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全国11支店金融経済概況 (1999年 7月)

1999年 7月26日
日本銀行

目次

北海道地区金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行札幌支店

北海道地区の景気は、全体としてはなお底這い状態にあるが、各種政策支援の効果等による持ち直しの動きがやや広がっており、企業の景況感も引続き改善している。最終需要面では、公共投資が既往の高水準の発注を映じて増加傾向にあるほか、住宅投資でも持ち直しの動きがみられる。一方、個人消費は、一部に改善の動きがみられるが、総じてみれば低調に推移しているほか、設備投資についても基調として減少を続けている。こうした中で、生産は業種毎のばらつきを伴いながらも、全体としては下げ止まってきているが、雇用については企業のリストラの動きを背景に厳しい状態が続いている。

最終需要面の動きをみると、公共投資については、発注テンポは足許やや鈍化しているものの、既往の高水準の発注を映じて引続き増加傾向にあり、建設業者、関連資材メーカーでは、繁忙状態が続いている。

住宅投資は、住宅減税等の効果から、新設住宅着工戸数が持家を中心に前年を上回っているほか、分譲マンションについても販売好調から、在庫の減少をみている。

個人消費は、パソコンや軽自動車の販売が引続き好調であるほか、家電等の一部にやや動意が窺われるものの、大型小売店、耐久消費財ともに販売は総じて低調に推移している。この間、北海道を訪れる観光客数は格安商品の提供もあって、比較的高い伸びを続けている。

設備投資は、一部の先で上方修正の動きがみられるが、全体としては引続き減少を続けている。

企業の生産をみると、鋳鍛鋼製品・機械関連、高炉(自動車向け特殊鋼)、紙・パ、製缶、食料品(ビール等)では、個人消費や設備投資の低迷等から低操業を続けている。一方、公共投資関連資材では、出荷の増加を映じて高操業となっているほか、電子部品では携帯電話・デジタルビデオカメラ等の需要好調からフル操業を続けており、全体としては、下げ止まってきている。

雇用情勢については、有効求人倍率が低水準で推移しているほか、夏季賞与も2年連続前年を下回るなど、雇用・所得環境は依然厳しい状況が続いている。

企業金融については、金融機関の融資スタンスが幾分緩和していること等から、総じて落ち着いた動きを示しており、倒産も引続き前年を下回って推移している。

金融面をみると、貸出は、地方公共団体向け貸出や住宅ローンが高い伸びを示しているものの、企業の資金需要が総じて低迷しているため、全体では低調に推移している。一方、預金は、個人預金が堅調に推移しているほか、法人預金も公共工事関連資金の流入等により高目の伸びを示していることから、全体でも順調な伸びを続けている。

以上

東北地区金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行仙台支店

東北地区の景気動向は、下期下振れ懸念はあるものの、足元は幾分上向いてきており、企業マインドも改善している。

企業の生産活動をみると、公共・住宅投資の増加ないし持ち直しに加え、一部耐久消費財(パソコン、携帯電話、一部乗用車)の販売好調を主因に、徐々に上向いてきている。

個人消費は、総じてみれば回復感に乏しいものの、新製品投入・催事効果や気温上昇といったプラス材料がみられている。

一方、設備投資は減少を続けているほか、雇用情勢も依然として厳しい状況となっている。

この間、企業倒産は、中小企業金融安定化特別保証制度の奏効により小康状態を保っている。

最終需要のうち、個人消費は、百貨店売上高が、総じてみれば低調なものの、6月入り後は気温の上昇に伴い夏物衣料が堅調な動きとなっているほか、一部で催事効果もみられている。家電販売は、白物家電やAV商品は総じて不振ながら、パソコンやデジタル製品(携帯電話、ビデオカメラ、MDプレーヤー)が堅調なほか、気温上昇からエアコン、冷蔵庫の動きもまずまずとなっている。乗用車販売は、新型車投入効果は限定的なものの、軽自動車は好調を持続している。

公共投資は、公共工事請負金額が再び前年を上回ってきているほか、工事進捗ベースでも、昨年度末の大幅な発注増を受けて、高水準を維持しているとみられる。

住宅投資は、持家着工の増加を背景に、全体でも持ち直し傾向を辿っている。

この間、11年度の設備投資計画(企業短期経済観測調査<東北地区>)は、一部でグループ再編に伴う生産ライン増設の動きがみられるものの、大方の業種では引き続き抑制スタンスを崩しておらず、製造業、非製造業とも前年度をさらに下回る計画となっている。

