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全国11支店金融経済概況 (1998年 7月)

1998年 7月 6日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行札幌支店

北海道地区では、先行き不透明感や雇用環境の悪化等から、企業経営者や消費者のマインドは冷え込んでおり、景気は低迷を続けている。最終需要の動向をみると、公共投資がこれまでのところは前年を下回っているほか、個人消費も生活防衛意識の高まりから低迷が長期化しており、住宅投資も不振を託っている。また、設備投資についても業績悪化等から総じて慎重なスタンスで臨む先が多い。この間、企業の生産は、個人消費を中心とした内需の低迷から総じて減少傾向にあり、雇用情勢も厳しさを増している。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、所得・雇用環境の不芳を映じた消費者の生活防衛意識の高まりから、家具、宝飾品、耐久消費財に加え、食料品、家庭用品等生活必需品の販売も低調となっている。この間、観光面をみると、来道客数は前年を上回っているが、低価格ツアーが主体なため、関連業者の収益増には足許結びついていない。

公共投資を公共工事請負額でみると、10年度当初予算ベースでは規模縮小をみていることから、年度初来の累計では前年を下回っている。

住宅投資は、ウェイトの高い持家の落込みから、新設住宅着工戸数は前年を下回って推移している。

10年度の設備投資計画をみると、一部大手メーカーで能力増強投資の動きがみられるが、非製造業を中心に足許の業績悪化等を眺め慎重なスタンスで臨む先が多く、全体としてみれば盛り上がりに欠ける状態が続いている。

生産動向 をみると、自動車部品で輸出向けを中心に総じて高操業を続けているが、高炉で国内乗用車販売の不振から操業度を大幅に引下げているほか、電子部品が移動体通信・パソコン向け出荷の減少等から、金属製品(製缶)が飲料需要の減少から、それぞれ生産の増勢が鈍化している。また、食料品(水産加工、ビール等)が個人消費の低迷を映じ生産が減少しており、プラント関連でも新規受注の減少が響き生産は弱含んできている。この間、建設資材関連(木材、小棒、亜鉛鉄板、セメント、生コン等)でもビル・マンション等民間建設工事の低迷に伴い引続き低水準の生産を余儀なくされているなど、生産は全体としても減少傾向にある。

企業収益については、リストラ効果に加え、総合経済対策の奏効や個人消費の持直しを織り込み、年度後半にかけての業績回復を期待する向きが目立つ。

物価動向 をみると、道内消費者物価指数は前年比ほぼ横這い圏内の動きとなっている。この間、地価は、住宅地、商業地ともに低下している。

雇用面をみると、倒産の増加や企業筋の人員リストラを背景とした求職者の増加から、有効求人倍率は一段と低下するなど、雇用環境は厳しさを増している。

金融面をみると、預金では、法人預金が企業の手許預金取崩し等から低い伸びに止まっているものの、個人預金は他金融商品からのシフトもあって底固く推移している。一方、貸出は、企業からの運転・設備需資が引続き低迷しており、伸び率が低下している。なお、道内における金融機関の貸出態度は、春先に比べやや緩和しているが、企業業績の悪化等を眺め新規貸増しには慎重な姿勢で臨む先が少なくない。

以上

東北地区金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行仙台支店

東北地区の景気は依然として後退を続けている。企業マインドは悪化しており、消費者マインドも冷え込んでいる。

住宅投資が減少しているほか、公共投資も総じて底打ち感が窺われていない。また、先行きの設備投資計画も前年を下回っている。一方、個人消費は一部に下げ止まり感が窺われるものの、全体として値嵩品を中心に低調の域を脱していない。

企業の生産活動も、こうした動きに加え、東南アジア向け輸出の不振から、減産ないし生産水準を一段と引き下げる動きが広がっており、このため雇用情勢も悪化の度合を強めている。また、企業倒産も引き続き増加傾向にある。

最終需要動向をみると、個人消費については、百貨店売上高では、夏物衣料には動意が窺われるものの、値嵩品の販売が一段と落ち込んでいることに加え、家庭用品に買控えの動きが根強い。家電販売では、一部(デジタルカメラ、BS内蔵テレビ・ビデオ)に回復の動きがみられる一方、主力の白物家電(冷蔵庫、洗濯機)を中心に依然として低調にある。乗用車販売も、新型RVの投入効果の一巡から不振を続けている。

