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全国11支店金融経済概況 (2002年 1月)

2002年 1月21日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気をみると、全体として厳しさがさらに増しており、企業の景況感も一段と慎重化している。最終需要面では、住宅投資が減少幅を拡大し、公共投資も引続き減少しているほか、民間設備投資も企業収益の一段の悪化等からさらに下振れしている。また、個人消費は一部に明るい動きもみられるが、総じてみれば力強さに欠ける展開が続いている。こうしたなかで、企業の生産は低迷しており、雇用環境にも厳しさがうかがわれる。

最終需要面の動きをみると、個人消費は、総じてみれば力強さに欠ける展開が続いている。百貨店では一部でのリニューアル効果等もあって婦人衣料品や身の回り品等に動きがみられているが、スーパー等では総じて低調となっていることから、大型小売店の売上げは引続き前年を下回って推移している。また、耐久消費財についても、乗用車販売は新型車投入効果等から底固い動きを続けているが、家電販売はパソコン、冷蔵庫等を中心に減少している。この間、観光面では、入込み客数はほぼ前年並みの水準で推移している。

設備投資は、一部に大型小売店での販売力強化等の動きがみられているが、全体では大型案件の一巡に加え、製造業を中心に企業収益の悪化等から案件を先送りする動きがみられるなど、投資スタンスはさらに慎重化しており、前年をかなり下回る計画となっている。

公共投資は、国、地方分ともに前年を下回って推移するなど、引続き減少している。

住宅投資は、持家が引続き大幅に前年を下回り、貸家や分譲マンションも増勢が鈍化していることから、減少幅を拡大している。

企業の生産は、自動車部品が国内外での販売減少等から生産水準を幾分引下げているほか、建設関連資材(セメント、コンクリート二次製品)では官公需や住宅・民間設備投資の減少から、鉄鋼、電子部品(情報通信機器向け等)では国内外の受注減少から、紙・パでは広告需要の減少等から、いずれも低調な生産を続けている。

企業収益は、売上げの減少等から一段と下方修正され、製造業を中心にかなりの減益見通しにある。

雇用情勢については、有効求人倍率は一進一退となっている中で、新規求人数が建設業や製造業を中心に減少傾向を辿っているなど、引続き厳しさがうかがわれる。

企業金融は、金融機関では企業の信用力を勘案しつつ、優良先を中心に前向きな貸出姿勢にあることから、引続き緩和基調にある。この間、企業倒産については、件数が増加に転じたほか、負債金額も大型倒産の発生から前年を上回って推移している。

金融面をみると、預金については、個人預金は流動性を中心に堅調ながら、法人預金での預貸相殺の動きが根強いこと等から、全体では低目の伸びが続いている。一方、貸出については、企業の資金需要が低迷しているほか、住宅ローンの肩代わりの一服等もあって、前年を下回って推移している。

以上

東北地区金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行仙台支店

東北地区の経済は、生産の大幅な減少の影響が、雇用・所得を通じて個人消費にも現われるなど、全国に比べても後退感が拡がっている。

すなわち、鉱工業生産は、ここにきてさすがに低下ペースは鈍化しているものの、引き続き低水準で推移している。この結果、企業の収益や景況感も、製造業を中心に全国を上回って悪化している。また、設備投資も、先行きの不透明感から減少率が一段と拡大している。

さらに、こうした生産水準の低下や海外への生産シフトの進展に伴い、雇用環境は悪化傾向が続いており、家計所得も減少している。こうした下で、個人消費は、耐久消費財を中心に売行きの不振が目立ってきている。また、公共・住宅投資は、引き続き低調に推移している。

最終需要をやや詳しくみると、個人消費のうち、大型小売店売上高は、高級ブランド品が堅調な一方、衣料品・家庭用品の不振が目立ち、前年を下回って推移している。恒例の初売りは、地域によって明暗が分かれたが、全体としては、福袋が好調な売行きとなった一方、その他多くの商品の動きは鈍く、低調なものとなった。また、家電販売高は、デジタル製品が引き続き好調ながら、パソコン・同周辺機器、冷蔵庫等白物家電が不振なほか、携帯電話の売行きもここにきて鈍化しており、全体として前年を下回る売上が続いている。さらに、乗用車販売も、地域による跛行性を伴いつつも、全体としてはここにきて減少している。この間、旅行取扱高も、米国テロ事件の影響から、海外向けを中心に引き続き減少している。

公共投資をみると、請負金額は、各月振れを伴いつつも年度初来累計では前年度を下回っている。先行きについても、投資的経費を削減している地方公共団体が多いこともあって、基調としては低調に推移するとみられる。