主要製造業の受注・生産動向をみると、電気機械では、パソコン、携帯電話の販売好調から、同完成品やメモリーICが高操業を続けているほか、関連部品(ロジックIC、液晶、コンデンサ、コイル等)も生産水準を徐々に引き上げている。その他の品目(OA・AV機器、各種電子部品)では、減産を継続中ながら、受注面をみると下げ止まり感がさらに広がってきている。

輸送用機械では、他地域からの生産シフトの影響もあって、生産は高水準を維持している。

消費関連業種では、カメラが生産水準を幾分引き下げているほか、時計も減産を継続、衣料品は、夏物に一部動きがみられるものの、全体としては大幅な減産を行っている。食品では、缶詰が低操業を続けているほか、冷凍・レトルト、練製品は生産水準を引き下げている。一方、紙・パでは、新聞用紙が一時的に生産水準を引き下げているが、印刷用紙、段ボール原紙は、広告向け出荷増や在庫調整の進捗から、減産を緩和している。

設備関連業種(鋳物、切削工具、工作機械、工場ラインシステム、半導体製造装置)では、自動車・家電メーカーを中心とした設備投資抑制の影響から、大方の先では減産を継続ないし強化しているが、半導体関連では受注の増加を背景に幾分生産水準を引き上げている。

建設関連業種(窯業・土石、鉄鋼、合板、一般製材)では、民需の不振から一時的な減産を実施する先はみられるが、公共投資関連向けの増加に加え、住宅向け受注も持ち直し傾向にあることから、総じてみれば生産水準を徐々に引き上げる方向にある。

11年度の売上・収益動向をみると、製造業、非製造業とも、公共・住宅投資の下期以降の息切れを懸念する向きはみられるものの、両者の上期を中心とした下支え効果のほか、足元の一部耐久消費財需要の好調持続、個人消費全般の回復期待、リストラ効果等を見込み、微増収ながら大幅増益の見通しにある。

雇用情勢については、建設・住宅関連の一部に求人増の動きがみられるものの、その他業種では雇用過剰感が根強く、事業主都合による離職者数も依然高水準にあることから、有効求人倍率は低調の域にある。所定外労働時間も減少を続けている。

企業倒産をみると、中小企業金融安定化特別保証制度の奏効により小康状態を保っている。もっとも、このところ同制度利用先の倒産が目立ち始めている。

金融面では、預金は公金が前年を下回っているものの、個人、法人は横這い圏内の動きとなっている。一方、貸出は法人向け需資の低迷から、引き続き低調に推移している。

以上

北陸地区金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行金沢支店

北陸地区の景気は、公共投資の高水準持続や住宅投資の着実な持ち直しなど最終需要が底固く推移する中で、下げ止まっている。また、生産下げ止まり等を背景に、企業マインドも改善に向かっている。もっとも、雇用・所得環境の改善がみられないほか、企業の設備投資抑制姿勢が続いていることから、先行き自律的回復は依然展望しにくい状況が続いている。

最終需要面の動きをみると、公共投資は、これまでの工事発注増から高水準を維持しており、当面増勢が続く見込みである。また、住宅投資についても、これまでの住宅公庫融資の申し込み増加を映じ、新設住宅着工戸数が持家を中心に増勢持続するなど、着実に持ち直している。

一方、設備投資は、企業業績低迷を背景に、10年度に続き11年度も慎重な投資計画となっている(企業短期経済観測調査<11年6月>、10年度実績見込み:前年度比△1.9%、11年度計画:同△24.3%)。

個人消費は、軽自動車や家電製品等一部耐久消費財の販売が堅調に推移しているほか、夏物衣料等の季節商品も前年を上回る水準で推移している。もっとも、百貨店や量販店では全体の売上げが前年を若干下回っているほか、観光面でも温泉旅館等の宿泊客減少が続くなど、全体としてはなお低迷の域を脱していない。

この間輸出は、携帯電話用部材等が欧州向けを中心に堅調に推移しているほか、アルミ圧延品や一部化学(塩ビ樹脂等)などでは東アジアの経済回復に伴い同地域向けで持ち直しの動きがみられているものの、合繊織物が中東向け、米国向け等を中心に依然前年割れとなっているほか、工作機械が米国向けを中心に減少傾向にあることから、全体では横這いとなっている。