公共投資は、地域により前倒し発注の波及がみられるものの、全体としては依然減少している。

住宅投資も、住宅着工戸数が持家を中心に減少傾向にある。また、10年度第1回住宅金融公庫融資申込受理戸数も引き続き低水準にある。

この間、10年度の設備投資計画をみると、業況不振を背景とした投資見送りから、製造業、非製造業とも前年を下回る計画となっている。

主要製造業の受注・生産動向をみると、電気機械では、エアコン部品で減産を幾分緩和する動きがみられるほか、パソコンが新モデル投入のため一時的に生産水準を引き上げているものの、その他の幅広い品目(半導体メモリー・ロジックIC、OA機器、電子部品、AV機器関連)では内需の低迷から生産水準を徐々に切り下げている。

自動車関連業種では、内需の低迷に加え、東南アジア・韓国向けの不振から、低操業を継続ないし減産を強化している。

消費関連業種では、衣料品がアパレルメーカーからの受注量減少を背景に減産幅を拡大しているほか、時計、ミシンも生産水準を徐々に引き下げている。食料品でも、冷凍・レトルトが高目の操業を維持している一方、水産缶や練製品では需要不振から生産を幾分抑制している。また、紙・パでは、印刷用紙の全般的な需要減少や段ボール原紙の家電・衣料品向け梱包材の需要不振から低操業を継続ないし減産を強化している。

設備関連業種(鋳物、切削工具、工場ラインシステム)では、国内自動車向けが設備更新需要の不振から低操業を続けているほか、工作機械、産業機械向けも企業における投資意欲の減退から生産水準を引き下げる動きがみられている。また、半導体製造装置でも、半導体メーカーの投資先送りの影響から、生産水準を徐々に切り下げている。

建設関連業種(鉄鋼、窯業・土石、住宅資材)では、公共・住宅投資の減少傾向を背景とした在庫積み上がりから、減産を継続ないし一段と強化している。

こうした状況下、10年度の企業の売上・収益動向をみると、製造業が減収増益の見通しにある。非製造業は建設業が減収減益の見込みにあるものの、その他の業種は増収増益の見通しにある。

雇用情勢については、求職者数が、事業主都合離職者が増加しているほか、求人数も、建設業や製造業を中心とした求人意欲の後退を背景に減少傾向にあることから、有効求人倍率は10年振りの低水準にある。所定外労働時間も、企業活動の鈍化を映じ減少傾向を強めている。この間、雇用調整助成金実施計画届受理件数も増加傾向にある。

企業倒産をみると、製造業のほか、建設業、卸・小売業、サービス業等幅広い業種で件数、金額とも前年を大幅に上回って推移している。

金融面については、預金は個人が堅調なものの、法人、公金が引き続き低調に推移している。また、貸出は、個人・法人向けとも低迷を続けている。

以上

北陸地区金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行金沢支店

管内の景気は、国内需要の低迷が続くなかで、企業マインドや雇用環境等も悪化するなど、引き続き後退色の強い状況にある。すなわち、公共投資は下げ止まりつつあるが、設備投資は減少傾向を辿っている。個人消費は、悪化には歯止めが掛かりつつあるが、回復感に乏しいほか、住宅投資も低調裡に推移している。また、これまで堅調を維持してきた輸出がアジア経済調整の影響からこのところ頭打ち気味となっている。こうした最終需要の動向を映じて、鉱工業生産指数は低迷を続けており、その結果、企業収益や雇用・所得環境が悪化している。このように生産・所得・支出を巡る循環はマイナス方向に働いている。この間、「日銀短観」(10年6月調査)における管内企業の業況判断をみると、国内最終需要の低迷や東アジア向け輸出の減少を映じて製造業、非製造業ともにさらに景況感を後退させたため、前回調査時に比べ、「悪い」超幅は拡大した(全産業:前回△40%→現状△50%→先行き△49%)。