また、住宅投資も、月によって振れはあるが、主力持家が前年を下回って推移するなど、低調な地合いが続いている。

2001年度の設備投資額(東北地区短観、ソフトウェアを含む全産業)は、製造業や非製造業の一部で新製品投入投資や新分野への投資を行う動きもみられるが、IT関連を中心に投資を更に絞り込む動きが多くみられたほか、小売でも新規出店を抑制する動きにあり、前回調査時点(2001年9月)に比べ更に下方修正された。

主要製造業の生産動向をみると、電気機械では、情報通信関連部品の一部に世界的な在庫調整の進捗から減産を緩和する動きがあるほか、AV機器の一部にも新製品の投入から生産水準を引き上げる動きがみられる。もっとも、パソコンが新機種投入の一服などから減産を続けているほか、半導体等電子部品も輸内需の減少や国際競争力の強化を狙った海外生産シフトの進展から低操業を続けている。

輸送用機械では、輸内需の減少などから減産を続けている。

その他消費関連業種をみると、食料品は、生産水準を引き下げる品目がある一方で水産加工品・飲料など増産を行っている品目もあるなど、明暗が交錯している。紙・パは、情報関連需要の減少等から全体として低調な生産を続けている。

設備投資関連業種では、環境対策関連機器等で堅調な生産を続けるものもあるが、工作機械・半導体製造装置ともに国内外からの受注減少から減産を更に強化している。

建設関連業種(セメント・同二次製品、鉄鋼二次製品、木材・木製品)では、公共・住宅投資の減少から減産を続けている。

2001年度の売上高・経常利益(東北地区短観、全産業)は、製造業が電気機械を中心に売上・利益を一段と下方修正し、調査開始(1974年5月)以来、初の赤字見通しとなったほか、非製造業も小売を中心に下方修正する動きが目立ち、減収・減益見通しに転じた。この結果、全産業でも、減収・減益幅が更に拡大すると予想されている。

雇用・所得環境をみると、有効求人倍率は、電気機械を中心とした生産活動の低下に伴う求人数の減少や海外生産シフトに伴う誘致企業の工場閉鎖等から、更に悪化している。また、常用雇用者数も、製造業の減少等から引き続き前年を下回って推移している。

こうした状況の下で、1人当たり名目賃金は、所定外労働時間の減少などから総じて前年を下回って推移しており、雇用者所得(常用雇用者数×1人当たり名目賃金)は全国を上回る減少が続いている。

企業倒産件数をみると、建設、卸・小売を中心に、引き続き高水準で推移している。また、これを資本階層別にみると、ここへきて中堅企業の倒産が目立っている。

金融面をみると、預金は、法人が低調なものの、個人は堅調に推移しており、全体として底固い動きが続いている。一方、貸出は、個人・地方公共団体向けが増加しているものの、法人向けは前年を下回って推移しており、全体として低調な動きが続いている。

以上

北陸地区金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行金沢支店

北陸の景気は、既存分野の事業縮小に伴う設備投資の減少や雇用環境の悪化に伴う個人消費の弱まりがみられることに加え、輸出も減少を続けるなど、広範に悪化している。

需要項目別の動き

輸出については、電気機械が下げ止まっているものの、合繊織物が低調に推移しているほか、米国向けを中心に一般機械が一段と減少するなど、全体としては減少を続けている。

設備投資は、既存分野の事業縮小に伴い投資額を削減する企業がみられるなど、全体では減少しているものの、次世代製品を視野に入れた研究開発投資等になお底固さが窺われる。

個人消費は、雇用・所得環境が厳しさを増し、消費者心理も慎重化する中で、耐久消費財販売が弱含みとなるなど、徐々に弱まりつつある。

公共投資は、北陸3県の13年度予算が前年を下回っている中、公共工事請負額が前年を下回るなど、減少している。

住宅投資は、持家の落ち込みを主因に減少している。

生産・雇用面の動き

生産については、繊維、一般機械、アルミ建材、鉄鋼・非鉄、紙・パルプ等、多くの業種で生産水準の引き下げが続いている。もっとも、電気機械の生産は、携帯電話向け部品やOA機器に加え、パソコン向け部品の一部でも生産水準を幾分引き上げる動きがみられるなど、下げ止まっている。

雇用面をみると、雇用者所得は、所定外給与が減少していることに加え、所定内給与も弱含んでいることから、低調に推移している。また、有効求人倍率(含むパート)は、求人数の減少に加え、求職者数が一段と増加していることから、低下を続けている。