こうした最終需要動向を映じて、生産は、電子部品(携帯電話用、パソコン関連部材)が増加傾向を続けているほか、窯業・土石、アルミ建材等公共工事、住宅投資関連業種や在庫調整の進捗した一部合繊織物において減産幅が縮小しており、全体としては下げ止まっている。

雇用面をみると、新規求人数の減少テンポが鈍化してきているものの、有効求人倍率(含むパート)は低水準で推移している。また、雇用者所得も、所定外労働時間が前年割れで推移する中、所定外給与を中心に低迷が続いている。

金融面をみると、預金は、個人預金では、流動性預金が伸び率を高めているほか、定期性預金も比較的高めの伸びを維持しており、全般に底堅く推移している。一方、法人預金は、貸出金の滞留による手許資金の積上りが続き、堅調に推移している。

貸出は、個人向けが消費者ローンの低迷や住宅ローンの伸び率鈍化から、引き続き低調裡に推移している。また、法人向けも、設備資金需要の低迷持続に加え、保証協会保証付貸出の伸び率が急速に鈍化しており、全般に低調な推移となっている。

この間、貸出約定平均金利(ストック)は、既往最低圏の中で推移している。

以上

神奈川県内金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行横浜支店

神奈川県経済は、一部業種で生産水準引き上げの動きがみられるなど下げ止まってはきたものの、自律的な回復に向けた力強さにはなお乏しく、全体としては依然厳しい状況にある。すなわち、個人消費は一部に動意がみられるとはいえ、全般的には停滞基調を脱していないほか、設備投資や輸出も大幅な減少を続けている。しかし、住宅投資が堅調に推移しているほか、公共投資も春先の発注増から工事進捗をみている。また、県内企業の生産は、依然多くの業種で減産が続いているものの、電気機械等の一部で受注回復から生産水準を引き上げる先もみられ始めている。この間、労働需給面では依然緩和した状態が続いている。

最終需要の動向をやや詳しくみると、まず個人消費については、乗用車販売が軽乗用車の売上こそ引き続き好調ながら、全体としていえばなお前年割れを続けているほか、百貨店売上高も衣料品を中心に前年を下回る状況にある。また、家電販売もパソコン等一部に動意はみられるが、大方の商品の販売は低調の域を脱していない。この間、レジャー関連では、国内・海外旅行ともに低調に推移している。

設備投資を6月に実施した企業短期経済観測調査(神奈川県分)でみると、県内企業の98年度の設備投資実績は、製造業では前回(3月)調査に比べさらに下方修正され、2年連続(前年比△5.2%)の減少となった。また、非製造業では前回調査に比べ上方修正にはなったものの、2年振り(同△21.9%)の減少となった。99年度計画についても、製造業、非製造業ともに前年を大幅に下回る抑制的な計画となっている。

住宅投資は、住宅減税拡充策の効果等から分譲マンションを中心に堅調に推移している。また、公共投資についても、政府の経済対策の効果等から、国・県発注分を中心に工事進捗をみている。

輸出面では、電気機械や自動車・同部品等で引き続き減少したことから、横浜港通関輸出額は減少を続けている。輸入についても、非鉄金属等の素材商品の減少等から、前年を大きく下回る状況が続いている。

県内企業の生産動向をみると、多くの業種で減産を継続している中、一部業種で生産回復の動きがみられている。すなわち、自動車・同部品では、国内販売の落込みが響き減産を継続しているほか、工作機械も、内外需の減少から生産水準を低下させている。また、鉄鋼などの素材業種でも、加工業種からの需要が弱いことから、減産を続けている。しかし、家電メーカーの在庫調整進捗やパソコン・携帯電話の販売好調から、半導体等電子部品の一部で生産水準を引き上げる先がみられ始めている。

雇用面をみると、リストラの進展から製造業、非製造業ともに雇用の過剰感は幾分弱まってはきているが、県内常用雇用者数は前年割れを続けるなど、労働需給は引き続き緩和した状態にある。

金融面をみると、貸出面では、全般的な資金需要自体が低迷していることもあって、小幅ながら前年割れを続けている。預金面では、法人預金が伸び悩んでいるものの、個人預金がまずまずの推移を辿っており、預金全体の伸び率は横這い圏内で推移している。この間、企業倒産件数は、信用保証制度拡充の効果もあって、昨年12月より前年を下回る状況が続いている。

