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全国10支店金融経済概況 (1998年 4月)

1998年 4月20日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気は低迷の度合いを強めており、企業経営者のマインドも売上・収益の下振れ等を背景に大きく悪化している。最終需要の動向をみると、公共投資は9年度補正予算に伴う工事の発注進捗から前年を上回っているものの、住宅投資が引続き大幅に落ち込んでいるほか、個人消費も所得環境の不芳等を映じた家計支出の抑制から低迷状態が長期化している。また、設備投資についても非製造業を中心に慎重なスタンスで臨む先が多い。この間、企業の生産は、プラント関連や電子部品の一部では高操業を続けているが、建設資材関連で低水準の生産を余儀なくされているほか、低調な個人消費を映じ自動車部品、紙・パ等でも前年を下回る生産となるなど、全体としても弱含んでいる。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、食料品は比較的底堅い売行きを示しているが、中高年層を中心に消費者の生活防衛意識が強い中で、高額衣料、家具、宝飾品や耐久消費財を中心に販売は不振を託っているほか、飲食需要も法人筋の経費削減等を映じ落ち込んでいる。この間、観光面をみると、来道客数は全体では前年を上回って推移しているが、地域別の入り込み客数に格差が生じているほか、全般に短期化の傾向が窺われる。

公共投資を公共工事請負額でみると、国、道からの工事発注が増加しており足許は前年を上回って推移している。

住宅投資は、持家、分譲ともに落ち込んでおり、新設住宅着工戸数は大幅前年割れの状態が続いている。

10年度の設備投資計画をみると、一部の大手メーカーで能増投資の動きがみられるが、非製造業を中心に足許の売上・収益の悪化を眺め慎重な投資スタンスで臨む先が多く、全体では前年度を下回る計画となっている。

生産動向をみると、プラント関連の鋳鍛鋼製品で海外向け出荷の好調から、また、電子部品で移動体通信関連の受注増から、それぞれ高操業を維持しているものの、建設資材関連(建築用材、電炉、セメント、生コン等)で建設工事の減少に伴い低水準の生産を余儀なくされているほか、食料品(ビール、水産加工品等)、自動車部品、自動車用特殊鋼、家具で個人消費の低調から、紙・パで広告需要の減少からそれぞれ前年を下回るなど、全体としても弱含みの展開となっている。

9年度の企業収益については、建設需要や個人消費の低迷等を背景に製造業、非製造業ともに下振れしており、前年度比減益見込みとなっている。

物価動向をみると、消費者物価は昨春の消費税率引上げや9月の医療保険制度の見直しなどから前年比上昇しているが、こうした要因を除いたベースではほぼ横這い圏内で推移している。この間、地価は、住宅地、商業地ともに低下している。

雇用面をみると、企業の人員過剰感の高まり等を背景に低水準の有効求人倍率が続いている。

金融面をみると、預金は一部行からの個人預金の流出一巡や特別減税分の一時的な滞留に加え、法人預金でも手許資金を厚目に温存する動きがみられたこと等から、やや持直し気配にある。また、貸出は道の制度融資の利用増等もあって前年比伸び率は幾分回復している。なお、道内における金融機関の貸出態度は、年末・年初頃に比べてやや緩和しつつあるが、企業業績の悪化等を眺め新規貸増しには慎重な姿勢で臨む先が少なくない。

以上

東北地区金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行仙台支店

東北地区の景気は後退している。

公共・住宅投資が減少傾向にあることに加え、個人消費も、所得環境・雇用情勢が厳しさを増す中で、耐久消費財を中心に低迷の度合いを強めており、先行きの設備投資計画も前年を下回っている。

企業の生産活動も、こうした動きに加え、東南アジア向け輸出の不振から、減産ないし生産水準を一段と引き下げる動きが広がっており、このため雇用情勢もさらに悪化している。また、企業倒産も増加傾向にある。

最終需要動向をみると、個人消費については、百貨店売上高では、家具、宝飾品といった値嵩品の販売が一段と落ち込んでいることに加え、春物衣料の動きも鈍く、総じて低調に推移している。また、家電販売は、情報・通信機器(パソコン、ワープロ、PHS)や白物家電(冷蔵庫、洗濯機)を中心に一段と低調度合いを強めているほか、乗用車販売でも、新型RV車の一部に動きがみられるものの、大方の車種は不振を続けている。