金融面の動き

(1)預金

個人預金は、定期性預金が引き続き低い伸びとなっているものの、流動性預金が低金利に伴う資金の滞留等もあって堅調なことから、全体でも増加している。

一方、法人預金は、定期性預金において借入金返済のための取り崩しが継続していることや、NCD(譲渡性預金)等への預け替えがみられたことから、全体としても低調な動きとなっている。

(2)貸出

個人向け貸出についてみると、民間金融機関の住宅ローンは、新設住宅着工の減少により、新築案件での借入需要が弱まりつつあるが、金融機関の積極的な取り組みもあって、借換え案件を中心に、一段と増加している。

一方、法人向け貸出についてみると、運転資金貸出は、生産の減少や企業における有利子負債の圧縮姿勢の継続から、引き続き低迷している。また、設備資金貸出は、企業における投資計画自体の縮小を背景に、低調裡に推移している。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、優良企業向けの低利融資の実行もあって、低下を続けている。

以上

神奈川県内金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済をみると、情報通信関連の需要減退を背景とする生産減少の影響が雇用・所得面から個人消費にも及んでいるなど、調整は一段と厳しさを増している。

足許、企業の景況感について、平成13年12月に実施した「企業短期経済観測調査(神奈川県分)」(以下「12月短観」と略称)をみると、業況判断D.I.は、海外経済の減速による調整長期化等を背景に、低位横這い圏内での動きとなった。先行きについては、これまで底固さを保ってきた新車販売の陰りから、輸送用機械等で判断を悪化させる先が増加しており、景況感は一段と悪化する見込み。

最終需要面をやや詳しくみると、個人消費は、雇用・所得環境の悪化等を背景にこのところ弱まってきている。すなわち、乗用車新車登録台数は、一部新規投入車種を除いて、購入を手控える動きが強まっている。家電量販店売上高は、パソコン販売の減少を主因に前年を下回っているほか、百貨店売上高も、中年齢層を中心に消費支出姿勢が慎重化してきていることから、減少傾向を辿っている。

県内企業の設備投資計画を12月短観でみると、2001年度は、製造業において、先端技術開発や生産ラインの効率化等に対する投資は引続き底固いものの、足許の業績悪化を背景に更新投資を先送りする動きが一段と強まっていることから、これまでの増加計画が一転して前年を下回る計画となった。この結果、全産業でも2年振りに前年を下回る見込み。

住宅投資は、雇用・所得環境の悪化等を背景に、住宅取得を手控える動きがみられており、伸び悩んできている。

公共投資は、足許大型工事の発注がみられているものの、予算制約の下、全体としては引き続き減少基調が続いている。

輸出を12月短観でみると、2001年度は、海外経済の回復の遅れや情報通信関連の調整長期化の影響から、2年振りに前年を下回る計画。

こうした需要動向の下、県内企業の生産をみると、輸出の減少に加え、国内でも情報通信関連需要の減退から、電気機械・一般機械を中心に生産水準を大幅に引き下げており、工業生産指数も、計数の遡及可能な平成5年以来、最低水準となっている。

雇用面をみると、新規求人倍率は1倍を下回って推移しているほか、有効求人倍率も低下してきている。特に製造業においては、生産調整の長期化から、新規求人数および所定外労働時間は前年比マイナス幅が拡大しているなど、雇用環境が悪化している。

企業収益を12月短観でみると、2001年度は、製造業でIT関連需要の減退に伴う売上減少を主因に、電気機械や一般機械で大幅な下方修正が続いていることから、全体では3年振りの減益計画となっている。また、売上高経常利益率も、電機機械・一般機械の大幅な悪化を主因に、3年振りに低下する見通し。

また、企業倒産は、建設業や製造業を中心に小口倒産が多発しており、件数、負債総額とも引き続き高水準で推移している。

県内金融機関の貸出動向をみると、個人向けが住宅ローンを主体に前年を上回っているものの、一般事業法人向けが資金需要の低迷を反映して減少傾向にあることから、前年割れで推移している。一方、預金動向は、法人預金が低調に推移しているものの、個人預金が流動性を中心に順調な吸収を持けていることから、堅調に推移している。

以上

東海地区金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、静岡、岐阜、三重)の景気は、悪化の様相を呈している。

最終需要の動向をみると、輸出がやや持ち直しており、設備投資は、業種・企業規模による格差を伴いながらも、総じてみれば底固さを維持している。しかし、住宅投資が減少を続けているほか、個人消費、公共投資も弱含んでいる。