以上

東海地区金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行名古屋支店

東海地区4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の最近の経済動向をみると、個人消費は、総じてみれば低迷の域を脱していないが、一部に新製品投入効果等もみられている。設備投資は減少している。一方、輸出は、持ち直してきている。また、公共投資が、経済対策の効果から増加基調にあるうえ、住宅投資についても、政策効果を受けて持ち直しつつある。

こうした需要動向等を背景に、生産は、全体として横這い圏内で推移している。一方、雇用面では、労働需給は、なお緩和を続けている。この間、物価は引き続き軟調ながら、商品市況は下落一服となっている。以上を総合すると、東海地区の景気は、下げ止まりの様相を呈していると判断される。

金融面をみると、企業収益の低迷に加え、信用保証協会保証付融資で当面必要な資金を調達している先が少なくないこともあって、資金需要は引き続き低迷基調にある。こうした状況下、金融機関の貸出は、各県毎に差はあるが、全体として前年比マイナスで推移している。

個人消費・・・耐久消費財支出をみると、家電量販店の売上げは、パソコン関連製品等の売れ行き好調から、引き続き前年水準を上回っている。一方、乗用車販売については、既存モデル車の不振から、全体としては低迷しているが、新型車は堅調を持続している。非耐久消費財支出をみると、夏物衣料品や日用品を中心に消費者の買い控え傾向が続いているため、依然として低迷している。この間、サービス支出については、総じてみると依然低調に推移しているが、レジャー施設の入場者数は、新施設の開設効果等から前年水準を上回っている。

設備投資・・・製造業では、中小企業が、収益の悪化や先行きの需要に対する不透明感等を背景に、極めて抑制的な投資姿勢となっているほか、自動車関連等の大企業でも、生産設備の過剰感が強い中、投資額の減少が続いている。この間、非製造業では、電力が投資抑制スタンスにある。

住宅投資・・・新規住宅着工については、分譲が低調裡に推移しているものの、持家が増加しているほか、貸家も下げ止まりの兆しが窺われている。住宅販売についても、住宅公庫金利の低位抑制や住宅減税の拡充といった政策効果等を背景に堅調に推移している。

公共投資・・・地方自治体における今年度当初予算の縮減等を背景に、発注ペースは鈍化しているが、これまでの高水準の発注を反映して、官庁関連の工事量は増勢を維持している。

輸出・・・主力の米国向けは、自動車・同部品が強含んでおり、全体としては持ち直している。また、アジア向けは、アセアン諸国向けを中心に、緩やかに回復しつつある。一方、欧州向けについては、頭打ちとなっている。その他地域向けは、中南米向けの不振は続いているが、中近東向けでは自動車の減少テンポが和らいでいる。

生産・・・加工業種では、自動車が、既存モデル車の国内販売不振にも拘わらず、新型車投入効果や輸出の持ち直し等から概ね横這いの動きとなっているほか、ICパッケージ、ビデオカメラが、新製品投入効果に伴う輸内需の好調を反映し、増産を進めている。また、二輪車でも、欧米向け輸出の増勢から高操業を持続している。一方、工作機械は、国内外からの受注減少を背景に操業度を引き下げている。

素材業種では、窯業製品の一部で、住宅着工の持ち直しを受けて、減産を緩和する動きがみられるほか、条鋼類も、公共投資の増加や市況の下落一服等を眺めて、抑制スタンスを幾分緩和している。また、紙・パルプでも在庫調整の進捗等から操業度を引き上げている。一方、普通鋼・鋼板類では、主力の自動車向け、産業機械向け等を中心に一時帰休を伴う減産を余儀なくされている。さらに、繊維製品や洋食器も、個人消費等の低迷や在庫調整のため、生産を抑制している。

雇用・・・常用雇用者数や所定外労働時間が、依然、前年を大きく下回っているほか、有効求人倍率も、さらに低下している。

物価・・・主要商品市況は、全般に下落一服となっている。この間、消費者物価は、引き続き前年水準を下回っている。

以上

京都管内(京都府、滋賀県)金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行京都支店

最近の管内景気をみると、下げ止まっている。この間、企業の業況感は持直しているものの、設備投資・雇用スタンスは総じて引続き慎重なものに止まっている。

すなわち、最終需要面をみると、個人消費は、一部商品等に販売地合いの改善が窺われるものの、総じて低調に推移しているほか、設備投資も引続き減少傾向にある。また、輸出は、横這いの動きとなっている。一方、公共投資については、経済対策の効果持続から引続き増勢を示しているほか、住宅投資もここへきて持直し傾向を辿っている。このような最終需要の動向の下で、在庫調整が進捗していることから、生産は総じて下げ止まっている。