需要項目別の動きをみると、個人消費では、百貨店売上げがミセス向け婦人服や紳士物スーツなどの値嵩品を中心に依然低調なほか、乗用車新車登録台数も前年割れの状況が続いている。家電販売も新設住宅着工戸数の低迷もあって白物家電(冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ等)など耐久消費財を中心に低調に推移している。この間、観光面をみると、温泉旅館では団体・法人客を中心に宿泊客数が低迷しているほか、個人・グループ客も景気低迷を映じて減少傾向にあるなど、全般に低調裡に推移している。

設備投資については、製造業、非製造業ともに国内需要の低迷、東アジア諸国の経済調整長期化などを背景に、このところ前年を下回る水準で推移している。この間、短観における10年度設備投資計画をみると、製造業が4年振りに、非製造業が4年連続で前年割れとなるため、全産業では3年振りに前年を下回る見通し(設備投資計画前年比:製造業△2.1%、非製造業△19.5%、全産業△7.4%)。

輸出については、欧米向けは引き続き堅調に推移しているが、東アジア向けが現地の経済調整等の影響を受けて大幅に減少しているため、全体ではこのところ頭打ち気味に推移している。最近の動向を業種別にみると、工作機械を中心とした設備機械関連では欧米向け等が好調に推移しているが、合繊織物は、欧米向けが堅調に推移しているものの中国向け(持ち帰り輸出)や韓国向けで減少していることから、船積み数量は前年を下回る水準で推移している。

公共投資は、このところ下げ止まりつつあり、今後も国や県の大型経済対策の効果から底堅く推移するものとみられる。一方、住宅投資は、新設住宅着工戸数が持家を中心に前年割れとなるなど、低水準で推移している。

生産動向をみると、工作機械では欧米向け輸出や国内自動車メーカー向けを中心に高めの生産を続けているが、受注にこのところ頭打ち感が窺われ始めている。プレス機械でも堅調な生産が続いているが、受注は減少傾向にある。繊維機械では、東南アジアからの受注大幅減を背景に生産水準を引き下げている。電気機械では、電子部品が携帯電話やパソコン関連用部材を中心に、またOA機器が企業の情報化関連投資の増勢一服から、いずれも生産水準を引き下げている。建設機械でも東南アジア向け輸出や公共工事減少に伴う需要低迷から低操業を余儀なくされており、軸受・工具も自動車メーカーからの需要減少から生産水準を引き下げている。合繊織物も、末端衣料品の販売低迷や在庫積み上がりを映じて、染色加工、織布ともに減産を強化する動きがみられている。建設関連のアルミ建材では、住宅投資やオフィスビル建設の減少から操業度を引き下げている。また、素材関連では、特殊鋼、紙・パルプ、苛性ソーダ、界面活性剤、医薬品など全般に受注の減少や在庫増を背景に生産水準を引き下げている。

この間、雇用面をみると、新規求人数が製造業や建設業などを中心に減少傾向にあり、有効求人倍率(含むパート)も一段と低下している。また、雇用者所得も、生産の弱含み傾向などを反映して所定外労働時間が前年割れとなっている中、所定外給与を中心に増加テンポが鈍化している。
金融面をみると、預金は、個人預金では、流動性預金の伸び率がやや鈍化しているが、定期性預金が幾分増加していることから、総じて底固く推移している。一方、法人預金は、企業業績の低迷や財務リストラ圧力等を映じて、依然低調に推移している。

貸出は、個人向けが消費者ローンの低迷から低調な伸び率となっている。また、法人向けも、設備・運転資金需要ともに低迷しており、特に設備については、企業の投資抑制の動きを反映して、低調度合いが幾分強まりつつある。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済をみると、低迷する最終需要の下で本格的な生産調整局面に入っており、企業収益の悪化や個人所得の減少等をもたらすなど、景気は引き続き厳しい状況が続いている。すなわち、最終需要面では、公共投資や住宅投資がなお減少を続けているほか、個人消費も停滞基調を脱する兆しは窺われない。この間、輸出がアジア向けを中心に減少しているほか、設備投資についても、伸びが鈍化傾向にある。こうした状況下、県内企業の生産は、本格的な在庫調整局面に入っていることから、大方の業種で生産水準をかなり引き下げている。このため、企業収益は悪化傾向を辿っているほか、労働需給面でも依然緩和した状態が続いている。