こうした最終需要の動向を背景に、生産は減少を続け、雇用・所得環境も悪化傾向を強めている。この間、物価は弱含んでいる。

先行きについては、企業収益の悪化傾向や米国を中心とする海外の景気動向が、設備投資や輸出、生産といった企業活動にどのような影響を及ぼすか、注意深く見極めていく必要がある。また、雇用・所得環境の悪化が個人の支出活動に与える影響に関しても、今後どのような広がりをみせるか、警戒的にみていく必要がある。

金融面をみると、資金需要の一段の低迷を受けて、管内金融機関の貸出はこのところ減少の度合いを強めつつある。

個人消費・・・非耐久消費財支出では、百貨店売上高が一進一退の動きとなっており、スーパーの売上高は依然低調に推移している。また、耐久消費財支出では、乗用車販売が弱含んでいるほか、家電量販店の売上げも低調に推移している。この間、サービス支出では、旅行関連が、米国同時多発テロ等に伴う海外旅行の落ち込みを主因に、大幅な減少が続いている。

設備投資・・・IT関連業種や中小製造業では、操業度の低下や収益の悪化を背景として、投資案件の絞り込みや先送りの動きが引き続き増加している。また、非製造業でも、小売での大型案件一巡や電力の抑制スタンスを背景に総じて低調である。しかしながら、当地主力の輸送用機械では、モデルチェンジ対応や研究開発関連の投資案件を中心に堅調な投資スタンスを維持している。

住宅投資・・・新設住宅着工をみると、貸家が公営住宅の着工集中により大幅に増加したものの、分譲が一進一退の動きとなっているほか、持家は総じてみれば低調に推移している。こうした中、工事量は、既往の着工減少を反映して、引き続き減少傾向にある。

公共投資・・・公共工事の新規発注をみると、第二東名・名神高速道路関連が下支えとなっているものの、国および地方公共団体の歳出抑制スタンスを反映して、全体としては低調に推移している。こうした中、管内建設業者の公共事業関連の工事量は、これまでの受注の減少傾向を反映して弱含んでいる。

輸出・・・主力の米国向けは、電気機器や工作機械等では落ち込みが続いているものの、自動車や新製品投入のあった一部電子部品が持ち直している。一方、アジア向けは、鉄鋼、化学製品が現地における在庫調整の長期化から減少を続け、自動車、工作機械、電気機器、電子部品なども減少している。この間、欧州向けも、事務機器等一部の品目は堅調であるほか、自動車も幾分強含んでいるが、電気機器、工作機械などが減少傾向を辿っている。

生産・・・加工業種では、事務機器が新製品の販売好調から、二輪車がアジア向けの堅調等から、それぞれ底固い生産を続けている。また、自動車も、国内での新型車投入に伴い生産を幾分増加させている。しかし、工作機械、ビデオカメラは、ユーザー企業の収益悪化や消費マインドの悪化を背景とした国内需要の低迷に加え、米国向けを中心に輸出が落ち込んでいることから、減産を強めている。また、電動工具、フォークリフトも内外需要の減少から減産に取り組んでいる。この間、ICパッケージは新製品投入もあって持ち直しているものの、電子部品組立機は内外需要の低迷から低水準の生産を続けている。

素材業種では、棒鋼が輸出向けの上積みで横這いを維持しているものの、化学製品は輸出を中心とした需要減少を主因に、住宅向け窯業製品(瓦、衛生陶器、タイル)は国内最終需要の減少を背景に、それぞれ生産を抑制している。また、普通鋼・鋼板類、特殊鋼は主力の自動車向けが弱含み、洋食器も内外需要が落ち込んでいることから、いずれも減産に取り組んでいる。この間、紙・パルプ、繊維製品も国内最終需要の低迷等から減産を継続している。

雇用・所得・・・生産の減少を反映して、所定外労働時間の減少や有効求人倍率の低下が続いているほか、常用労働者数も前年を大きく下回っている。この間、1人当たり名目賃金は前年割れを続け、冬季賞与も前年を大幅に下回るなど、所得面の悪化も目立っている。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行京都支店

管内景気は、輸出の不振が続く中で、全国的な景気調整の影響が内需関連等の幅広い業種に及んでおり、これを受けた生産減少の影響が雇用・所得面を通じて、個人消費にも波及しているなど、一段と厳しさを増している。