以上のような支出・生産活動の下、製品価格の軟調もあって、企業収益は引続き低迷しているほか、雇用・所得環境も依然厳しい状況にある。

最終需要の動きをやや詳しくみると、 個人消費については、百貨店売上げが、ゴールデンウィークに一時的な持直しがみられたものの、総じて低調に推移し前年割れの状況が続いているほか、自動車販売(新車登録台数<除く軽自動車>)も引続き低迷している。また、家電販売もパソコン等一部商品では堅調な売れ行きを示しているが、全般的には低調な販売地合いにある。この間、京都観光についても、祇園祭の人出は曜日構成に恵まれたこともあって、前年を大幅に上回るなど明るい面もみられるが、総じてみれば、引続き低調に推移している。

設備投資については、このところ、一部に新製品の増産や新規出店に向けて増額する動きが散見されているものの、設備過剰感が根強い中、企業収益が低迷していることや、先行き不透明感が依然根強いこと等から、引続き抑制的な投資姿勢にある先が大宗を占めている。

また、輸出については、米国向けが、パソコン・移動体通信機器用の電子部品を中心に増加基調で推移しているものの、欧州向けの一部が現地景気の減速を背景にやや鈍化しているほか、アジア向けも、このところ一部に受注持直しの動きがみられるものの、なお低迷の域を出ていないため、全体として横這い圏内の動きとなっている。

一方、公共投資についてみると、公共工事請負金額が経済対策に伴う発注進捗等から、引続き前年を上回る推移をみているほか、一部関連業種では波及効果が窺われつつある。

住宅投資については、新設住宅着工戸数が、低金利等を背景とした持家の回復から、このところ持直し傾向を辿っている。また、マンション販売も好調裡に推移している。

生産面をみると、大幅な減産を継続する先が多い中、在庫調整の進捗がみられたことから、生産は総じて下げ止まっている。業種別にみると、電子部品は高操業を継続しており、欧米向け輸出の増加を背景に一段の増産をみている先も散見される。一方、一般機械等は設備投資やアジア向け輸出の低迷等から、減産を続けている。この間、地場産業の和装関連では、引続き大幅減産を余儀なくされてはいるが、産地の在庫調整の進捗や、一部新商品の販売地合いに持直しが窺われることから、悪化傾向には歯止めがかかりつつある。

企業収益をみると、最終需要の低迷や製品価格の軟調持続等を背景に、総じて低迷している。この間、先行きについては、リストラ効果の顕現化により増益を予想する先も散見されている。

こうした状況の下で、雇用・所得面をみると、有効求人倍率は悪化傾向を辿っているほか、所定外労働時間も依然前年を大幅に下回っている。さらに、企業の雇用過剰感も引続き高水準にあるなど、雇用情勢は厳しい状況が続いている。この間、企業倒産は、中小企業金融安定化特別保証制度等の効果により、均してみれば前年を下回っている。

金融面をみると、民間金融機関貸出については、住宅関連需資が引続き底固く推移しているものの、保証協会による中小企業金融安定化特別保証制度の利用による貸出が伸び悩んでいるほか、一般企業需資も依然として不冴えであることから、全体としては低迷を続けている。

預金については、法人預金が一部企業の手元資金温存スタンスの後退もあって、伸び率がやや低下している一方、個人預金は流動性預金を中心に底固く推移している。

以上

大阪管内(大阪府、奈良県、和歌山県)金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行大阪支店

管内の景気は、生産を中心に下げ止まっているほか、企業の景況感も改善しているが、全体としては依然厳しい情勢にある。

すなわち、最終需要面では、公共投資・住宅投資が増加しているほか、輸出も一段と強含んでいる。個人消費は、一部では売れ行き良好な商品が引き続きみられているが、全体としては弱含んでいる。一方、設備投資は減少が続いている。こうした最終需要動向の下、生産は下げ止まっており、また、企業金融の逼迫感も総じてみれば和らいでいる。ただ、企業収益は引き続き厳しく、その下で雇用・所得環境も悪化を続けている。

最終需要面の動きをみると、輸出は、欧州向けが頭打ちとなっている一方、米国向けは情報通信関連財を中心に強含んでいるほか、東南アジア向けも改善してきていることから、全体としては一段と強含んでいる。

