか、東アジア向けについても、NIEs向けの半導体・情報通信関連製品やASEAN・中国向けの一般機械等が現地需要の回復を背景に増加しつつあり、全体でも一段と増加している。

設備投資についても、IT(情報技術)関連業種における生産能力増強・新製品開発投資の拡がりに加え、その他の製造業でも生産効率化投資や研究開発投資に着手する向きがみられ始めており、また、非製造業でも大型小売店の新規出店投資が増加するなど、本年度の計画は全体として前年を大幅に上回っている。

個人消費については、自動車販売が、新車投入効果のみられるRV車・小型車を中心に持直してきているほか、パソコンおよび同関連商品等が好調に推移しているものの、百貨店売上げは一進一退の動きが続いており、また、AV機器、白物家電等は低調な販売地合いとなっているなど、全体としてなお回復感に乏しい状況が続いている。この間、京都観光についてみると、観光客の低価格指向は依然根強いものの、7月中旬の祇園祭に120万人(7/15〜17日<府警調べ>、前年比+5%増)の人出をみるなど、入込み客数は増加している。

住宅投資については、昨年度の住宅金融公庫申込分の着工集中効果の剥落から持家が減少するなど、全体でも減少基調が続いている。

公共投資については、本年度予算が抑制される中、減少傾向にある。

生産面をみると、在庫調整が一段と進捗する中で、国内外でのIT関連需要の好伸や一部国内資本財需要の持直しを背景に、全体として増加傾向を強めている。業種別にみると、電子部品や半導体製造装置では、欧米向けや、東アジアのアセンブリ拠点向けの輸出増加を受けて生産水準を一段と引上げている。また、これまで減少基調にあったIT関連以外の業種でも、一般機械、金属製品等では、東アジア向け輸出の回復や一部内需の持直しを受けて増産に転じつつある。この間、地場産業の和装関連では、一部の企画商品や低価格商品では底固い販売地合いがみられるものの、全体では最終需要の不振を背景に引続き大幅減産を余儀なくされている。

企業収益をみると、前年度の経常利益(当店短観ベース)が4年振りに増益に転じたのに続き、本年度についても一段の増益が見込まれている。

雇用・所得面をみると、生産水準が上昇している製造業を中心に所定外労働時間が持直しつつあるものの、企業の雇用スタンスは引続き慎重で常用労働者数がなお減少を続けるなど依然として厳しい状況が続いている。企業倒産は、件数、負債金額とも前年を若干上回って推移している。

金融面をみると、民間金融機関貸出については、企業の設備資金需要が依然として低調に推移しているうえ、季節資金も盛り上がりを欠いていることから、全体として低迷を続けている。この間、特別保証制度を利用した貸出についても、このところ増勢は頭打ちとなっている。

預金については、法人預金は、金融機関が高利の大口市場性預金の取入れを抑制していることや、企業のバランス・シート調整の一環としての預貸相殺が続いていることなどから伸び悩んでいる一方、個人預金は流動性預金を中心に底固さを維持している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行大阪支店

管内の景気は、個人消費が総じて一進一退の状況にあるものの、輸出の増加が続いているほか、設備投資も増加しており、全体として緩やかな回復に向かいつつある。

最終需要面の動きをみると、輸出は、米国向けが情報通信関連財・消費財を中心に堅調を持続しているほか、東南アジア向けも生産財・資本財を中心に増加していることから、全体として引き続き増加している。

設備投資は、情報通信関連分野の能力増強投資が一段と増加しているほか、収益の改善を背景に、製造業を中心として合理化投資や維持・更新投資が広がっており、全体として増加している。

個人消費は、スーパーの売上が低調であり、百貨店販売も依然回復感には乏しい状況にある一方、パソコン等情報通信関連の支出は堅調に推移しているほか、旅行関連支出も好調に推移しており、総じてみれば一進一退の状況にある。

住宅投資は、概ね横這いで推移している。

公共投資は、経済新生対策の実施に伴い緩やかに増加している。

生産は、在庫調整が概ね完了したとみられる下で、輸出の増加や情報通信関連財・資本財需要の強まり等に支えられて引き続き増加基調にある。

企業収益(経常利益)は、生産・出荷の増加や、コスト削減・事業再構築といった経営合理化・効率化の効果から改善しており、6月短観(近畿地区)でみると、12年度は製造業では前年比+24.0%、非製造業(除く電力・ガス)では同+13.0%の増益が見込まれている。