最終需要の動向をやや詳しくみると、個人消費については、昨秋来の消費者心理の慎重化がなお十分解きほぐされていないうえ、個人所得の落込みもあって低迷を続けている。すなわち、乗用車販売が減少を続けているほか、家電販売も低調に推移している。また、百貨店売上高も、婦人衣料等を除き総じて低調であることから低い伸びとなっている。この間、レジャー関連では、国内・海外旅行ともに前年割れで推移している。

設備投資計画については、6月短観結果が製造業、非製造業とも、前回調査に比べ97年度実績の下振れ、98年度計画の増額となるなど、企業収益の悪化を踏まえ所要計画の後ろ倒しが行われていることを窺わせる。

住宅投資は、持家、貸家、分譲とも前年割れを続けている。公共投資についても、財政支出の抑制傾向を反映して、国、県、市町村ともになお減少傾向にある。

輸出面では、自動車が前年割れにあるほか、半導体部品を中心とした電気機械や一般機械等で引き続き減少したことから、横浜港通関輸出額は前年割れが続いている。輸入についても、原燃料に加え自動車等完成品の減少もあって、前年を大きく下回る状況が続いている。

県内企業の生産動向をみると、大方の業種で生産水準をかなり引き下げている。すなわち、乗用車および自動車部品では、国内販売の落ち込みに加え、輸出の減少もあって、在庫調整のための減産が続いている。また、パソコン・汎用電子部品についても、家電販売の低迷を受け減産している。また、鉄鋼、化学といった素材業種でも、加工業種からの需要減少等に伴い減産を強化している。さらに、これまで堅調に推移していた工作機械についても、国内向け受注の減少から、生産水準が次第に低下しつつある。

雇用面をみると、製造業、非製造業ともに雇用の過剰感は根強く、県内常用雇用者数は前年割れを続けるなど、労働需給は引き続き緩和した状態にある。

金融面をみると、金融機関の貸出態度は一頃に比べ厳しさは幾分後退しているものの、現下の景気情勢の下で企業の資金需要は低迷を続けており、全体の貸出は低調に推移している。預金面では、法人預金は低調に推移しているが、個人預金が流動性預金を中心に高い伸びを示していることから、全体でも堅調に推移している。

以上

東海地区金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の最近の経済動向をみると、個人消費および住宅投資については、総じてみれば低迷が続いている。また、設備投資は、底固く推移しているが、増勢は鈍化している。輸出については、アジア向けが減少を続けている一方、欧米向けが堅調を持続していることから、全体としては横這い圏内の動きとなっている。この間、公共投資は減少を続けている。

こうした需要動向の下で、生産は低調な動きが続いている。また、雇用面では、労働需給はさらに緩和しており、常用雇用者数も減少している。こうした中、主要商品市況は、需給緩和を反映して軟調に推移している。以上のように、東海地区の景気は、個人消費や輸出の一部に底を探るような動きもみられるが、全体としては、なお低調に推移している。

個人消費は、総じてみれば引き続き低迷している。すなわち、自動車販売は、乗用車販売には底固い動きがみられるが、全体としては低調を続けている。また、家電販売も、一部品目には売れ行きの改善もみられるが、総じてみれば伸び悩んでいる。また、衣料品販売は、低調に推移している。さらに、旅行需要が、海外旅行の落ち込みもあって前年水準を下回っているほか、外食の売上高も不振を続けている。

設備投資は、底固く推移しているが、増勢は鈍化している。すなわち、製造業では、中小企業が、収益の悪化等を眺め投資抑制姿勢を強めてきている一方、自動車関連を中心とする大企業の新製品開発投資は、引き続き高水準で推移している。また、非製造業では、大型商業施設建設や物流拠点整備の動きは堅調を持続しているが、電力は投資抑制スタンスにある。

住宅投資の動向をみると、新規住宅着工については、分譲が弱含みで推移しているものの、持家が幾分持ち直しつつあること等から、全体でも底入れを窺わせる動きを示している。もっとも、工事量は、既往の低水準の着工を反映して引き続き低調に推移している。