公共投資は、大型工事の発注が嵩んでいることから一時的に上振れているが、基調としては減少傾向にある。

住宅投資も、住宅着工戸数が持家を中心に減少傾向にある。また、9年度第4回住宅金融公庫融資申込受理戸数も、引き続き大幅な前年割れとなっている。

この間、10年度の設備投資計画をみると、大方の業種で業況不振を背景に投資を見送っているため、製造業、非製造業とも前年を下回る計画となっている。

主要製造業の受注・生産動向をみると、電気機械では、パソコンが新モデル投入のため一時的に生産水準を引き上げているが、その他の幅広い品目(半導体メモリー・ロジックIC、OA機器、電子部品、AV機器関連)では内需の低迷から生産水準を引き下げている。また、これまで好調であった通信機器においても、移動体通信事業者の投資一巡から、徐々に生産水準を切り下げる動きがみられる。

自動車関連業種では、内需の低迷や東南アジア・韓国向けの不振から、低操業を継続ないし減産を強化している。

消費関連業種では、衣料品が末端需要の不振から減産をさらに強化しているほか、時計、ミシンも生産水準を徐々に引き下げている。食料品でも、冷凍・レトルト物は比較的高い操業を維持している一方、練製品では土産品需要の鈍化から生産抑制の動きがみられている。また、段ボール原紙では、電気製品、衣料品の梱包向け需要の不振から減産を強化している。

設備関連業種(鋳物、切削工具、工場ラインシステム)では、国内自動車向けが設備更新需要の不振から低操業を続けているほか、その他の産業向けも投資意欲の減退から頭打ちないし生産水準を引き下げる動きがみられている。半導体製造装置では、半導体メーカーの投資先送りの影響から、生産水準を徐々に切り下げている。

建設関連業種(鉄鋼、窯業・土石、住宅資材)では、公共・住宅投資の減少傾向を背景とした在庫積み上がりから、減産を継続ないし一段と強化している。

こうした状況下、企業の売上・収益動向をみると、9年度は製造業・非製造業とも下方修正され、全産業では減収減益の見込みとなっている。

10年度については、製造業では、耐久消費財の販売不振、公共・住宅投資の低調持続、東南アジア向け輸出の減少から減収の見通しながら、経常利益は、コスト削減努力の奏効や原材料市況の下落による採算改善を期待して増益の見通しとなっている。非製造業でも、建設が公共・住宅投資の低調持続から減収減益の見込みにあるが、その他の業種では、個人消費の回復やリストラ効果に期待していることから、増収増益の見通しにある。

労働需給をみると、求職者数が、事業主都合離職者の増勢などから増加傾向にあるほか、求人数も、建設業、製造業を中心とした求人意欲の後退を背景に減少傾向にあることから、有効求人倍率は10年振りの低水準にある。また、所定外労働時間も、企業活動の鈍化から弱含んでいる。

企業倒産をみると、建設業、卸・小売業、サービス業を中心に、件数、金額とも前年を大きく上回って推移している。

金融面をみると、預金面では個人が底固いものの、法人、公金、金融機関が低調に推移している。また、貸出面では、個人・法人向けともに引き続き低調に推移している。

以上

北陸地区金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行金沢支店

管内の景気は、国内需要の減速傾向が強まる中で、企業マインドや雇用環境等も悪化するなど、後退感が窺われる。すなわち、輸出はアジア経済の影響が顕現化しつつも堅調を維持しているが、設備投資に頭打ち感が生じてきている。個人消費については、消費者の支出マインドが慎重化していることから低迷が続いている。また、公共投資や住宅投資も低調裡に推移している。こうした最終需要の動向を映じて、鉱工業生産指数は弱含みで推移しており、その影響が、企業収益や雇用・所得環境にも波及してきている。この間、「日銀短観」(10年3月調査)における管内企業の業況判断をみると、家計支出(個人消費、住宅投資)との繋がりの深い業種(繊維、アルミ建材、紙・パ、卸・小売、旅館・ホテル等)において景況感が後退したため、前回調査時に比べると、製造業、非製造業ともに大幅に悪化した(全産業:前回△20%→現状△40→先行き△46%)。