雇用・所得環境をみると、有効求人倍率の上昇や所定外給与の増加など、悪化傾向には歯止めが掛かってきているが、失業率はなお高水準で推移しているほか、常用労働者数も前年を下回っており、全体としては依然厳しい状況にある。

物価は、横這いで推移している。

企業倒産件数は、振れを伴いつつも増加傾向にある。

企業金融についてみると、収益の改善基調が明確化している下で、金融機関の貸出態度の積極化もあって、総じてみれば緩和感が広がりつつある。

金融面をみると、貸出については、企業部門において収益回復に伴うキャッシュ・フローの増加などを背景に、外部資金調達ニーズが引き続き低迷しているほか、借入金を圧縮する動きも続いていることなどから、低調な地合が続いている。金融機関の貸出態度は、総じてみれば依然慎重であるが、金融機関では資金繰り面や自己資本面からの制約が緩和されるなかで、中小企業向け貸出を積極化する動きを強めている。

預金については、個人預金、法人預金とも総じて堅調に推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行神戸支店

管内経済は、全体として持ち直しつつある。需要面では、個人消費が一進一退で推移しているものの、輸出が増勢を持続しているほか、設備投資も持ち直している。生産面では、情報通信向け電子部品のほか、各種機械や鉄鋼等多くの業種で操業度が上昇しており、企業収益も着実に改善している。また、雇用面でも、依然厳しい状況が続くなかで、求人数の増加など部分的に改善の動きもみられ始めている。これらを背景に、企業の景況感は改善傾向をたどっている。

個人消費をみると、百貨店の売上高は、天候不順や曜日要因もあって主力の衣料品が不冴えな状況にあることなどから、前年を下回って推移しているほか、スーパーでも依然として前年割れが続いている。一方、乗用車販売は、新型車投入効果等により前年を上回っている。この間、家電販売では、情報通信関連や各種デジタル製品が引き続き好調に推移している。

企業の設備投資は、ここへきて製造業、非製造業とも12年度計画の上方修正の動きが目立っており、全体として持ち直している。内容をみると、維持更新案件の積み増しや、一部に生産設備の増強、本社社屋の建設等の動きがみられている。

住宅投資は、持家で大幅な前年割れが続いている一方、貸家、分譲が阪神間を中心に増加している。

公共投資では、国・公団が落ち込んでいるなか、神戸空港埋立事業の発注増を映じて、このところ神戸市が大幅増加となっている。

生産動向をみると、アジア向け輸出の好調や国内向けの下げ止まりを背景に、鉄鋼が一段と生産水準を引上げているほか、情報通信向けの水晶振動子や半導体でも高水準の生産を持続している。設備投資関連では、情報関連向けや輸出の増加を背景に射出成形機がフル操業にあるほか、機械設備や部品等(コンベア、コンデンサー等)でも操業度が上昇している。また、食肉加工においても、生肉、惣菜の生産水準が高めに推移している。

この間、地場産業では、ケミカルシューズで受注増がみられるが、総じてみれば、輸入品との競合や単価の下落等から厳しい状況が続いている。

雇用面では、企業の根強い雇用過剰感や雇用者所得の伸び悩みなど、依然厳しい状況が続くなかで、有効求人倍率は改善傾向にあり、製造業の所定外労働時間も前年を上回って推移するなど、部分的に改善の動きもみられ始めている。

なお、消費者物価は、生鮮品や家具・家事用品の値下がりなどを受けて、軟調に推移している。

金融面をみると、貸出は、企業の財務リストラに伴う返済圧力が根強く、設備資金等の前向きな資金需要も依然乏しいほか、一部に地公体向け短期貸出の剥落等もあって、前年を下回っている。