公共投資については、公共工事請負額は前年水準を下回っており、建設業者の官庁関連の工事量やコンクリート製品等関連資材の出荷は、引き続き減少している。

輸出は、アジア向けが、耐久消費財・生産財を中心に減少を続けている一方、欧米向けが、資本財等を中心に堅調を持続していることから、全体として横這い圏内の動きとなっている。

こうした需要動向の下で、生産は、一頃に比べ減少テンポは鈍化してきているが、低調な動きが続いている。すなわち、自動車を中心とする耐久消費財では、国内販売の低調を主因に低操業を継続しているほか、鉄鋼等の素材業種でも、最終需要が低調に推移する中、在庫の過大感もあって、減産を進めている。一方、工作機械、情報通信機器・同部品は、欧米における需要堅調等を反映し、高操業を継続している。

雇用面では、労働需給は、鉱工業生産の低調や公共・住宅投資の減少等を反映して、さらに緩和している。すなわち、所定外労働時間や新規求人数が製造業、建設業等を中心に引き続き減少しており、有効求人倍率も低下している。また、常用雇用者数も、減少を続けている。

物価面では、主要商品市況は、最終需要が低調に推移する中、在庫の過大感もあって、軟調を続けている。この間、消費者物価は、横這い圏内の動きとなっている。

金融面では、地元金融機関は、信用リスクや取引採算を重視しつつも、基本的には前向きの貸出姿勢を維持しているが、企業の資金需要が落ち込んでいるほか、住宅ローン等の個人向け融資も伸び悩んでいることから、貸出は引き続き低い伸びとなっている。この間、貸出金利は、既往最低圏内での動きが続いている。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行京都支店

最近の管内経済動向をみると、輸出が、増勢は大幅に鈍化しているものの、なお比較的底固く推移している一方、国内需要面では、家計支出の低迷が続いているほか、設備投資も中小企業を中心に調整色が強まっている。こうした最終需要の動向を背景に、在庫が依然高水準にあり、生産調整の動きがさらに強まっているほか、雇用・所得環境も悪化傾向を辿っている。このように、管内景気は全体として停滞色を一段と強めている。

最終需要の動きをみると、輸出については、アジア向けが設備投資関連を中心に減少傾向を強めているものの、欧米向けは、パソコン・移動体通信機器用の電子部品や計測機器等が堅調に推移していることから、全体としては比較的底固く推移しており、収益面への円安メリットとも相俟って、管内の経済活動をある程度下支えしている。

個人消費については、自動車販売が引続き低迷しているほか、家電販売も一部の商品(テレビ等)に売上増加の動きがみられるものの、全般的には販売不振が続いている。また、百貨店・スーパーの売上げも依然として低迷を余儀なくされており、夏物衣料品も盛り上がりに欠ける展開となっている。この間、京都観光についても入り込み客の減少から低調に推移している。

設備投資については、製造業大企業ではハイテク関連企業を中心に能力増強投資等に引続き前向きの姿勢にある先も少なくないが、全体としては、業績悪化や景気の先行き不透明感等から、非製造業、製造業中小企業を中心に抑制的な動きが強まっている(10/6月当店短観の10年度設備投資計画<前年度比、全産業ベース>:△5.7%)。

この間、公共投資(公共工事請負金額)がこのところ減少しているほか、住宅投資も引続き低迷している。

生産面をみると、電子部品は欧米向け輸出の堅調持続から高操業を継続しているものの、輸送用機械、繊維機械等の一般機械がアジア向け輸出の減少から操業度を引き下げているほか、半導体製造装置も需要低迷から生産が弱含んでいる。また、地場産業の和装関連でも需要不振から大幅な減産を余儀なくされているなど、全体として生産調整の度合いが強まっている。

雇用・所得面をみると、有効求人倍率が低下傾向を辿っているほか、所定外労働時間も引続き減少するなど、厳しさを増している。

企業倒産は、繊維、建設等の中小・零細企業を中心に引続き高水準に推移している。

金融面をみると、貸出については、住宅関連需資が比較的堅調に推移しているものの、一般企業需資の不振が響いて、総じて低調な地合いが続いている。

一方、預金については、個人預金は流動性預金を中心に高目の伸びを続けている一方、法人預金は企業の業況低迷に加え、金融機関サイドによる市場性大口定期預金の取入れ抑制から、引続き低調に推移している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行大阪支店