需要項目別の動きをみると、個人消費では、百貨店やチェーンストアの売上げが、家庭用品や衣料品の販売低調などから、全般に盛り上がりを欠いている。また、乗用車新車登録台数は前年割れの状況が続いているほか、家電販売も新設住宅着工戸数の低迷もあって白物家電(冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ等)など耐久消費財を中心に低調裡に推移している。こうした動きは、消費税率引き上げ、医療費負担増といった実質所得の減少要因だけではなく、相次ぐ金融機関や一般企業の破綻等が、雇用不安を通じて消費者の支出マインドを一段と慎重化させたことによるものと考えられる。この間、観光面をみると、温泉旅館では団体・法人客を中心に宿泊客数が減少傾向にあるなど、全般に低調裡に推移している。

設備投資については、個人消費の低迷やアセアン諸国等の景気減速等が長引くなど、先行き不透明感が強まっている中で、幅広い業種において設備投資計画を抑制的に見積もるなど、全体的に弱い動きとなっている。この間、短観における10年度設備投資計画をみると、製造業が4年振りに、非製造業が4年連続で前年割れとなるため、全産業では3年振りに前年を下回る見通し(設備投資計画前年比:製造業△5.4%、非製造業△29.7%、全産業△12.4%)。

輸出については、アセアン諸国や韓国の景気減速の影響もあって、増勢を鈍化しつつあるが、米国、欧州を中心とした海外景気の好調を背景に、総じて堅調を維持している。最近の動向を業種別にみると、合繊織物は、米国向けが堅調に推移しているものの中国向け(持ち帰り輸出)や韓国向けで減少していることから、船積み数量は前年を下回る水準で推移しているが、工作機械を中心とした設備機械関連では米国向け等が好調に推移しているほか、電子部品も欧州向けの携帯電話用部材を中心に高水準を維持している。

公共投資は財政支出抑制を映じて低迷基調が続いているほか、住宅投資も新設住宅着工戸数が持家を中心に低水準で推移している。

生産動向をみると、工作機械では欧米向け輸出や自動車メーカーの設備投資を中心とした国内需要の堅調を背景に高操業を続けている。一方、繊維機械、プレス機械でも堅調な生産が続いているが、それぞれ東南アジア向け輸出、自動車メーカー向けを中心に受注が減少してきている。電気機械では、電子部品が携帯電話やパソコン関連部材向けを中心に、またOA機器が企業の情報化関連投資の増勢一服から、いずれも生産水準を引き下げている。建設機械でも東南アジア向け輸出や公共工事減少に伴う需要低迷から低操業を余儀なくされており、軸受も自動車メーカーからの需要減少から生産水準を引き下げている。合繊織物も、末端衣料品の低調な売れ足や在庫積み上がりを映じて、染色加工、織布ともに抑制的な生産を続けている。建設関連のアルミ建材では、住宅投資やオフィスビル建設の減少から操業度を引き下げている。また、素材関連では、特殊鋼、紙・パルプ、苛性ソーダ、界面活性剤など全般に受注の減少や在庫増を背景に生産水準を引き下げており、これまで堅調に推移してきた医薬品も医家向け抗生物質を中心に生産調整を継続する先がみられている。

この間、雇用面をみると、新規求人数が製造業や建設業などを中心に減少に転じているほか、有効求人倍率(含むパート)も急速な低下を続けている。また、雇用者所得も、生産の弱含み傾向などを反映して所定外労働時間が前年割れとなっている中、所定外給与を中心に増加テンポが鈍化している。

金融面をみると、預金は、個人預金では、定期性預金が低迷しているが、流動性預金が堅調な伸びを維持していることから、総じて底固く推移している。一方、法人預金は、企業業績の陰りや財務リストラ圧力等を受けて、依然低調に推移している。

貸出は、個人向けが消費者ローンの低迷から小幅な伸びに止まっている。また、法人向けも、小口の設備資金需要が散見されるものの、運転資金需要の低迷等から、低調な地合いが続いている。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済をみると、景気停滞感が一段と強まっている。すなわち、最終需要面では、公共投資や住宅投資が減少を続けているほか、個人消費についても耐久消費財を中心に低迷している。この間、輸出がアジア向けを中心に減少に転じたほか、これまで堅調な伸びを続けてきた設備投資も、98年度については慎重な計画となっている。県内企業の生産は、工作機械でなお引き続き堅調に推移しているが、その他の業種では、低迷する個人消費の影響などから、生産水準を引き下げる動きが広がっている。この間、労働需給面では依然緩和した状態が続いている。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、消費者心理の慎重化もあって引き続き低迷している。すなわち、乗用車販売が減少を続けているほか、家電販売も低調に推移している。また、百貨店売上高も、衣料品等の売れ行きが鈍く、前年割れを続けている。この間、レジャー関連では、国内・海外旅行ともに低調に推移している。