貸出約定平均金利(総合ストックベース)は、金融緩和策の継続から基調的には低下傾向が続いている。

預金をみると、個人預金は比較的堅調ながら、法人預金で企業の財務リストラ等による預貸相殺等の動きが続いているため、全体では前年比マイナスとなっている。

企業倒産件数は増加気味ながら、小口中心のため、負債額は前年を下回っている。

以上

中国地区金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行広島支店

中国地区の経済情勢をみると、個人消費は回復感に乏しい状況が続いているほか、公共投資は緩やかに減少している。一方、設備投資は概ね下げ止ったとみられるほか、輸出は増加傾向にある。こうした最終需要のもと、生産が増加していることや企業収益の改善を背景に企業マインドも改善が続いており、景気は持ち直している。

最終需要の動向をみると、個人消費は、一部に引き続き明るい動きがみられるものの全体としては回復感に乏しい状況が続いている。パソコン販売は好調を持続しており、軽乗用車を除く乗用車販売は前年を上回っている。一方、百貨店、スーパー売上高は低調に推移している。

設備投資を6月短観(中国地区)からみると、12年度計画は前回調査(12年3月)と比べ上方修正され前年度比+3.4%となっており、概ね下げ止ったとみられる。

住宅投資について新設住宅着工戸数をみると、持家が減少しているものの、分譲、貸家の増加から、全体では一進一退の動きとなっている。

公共投資は、公共工事請負額が前年水準を下回って推移しており、工事進捗ベースでも緩やかに減少している。

輸出(通関輸出金額を輸出物価指数で調整したもの)は、欧州向けが低調に推移しているものの、アジア向けで持ち直しの動きが続いているほか、米国向けが前年を上回っていることから、全体では増加傾向にある。

こうした最終需要のもと、生産は増加している。主要企業の生産動向をみると、一般機械、縫製が総じて低調に推移しているものの、鉄鋼、造船のほか、電気機械が電子部品(半導体等)、情報家電(MD、FAX、携帯電話)を中心に高操業を続けている。また、化学が海外需要の増加等から高水準の生産を継続しているほか、自動車はまずまずの操業度を維持している。

雇用面をみると、有効求人倍率が横這い圏内で推移するなど悪化に歯止めが掛かりつつある。もっとも、常用雇用者数が前年を下回って推移しているなど、雇用環境は全体として厳しい状況が続いている。

この間、企業収益を6月短観(中国地区)からみると、12年度計画は前回調査(12年3月)と比べ上方修正され、前年度比+15.2%の増益計画となっている。

企業マインドを6月短観(中国地区)からみると、足許の業況判断が改善したほか、先行きも改善を見込んでいる(業況判断D.I.〈「良い」−「悪い」〉12年3月△21%→6月△19%→9月予測△17%)。

金融面をみると、貸出は引き続き低迷している。個人向けは、住宅ローンの推進などから比較的堅調な動きを示しているものの、企業向けは、設備・運転資金とも低調に推移している。

預金は概ね横這い圏内で推移している。個人預金は、郵貯大量満期分の流入が散見されることもあって堅調に推移しているものの、法人預金は、定期性を中心に低調な地合いが続いている。

以上

四国地区金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、全体として緩やかな持ち直し傾向にある。すなわち、公共・住宅投資の減退が窺われるほか、個人消費については依然として回復感に乏しい状況にある。もっとも、情報通信関連および輸出関連の旺盛な 需要を背景に企業の生産活動が回復基調にある。また、企業マインドの改善も緩やかに進んでおり、設備投資を積極化する動きも増えてきている。この結果、雇用・所得環境も悪化傾向に歯止めがかかりつつある。

需要動向

最終需要についてみると、輸出は欧米向け、アジア向けともに増加基調を辿っているほか、設備投資も引続き慎重なスタンスを維持する先が多い中、情報関連企業を中心に能力増強等を企図した投資を積極化する動きが増加してきている。一方、公共投資は、一部地域において高速道路整備等の大型継続案件などがみられるものの、全体としては頭打ち状態にある。また、住宅投資については、減少傾向が明確化している。

この間、個人消費はパソコン等情報関連製品が引続き好調に推移しているほか、乗用車販売も持ち直し傾向にある。しかしながら、大型家電等の耐久消費財や夏物衣料の出足が低調であるなど、全体として回復感に乏しい状況が続いている。