設備投資は、収益環境の厳しさや設備過剰感から、消極的な投資姿勢が続いており、依然として減少している。

個人消費は、一部の商品(パソコン、AV機器)の売れ行きは引き続き良好であるほか、乗用車販売や旅行の取扱いも横這い圏内の動きとなっているが、衣料品が引き続き減少していること等から、全体として弱含んでいる。

住宅投資公共投資は、増加している。

生産をみると、工作機械、チェーン等、設備投資関連の品目では、引き続き減少しているものの、公共・住宅投資関連品目(板硝子、塩ビ管等)や個人消費関連の一部(パソコン、AV機器等)が増加しており、全体としては下げ止まっている。

雇用・所得環境をみると、有効求人倍率が依然極めて低い水準にあるほか、所定外労働時間も減少するなど、引き続き悪化している。

物価は、石油製品等一部市況品目は上昇しているものの、全体としては軟調に推移している。

企業金融については、各種対策の効果により、総じてみれば逼迫感は和らいでいる。こうした中、企業倒産は前年水準を大幅に下回って推移している。

金融面をみると、貸出については、企業需資の低迷や住宅ローンの増勢鈍化から、低調な地合が続いている。金融機関の貸出態度は、総じてみれば依然慎重であるが、金融機関の資金繰り面や自己資本面からの制約が緩和されるなか、中小企業向け貸出を積極化する動きもみられる。

預金については、個人預金、法人預金とも総じて堅調に推移している。

以上

兵庫県内金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行神戸支店

県内経済をみると、アジア経済の回復や住宅投資の持ち直しもあって、企業マインドは改善しつつあるものの、個人消費や設備投資は依然弱含みで推移しており、景気は全体として引続き大底圏内での動きとなっている。

個人消費をみると、百貨店、スーパーの売上が家庭用品や食料品を中心に低迷しているものの、これまで比較的堅調な伸びをみせていたヤング向け衣料品・身の回り品に加え、ミセス向けも6月以降前年を上回る動きをみせるなど、下げ止まりの兆しも窺われている。また、全体として低迷基調にある消費の中にあっても、パソコンやデジタル家電等の情報関連機器、軽乗用車などは堅調に推移している。

住宅投資は、住宅ローン減税の効果等により持家の新設着工が堅調なことから、着工戸数全体では上向いてきている。もっとも、公共投資は、地公体による前倒し発注が積極的な割には、震災特需の反動減に加え、税収減による地公体の財政事情の厳しさもあり、請負額は前年割れで推移している。

こうした状況下、県内企業の生産は総じて低迷を続けているが、政府の経済対策の効果やアジア向け輸出の増加から一部に底打ちの気配が窺われている。

すなわち、物流機器(コンベア)、環境装置では設備投資抑制の影響から引続き操業度が低く、自動車部品、電子部品(コンデンサー)も低水準の生産を継続している。また、高操業を続けている大手造船では船腹過剰懸念等から新規受注環境が悪化しており、先行き繁忙度の低下も予想されている。一方、鉄鋼、射出成形機では在庫調整の進展やアジア向け輸出の増加等を背景に減産を緩和しているほか、建設機械、特装車(ダンプ、トラック)でも経済対策の効果等から生産水準の低下に歯止めがかかっている。

地場産業では、法人を主体とした贈答品需要の低迷や衣料品販売の不振から、清酒や播州織等で低水準の生産が続いている。

雇用・所得面では、有効求人倍率が過去最低の水準で推移しているほか、希望退職を実施する企業が増加傾向にある。また、夏季一時金も大幅前年割れとなるなど雇用・所得環境は一段と悪化している。

この間、消費者物価(前年比)は、生鮮食料品、光熱費の値下がり等を背景に下落基調が続いている。

金融面をみると、貸出は企業の前向きな資金需要が乏しい中で、特別保証制度貸しの約定弁済が始まっていることもあって、引続き伸び悩んでいる。

一方、預金は法人預金が、資金調達不安の後退から厚めにしていた手許資金を取り崩して借入返済に充てる動きがみられ、前年比マイナスに転じているが、個人預金は慎重な消費姿勢を映じて引続き堅調に推移している。

この間、金融機関の融資態度をみると、公的資金を投入した先を中心に中小企業向け貸出に積極姿勢を示しているが、付利姿勢は取引先企業の信用度に応じてシビアーに対応する先が多い。