最近の管内経済動向をみると、景気の基調を変化させる新たな材料がみられない中で、昨年来の家計支出の下振れに端を発する生産の減少傾向が依然続いており、経済活動の水準は一段と低下している。この間、中小企業を中心に倒産、廃業の動きが増えるなど、雇用・所得環境の悪化が顕著になっている。

最終需要面の動きをみると、家計支出については、一頃に比べ減少テンポは緩やかになりつつあるが、自動車、家電販売は一進一退の動きのなかで足許弱含みの動きとなっているほか、住宅販売も低迷を続けるなど、依然低調な地合が続いている。

輸出は、工作機械等を中心に欧州向けの増勢が強まっていることなどから、減少テンポは緩和しているが、東南アジア向けの落ち込みが続いているほか、中国向けについても、電子部品、化学製品などが下振れていることから、全体としては減少傾向が続いている。

設備投資は、大企業では、戦略分野の強化、合理化の意欲が根強く、足許の収益環境の悪化の中でも、大幅な落ち込みには至っていない。ただ、業況悪化が一段と進んでいる中小企業では、ここへきて投資スタンスが大幅に後退しており、大企業と中小企業の投資スタンスの差が広がる中で、全体としては減少傾向が強まっている。

こうした中で、公共投資は、減少傾向が続いている。

生産面をみると、工作機械では増産が続いているが、白物家電、エアコン、自動車部品(ベアリング等)、鋼材、ガラス、合板等の多くの品目で、需要の不振に在庫調整の動きも加わって減少が続いており、全体として減産幅が拡大している。

雇用・所得面をみると、有効求人倍率の低下、所定外労働時間の減少が続くなど、雇用所得環境の悪化傾向が顕著となっている。

物価面は、軟化傾向が続いている。

なお、企業倒産は、中小、零細企業を中心に増加している。

金融面をみると、貸出については、経済活動の停滞に伴う企業需資の落ち込みや住宅ローンの増勢鈍化から、総じて低調な地合が続いている。また、管内金融機関の融資態度をみると、自己資本比率規制等を意識して融資の量的圧縮を図る動きは弱まってきているものの、融資採算や取引先企業の信用度に応じて貸出案件を選別する姿勢は継続している。

この間、管内金融機関の預金吸収地合いは総じて安定した推移を示している。

なお、朝銀大阪信用組合が朝銀近畿信用組合に事業譲渡を行った(5月11日)ほか、福徳銀行となにわ銀行が、預金保険法に基づく大蔵大臣による特定合併の斡旋を受け入れ、合併契約を締結した(5月22日)。また、奈良県信用組合の南都銀行への事業譲渡、大阪府下信用組合の再編案、信組大阪商銀の信組京都商銀への事業譲渡が発表された(各5月8日、同13日、6月10日)ほか、住友信託銀行が日本長期信用銀行との合併について検討に入ることを発表した(6月26日)。

以上

兵庫県内金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行神戸支店

県内景気をみると、個人消費や住宅・公共投資が引続き低迷しているほか、東アジア向け輸出も落ち込んでおり、企業収益の悪化から設備投資も減少傾向にある。こうしたなかで、企業マインドは製造業、非製造業とも大幅に下振れており、雇用情勢の悪化と相俟って、景気は不振の度合いを強めている。
個人消費は、家電販売がW杯効果から、また乗用車もメーカーの相次ぐ新車投入を背景に、6月入り後上向きの兆しをみせているものの、百貨店やスーパーの売上は引続き低調裡に推移している。また、明石海峡大橋開通の効果も、淡路地区の観光施設等の一部に止まっている。

住宅投資は、震災関連需要が出尽くすなかで、先行きの雇用・所得に対する不安感の強まりもあって、大幅前年割れを続けている。また、公共投資も、震災復旧工事の一巡等から、引続き前年を大幅に下回っている。