すなわち、最終需要をみると、輸出はIT関連需要や海外景気の低迷等を背景に不振が続いている。企業収益の悪化や稼働率の低下が続く中で、設備投資も減少している。個人消費は、明暗区々の動きが混在しているが、総じてみると弱含んできている。また、公共投資が低水準で推移しているほか、住宅着工も一進一退の状況となっている。

こうした最終需要のもと、製造業における生産はなお減少を続けており、雇用調整の動きが拡がってきている。このため、有効求人倍率が低下傾向を辿っているなど、雇用・所得環境はさらに厳しさを増している。

最終需要の動きをやや詳しくみると、輸出は、IT(情報技術)関連における世界的な在庫調整の進展等から減少テンポが緩やかになっているものの、海外景気の減速等を背景に、なお減少している。

個人消費は、百貨店売上げが、店舗改装効果が持続する中、高級身の回り品や季節衣料を中心に底固く推移しているものの、チェーンストアの売上げは減少を続けている。乗用車販売(新車登録台数<除く軽自動車>)は、新型車投入効果の一巡などから、かなり弱含んでいる。家電販売は、主力のパソコンや白物家電の落ち込みを主因に、不冴えな商況が続いている。

この間、京都観光をみると、海外旅行客の国内回帰の動きがみられ、修学旅行客を中心に、入込客数の増加が目立っている。

設備投資は、全国的に景気調整が厳しさを増す中で、収益悪化等からIT関連をはじめ幅広い業種で投資削減の動きが拡がっている。

住宅投資は、大型分譲マンションの着工がみられるものの、一進一退の状況となっている。

公共投資は、一部大型工事の発注が散発的にみられるものの、基調としては引続き弱含んで推移している。

生産面をみると、全国的に景気調整が厳しさを増す中で、新規受注の落ち込みが、これまでのIT関連中心から内需関連業種等に拡がりつつあり、全体として一段と減少している。業種別には、電子部品では、ここにきて新規受注に持ち直しの兆しが窺われているものの、一段の在庫圧縮のため大幅減産を続けている。半導体・液晶製造装置も、新規受注が減少を続けているため、大幅な減産体制を継続している。IT関連以外でも、一般・精密機械等の生産水準が低下しているほか、金属、化学等の素材関連業種でも、在庫圧縮のため大幅減産を続けている。この間、地場産業の和装関連では、総じて需要が不振な中、大幅な減産が続いている。

企業収益をみると、非製造業では、一部小売業等で増益を計画する先があるものの、製造業が、IT関連需要の低迷長期化等を背景に大きく下振れているため、全体でも大幅な減益が見込まれている。

雇用・所得面をみると、生産活動の落ち込み等から、所定外給与が減少を続けているほか、有効求人倍率が低下傾向を辿っているなど、さらに厳しさを増している。

企業倒産は、件数、負債金額とも、高水準で推移している。

金融面をみると、民間金融機関の貸出は、増加運転資金、設備資金需要ともに引続き低迷しており、前年を下回っている。

預金は、法人預金は、手元流動性の取崩しや金融機関サイドの大口市場性預金の取入れ抑制等から伸び悩んでいる。一方、個人預金は、流動性預金を主体に堅調に推移している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行大阪支店

管内の景気は厳しさを増している。輸出・生産は引き続き減少しており、その影響は企業の設備投資に現れているほか、雇用・所得面を通じて個人消費にまで及び始めている。また管内企業では、米国はじめ海外経済に関する不透明感に加え、こうした内需全般の弱まりから、先行きの景気について厳しくみる向きが多い。

最終需要面の動きをみると、輸出は、情報関連財が世界的な在庫調整の進展等から総じて下げ止まりに向かいつつあるが、米国・欧州向けの資本財、東南アジア向けの生産財を中心に、全体としては減少が続いている。

設備投資は、競争力強化に向けて積極的な投資姿勢を維持する先もあるが、企業収益悪化の下で、情報関連に加え、それ以外の分野でも投資削減の動きがみられており、全体として減少している。

個人消費は、百貨店売上高が底堅く推移しているほか、乗用車販売も新型車の投入に伴い足許やや持ち直しているが、家電販売やスーパー売上高は減少を続けており、引き続き幾分弱めとなっている。

住宅投資は、大型分譲マンションの着工は底堅く推移しているものの、全体としては低調に推移している。

公共投資は、減少傾向を続けている。

生産は、こうした最終需要動向に加え、素材を中心に引き続き在庫過剰感が強いこともあって、大幅な減少が続いている。

企業収益(経常利益)は、輸出・生産の減少等に伴い製造業を中心に悪化している。

雇用・所得環境をみると、常用労働者数の前年割れ幅が拡大し、失業率が上昇傾向にあるほか、求職者の増加を主因に有効求人倍率の低下幅も拡大している。また賃金も緩やかに減少しており、全体として厳しさが一段と増している。