貸出約定平均金利(総合)は、3月以降の長期プライムレートの順次引下げの影響もあり、長期を中心に低下傾向が続いている。

企業倒産は、金融緩和の浸透もあって、このところ件数、負債額とも前年を下回っている。

以上

中国地区金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行広島支店

中国地区の経済情勢をみると、輸出、設備投資が減少を続け、個人消費も回復感に乏しい状況にある。もっとも、公共投資では高水準で工事が進捗しているとみられるほか、住宅投資も下げ止まりつつある。こうした最終需要の動向を背景に、生産は横這い圏内の動きとなっており、企業マインドも改善に向かうなど、景気は下げ止まっている。

最終需要の動向をみると、個人消費は、一部に好材料がみられるものの、全体としては回復感に乏しい状況が続いている。新規格の軽自動車や一部小型車販売およびパソコン販売が好調を持続している。一方、百貨店売上高は基調としては低迷しているほか、スーパー売上高は前年割れが続いている。

設備投資を中国地区企業短期経済観測調査結果(11年6月)からみると、11年度計画は前年比−4.8%となり、前回調査(11年3月)と比べても下方修正されている。このように企業の設備投資は減少を続けている。因みに、10年度実績は同−21.3%となった。

住宅投資について新設住宅着工戸数をみると、持家の増加を主因に全体のマイナス幅は縮小傾向にあるなど、下げ止まりつつある。

公共投資については、公共工事請負額が年度末にかけて発注が集中した反動からこのところ一進一退で推移しているものの、既往の発注増を反映して高水準で工事が進捗しているとみられる。

輸出については、アジア向けが一部に回復の兆しがうかがわれるものの、欧米向けが頭打ちとなっていることから、全体では前年水準を下回って推移している。

こうした最終需要のもと、生産は横這い圏内の動きとなっている。主要企業の生産動向をみると、造船、弱電部品(半導体、液晶表示装置等)、情報家電(MD、FAX、携帯電話、パソコン)が高水準の生産を続け、自動車も全体としてはほぼ横這いで推移している。また、木材木製品では一部に生産水準を引き上げる動きがみられている。もっとも、石油化学は全体としては弱含んでおり、鉄鋼、縫製では低調な生産を続けている。さらに、一般機械では生産水準を引き下げる動きが続いている。

雇用面をみると、有効求人倍率が低下傾向にあるほか、常用雇用者数が前年を下回って推移しているなど、雇用環境は厳しい状況が続いている。

この間、企業収益を中国地区の企業短期経済観測調査結果(11年6月)からみると、11年度は、前年比+2.5%と増益計画となっているものの、前回調査(11年3月)に比べると下方修正されている。因みに、10年度実績は、同+2.4%となった。

企業マインドを中国地区企業短期経済観測調査結果(11年6月)からみると、足許業況判断D.I.が改善したほか、先行きも改善を見込んでおり、企業マインドは改善に向かいつつある(業況判断D.I.<「良い」−「悪い」>11年3月△42%→6月△36%→9月予測△32%)。

金融面をみると、貸出は依然として低迷している。個人向けは、住宅ローンの借換え案件の頭打ちなどからこのところ伸びが鈍化しているほか、企業向けは、設備・運転資金とも低調に推移している。

預金は幾分持ち直している。法人預金は低迷しているものの、個人預金は堅調に推移している。

以上

四国地区金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行高松支店
日本銀行松山支店
日本銀行高知支店

概況

四国地区の景気は、下げ止まりの状況にはあるものの、自律的回復へのはっきりとした動きがみられるまでには至っていない。

すなわち、公共投資が高水準を維持しているほか、住宅投資も持ち直しの動きがみられている。また、こうしたことを受けた公共・住宅関連資材等の需要増加に加え、在庫調整の進展やアジア向け輸出の持ち直し等を背景に、企業の生産活動は全体として下げ止まりの様相を呈してきている。こうしたなか、6月短観調査では、「しまなみ海道」開通効果等もあって、企業マインドは幾分改善をみている。しかしながら、個人消費が厳しい雇用・所得環境を眺め依然回復感に乏しい状況にあるほか、設備投資も企業収益の低迷やリストラの進展等から減少を続けており、景気回復に向けてのはっきりとした足取りは窺われない。

需要動向

最終需要の動向をみると、個人消費は、「しまなみ海道」開通効果から観光面で明るさが窺われる地域があるほか、軽乗用車、パソコン等の一部商品が引き続き好調なものの、普通乗用車販売や百貨店等の売り上げが低調に推移するなど、全体として依然回復感に乏しい状況にある。