この間、設備投資についても、企業収益の下振れ等を背景に抑制・先送り傾向が強まっており、10年度は2年連続で大幅減少した9年度をさらに下回る見通しにある。

こうした状況下、管内企業の生産は引続き弱含みで推移している。すなわち、大手造船が豊富な受注残を抱え高水準の操業を継続しているものの、鉄鋼が本格減産を続けているほか、自動車部品、電子部品(コンデンサー)、射出成形機、建設機械も、自動車、家電メーカーの大幅減産や東アジア向け輸出の落ち込み等が続くなかで、生産調整の長期化を余儀なくされている。また、これまで高目の生産を維持してきた物流機械(コンベア)、環境装置も、受注残の減少から操業度を引下げてきている。

雇用面でも、売上不振や稼働率低下の下で企業の人員余剰感が強まっており、雇用調整助成金を受けた一時帰休等の動きが拡がってきている。また、有効求人倍率も一段と低下してきている。

金融面をみると、貸出は足許の景況低迷を映じ、企業の前向きな資金需要が一段と弱まっていることから伸び悩んでいる。預金も個人定期性を中心に吸収地合いが弱く伸び悩み。5月の貸出約定平均金利は、短期金利は上昇したものの、長プラ引下げ等に伴い長期金利が低下したため、総合では前月比若干低下した。企業倒産は建設業を中心に件数、金額とも5月としては過去10年間で最高となるなど、高水準の状態が続いている。

以上

中国地区金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行広島支店

中国地区の景気をみると、内需の低迷が続いているほか、輸出も頭打ちとなっており、その影響が企業収益をはじめ、生産、雇用にも下押し圧力として波及している。こうした状況下、企業マインドも悪化を続けており、景気は後退している。
最終需要の動向をみると、個人消費は、消費者マインドが引き続き慎重なことを背景に、低迷の域を脱していない。すなわち、家電商品等の一部では下げ止まりの兆しが窺われているものの、乗用車販売は引き続き低調に推移しているほか、百貨店売上高やスーパー売上高の回復のテンポは鈍い。

設備投資を中国地区企業短期経済観測調査結果(10年6月)からみると、10年度は、鉄鋼、自動車等の一部業種では前年を上回る計画ながら、製造業、非製造業ともほとんどの業種が、需要低迷や企業収益の悪化等を背景に前年を下回ることから、全産業ベースの計画は前年比−11.6%となっている。

住宅投資について新設住宅着工戸数をみると、大幅な前年割れを続けている。

公共投資について公共工事請負額をみると、山陰地方における地方公共団体の発注増を主因に、均してみると前年水準を上回って推移している。

輸出については、アジア向けが現地の経済混乱の影響から大幅な前年割れを続けており、全体でも頭打ちとなっている。なお、6月短観で10年度輸出計画をみても前年を下回る計画となっている。
こうした最終需要のもと、生産は減少している。主要企業の生産動向をみると、造船、電子部品(半導体等)、弱電部品(液晶表示装置等)、工作機械、情報家電(MD、FAX)では高操業を続けているが、自動車・同部品、産業機械、鉄鋼、紙パ等の多くの業種では、内需低迷の影響やアジア地域での需要減少を背景に生産水準を引き下げている。また、縫製、木材・木製品は在庫調整のための減産を継続している。

雇用面をみると、常用雇用者数が前年を下回っているほか、有効求人倍率も低下を続けており、雇用環境は全体として悪化している。
この間、企業収益を中国地区企業短期経済観測調査結果(10年6月)からみると、10年度は、前年比+4.1%と増益計画となっているものの、前回調査(3月)に比べると下方修正されている。

企業マインドについては、製造業、非製造業ともほとんどの業種で業況感が更に悪化しており、また、先行きについても厳しい見方を崩していない。
金融面をみると、貸出については、企業向けが非製造業の一部で設備需資が散見される以外は多くの業種で低調に推移しているほか、個人向けも伸び悩んでいることから、全体としては前年比伸び率が大きく低下している。

また、預金については、個人が堅調に推移しているものの、法人が手元流動性の取崩し等から低迷していることもあって、全体としては前年比伸び率が低下している。

以上

四国地区金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、明石海峡大橋の開通に伴い、観光の一部で明るさが窺われるものの、個人消費や住宅投資が低迷を続け、企業の生産活動も弱含む動きが広がり、さらに雇用環境も悪化するなど、全般的に停滞感を強めている。こうした中、6月短観調査では企業マインドが一段と後退している。