物価をみると、一部の素材品目を中心に、需給の緩和から下落を続けている。

企業倒産件数は、増加している。

企業金融についてみると、比較的業況の良い先では緩和基調が続いているが、業績低調な先では売上不振に加えて、信用力の低下もあって厳しさが増している。

金融面では、企業業績の悪化から後ろ向き資金の需要は増加傾向にあるものの、優良企業を中心とした借入金圧縮の動きや設備投資の減少等を背景に前向きの資金需要は引き続き弱まっており、貸出は減少を続けている。金融機関では、優良企業向け貸出や住宅ローンの伸長に向けた積極的な取組みを続ける一方、借り手の信用リスクをより慎重に見極めるとともに、リスクに見合った金利を適用するよう努めている。

預金については、個人預金を中心に底堅く推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行神戸支店

管内景気は、引続き厳しさを増しており、企業の景況感もさらに悪化している。

需要面の動きをみると、個人消費は百貨店売上が底固い動きをみせているほか、観光面でも入込客数の増加が目立つが、一方で、家電販売が引続き低調なほか、乗用車販売もこのところ弱含み傾向となるなど、明暗両様の動きが交錯している。住宅投資、公共投資は足許増加しているが、基調としては低調の域を脱していない。設備投資は全体とすればなお高水準の計画ながら、収益の悪化傾向などを背景に抑制的な動きが広がっている。

こうした国内最終需要の動向に加え、海外景気の減速による輸出の不振を背景に、生産は大幅な減少が続いており、雇用を巡る環境も厳しさを増している。

個人消費をみると、百貨店売上高は、歳暮セールの早期実施の奏効およびその反動などから昨年末にかけては一進一退の状況で推移したが、年明け後の初売は比較的順調な売れ行きを示した模様。一方、スーパー売上高は、主力の食料品・家庭用品の不振により、引続き前年割れが続いているほか、家電販売も、主力の白物家電やパソコンの落ち込みを主因に、引続き低調に推移している。また、乗用車販売は、このところ弱含み傾向を示している。

この間、観光面をみると、USJ効果や同時多発テロに伴う海外旅行から国内旅行へのシフトの動きを背景に、管内の宿泊客数は増加している。

設備投資は、高水準の計画ながら下方修正の動きが広がっている。短観(12月調査)によると、管内企業の設備投資は、製造業(前年度比+10.2%)、非製造業(同+38.0%)ともに高水準の計画ながら、企業収益の悪化などを背景に、下方修正の動きが広がっている(前回調査比修正率:製造業-2.0%、非製造業-2.6%)。

住宅投資は、分譲マンションが足許増加しているが、全体の基調としては減少している。

公共投資は、このところ前年を上回っているが、低調の域を脱していない。

生産は、大幅な減少が続いている。

造船では、高い操業度を持続しているものの、新規の受注引合いはこのところ停滞気味となっている。鉄鋼では、市況立直しを企図した生産調整の動きが強まっており、粗鋼生産の減少幅も拡大している。品目別にみると、自動車向け等の需要減少を背景として、薄板、線材、特殊鋼で減産体制が強化されているほか、条鋼類(H形鋼等)でも減産が続いている。

一般機械では、射出成形機、化工機がIT関連需要の低迷を主因に、また、建設機械、物流機械が公共事業や設備投資減少を背景に、生産水準が低下している。電子部品では、水晶振動子、半導体が、携帯電話・パソコン向けの需要不振から低水準での操業を続けている。コンデンサーも、家電向けを中心に受注が減少し、生産水準は低下している。

食品では、狂牛病問題の影響を受けて、食肉加工の生産水準が低下している。

地場産業では、ケミカルシューズで秋冬物の売上が低迷したほか、播州織や豊岡鞄においても、個人消費の低迷や輸入品との競合により生産水準が低下しているなど、総じて厳しい状況が続いている。

雇用・所得環境は、常用雇用指数、所定外労働時間、名目賃金など各指標において悪化が続いているなど、厳しさを増している。

物価は、引続き下落している。

企業倒産は、依然として高水準であり、負債額は大口倒産が多発したことから大幅増加となっている。

金融面をみると、貸出は、依然として企業の前向きな資金需要が乏しいことなどから低調な動きが続いている。

貸出約定平均金利は、僅かながら低下している。

預金は、法人および公金預金が減少している一方、個人預金が引続き堅調に推移していることから、全体ではほぼ前年並みで推移している。

以上

中国地区金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行広島支店

概況

中国地区の景気は後退を続けている。

(前回<3か月前>との比較)