設備投資面についてみると、県内製造業の97年度設備投資額(実績見込み)は、一般機械、輸送用機械を中心に3年連続で前年を上回る見込みにある。また、非製造業の97年度(実績見込み)も、建設、運輸・倉庫で積極的な計画となっていることから、3年振りの増加が見込まれている。しかし、98年度については、現段階では慎重な計画の先が多く、製造業、非製造業ともに前年を下回る抑制的な計画となっている。

住宅投資は、持家、貸家で引き続き大きな前年割れを続けているほか、分譲も減少傾向にある。公共投資についても、財政支出の抑制傾向を反映して、国、県、市町村ともに減少傾向にある。

輸出面では、自動車が引き続き堅調に推移しているが、半導体部品を中心とした電気機械や一般機械等で減少したことから、横浜港通関輸出額は前年割れに転じた。輸入についても、自動車等の減少から前年割れとなっている。

県内企業の生産動向をみると、個人消費の低迷等の影響が広がっている。すなわち、工作機械は国内・海外での堅調な設備投資を受けて堅調に推移している。しかし、乗用車および自動車部品では、国内販売の低迷から生産水準を引き下げる動きが広まっている。また、パソコンについても、個人向け販売の不振から生産水準を引き下げているほか、最終需要の低迷等の影響を受けて、鉄鋼、化学が弱含みで推移し、半導体関連などでも生産を抑制する動きが広がりつつある。

雇用面をみると、製造業、非製造業ともに雇用の過剰感は根強く、県内常用雇用者数は前年割れを続けるなど、労働需給は引き続き緩和した状態にある。

金融面をみると、企業向け貸出の低迷を主因に、全体の貸出は低調に推移している。預金面では、法人預金は低調に推移しているが、個人預金が流動性預金を中心に高い伸びを示していることから、全体でも堅調に推移している。

以上

東海地区金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の最近の経済動向をみると、個人消費は、低調な動きが続いており、住宅投資、公共投資も減少を続けている。また、輸出については、欧米向けが堅調を持続しているものの、アジア向けが減少していることから、全体として弱含みとなっている。さらに、設備投資についても、増勢が鈍化している。

こうした需要動向の下で、在庫の過大感が強まっており、生産は減少している。また、労働需給も一段と緩和している。この間、主要商品市況は需給緩和を反映して軟調となっている。以上のように、管内景気は後退色が強い状況にある。

個人消費は、低調な動きが続いている。すなわち、耐久消費財については、自動車販売が低調に推移しているほか、家電の売上げも伸び悩んでいる。また、春物衣料の販売も不振となっている。さらに、サービス関連では、旅行需要が、海外旅行の減少から前年水準を下回っているほか、外食の売上げも減少している。

設備投資は、全体として増勢が鈍化している。すなわち、製造業については、中小企業の一部に弱い動きがみられるものの、自動車関連の大企業を中心に新製品開発投資が活発であり、工場の新増設の動きも続いている。一方、非製造業では、新店舗建設や物流拠点整備の動きは堅調ながら、移動体通信の大型投資が一巡しているほか、電力も抑制スタンスにある。

住宅投資の動向をみると、持家の新規着工が引き続き低調なほか、分譲も、販売の低調や在庫の過大感から着工が低水準で推移していることから、工事量は、全体として減少している。

公共投資については、公共工事請負額は、前年水準を下回っており、建設業者の官庁関連の工事量や関連資材の出荷も、既往の低水準の発注を反映して、引き続き減少している。

輸出は、欧米向けが資本財を中心に堅調を続けているものの、アジア向けが、消費関連財、資本財、生産財ともに減少していることから、全体として弱含みとなっている。

こうした需要動向の下で、生産は、減少している。すなわち、自動車を中心とする耐久消費財関連が、国内販売の低調等から、減産スタンスを強めているほか、鉄鋼等の素材業種でも、最終需要が低調に推移する中で、在庫が積み上がってきていることから、減産を進めている。この間、工作機械が、欧米向け輸出の好調から増産を進めており、情報通信関連でも、総じて高操業を持続している。