公共投資は、緊急経済対策等に伴う着工増加や高速道路網の整備といった大型案件の継続等に伴い、引き続き高水準となっている。また、住宅投資も、金利底値感や住宅減税効果等を背景に新設住宅着工戸数が前年水準を上回って推移しているなど、持ち直しの動きがみられている。

この間、設備投資は、企業収益の長期低迷と大幅な設備過剰に伴うリストラの進展等から慎重な投資スタンスが一段と広範化しており、全体として依然減少を続けている。

生産

企業の生産活動をみると、繊維(タオル、縫製品)がギフト需要や季節物衣料の受注低迷から総じて低操業を余儀なくされており、一般機械(産業・運搬機械、建機、木工用プレス、農機具等)、紙・パ(家庭紙・印刷用紙等)でも、国内需要の低迷等を背景に減産強化や生産調整を継続する先がみられている。しかしながら、電気機械(情報機器向けメモリー、マイコン、液晶表示装置・バックライト等)、造船(外航船)が引き続き高水準の操業を継続しているほか、窯業・土石(土木・公園用資材)、鉄骨加工(橋梁関連)が公共工事の増加から、金属製品(アルミサッシ)、木材・木製品(収納家具)が住宅着工の増加から、それぞれ操業度を引き上げている。また、化学(合成樹脂、合繊原料、包装資材向けフィルム等)でも、アジア向け輸出の持ち直し等から生産水準を引き上げているなど、在庫調整が進展するなか、全体として下げ止まりの様相を呈してきている。

雇用

雇用情勢をみると、建設業等の一部に採用を増加させる動きがみられるものの、製造業を中心として人員過剰感が根強く、人員整理に踏み切る動きが引き続きみられ、有効求人倍率も低水準で推移しているなど、依然厳しい状況が続いている。

金融

金融面をみると、預金は、法人預金が低調に推移している一方、個人預金はまずまずの伸びを維持している。貸出は、企業向け設備・運転資金ともに新規需資が低調なことから、伸び悩んでいる。

以上

九州地区金融経済概況

1999年 7月26日
日本銀行福岡支店

九州経済は、全般に下げ止まっており、企業の景況感は厳しさが和らいできている。

すなわち、経済対策の効果等から公共・住宅投資が増加する中で、在庫調整の進捗もあって、生産が下げ止まってきているほか、企業倒産の減少も続いている。もっとも、企業収益や雇用・所得環境の悪化から設備投資・個人消費は依然低調に推移している。

最終需要の動向をみると、公共投資は、前年度末までの大幅な発注増加を受けて工事が進捗しており、セメント、合板等の官公庁向け出荷が増加している。

住宅投資は、低水準の住宅公庫金利等を背景に新設着工が持家を中心に増加しているほか、マンション販売も堅調に推移している。

一方、個人消費は、パソコン、一部小型乗用車等は堅調であるが、全体としては、雇用・所得環境の悪化等を背景に一進一退で推移している。

企業の設備投資は、企業業績の悪化や根強い設備過剰感等を背景に減少を続けている。

この間、輸出は、アジア向けは回復傾向にあるものの、欧米向けが自動車、鉄鋼等を中心に減少していることなどから、全体としては横這い圏内で推移している。

企業の生産動向をみると、内外需要の減少を背景に、自動車が生産水準を引き下げているほか、一般機械等も低操業を継続しているが、在庫調整が進捗している中で、公共・住宅投資の増加やアジア向け輸出の持ち直し等から、建設資材やIC、化学で生産水準を引き上げていることなどを反映して、全体として生産は下げ止まってきている。

雇用面をみると、有効求人倍率が低水準で推移しているほか、雇用者所得も減少傾向を辿っており、厳しい状況が続いている。

企業倒産をみると、倒産件数は中小企業金融安定化特別保証の効果から、前年を大幅に下回って推移している。

金融面の動きをみると、銀行預金は、個人預金がほぼ横這いで推移している中で、法人預金が、市場金利低下により相対的に有利となった普通預金等への流入増から伸びを高めたため、全体では堅調に推移している。一方、銀行貸出は、設備資金等前向きの資金需要が引き続き低迷していることに加え、特別保証制度を利用した貸出の実行が減少していることもあって、全体としては低調に推移している。

以上