  • 概ね変化がみられない項目
    1. 住宅投資は減少している。
    2. 公共投資は減少傾向にある。
    3. 輸出は基調としては減少傾向を辿っている。
    4. 生産は減少している。
    5. 企業マインドは足許若干改善しているものの、先行きは悪化を見込んでいる。
  • 悪化がみられる項目
    1. 個人消費は雇用・所得環境の悪化を背景に、弱まってきている。
    2. 設備投資については、投資スタンスが一段と慎重化している。
    3. 雇用・所得環境は一段と厳しい状況にある。
    4. 企業収益は悪化している。

1.実体経済

(1)最終需要の動向

個人消費は雇用・所得環境の悪化を背景に、弱まってきている。

百貨店は、一部雑貨に動意がみられたものの、歳暮商戦が盛り上がりに欠く展開となったほか、スーパーは食料品等の低迷から前年割れが続いている。また、携帯電話の通信・通話料も増勢が鈍化してきている。この間、パソコンや白物家電が低調に推移している。

設備投資については、投資スタンスが一段と慎重化している。

13年度の設備投資計画(12月調査)をみると、投資スタンスが一段と慎重化し、前年度比△4.7%の減少となっている。

住宅投資は減少している。

新設住宅着工戸数をみると、持家の大幅な前年割れを主因に、減少している。

公共投資は減少傾向にある。

公共工事請負額をみると、足許若干増加しているものの、年度初来累計では前年比△3.5%と前年を下回っており、減少傾向にある。

輸出は基調としては減少傾向を辿っている。  輸出(通関輸出金額を輸出物価指数で調整したもの)をみると、米国向け自動車輸出が一時的に増加しているものの、ウェイトの高いアジア向けが前年を下回っていることから、基調としては減少傾向を辿っている。

(2)生産の動向

生産は減少している。

業種別にみると、造船は高目の操業を持続しているが、電気機械や鉄鋼等その他製造業では生産水準が低下している。

(3)雇用・所得環境の動向

雇用・所得環境は一段と厳しい状況にある。

常用雇用者数の前年割れが続いている中で、有効求人倍率の低下が続いているほか、所得面についても冬季賞与が減少しているなど、雇用・所得環境は一段と厳しい状況にある。

(4)企業の動向

企業マインドは足許若干改善しているものの、先行きは悪化を見込んでいる。

12月短観(中国地区)からみると、足許の景況感は若干改善したものの、先行きは悪化を見込んでいる(業況判断D.I.〈「良い」−「悪い」〉13年9月△42%→12月△41%→ 14年3月予測△48%)。

企業収益は悪化している。

12月短観から13年度計画をみると、前年度比△11.8%と9月時点に比べ減益幅を拡大させている。なお、振れの大きい自動車関連を除くベースでみると、同△23.4%の減益計画となっている。

2.金融動向

(1)貸出の動向

貸出は低迷を続けている。

内訳をみると、個人向けは、借り換え案件を中心とする住宅ローンの推進などから底堅く推移している。一方、法人向けは、運転・設備資金ともに資金需要が乏しいことから低調に推移している。

(2)預金の動向

預金は概ね横這いで推移している。

内訳をみると、法人預金は、定期性預金の減少から低調に推移している。一方、個人預金は流動性預金を中心に堅調に推移している。

以上

四国地区金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、悪化している。すなわち、公共投資は底固い動きとなっているものの、輸出、住宅投資が引き続き減少しているほか、設備投資も計画の先送りや減額の動きが拡がっている。さらに、雇用や所得環境が悪化傾向を強めている中で、個人消費はこのところ弱目の動きが目立ってきている。こうした需要動向を受けて、生産は一段と落ち込んでいる。この間、企業マインドはさらに悪化し続けている。

需要動向

最終需要についてみると、公共投資は高速道路網整備や空港拡張等の大型工事もあって、底固く推移している。もっとも、輸出が欧米向け、アジア向けとも引き続き減少しているほか、住宅投資も低調な状況が続いている。設備投資は紙・パルプ等で合理化や能力増強投資がみられるものの、計画の先送りや減額の動きが拡がっており、全体としては減少傾向を強めている。個人消費では、百貨店の売上げは一部店舗で増床やリニューアル効果があり、前年を上回っているものの、量販店が依然として前年割れの状態にあるほか、家電販売もパソコンや大型家電製品の落ち込みを主因に低調な動きとなっている。さらに、これまで比較的底固く推移してきた乗用車(除く軽)販売も減少に転じるなど、全体としては弱目の動きが目立ってきている。