雇用面では、労働需給は、鉱工業生産の減少等を背景に、一段と緩和している。すなわち、所定外労働時間や新規求人数は、引き続き減少しており、有効求人倍率は、一段と低下している。こうした中で、常用雇用者数も、このところ前年を下回って推移している。

物価面では、主要商品市況は、末端需要の不振等から、鉄鋼、合板等を中心に軟調となっているほか、消費者物価も、このところ前年比上昇率が低下している。

金融面では、中堅・中小企業向け貸出が低い伸びを続けているほか、住宅ローン等の個人向け融資も伸び悩むなど、低調に推移している。地元金融機関は、基本的には前向きの貸出姿勢を維持しているが、信用リスクや取引採算を重視する姿勢が強まっている。この間、貸出金利は、既往最低圏内での動きが続いている。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行大阪支店

最近の管内経済動向をみると、国内需要では、家計支出の低迷が続いているほか、企業の設備投資も弱含みに転じている。また、輸出もアジア経済変調の影響から、頭打ちとなっている。こうした最終需要の動きを受けて、生産は減少を続けている。このように景気悪化の度合いは強まっており、これまでのところ下げ止まりの気配が窺われていない。

最終需要面の動きをみると、輸出は、欧米向けが、工作機械、情報家電を中心に増加しているものの、アジア向けは、現地消費の低迷からAV機器、自動車等が減少しているほか、現地プロジェクトの遅延から資本財も下振れており、全体としても頭打ちとなっている。

設備投資は、製造業では、戦略分野強化の動きは続いているものの、収益環境の悪化等を背景に投資スタンスは慎重化している。また、非製造業でも、業績の悪化等を背景に、抑制的な動きが続いている。

個人消費は、特別減税の効果もあって、旅行など一部に持ち直しの動きがみられるが、自動車販売が弱含んでいるほか、百貨店でもブランド衣料等の高級品販売が一段と減少しているなど、全体としては下げ止まりの兆しがみえない。住宅投資も低調な地合が続いている。

こうした中、公共投資は減少を続けている。

生産面をみると、工作機械では増産が続いているが、白物家電、エアコン、自動車部品(ベアリング等)、鋼材、ガラス、合板等の多くの品目で、需要の不振に在庫調整の動きも加わって減少が続いており、全体として減産幅がやや拡大傾向にある。

雇用・所得面をみると、生産および最終需要の動向を映じて、弱含みの動きが続いている。今春の賃上げ率についても多くの業種で前年を下回る妥結となっている。

物価面については、国内市況関連品目では、鋼材等の建材品目が需要不振を反映して下落するなど、弱含みの動きとなっている。

なお、企業倒産は、中小、零細企業を中心に増加している。

金融面をみると、貸出については、住宅ローンの増勢鈍化や経済活動の下振れに伴う企業需資の不冴えから、総じて低調な地合が続いている。管内金融機関の貸出態度は、自己資本比率対策に目途がついたことで、3月以降はやや緩和したとの指摘も一部に聞かれているが、全体としてみると、昨年末来の慎重姿勢に大きな変化はみられていない。

預金については、個人預金が総じてやや持直し気配にあるほか、法人預金も、大企業を中心とした手許流動性積み上げの動きを映じて、前年比減少率が若干縮小傾向にある。

なお、3月27日には、和歌山県商工信組の紀陽銀行に対する事業譲渡が発表されたほか、4月13日には、田辺信用組合がさくら銀行に事業を譲渡した。

以上

兵庫県内金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行神戸支店

県内景気をみると、個人消費や住宅・公共投資が引続き低迷しているほか、東アジア向け輸出も大幅に落ち込んでおり、企業の収益見通しは幅広い業種で下振れている。このため、企業マインドも弱気化しており、景気は後退色を一段と強めてきている。

個人消費は、明石海峡大橋の開通から、ホテル等一部で客足が増加しているものの、百貨店、スーパー、乗用車販売等幅広い業種で売上は伸び悩んでおり、引続き低調裡に推移している。