需要動向

最終需要の動向をみると、輸出は引き続き東南アジア向けが減少傾向にあるものの、欧米向けは電気機械、化学等が高い水準を維持している。

一方、個人消費は、情報関連機器の一部商品(携帯電話、家庭用ファックス等)に堅調な動きがみられるが、慎重な消費者マインドを反映し、乗用車や家電製品などの耐久消費財が低迷しているうえ、百貨店売り上げも低調となっている。この間、観光面では明石海峡大橋の開通に伴い、観光施設や宿泊施設の一部で入り込み客の増加がみられている。

公共投資は、単月のフレを伴いつつも、既往発注分を含めた工事量ベースでは高速道路網の整備や電源開発関連工事等の大型継続案件が下支えしていることもあって、引き続きまずまずの水準を確保している。しかし、住宅投資については、先行きの所得環境等に対する不安感から落ち込んだ状態で推移している。

設備投資は、製造業、非製造業ともに合理化、省力化投資がみられるものの、大型投資が一巡していることに加え、業績面の不振や景気の先行き不透明感等から、設備更新や能力増強投資を先送りする慎重な対応が目立ち始めており、全体としては前年を 下回る動きとなっている。

生産

企業の生産活動をみると、電気機械(映像機器、表示装置等)、造船(外航船)、紙・パ(印刷用紙、特殊工業紙等)、化学(無機化学)および非鉄(電気銅)が引き続き高操業を継続している。しかしながら、繊維(タオル、縫製品)がギフト需要や季節物衣料の受注不振から低操業を余儀なくされているほか、一般機械(金属・木工用プレス、船用クレーン、農機具)や建設用資材(木材・木製品等)も全国的な公共・住宅投資の低調な推移や輸出の低迷等を映じて、操業度の引き下げや生産調整を継続する先がみられるなど、総じてみれば生産水準を引き下げる動きが拡大している。

雇用

雇用情勢をみると、生産の弱含み等を背景とする人員過剰感の台頭から、新規求人を手控える動きが広がっているほか、このところ企業の業績悪化等を映じて新規求職者が増加傾向にある。

金融

金融面をみると、預金は法人預金が低調に推移しているものの、個人預金は流動性を中心に堅調な伸びを持続している。一方、貸出は個人向け住宅ローンが増勢鈍化傾向にあるほか、企業向けが引き続き低調なことから、全体として伸び率を落としている。

以上

九州地区金融経済概況

1998年 7月 6日
日本銀行福岡支店

九州経済をみると、最終需要の弱さを背景に停滞を続けるなか、雇用・所得環境の 悪化が顕著となっており、企業の景況感も一段と悪化している。

最終需要の動向をみると、公共投資は、9年度補正予算の執行や10年度予算の前倒し発注を受けて持ち直し気味に推移している。

個人消費は、雇用・所得環境の悪化から低調な地合いが続いているほか、住宅投資も、依然として落ち込んだ状態が続いている。

企業の設備投資は、企業業績の下振れ等を背景に減少している。

輸出は、欧米向けが引き続き堅調に推移しているものの、東南アジア向けが減少しているため、全体では頭打ちとなっている。一方、輸入については、内需の低迷を主因に減少傾向を辿っている。

企業の生産動向をみると、一般機械、造船等は既往受注分の消化等から高操業を継続している。一方、IC、情報関連機器、鉄鋼、自動車は、内外需要の減少から、また、セメント、化学、電子部品も、東南アジア向け輸出の低迷等を背景にそれぞれ生産水準を引き下げており、全体の生産は減少傾向を辿っている。

企業業績をみると、最終需要の弱さや生産の抑制等を映じて、製造業、非製造業とも下方修正されている。

企業倒産は高水準で推移しており、雇用面では、完全失業率、有効求人倍率などの各指標が目立って悪化している。

金融面の動きをみると、銀行預金は、個人預金が比較的高い伸びを続けている一方、法人預金は前年割れが続いているため、全体ではやや低調に推移している。また、銀行貸出は、資金需要の減少や金融機関の慎重な融資姿勢等を背景に増勢が一段と鈍化している。

以上