この間、米国同時多発テロ事件を契機として旅行需要の国内シフトがみられているが、四国内の主要観光地への波及効果は限定的なものとなっている。

生産

企業の生産動向をみると、全体の水準は引き続き落ち込んでいる。すなわち、造船(外航船)では、高操業を継続しているほか、一部化学(無機化学、アクリロニトリル)でも、輸出を主因に高水準の生産を続けている。一方、電子部品(半導体、リードフレーム材)、紙・パルプ(特殊工業紙、印刷用紙)、化学(プリント基板用硬化剤、半導体封止材料等)では、海外景気の減速を受けて操業度を引き下げている。また、鉄鋼や一般機械(建設用機械、産業・運搬機械等)では、内外の需要低迷を背景に減産を継続している。さらに、繊維(縫製品、タオル)では、需要の長期低迷、海外製品の流入増などから、多くの先で低操業を続けている。このほか、木材・木製品(収納関連製品)、窯業・土石(研磨材、住宅エクステリア製品)等、幅広い業種で生産水準を引き下げている。

雇用

雇用情勢をみると、新規求人が減少しているほか、製造業を中心に人員削減等の動きが続いていることから、有効求人倍率は低下している。

金融

金融面をみると、預金については、法人預金は定期性を中心に低調なものの、個人預金が流動性を中心に堅調に推移していることから、安定した伸びを持続している。一方、貸出は企業の資金需要が低調なことから、前年割れで推移している。

以上

九州地区金融経済概況

2002年 1月21日
日本銀行福岡支店

九州経済をみると、全体として調整が厳しさを増している。

すなわち、設備投資がさらに減少しているほか、輸出も減少を続けている。また、住宅投資は低調に推移しており、公共投資も減少を続けている。一方、個人消費をみると、弱い動きを示す指標が多い中で、百貨店等の売上や観光面では年始にかけて改善を示す動きがみられた。こうした中で、生産は減少傾向にあり、雇用面でも厳しさを増している。

最終需要をみると、設備投資は、電気機械、化学、窯業・土石等の製造業を中心に、IT関連需要の落ち込みや収益悪化等により、また、輸送用機械や小売等における前年度の大規模投資の反動減という事情もあって、全体としてみればさらに減少している。

輸出は、電気機械や化学などで、アジア、米国向けを中心に減少を続けている。

住宅投資は、持家を中心に着工が減少を続けており、全体として低調に推移している。

公共投資は、新規工事発注が低調に推移していることから、減少を続けている。

個人消費をみると、家電販売は、パソコン売上が基本ソフト発売により減少幅を縮小しているものの、全体としてはなお前年を下回っているほか、スーパーの売上高も減少を続けている。また、乗用車販売が弱めの動きとなっているほか、海外旅行も米国の同時多発テロ事件以降前年を下回っている。この間、百貨店売上高は地域によって差はあるが、多くの先で年末年始、身回り品や季節商品などの売上が伸びており、全体では増加している。また、温泉などの観光地では観光客の来訪が増えているほか、米国同時多発テロ事件以降落ち込んでいた沖縄への旅行客数も下げ止まりつつある。

生産面をみると、自動車が高操業を継続しているほか、電気機械では一部で新製品の増産がみられ、全体として減少ペースが緩やかになりつつある。しかしながら、鉄鋼、一般機械、化学など多くの業種で減産を継続しており、全体としては減少傾向にある。

雇用面をみると、新規求人数は製造業で電気機械を中心に大幅な減少を続けているほか、非製造業でも減少している。一方、新規求職者数は企業の早期退職の実施や企業倒産などを背景に増加傾向にある。こうした結果、有効求人倍率が低下傾向にあるなど、全体として厳しさを増している。

物価面をみると、消費者物価は引続き弱含みで推移している。

企業倒産をみると、倒産件数は昨年秋以降増加傾向にあり、また、負債総額は大型倒産の発生から前年を大きく上回っている。なお、昨年中の倒産企業の負債総額合計は統計開始(昭和38年)以来、初めて1兆円台乗せとなった(過去のピークは平成12年 7,721億円)。

金融面をみると、銀行預金(譲渡性預金を含む)は、前年水準を上回って推移しており、個人流動性預金を中心に引続き堅調である。銀行貸出は、資金需要の低迷基調が続いていることから、前年水準を下回っている。

以上