住宅投資は、所得の先行きに対する不安感が高まるなかで、貸家を中心に供給過剰感が強まっており、大幅前年割れが続いている。また、公共投資も、震災復旧関連工事の一巡等を背景に引続き前年を大幅に下回っている。

この間、10年度の設備投資は、収益見通しの下振れ等を背景に、製造業を中心に慎重化しており、2年連続で大幅減少した9年度をさらに下回る計画となっている。

こうした下、管内企業の生産は弱含みで推移している。造船が豊富な受注残を抱え高水準の操業を継続しているものの、鉄鋼が減産姿勢を強めているほか、射出成形機も東アジア向け輸出の落ち込みから生産を抑制してきている。また、自動車部品、電子部品(コンデンサー)も自動車、家電メーカー等が減産を継続している下で、前年を大幅に下回る生産を余儀なくされている。

雇用面は、売上不振や稼働率低下から人員余剰感が強まっており、有効求人倍率は昨年11月以降再び低下傾向を強めている。

金融面をみると、貸出は、一部金融機関で大企業向けを中心に圧縮を図る動きがみられるものの、政府系金融機関、信用金庫が受皿となっており、前年比伸び率はここ数ヵ月ほぼ横這いで推移している。また、預金は、個人預金を中心に比較的底固く推移している。この間、企業倒産は、食品、衣料品、建設業等で大型倒産が相次いだため、件数、金額とも前年を大幅に上回っている。

以上

中国地区金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行広島支店

中国地区の景気をみると、個人消費を中心とした内需の低迷が続いているほか、輸出にも減速の兆しが窺われており、その影響が企業収益をはじめ、生産、雇用にも下押し圧力として波及してきている。こうした状況下、企業マインドもこのところ一段と悪化しており、全体として景気は停滞を続ける中で厳しさを増してきている。

最終需要の動向をみると、個人消費は、消費者マインドの慎重化等を背景に、引き続き低迷している。すなわち、百貨店売上高が6か月連続で前年割れとなっているほか、スーパー売上高、乗用車販売、家電販売も、9年4月以降、低調に推移している。また、レジャー関連については、総じてみれば弱含みで推移している。

設備投資を中国地区企業短期経済観測調査結果(10年3月)からみると、需要低迷や企業収益の悪化等を背景に投資スタンスが慎重化しており、全産業ベースの9年度実績見込みは前年比−3.5%と9年12月調査時と比べて減額修正されている。また、10年度計画も、自動車、造船、リース等の一部業種では前年を上回るものの、製造業、非製造業ともほとんどの業種が前年を下回ることから、同−18.0%とかなり控え目なものとなっている。

住宅投資について新設住宅着工戸数をみると、大幅な減少を続けている。

公共投資について公共工事請負額をみると、山陰地方における地方公共団体の発注増加を中心に、均してみると前年水準を上回って推移している。

輸出については、アジア向けが現地の経済混乱の影響から大幅な前年割れとなっているほか、3月短観で10年度輸出計画をみると、伸びが大きく低下する見通しとなっており、全体としては減速の兆しが窺われている。

こうした最終需要のもと、生産は弱含みとなっている。主要企業の生産動向をみると、造船、工作機械、電子部品(半導体等)、弱電部品(液晶表示装置等)、情報通信・オーディオ機器(MD、携帯電話等)では高操業を続けているが、自動車・同部品、産業機械、鉄鋼、石油化学等の多くの業種では、内需低迷の影響やアジア地域からの受注減少を背景に生産水準を引き下げる動きが拡がっている。また、縫製、木材・木製品は在庫の積み上りから生産調整を行っている。

雇用面をみると、常用雇用者数が前年を下回っているほか、製造業の所定外労働時間も減少傾向にあり、また、有効求人倍率も3か月連続して前月の水準を下回るなど、雇用・所得環境は全体として弱含み傾向を強めている。

この間、企業収益を中国地区企業短期経済観測調査結果(10年3月)からみると、製造業、非製造業とも9年度計画を下方修正する動きが拡がっていることから、前年を下回る見込みとなっている。一方、10年度計画については、製造業を中心に前年を上回る計画となっている。

また、企業マインドについては、製造業、非製造業ともほとんどの業種で業況感が悪化しており、先行きについても一段の悪化を見込んでいる。

金融面をみると、貸出については、企業向けが非製造業の一部で設備需資がみられるものの総じて盛り上がりに欠けるほか、個人向けも伸び悩んでいることから、全体としては低い伸びが続いている。