生産

企業の生産活動をみると、電気機械(情報機器向けメモリー、マイコン、液晶表示装置等)、化学(合成樹脂、無機化学等)、紙・パ(特殊工業紙、チラシ用紙、段ボール原紙等)、非鉄(電気銅、電気ニッケル)では、国内外における情報関連分野の需要拡大やアジア向け輸出の増加等から高操業を持続、あるいは生産水準の一段引上げを図る動きがみられる。また、鉄骨加工(橋梁関係)では、公共投資関連の手持ち受注残の消化から、高目の生産水準を維持しているほか、住宅投資関連の金属製品(アルミサッシ)、木材・木製品(収納製品)等も、足許ではまずまずの操業を維持している。

もっとも、鉄鋼や一般機械(建設用機械、産業・運搬機械等)では、需要低迷を背景に、生産調整の継続を余儀なくされているほか、繊維(タオル)でも法人ギフト需要の長期低迷や廉価品の輸入増などから、多くの先で生産水準をさらに引下げる動きがみられている。

雇用

雇用情勢をみると、有効求人倍率は依然として低水準にあるものの、小売や一部サービス業等を中心に新規求人を増やす動きがみられるなど、これまでの悪化傾向に歯止めがかかりつつある。

金融

金融面をみると、預金は個人の流動性預金を中心に底固い伸びを持続している。また、貸出は民間企業の資金需要が引続き低迷しており、低調な地合いが続いている。

以上

九州地区金融経済概況

2000年 7月24日
日本銀行福岡支店

九州経済は、全体として持ち直しの動きが続いており、民間需要面でも設備投資が引き続き増加するなど回復の方向にある。また、こうした中で、企業の業況感も着実に改善をみている。

すなわち、アジア向け輸出の増加等から生産が増加基調にあるほか、設備投資も増加を続けている。また、公共投資も補正予算の執行に伴い増加しているほか、雇用面でも求人倍率が上昇傾向にあるなど一部指標で改善の動きがみられる。ただ、こうした一方で、住宅投資は減少基調にあるほか、個人消費も全体としてみれば回復感に乏しい状態が続いている。

最終需要の動向をみると、公共投資は、足元、公共工事発注額は一服傾向ながら、年度末の大幅発注増加を受けて、生コン、合板といった公共関連財の出荷が引き続き増加している。

個人消費は、乗用車販売が、新型車、モデルチェンジ車を中心に堅調に推移しているほか、旅行も個人向けパック旅行が活発であるなど、足元、幾分持ち直しているものもあるが、百貨店、スーパーの売上げが落ち込むなど、全体としてみれば依然回復感に乏しい状態が続いている。

住宅投資は、持家着工が引き続き減少していることに加え、堅調であったマンション着工にも頭打ち感がみられるなど、全体としては減少基調が続いている。

企業の設備投資は、依然抑制スタンスの先は多いが、半導体関連や通信では引き続き積極的な投資スタンスにあるほか、その他の業種でも、一部ながら新規出店や設備の老朽化に伴う更新投資等がみられるなど、全体としてみれば増加を続けている。

この間、輸出は、ウエイトの高いアジア・北米向けが半導体等電気機械を中心に増加しており、全体としては増加傾向を辿っている。

企業の生産動向をみると、内需の低迷等を背景に素材業種等一部で低操業を継続しているが、アジア向け輸出の増加等から、IC、電子部品、鉄鋼等で高操業を継続しているほか、一般機械でも持ち直しの動きがみられるなど、全体としては増加を続けている。

雇用面をみると、全体としては依然厳しい状況が続いているが、生産の増加等に伴い求人倍率が上昇傾向にあるなど、一部指標で改善の動きがみられる。

企業倒産をみると、倒産件数は、建設業を中心に比較的高水準となっており、中小企業金融安定化特別保証制度の利用により減少した前年を上回って推移している。

金融面の動きをみると、銀行預金は、投資信託等への資金シフトもあって、法人、個人預金ともに伸びが鈍化している。銀行貸出は、ごく一部に設備需資等の動きがみられるものの、全体としては資金需要の低迷基調に変化は窺われず、前年割れが続いている。

以上