一方、預金については、法人が定期性を中心に低調に推移しているものの、ウェイトの高い個人が堅調とあって、全体としては堅調に推移している。

以上

四国地区金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、個人消費、住宅投資が引き続き低迷し、企業の生産や雇用でも 弱含む動きが拡がるなど、停滞感を強めている。こうした状況下、企業マインドはここへきて大きく後退している。

需要動向

最終需要の動向をみると、輸出は、東南アジア向けが減少している一方で、米国、欧州向けは堅調を持続しており、総じてみるとなお高目の水準を維持している。

公共投資は、既往発注分を含む工事量では、高速道路網の整備、延伸などの土木関連や電源開発関連の継続案件を中心として、引き続き全国比高目の水準を維持しているが、公共工事請負額自体は単月でのフレを伴いつつ減少してきている。住宅投資については、先行きの所得環境に対する不安感等から、新設住宅着工戸数は前年に比べ大きく落ち込んだ状態が続いている。

個人消費については、情報関連機器等の一部には堅調な動きもみられるものの、景気停滞感の強まり等を背景とする消費マインドの慎重化から、百貨店・スーパーの売上高や、乗用車および家電販売は前年割れを続けている。

なお、設備投資は、新製品や戦略製品の能力増強投資のほか、新店舗や物流拠点整備に踏み切る動きが引き続きみられるが、全体としては大型案件の一巡等から頭打ちとなりつつある。

生産

企業の生産活動をみると、造船(外航船)、紙・パ(印刷用紙、特殊工業紙等)、電気機械(情報・映像機器、表示装置・部品)および非鉄が輸内需の堅調等を背景に引き続き高操業を持続している。もっとも、繊維(タオル、縫製品)が消費低迷に伴うギフト需要の低迷や問屋筋の発注スタンス慎重化等から低操業を余儀なくされているほか、一般機械(建設用機械、農機具)や建設用資材(木材・木製品等)も建設需要や住宅着工の低迷等を映じて生産調整を継続する、あるいは減産を一段と強化する先がみられるなど、全体として業種・企業間のばらつきを伴いながらも、生産水準を引き下げる動きが拡がりつつある。

雇用

雇用情勢をみると、電気機械や一部の小売業等では依然前向きな求人スタンスを示す先もみられるが、建設関連を中心に抑制的な雇用姿勢に転ずる先が増加しており、全体として弱含んできている。

金融

金融面をみると、預金は個人預金が堅調を持続しており、このところやや伸びを高めつつある。一方、貸出は企業需資が盛り上がりを欠いていることから、伸び悩み気味となっている。

以上

九州地区金融経済概況

1998年 4月20日
日本銀行福岡支店

九州経済をみると、公共、住宅投資の減少や個人消費の低迷長期化を背景に、停滞色を一段と強めており、企業の景況感も大幅に悪化している。

最終需要の動向をみると、公共投資が減少傾向を辿っているほか、住宅投資も、依然として落ち込んだ状態が続いている。

個人消費は、雇用・所得環境が悪化するなか消費者マインドが慎重化しており、低調な地合いが続いている。

企業の設備投資は、企業業績の悪化等を背景に、頭打ちが鮮明化している。

輸出は、欧米向けは引き続き堅調に推移しているものの、東南アジア向けが減少しているため、全体では増勢鈍化傾向を辿っている。一方、輸入については、内需の弱含みを主因に減少気味に推移している。

企業の生産動向をみると、自動車が新型車の生産本格化等から生産水準を引き上げているほか、一般機械、造船等も高操業を継続している。一方、IC、情報関連機器は、内外需要の減少から、また、セメント、化学、電子部品も、東南アジア向け輸出の低迷等を背景にそれぞれ生産水準を引き下げており、全体の生産は弱含みで推移している。

企業業績をみると、内需の低迷や生産の抑制等を映じて、製造業、非製造業とも悪化傾向にある。

雇用面では、有効求人倍率などは悪化傾向を辿っている。

金融面の動きをみると、銀行預金は、個人預金の好調等から高い伸びを続けている。一方、銀行貸出は、足元、堅調な伸びを示しているものの、資金需要の弱含み等から、その増勢は鈍化傾向を辿っている。

以上